測地学会誌
Online ISSN : 2185-517X
Print ISSN : 0038-0830
ISSN-L : 0038-0830
58 巻, 3 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
原著論文
  • 貴島 政親, 川口 則幸, 川端 弘治
    2012 年 58 巻 3 号 p. 107-120
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/06/21
    ジャーナル フリー
    系外銀河の電波強度の変動は, 天文学において重要な研究テーマである. 電波強度変動のタイムスケールは1ヶ月∼10年程度であり, 長期にわたる強度曲線が必要とされている. 一方, 測地VLBIは1979年からのアーカイブデータが存在するが, 1天体あたりの観測時間が短くVLBIイメージを描く事ができないため, 今まで天文学利用される事は極めて稀であったが, そこで我々は8 GHzの測地VLBIデータを用いて, 長期電波強度曲線を描く手法を確立した. この方法で得られる電波強度の誤差を, 公表されている単一鏡観測による強度測定結果を比較する事で評価したところ, 1測定点あたりの典型的な誤差は15%程度であり, 天文学利用に耐える精度での測定が達成されていると判断した. 我々は全ての測地VLBIデータを解析し, 700天体もの電波強度曲線を描くことに成功した. そのうち81天体は8年以上の長大な強度曲線であり, うち35天体は単一鏡観測データがない, 貴重なものである. 我々はこの81天体の強度曲線を用いて, 先行研究よりも天体数を4倍に増強した変動振幅に関する統計学的性質を調べた. 今回確立した手法を用いることで, VLBIイメージを描くには観測時間の短い測地VLBIデータであっても, 強度情報を抜き出し, 長期電波強度曲線を描き, 天文学的サイエンスを行う事が可能であることを示した. 測地VLBIは将来2∼15 GHzの広帯域観測システムに更新される予定であり, 多周波モニタ観測としての天文学的役割も担うことができると期待される.
報  告
feedback
Top