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渡辺 雄大, 上総 勝之, 葛西 智恵子, 鈴木 勇司, 加藤 正巳, 狩野 真由美, 大畠 武二
セッションID: P-114
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
会議録・要旨集
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【目的】非臨床試験に用いられる非げっ歯類としては主にイヌ及びサルが広く用いられているが,第三の非げっ歯類として注目されるブタは,薬物代謝物のヒト網羅性という観点で選択されうるのみならず,解剖学的な心臓の構造や心筋に発現するイオンチャネルがヒトと類似しているという面からも毒性試験や安全性薬理試験における有用性が期待されている。今回我々は,非臨床試験で多用されるゲッチンゲンミニブタを用いたテレメトリー試験により,他の非げっ歯類において典型的なQT延長作用薬とされるSotalol,E-4031及びMoxifloxacinの3薬剤への反応性を検討した。さらに,吊り下げ拘束条件では無拘束よりも採血操作等のハンドリングのストレスによるノイズが軽減される可能性を検証すべく,心循環評価におけるデータ取得条件が各種データに及ぼす影響についても検討したので紹介する。
【方法】ゲッチンゲンミニブタ(雄3匹 12.9~15.5 kg;Ellegaard社,デンマーク)を用いて,テレメトリー送信器の血圧測定用カテーテルを大腿動脈に留置し,心電図電極を胸骨柄下部及び右側胸部前方の皮下に固定した。手術後1週間以上の回復期間を空けた後,各個体に媒体又はSotalol,E-4031及びMoxifloxacinをそれぞれ経口投与し,無拘束下にて投与後の一般状態,血圧,心電図及び電解質を評価した。さらに,E-4031について,吊り下げ拘束下での評価を加えて実施し,拘束の有無による各種データへの影響を調べた。
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落合 陽介, 川端 貫太, 小田切 則夫, 根岸 裕美, 坂井 勝彦, 秋山 賢之介, 石井 宏幸, 大保 真由美, 大西 康之, 平塚 秀 ...
セッションID: P-115
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
会議録・要旨集
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【目的】近年、ミニブタはイヌやサルに代わる実験動物として注目されている。ミニブタは家畜であることに加えて、冠状動脈の分布等の循環器系の構造がヒトと類似しているという特徴もある。我々はミニブタが、安全性薬理試験のテレメトリー試験に用いられているイヌやサルと同等に心血管系の評価することができることを確認している.そこで本発表では覚醒下でのミニブタにおけるQT間隔延長を評価するため、代表的なQT補正式を用いて、各補正式でのミニブタへの適性について比較した。さらに、QT延長を誘発する薬剤を投与し各補正式の有用性を検討した。
【方法】雄性ミニブタ(Göttingen Minipigs)にテレメトリー送信器を埋め込み、2週間以上の回復期間をおいて実験に使用した。血圧、心拍数及び心電図の測定は無麻酔、無拘束下で、薬剤の投与前2時間から投与後24時間まで測定した。QTcの補正式はBazett(B)、Fridericia(F)及びVan de Water(V)の方法を用い、QT/RR、QTcB/RR、QTcF/RR、QTcV/RR-プロットを作成しそれぞれのQTcについて比較した。
【結果・考察】ミニブタはイヌやサルに比べて心拍数の変動幅が小さく、QT間隔はイヌやサルのそれに比べてRR間隔の変動による影響が小さい傾向がみられた。特に低心拍数域においてはRR間隔に関わらずQT間隔はあまり変動しなかった。薬物に対する反応は、ソタロールの経口投与では、10および30 mg/kgにおいてQT間隔の延長及び心拍数の減少を確認できた。各補正式についてはBazett、Fridericia及びVan de Waterの順に補正能が高いことが示唆された。
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杉浦 孝宏, 加藤 正巳, 渡邊 ゆかり, 狩野 真由美, 佐伯 健輔, 今泉 隆人, 今井 順, 豊吉 亨, 太田 隆雄, 三森 朋行, ...
セッションID: P-116
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
会議録・要旨集
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【背景・目的】腎臓移植や腎臓温存手術において,急性腎不全は頻繁に発症し依然として高い致死率が報告されている.血流の遮断による虚血性急性腎不全モデルは,いまだ治療薬のない急性腎不全に対して,薬効評価及び病態解明を短期間で評価出来る優れたモデルである.我々は今までげっ歯類やイヌを用いたモデルで評価を行ってきた.しかし,げっ歯類やイヌの腎臓は構造的にヒトの腎臓と異なること,また評価できる項目に限界があることなどから,ヒトに近いモデルが望まれている.そこで,腎臓の構造が解剖学的または生理学的にヒトに非常に近いミニブタを用いて虚血性急性腎不全モデルを作製した.
