白神山地の奥赤石林道沿いで,生育不良な約20年生スギ人工林の混交広葉樹の構造・組成,及びその変化を1998年から2002年まで調査した。スギの平均立木密度はプロット間で350〜2300本ha
-1の範囲で変動し,胸高断面積合計も3.6〜41.9m
2ha
-1と変動していた。著しく低い立木密度や胸高断面積合計を示すプロットは,今後も林相が改善される見込みはなかった。枯損原因の多くが積雪被害であることから,空間的に不均質な積雪深が上記の林分状態の差異の原因と考えられた。混交広葉樹の胸高断面積合計は0〜15.4m
2ha
-1と変動し,スギの胸高断面積合計とは負の相関があった。広葉樹の組成は6〜8つの型に分けられ,サワグルミ,キハダ,ミズキ,ウダイカンバなど攪乱依存性の高い樹種が優占していた。サワグルミやミズキなどはスギの枯損率の高いプロットで優占していたが,この原因の一部は,スギの枯損の原因となった豊富な積雪に由来する水分条件によって説明されると推察された。プロットの中には広葉樹の組成が調査期間内で大きく変化したものがあり,現段階で組成は不安定であった。これらの人工林は,組成の変化を見ながら順応的に管理していくことが勧められる。
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