種子散布過程で種子が球果の果軸から離脱するアオモリトドマツ(
Abies mariesii)において,動物による球果の持ち去りの痕跡と,持ち去られた場所付近で解体された球果を観察した。動物による球果の持ち去りは,奥羽山脈・姥倉山において,1996年に同一個体で生産された10個について確認された。これまでアオモリトドマツにおいては,枝の切断による球果の持ち去りは本事例以外では確認されていないことから,枝の切断をともなった動物による球果の持ち去りが起こる頻度は低いと示唆される。しかし本事例は,種子が果軸から離脱し,散布を動物に依存していないと考えられるモミ属においても,動物によって複数の種子が運ばれる可能性があることを示している。
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