【方法】雄性Göttingen系ミニブタを用いて,左腎臓に120分間の虚血を処置し,左腎臓の再灌流後右腎臓を摘出してモデルを作製した.虚血処置前,虚血処置後1,3,5,7,9日に血液及び尿を採取し,腎機能パラメータを測定した.
【結果】腎機能パラメータは,虚血処置前と比較して,尿素窒素,血中クレアチニン,尿量,尿中タンパク質の上昇及びクレアチニンクリアランスの低下を示し,モデルの確立を確認した.さらに,近年,幹細胞を用いた再生医療が注目されていることから,我々は,皮下脂肪組織由来の細胞群(Adipose-derived Regenerative Cells: ADRCs)に注目し,この腎不全ミニブタから採取したADRCsをミニブタの腎動脈内に移植し,ミニブタの虚血性急性腎不全モデルに対するADRCsの影響も検討中である.
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坂井田 泰二, 佐藤 貯雄, 島戸 望, 樋口 勝洋, 清水 憲次, 豊吉 亨, 太田 隆雄
セッションID: P-117
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
会議録・要旨集
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【目的】非臨床試験におけるミニブタの有用性については多くの報告がされているが、国内におけるミニブタの眼科学的検査関連の報告は少ない。今回我々は、網膜毒性の検出に使用されるSodium Iodateを用いてミニブタの眼に対する影響を、網膜電位図(ERG)を主に眼科学的検査として検討した。
【方法】動物は雌性ミニブタ(Göttingen)を使用した。投与物質はSodium Iodateを35 mg/kgの投与量で頸静脈に留置したカテーテルより5 mL/minで単回静脈内投与した。ERGは、暗順応を30分以上行い、塩酸メデトミジン及びミダゾラムの筋肉内投与による麻酔下にて、散瞳薬、局所麻酔薬、粘膜保護薬の点眼後、コンタクトレンズ型電極、針不関電極を装着し、右眼前20~30 cmで20Jのストロボ光にて刺激し、感度100µV/div、掃引速度10~20ms/div及び時定数0.3sの条件で測定した。測定頻度は、投与前2回、投与後3、8、24時間、投与2、3、7、14日とした。その他、眼底の写真撮影及び病理組織学的検査を実施した。
【結果】ERGでは、投与後8時間にb波電位が投与前値に比較し、約60%に減弱したが、その後回復した。眼底像では視神経乳頭周囲に経時的に色素沈着が認められた。病理組織学的検査は、現在検査中である。その他、一般状態で投与直後から数回の嘔吐及び自発運動低下が数時間で見られたが、その後回復した。
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遠藤 和守, 石井 宏幸, 原田 智隆, 大西 康之, 平塚 秀明
セッションID: P-118
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
会議録・要旨集
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【目的】ミニブタの皮膚は、構造および生理機能がヒトの皮膚に類似していることが報告されており、前臨床試験における経皮投与試験に適した動物種であると考えられている。しかし、ミニブタの皮膚構造は、各部位で大きく異なっている。表皮の厚さは、腹部が10.7‐15.1µm,背部が70‐140µmであり10倍近い差が認められる。表面構造においても、背部は角化が多く凹凸に乏しいのに対し、腹部は角化が少なく凹凸に富んでおり、体毛の平均数も各部位で異なっている(1?中:背部49本,体側部37本,腹部21本)。このように皮膚構造が大きく異なっているが、それぞれの部位での薬物の吸収性の違いについての報告は極めて少ない。今回、ミニブタの経皮投与部位の違いによる薬物吸収性を比較したため,詳細を報告する。
【方法】Göttingen系ミニブタの皮膚に薬物を経皮投与した。第1回投与は背部、第2回投与は体側部、第3回投与は腹部に実施し、各投与は1週間の休薬期間を設けた。各投与の投与後0.5,1,2,6および24時間に前大静脈洞より血液を採取し,血漿中の薬物濃度を測定した。
【結果】
投与部位毎の血漿中濃度は背部が最も高い値を示した。血漿中濃度の比較では背部>体側部≒腹部であった。
【考察】
投与部位の吸収性に明らかな差が認められた。
ミニブタを用いて経皮投与を行う、被験物質の特性に合わせた投与部位の選定が重要であることが示された.
