東北森林科学会誌
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19 巻, 1 号
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論文
  • 安江 悠真, 青井 俊樹
    原稿種別: 論文
    2014 年 19 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/07/26
    ジャーナル フリー
    夏期のツキノワグマ(以下クマ)は,様々な液果を利用する。しかし,クマの食物として液果の分布に着目した研究は少ない。液果の一つであるヤマグワは,初夏のクマが頻繁に利用することから,重要な食物の一つであると考えられる。そこで,本研究では,クマの食物としてのヤマグワの分布を明らかにすることを目的とした。まず,陽樹であるヤマグワは,開空度の高い林道沿いに多く分布すると予測し,林道の有無とヤマグワの本数の関係をライントランセクト法により明らかにした。結果,ヤマグワは林道沿いに多く分布していた。さらに,林道沿いのラインを沢沿いと沢以外に分類して解析したところ,ヤマグワは林道沿い且つ沢沿いに最も多く分布していた。これは,開空度に加え,土壌の水分量等が影響していると考えられる。次に,ヤマグワに残るクマの痕跡の有無から,クマの利用の有無とヤマグワの胸高直径との関係を明らかにした。結果,クマの痕跡は胸高直径11-20cmのヤマグワで最も多く,クマに選択的に利用されていると考えられた。さらに,林道に接していないラインにはクマに利用されるヤマグワが多かった。今後の研究では,その理由も明らかにしていく必要がある。
報文
  • 八木橋 勉, 安田 雅俊
    原稿種別: 報文
    2014 年 19 巻 1 号 p. 8-11
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/07/26
    ジャーナル フリー
    種子のサンプリングに使われている通常の種子トラップでは鳥散布種子の回収率は低く,多数の鳥散布種子を集めるには効率が悪い。本研究では,森林内で鳥散布種子を効率的に回収するために,道路法面などで効果が報告されている疑似果実を用いた方法が,森林内でも有効であるのかを検討した。具体的には,森林内に疑似果実付き止まり木と種子トラップをセットにしたものと,通常の種子トラップのみのものを対にして設置し,疑似果実による鳥類の誘引効果を検証した。その結果,疑似果実を用いることで,通常の種子トラップと比較して,回収種子数が増加し,森林内でも疑似果実による誘因効果が種子回収率の向上に有効であることが示された。季節別にみると,特に秋期から冬期にかけて,誘引効果があると考えられた。
  • 斉藤 正一, 岡田 充弘, 鶴田 英人, 猪野 正明
    原稿種別: 報文
    2014 年 19 巻 1 号 p. 12-17
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/07/26
    ジャーナル フリー
    ナラ枯れ被害予防のため,高濃度トリホリン乳剤の少量樹幹注入試験を実施した。ミズナラの樹幹下部に径5mm,深さ50mmの薬剤注入孔を胸高直径に応じた数で開け,15%トリホリン乳剤を1孔あたり0.5mlまたは1.0ml/孔注入した場合,高濃度にも関わらず薬害は発生しなかった。高濃度トリホリン乳剤の少量樹幹注入法は,同じ成分の登録農薬のウッドキングSP(トリホリン0.036%)と同量の有効成分を注入孔に注入でき,ウッドキングSPと同様に注入から2年は10%程度までの低い枯死率にできる枯損防止効果が認められた。
  • 齋藤 武史, 村井 宏, 照井 隆一
    原稿種別: 報文
    2014 年 19 巻 1 号 p. 18-21
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/07/26
    ジャーナル フリー
    三陸北部の津波被災海岸林跡地に植栽試験地を設置し,クロマツ,アカマツ,アキグミ,ハマナスなどの苗木を植栽した。試験区の一部の地表面には養生マットとムシロ張りによる被覆工を施工した。2種類の被覆区と無被覆の対照区の地中に温度記録計を埋設して地温を観測し,土壌凍結の発生と消長とを調査した。対照区では早い時期に土壌凍結が進行し,苗木の根系分布範囲の地下20cmにおいて,16日間凍結状態が継続した。ムシロ張り区では土壌凍結の開始が遅れ,地下20cmでの土壌凍結期間は5日間であった。養生マット区の地下20cmでは地温が氷点下まで低下せず,土壌凍結が観測されなかった。2種類の被覆区ともに,無被覆の対照区と比べて積算寒度の増大に伴う土壌層の冷却が緩和され,土壌の凍結が抑制された。
  • 宮下 智弘, 渡部 公一
    原稿種別: 報文
    2014 年 19 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/07/26
    ジャーナル フリー
    スギのコンテナ苗と裸苗に対して植栽と同時に地中へ施肥し,施肥による活着および成長促進効果が苗木の種類によって異なるか試験を行った。その結果,コンテナ苗および裸苗では施肥処理をすることにより幹長の成長量は有意に増加したが,根元径の成長量では有意な増加は認められなかった。一方,施肥処理をしなければ裸苗・コンテナ苗ともに全ての個体が活着したが,施肥処理をすることによってコンテナ苗では10%,裸苗では32%の個体が枯損した。これらのことから,コンテナ苗の地中への施肥は,裸苗と比べて肥料焼けによる枯損リスクが小さく,特に伸長量に対して成長促進効果が期待できると考えられた。
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