東北森林科学会誌
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10 巻, 1 号
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論文
  • 白旗 学, 橋本 良二, 高島 輝之
    原稿種別: 論文
    2005 年10 巻1 号 p. 1-7
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    アカマツとスギ芽生えの子葉の光合成能力について,Rubisco含量をもとにクロロフィル含量や窒素含量と関係づけながら評価し,あわせて施肥に対する子葉の栄養生理面での反応について検討した。①個体あたりの子葉窒素含量は,アカマツでは発芽開始から測定をはじめた10日後,スギで20日後にピークを迎えその後減少していった。クロロフィルとRubisco含量のピークはそれよりも遅く,アカマツでは20日後,スギでは30日後であった。②施肥は,個体あたりの子葉重量に影響しなかった。しかし,施肥により個体あたりの子葉の窒素,クロロフィル,Rubisco含量は明らかに増大した。これらの結果は,施肥による子葉の光合成活動の増大分は,非同化器官あるいは後発の初生葉の成長に回ることを示唆する。③各樹種の施肥の効果については,無施肥下での光合成能力のレベルおよび施肥によりもたらされる光合成能力の増大割合の2点で,樹種間のちがいが明瞭であった。④針葉樹の苗木や若木の成熟葉と比べると,ここで得られた子葉の重量ベースの窒素含有率は相当高く,クロロフィル含有率も同様であったが,Rubisco含有率は中程度であった。これら子葉では,窒素含有量に対するクロロフィル含有量の比率は高く,Rubisco含有量の比率は低かった。
  • —暗門の滝,白神岳,二ツ森における1996~1997年と2001~2002年の来訪者を対象に—
    大石 康彦
    原稿種別: 論文
    2005 年10 巻1 号 p. 8-16
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    白神山地世界遺産地域においては,世界遺産としての価値を維持していくために自然環境の保全が重要な課題であり,来訪者による環境への影響が問題である。したがって,環境保全のために効果的な自然環境と来訪者の管理方法を開発することが必要である。本研究は,そのために必要な来訪者の特徴とその要因を明らかにすることを目的とした。1996〜1997年と2001〜2002年に暗門の滝,白神岳,二ッ森で来訪者を対象とする来訪者数カウント調査とアンケート調査を行った結果,以下のことが明らかになった。①3箇所における来訪者数は1日当たり292〜1,269人であり,その8割を暗門の滝への来訪者が占めた。②来訪者は中高年の家族連れが多かった。③来訪者の居住地と日常の森林訪問の程度が来訪場所や来訪季節に関係していた。④来訪者は居住地や森林訪問の頻度によって分類できた。⑤この5年間に,来訪者はより遠方の居住者が世界遺産を目的に来訪する方向に変化し,来訪場所ごとの特徴が薄れた。
  • 佐々木 揚, 矢田部 隆, 佐々木 明夫
    原稿種別: 論文
    2005 年10 巻1 号 p. 17-22
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    樹高成長が優れた精英樹5系統と,根元曲がりが少ない雪害抵抗性5系統を交配現として特定交配を行い,得られた24交配家系で検定林を設定した。これら24交配家系のなかから,「成長が優れ,且つ根元曲がりの少ない」7交配家系を選定できた。樹高階別平均を横軸,傾幹幅平均を縦軸にプロットしたところ,凸型のグラフが得られたので,傾幹幅/樹高を成長性と耐雪性に係る指標とした。そこで,この指標(傾幹幅/樹高)を用いて,特定交配による24交配家系の成長特性を評価した結果,上位家系の交配親には精英樹の由利10号,山本3号と雪害抵抗性系統の耐雪26号及び50号が関与している場合が多かった。雪害抵抗性4系統の雌親,精英樹5系統の雄親を要因とする分散分析の結果,①樹高,枯損率と傾幹幅/樹高は精英樹系統と雪害系統ともに有意,②胸高直径は精英樹系統のみ有意,③傾幹幅/樹高は雪害系統のみ有意,であった。なお,雌親と雄親の交互作用は4形質ともに有意であり,交配親の組合せ効果は大きいと考えられる。
  • 澤田 智志, 和田 覚, 三浦 義之
    原稿種別: 論文
    2005 年10 巻1 号 p. 23-27
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    スギとの混植によるケヤキの用材生産を目指した低密度植栽試験地を秋田県北部に設定した。林地にまずスギを植栽し,その後ケヤキをha当たり400〜600本の密度で同時もしくは2〜4年後に単木状に混交植栽を行った。植栽時の樹高はスギが約30cm,ケヤキが約1mであった。植栽後約10年の時点でスギとケヤキの植栽年の差によってケヤキの成長に明らかな違いが見られ,同時植栽地での成長が最も良く,ケヤキの植栽の時期が遅い試験地では成長が悪かった。
  • 杉田 久志
    原稿種別: 論文
    2005 年10 巻1 号 p. 28-36
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    岩手県雫石町の大滝沢試験地における11年間(1993〜2003)のブナの種子落下および実生発生・生残の観測データを解析し,種子落下量の年変動パターン,開花量と受粉効率,種子散布前の段階の種子食昆虫による虫害からの回避,散布後段階の捕食回避について検討した。1995, 2000, 2003年の3年が豊作年(健全種子94個/m2以上と定義)で,残りが凶作年(20個/m2以下)であり,まったく健全種子が観測されなかった年が5回あった。雄花序数と不稔種子の割合には有意な負の相関はみられず,大量開花年ほど受粉効率が高い傾向はなかった。有稔性種子数あるいはそれの対前年比とブナヒメシンクイによる虫害率との問に負の相関がみられ,豊作年ほど散布前の虫害が回避されている傾向がみられた。一方,健全種子数と翌春の実生発生率,発生実生数と当年秋までの実生生残率との間には有意な相関がなく,豊作年ほど種子散布後の捕食が回避されている傾向はなかった。この林分にはブナと共通の捕食者(野ネズミ)をもつトチノキ,ミズナラなどが混交しており,それらの樹種の結実が同調していないことが,豊作年でも種子散布後の捕食を回避できないことに関与している可能性が示唆される。
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