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加藤 英男, 伊藤 格, 今井 順
セッションID: P-119
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
会議録・要旨集
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目的
酢酸を用いたミニブタでの皮下刺激性の結果は当学会にて報告している。今回、同条件でウサギについても皮下刺激性も検討したので、それらの結果を比較検討し、皮下刺激性評価におけるミニブタの有用性について報告する。
方法
ウサギ(NZW、雄、10週)、ミニブタ(Göttingen Minipigs、雄、8カ月)ともに、麻酔下で生理食塩液あるいは酢酸(0.425%、1.7%)を1 mL背部皮下に投与した。これに加えて、ミニブタでは頸部及び鼠径部皮下にも投与した。投与後2日(Day 2)及び14日(Day 14)に投与部位皮膚を肉眼観察後、HE組織標本を作製した。また、投与液の貯留性を検討する目的で、フルオロセインを皮下に投与し、周辺組織への拡散を観察した。
結果
肉眼観察:ミニブタでは、Day 2、Day 14ともウサギに比べて明確な刺激性変化が認められた。
病理組織学的検査:ミニブタでは、Day 2、Day 14とも炎症性変化がみられたが、ウサギに比べて強い傾向が認められた。ミニブタの部位別では、各部位とも刺激性が認められた。
フルオロセインの貯留性:フルオロセインの投与部位から周辺組織への拡散は、ミニブタではウサギに比べて時間を要した。
まとめ
ミニブタの刺激性変化は、ウサギに比べて強い傾向が認められた。これは投与部位の酢酸の保持時間に関係している可能性が示唆された。すなわち、脂肪組織が乏しいウサギ皮下では、投与部位に留まることなく、速やかに拡散することにより、酢酸の接触時間と組織中濃度がミニブタを下回ることに起因すると考えられた。これらから、投与部位が脂肪組織を含むヒト臨床のための評価においては、ウサギでは薬物刺激性をunder estimateする可能性があるため、皮膚組織構造がヒトに類似するミニブタでの評価の有用性が示唆された。
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Andrew MAKIN, Mikkel Lykke JENSEN, Jeanet LøGSTED
セッションID: P-120
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
会議録・要旨集
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During pharmaceutical development, consideration must be given to medicines for treating children. Therefore it is normal to perform preclinical safety studies in juvenile animals as models of human children. In the case of drugs developed for dermal administration, this can give particular problems. Dermal drugs are normally developed using the minipig as a testing species due to the similarities between human and minipig skin. Dermal dosing of animals requires great care to avoid interference with the dosing sites by the animals. Use of single housing, collars and bandages is common. For minipigs, dosing of young animals from weaning at 4 weeks of age is straightforward, however for younger, preweaned animals there is a high risk of interference with the dosing site by the mother or siblings. This potentially prevents studies that would evaluate effects of drugs in animals of equivalent human age 0 to 2 years. Therefore we have conducted a study in pre-weaned minipigs to investigate the possibility of dermal dosing in such young animals. Minipigs were dosed dermally with a commercially available skin product starting from 7 to 14 days of age. The animals were bandaged whilst they were exposed to the treatment to prevent outside interference with the dose site. The animals were observed and the bandages inspected regularly to check whether the mother or the other young minipigs could interfere with the dose sites. This study allows us to conclude on the possibility of performing dermal studies on minipigs younger than 4 weeks of age.
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根岸 透, 重見 稚紗, 荻村 栄一郎, 中川 徹也, 出口 二郎, 矢吹 昌司, 船橋 斉
セッションID: P-121
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
会議録・要旨集
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【目的】特異体質性肝障害の発現機序の一つとして反応性代謝物の生成が考えられており、そのポテンシャル評価としてタンパク質への化合物の共有結合量測定が行われている。我々はこれまでに共有結合量に臨床用量を組み合わせることで毒性発現のリスク評価が可能であると報告してきた。一方、毒性の発現機序には複数の因子の関与が考えられることから、共有結合能のみならず、毒性等も加味した評価の必要性が近年指摘されている。そこで我々は共有結合能に各種in vitro毒性データ等を組合せた総合的リスク評価を実施し、その有用性について検討した。
【方法】ヒトにおける特異体質性肝障害のリスクからWDN (withdrawnおよびblack box warning)、WNG (warning)、SAFE (no warning) の3つのカテゴリーに分類した52化合物について1) ヒトミクロソームタンパク質への共有結合量、2) ラット肝細胞を用いた細胞毒性、3) ミトコンドリア亜粒子を用いたミトコンドリア毒性、4) 発現ベシクルを用いたbile salt export pump (BSEP) 阻害、5) logPの各評価を実施し、各評価結果をそれぞれスコア化した。
【結果及び考察】共有結合能だけでなく、各種in vitro毒性評価結果を組み合わせることで、毒性リスクと各評価項目のスコア合計との間に相関性が認められた。さらに、評価結果に化合物の生体内曝露を考慮すると、両者の相関性はより高くなることが示された。これら結果により、共有結合能に複数のin vitro毒性ポテンシャルを加味した総合評価は、特異体質性肝障害の発現ポテンシャルのリスク評価に有用であると考えられた。
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越智 靖夫, Mira KO
セッションID: P-122
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
会議録・要旨集
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近年、バイオ医薬品開発の活性化に伴い、免疫複合体沈着に関連する腎糸球体障害は重要なリスク要因と認識されている。現在、尿中アルブミンや総タンパクが尿細管および糸球体障害の診断マーカーとして汎用されているが、より感受性及び特異性の高いバイオマーカーの開発が強く望まれている。ラット受動性Heyman腎炎(PHN)モデルは、C5b-9が結合した免疫複合体の糸球体上皮下への沈着を特徴とし、重度のタンパク尿を呈する膜性腎障害モデルである。本モデルでは、糸球体へ免疫複合体沈着に関連して尿中C5b-9が上昇することが知られている。そこで、ヒトおよびラットC5b-9血中濃度測定用の市販ELISAキットを用い、尿中C5b-9定量を試みた。
ザイモザンで刺激したサル血漿及びラット血清をC5b-9陽性サンプルとして用い、尿を用いて系列希釈したときの直線性、マトリックス効果及びアルブミン添加による影響を検討した。サル血漿を尿で希釈した場合、標準サンプル希釈液と比較してデータのバラツキが増し、C5b-9定量値は4~10分の1に低下した。一方、ラット血清では希釈倍率と定量値間に直線性が得られなかった。これらの尿によるマトリックス効果は尿安定化緩衝液を用いても改善しなかった。また、アルブミン添加による影響も認められた。さらに、ラットPHNモデルを用いた検討では、糸球体のC5b-9陽性所見と尿中C5b-9濃度の間に相関性は認められなかった。
糸球体特異的な腎障害バイオマーカーは存在しないこと、免疫組織学的検討ではPHNモデルのみならずヒト膜性腎障害においてもC5b-9沈着が認められること、非侵襲的に採取可能であることから、尿中C5b-9は依然魅力的なバイオマーカー候補であると思われる。今回の検討では、市販キットを用いての尿中C5b-9定量は困難であった。その原因として抗体の特異性、尿中タンパクによる妨害などが想定され、更なる検討・改善が必要であると考えられた。
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金子 真, 代田 和彦, 佐々木 誠, 湊 宏一, 藤方 明
セッションID: P-123
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
会議録・要旨集
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近年、非臨床試験からの予測が困難な特異体質性の薬物毒性について、その回避を目的とした研究が活発に行われている。無顆粒球症は多くの医薬品で報告されている特異体質性の薬物毒性であり、その頻度は低いものの、致死性を有し、発症時には薬物の使用を中止する必要がある重篤な副作用である。そのため、新規医薬品の開発時には、無顆粒球症発症リスクの低い化合物を選択することが望まれるが、無顆粒球症の発症メカニズムは未だ十分に解明されておらず、現状ではリスク回避のためのスクリーニング系は確立されていない。複数の医薬品において無顆粒球症の発症メカニズムに好中球で高発現しているMyeloperoxidase(MPO)の関与が示唆されていることに着目し、今回、MPOの酵素活性への影響を指標とした無顆粒球症の
in vitroスクリーニング法の有用性について検討した。医薬品添付文書の副作用情報において無顆粒球症の記載の有る化合物20種、及び記載の無い化合物8種について、recombinant human MPOによるTaurineのハロゲン化酵素活性への影響を調べた。MPO活性は、Taurineのハロゲン化代謝物に対する3,3’,5,5’-Tetra-methylbenzidineによる呈色反応を行い測定した。その結果、MethimazoleやClozapineなど多くの化合物で濃度依存的なMPO活性の阻害が確認された。各化合物の阻害の程度を、得られた IC
50、及び臨床における最高血中濃度を考慮した基準で分類したところ、副作用情報での無顆粒球症発症の有無と関係性が認められた。以上の結果から、MPO活性を指標としたスクリーニング法が無顆粒球症発症のリスク回避に有用である可能性が示唆された。
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檜杖 昌則, (Ervin)Xu ZHU, Jessica WHRITENOUR
セッションID: P-124
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
会議録・要旨集
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薬剤性過敏症を予測する評価系として,リンパ節増殖アッセイ(Lymph Node Proliferation Assay : LNPA)を改変したマウスアレルギーモデルの検討を行った。本検討では,薬剤性過敏症を予測しうるパラメーターおよび本反応の機序を調べる目的で,薬剤性過敏症を惹起する薬物の投与による流入領域リンパ節のリンパ球数およびリンパ球のフェノタイプ変化について評価した。陽性対照薬(薬剤性過敏症を惹起する薬剤)としてabacavirおよびアモキシリンを,陰性対照薬としてはメトホルミンおよびシメチジンを用い,マウスに各薬剤(100 mg/kg)または溶媒を1日1回3日間皮下投与し,投与後2日に上腕リンパ節の細胞を採取してフローサイトメトリーでフェノタイプを分析した。
陽性対照薬投与群では,溶媒対照群に対して有意な総細胞数の増加が認められた。また,溶媒対照群および陰性対照群に対して,CD4陽性T細胞,CD8陽性T細胞およびB細胞の増加が認められた。さらに,ナイーブT細胞の比率が有意に低下し(溶媒対照群に対し~25%減),一方,L-セレクチン(CD62L)およびCD44陰性T細胞の比率が上昇した(溶媒対照群に対し~27%増)。陰性対照薬はこれらの発現をわずかに変化させたが統計的に有意な変化ではなかった。また,abacavir 24時間処置によりリンパ節におけるCD11c陽性樹状細胞の増加がみられた。
以上のように,薬剤性過敏症を惹起する薬剤は流入領域リンパ節の細胞数を増加させ,また細胞のフェノタイプを変化させた。接着分子の発現変化および樹状細胞の出現が認められたことから,薬剤性過敏症惹起によるリンパ球の2次リンパ組織への移行および初期獲得免疫反応が示唆された。
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高岡 裕, 森村 智美, 関 剛幸, 青木 聡子, 西垣 嘉人, 太田 亮
セッションID: P-125
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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目的] Local Lymph Node Assay(LLNA)は刺激性物質を適用した場合、Stimulation Index(SI)が上昇し偽陽性を示すことが知られている。そこで、SIが3を超えた濃度と刺激性を示した最低濃度と比較することで、刺激による偽陽性を推定できるか検討した。
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方法] 5、2.5、1、0.5% ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、50、25、10、5% オレイン酸(OA)、2.5、1、0.5、0.1% 塩化ベンザルコニウム(BZC)、40、20、10% サリチル酸ナトリウム(SA)を雌のCBA/J 系雌マウスの耳介に3日間反復塗布した。最終塗布の3日後に耳介リンパ節を摘出して放射活性を測定し、SIを算出した。その他、毎日紅斑の有無を観察し、実験第1、3、6日に耳介厚、リンパ節摘出時に耳パンチ重量測定法で耳介重量を測定した。
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結果および考察] SLS(5、2.5%)、OA(50、25、10%)、BZC(5、2.5、1%)でSIが3を超えた。OA(50、25%)およびBZC(5、2.5%)に紅斑が観察された。OA(50、25%)およびBZC(5,2.5%)に耳介厚の高値が観察された。SLS、OA、BZCの全群で平均耳介重量が対照群より高値を示した。SAは今回の条件でSIが3を超えず、刺激性も示さなかった。
これらのことから、耳介重量は今回刺激性の指標とした検査の中で最も感度良く刺激性を検出することが示された。また、SIが3を超えた濃度と耳介重量が増加した最低濃度を比較することで、刺激による偽陽性を推定できると考えられた。
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森村 智美, 高岡 裕, 関 剛幸, 青木 聡子, 西垣 嘉人, 太田 亮
セッションID: P-126
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
会議録・要旨集
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目的] LLNAは、2002年にOECDでガイドライン(TG 429)化された後、2010年にはISO 10993-10に、日本国内でも2012年に医療機器の生物学的安全性試験法ガイダンスに採択された。しかし、各ガイドラインに例示された媒体は、主に化学物質を対象としており、医療機器の抽出液あるいは抽出物の媒体としては必ずしも適しているとはいえない。そこで、医療機器の安全性を評価する際にLLNAで用いる媒体を検討した。
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方法] 70% ジメチルスルホキシド(70% DMSO)、50% エタノール、n-ヘキサンおよび2-プロパノール/シクロヘキサン(1:1)混液(IPACH)を検討対象とし、既知の感作性物質であるヘキシルシンナミックアルデヒド(HCA)またはp-フェニレンジアミン(PPD)を加えて投与検体とした。HCAは、LLNAで最も汎用されているアセトン/オリブ油(4:1)混液(AOO)にも溶解させ、投与検体とした。雌のCBA/J 系雌マウスの耳介に各投与検体を3日間反復塗布し、その3日後に耳介リンパ節を摘出して放射活性を測定し、Stimulation IndexおよびEC3を算出した。各媒体について3回実験を繰り返した。
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結果および考察] AOO、70% DMSO、n-ヘキサン、IPACHを媒体とした場合、HCAのEC3の平均値は、それぞれ、9.6、7.2、9.1、5.3 w/v% となり、TG 429に示された許容範囲(4.4~14.7%)内となったが、実験によっては、n-ヘキサンの場合で許容範囲の上下限を、IPACHの場合で僅かに下限を外れることもあった。50% エタノールを媒体とした場合、PPDのEC3は0.22 w/v%(2回の平均値、他1回は>0.25 w/v%)となり、TG 429に示された許容範囲(0.07~0.16%)を上回った。以上の結果から、70% DMSOはLLNAの媒体として適しているが、n-ヘキサンはLLNAの結果がばらつく可能性があり、IPACHおよび50% エタノールは反応の強弱に影響を与える可能性があると考えられた。
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五十嵐 良明, 小濱 とも子, 清水 久美子, 河上 強志, 秋山 卓美, 藤井 まき子
セッションID: P-127
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
会議録・要旨集
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【目的】コチニール色素は食品用着色料として、そのアルミニウムレーキのカルミンは化粧品に赤色色素として添加されている。近年、食品添加物や化粧品製造に関わっていた人がカルミンに対して喘息を生じた例、コチニール色素またはカルミンで着色された食品や化粧品によってアレルギーを引き起こした例が報告されるようになり、注意喚起がされた。これらの反応は色素中に残存するタンパク質による即時型アレルギーである可能性が高いが、即時型アレルギーを評価する試験法は確立していない。本研究では、既存の感作性試験法でこれら化合物の反応性を調べるとともに、それら試験法の適用可能性を考察した。
【方法】LLNA:DA:マウスの耳をSLS溶液で処理した後、試験物質を4回塗布した。8日目に耳介リンパ節を採取してリンパ節細胞を遊離させ、市販キットを用いてATP量を測定した。h-CLAT:THP-1細胞に試験物質を加えて24時間培養した後、FITC標識抗体で染色し、CD54及びCD86抗原量を測定した。PLNA:マウスの足に試験物質を注射し、1週間後膝窩リンパ節を摘出し、細胞数を測定した。
【結果および考察】LLNA:DAで試験物質はDMSOに懸濁した。カルミンは溶媒あるいはコチニール色素に比べて若干高いATP量を示したが、陽性基準には達しなかった。DMSOのカウントが比較的高いことが影響したと考えられる。PLNAでは一部のコチニール色素及びカルミンは生理食塩水投与時の細胞数の2倍以上になり、カルミンはコチニール色素より高値を示した。カルミンは生理食塩水に不溶で懸濁状となり、これが刺激や炎症を惹起している可能性があり、本反応をアレルギー性と判断できるか、継続して検討している。h-CLATでカルミンはCD54のみ発現率を増加させ、コチニール色素ではいずれの表面抗原も増加させなかった。各種タンパク質の反応性と比較し、適用可能性を評価する必要がある。
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柴 隆大, 牧野 育代, 佐々木 孝, 川上 幸治, 加藤 幾雄, 内田 和美, 小林 稔秀, 金子 公幸
セッションID: P-128
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
会議録・要旨集
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慢性腎臓病患者において、感染症の増加を引き起こす免疫不全は大きな問題であり、その原因の一つとして尿毒素が注目されている。
p-クレゾールは腸内細菌によって産生される尿毒素の一種であり、慢性腎臓病患者の血中に高濃度に蓄積することが知られている。これまでに我々は
p-クレゾールが免疫系に与える影響について研究を行い、細胞性免疫に対して抑制的に作用することを見出した。しかしながら、近年の臨床研究において、腸管で産生された
p-クレゾールは、血中では硫酸抱合を受け、
p-クレジル硫酸として循環していることが報告された。そのため、腸内細菌の産生する
p-クレゾールによる全身性の影響は、主に
p-クレジル硫酸によるものと考えられる。そこで、本研究では
p-クレジル硫酸が免疫系に与える影響について評価した。食餌性に
p-クレゾールを高産生させたモデルマウスに、アレルギー性接触性皮膚炎を誘導した結果、血中
p-クレジル硫酸濃度と接触性皮膚炎反応の間に負の相関が認められた。さらに、in vitroにおいて、p-クレジル硫酸は
p-クレゾールと同様に、抗CD3抗体刺激によるIFN-γの産生を抑制し、IL-4の産生を促進した。細胞内サイトカイン染色では、
p-クレジル硫酸を添加することで、Th1細胞の割合の低下とTh2細胞の割合の増加が観察された。以上の結果から、
p-クレジル硫酸は
p-クレゾールと同様に、細胞性免疫応答に対して抑制的に作用することが示唆された。
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加藤 哲希, Karrie TARTARO, Sandra CASINGHINO
セッションID: P-129
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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【背景・目的】単核食細胞系(MPS)とは,骨髄に由来して体内の種々の組織に移行して貪食能を発揮する単核球とその前駆体細胞の集合で,生体防御のための重要な免疫機構の一つである。免疫調節薬などにより食作用が抑制されると感染症を起こしやすくなるなどの懸念が考えられ,新薬開発においては,正確かつ簡便な単核食細胞系の機能測定法の開発が求められている。そこで我々は,MPSに属する肝クッパー細胞の
in vivo食作用に対する被験物質の影響について,被貪食物の蛍光強度を測定することにより評価が可能であるか検討した。【方法】ラットに被験物質を投与後に,蛍光色素pHrod
TMが結合したBioParticles
®を静脈内投与した。BioParticles投与1時間後にIVIS
® Spectrum透過型蛍光イメージングシステムを用いてラット肝臓の蛍光強度を測定した。また,BioParticlesの細胞特異性を免疫組織化学的に調べた。【結果】免疫組織化学染色により,BioParticlesとED1(マクロファージマーカー)およびED2(常在マクロファージマーカー)との共染色が確認され,BioParticlesが肝クッパー細胞に取込まれていることが実証された。肝臓において、BioParticles投与量に依存した蛍光強度の増強が認められた。マクロファージ枯渇作用を有するclodronate liposomes,マクロファージへの取込みが知られているCarboxylate modified Latex beadsおよびMaleic vinyl ether polymersの前投与により蛍光強度の減弱がみられ,これらの化合物によるクッパー細胞貪食阻害が示唆された。【結論】以上の結果から,本測定法は被験物質の単核食細胞系への影響を評価する試験系として有用であると考えられた。
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満元 達也, 長田 ちさと, 高橋 朋也, 岡崎 恵美, 木村 紗綾佳, 原 好子, 岡村 俊也, 畠山 和久, 望月 雅裕
セッションID: P-130
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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【目的】血液凝固因子は、ラットを用いた安全性試験においてしばしば測定されるが、幼若動物での試験では、採血量が少ないことから凝固系検査は殆ど実施されていない。発育過程にある幼若動物についても凝固系の変動を理解することは毒性評価上有益であると考えられる。そこで我々は、18日齢の幼若ラットを用いて、血液・血液化学検査で通常測定される項目に加え、凝固因子の測定を含む血液凝固検査を行い、成熟動物との比較を行った。
【材料及び方法】Crl:CD(SD)系ラットを当所で交配し、自然分娩させて得られた雌雄の新生児(分娩日を0日として起算)を用いた。生後18日に非絶食下、イソフルラン麻酔下で腹大動脈より採血し、PT、APTT及びフィブリノーゲンの測定、更に、血液凝固因子(Factor Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ及びⅩ活性)の測定を行うと伴に、通常の血液・血液化学検査項目を測定した。
【結果及びまとめ】18日齢の幼若ラットでは、成熟動物(11週齢)と比べ、雌雄ともにPT、APTTの顕著な短縮及びフィブリノーゲンの低値が認められた。凝固因子では成熟動物(7、10及び16-17週齢)と比べ、主に内因性凝固に関連するFactor Ⅸ活性の増加が雌雄に認められ、APTTの短縮との関連が示唆された。FactorⅩ活性は雌雄ともやや減少したが、FactorⅡ活性には明らかな差は認められなかった。また、Factor Ⅶ活性は雄では成長に伴い減少傾向を示したが、雌では逆に増加傾向を示し、性差が伺われた。
血液学検査では、成熟動物(11週齢)と比べ、雌雄ともにRBC、HGB及びHCTの低値並びにMCV及び網赤血球率の高値、WBC(主にリンパ球数及び好中球数)の低値がみられた。血液化学検査では、雌雄ともにALP活性、T-CHO及びPLは高値を示したが、ALT活性、総たん白質及びアルブミンは低値を示した。
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橋本 貴生, 田中 春樹, 桂川 永美子, 早川 和宏, 峯島 浩, 本岡 覚
セッションID: P-131
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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【目的】血液酸化障害を惹起する塩化フェニルヒドラジニウム(PH)をラットに単回腹腔内投与すると,赤血球内でヘモグロビン(Hb)が変性しメトヘモグロビン(metHb)が産生される。MetHbは赤血球内部の膜に不可逆的に沈殿しハインツ小体(HZB)を形成するか還元酵素によりHbへと還元されることにより,一過性に上昇し24時間後には大幅に減少する。一方,HZBは72時間後も多数確認される。本検討では,マウス及びラットを用い,PH投与直後の赤血球に占めるHZB含有赤血球の割合(Heinz [%])とmetHb濃度の変化,並びに採血後時間を経た血液での変化から,いずれのパラメータが血液酸化障害の指標としてより適切かを検討した。さらにはいずれの動物種がより適切かを検討した。
【方法】13週齢の雄性マウス及びラットに0~60mg/kgまでのPHを8用量,単回腹腔内投与し,1時間後に得られた静脈血についてmetHb濃度を比色法により測定した。HZBについては,採血直後あるいは3時間室温放置した血液をニューメチレンブルーで超生体染色後,血液塗抹標本を作製しHeinz (%)を算出した。
【結果】マウス,ラットともにPHによる血液酸化障害初期にはHeinz (%)とmetHb濃度に高い相関性が認められ,指標としての差異は認められなかった。しかし,採血3時間後の試料ではHZB形成が進行し,採血直後にはmetHb濃度,Heinz (%)共に変化のなかった低用量のPHでもHZBの形成が確認された。
【結論及び考察】血液酸化障害は,採血直後に繁雑な処理を要するmetHb濃度測定を行うことなく,Heinz (%)のみで予測することが可能であり,採血後に時間を経た試料ではHeinz(%)によって酸化障害をより鋭敏に検出できることが示唆された。また,マウスはPHに対するHZB形成量が多く,血液酸化障害モデル動物として有用であることが示唆された。
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斧研 雅子, 檀原 康浩, 武井 信貴子, 松澤 陽子, 三好 征司, 畠山 洋文, 仁井 一夫, 佐藤 伸一
セッションID: P-132
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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動物の愛護及び管理に関する法律や動物実験の適正な実施に向けたガイドラインなど、様々な基準や指針において実験動物の3Rs(Reduction、Replacement、Refinement)が謳われている。使用動物数の削減(Reduction)へ寄与することが期待されるBlood Micro-Samplingについて、サンプリング法の実際と毒性試験における動物数削減の可能性について報告する。
非臨床試験における血中薬物濃度分析に用いる採血では、その採血量が動物の正常な生理に影響を及ぼす可能性があるため、従来特に小動物では毒性評価用の動物とは別に採血のためだけに動物を供試している。そこで、我々は住化分析センターと共同で血中薬物濃度分析の高感度化とBlood Micro-Sampling により採血量の削減を図った。これにより、同一動物からの経時的な採血及び回復期間の短縮が望め、動物数の減少及び同一個体での動態の確認が可能となる。さらに、採血用動物を設置せずに毒性評価用動物から採血を行えば、発現した毒性所見と血中濃度を紐付けすることが可能となる。
Dried Blood Spot法はhematocrit値や血球移行の影響を受けるため、Plasma Micro-Sampling(PMS)に適した採血法として尾静脈,背側中足静脈,頸静脈からの微量採血法を比較検討した。1回あたりの採血量は従来のTK用採血量(全血量)がラットで600μL、マウスで400μLであったのに対し、PMSでは40μL(血漿として15μL)を目安として定めた。確立した採血法を用いerythromycinをラットおよびマウスに投与し検証試験を実施した。毒性評価項目への影響の指標として体重、血液学的検査、血液生化学的検査、病理組織学的検査を行い、同一個体における繰り返しの微量採血の影響を検討した。以上の検討結果を報告するとともに、動物数の削減を実現化するための小動物非臨床試験の試験デザインを提案したい。なお、血中薬物濃度の高感度測定法と検証試験におけるerythromycinの測定結果については別報にて報告する。
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仁井 一夫, 斧研 雅子, 永江 祐輔, 富樫 一天, 山口 建, 公平 陽子, 田村 恵梨子
セッションID: P-133
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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動物を研究に用いる際に動物に対する福祉的・倫理的配慮が必要であり、3R(Reduction、Replacement、Refinement)の原則が提唱されている。バイオアナリシス(生体試料中薬物濃度測定)においても、上記3Rの観点から、血漿などのサンプル使用量を下げる取り組みとして、濾紙に血液をスポットして乾燥させたDried Blood Spots(DBS)が報告されているが、スポット時の実験者の手技の差や血液のヘマトクリット値の差によるスポットの広がりが薬物濃度定量値に影響することなどが報告されている。さらなる微量化に期待される技術としてPlasma Micro-Sampling(PMS)法がある。PMSは、キャピラリーなどの微量採血管を用いて血液を採取する方法であり、従来の採血量に比べて10分の1から20分の1近く血液量が削減できる。大幅な動物数の削減が期待できる一方、従来に比べ20倍の測定の高感度化が必要である。
高感度化測定の事例として、ヒト臨床試験におけるマイクロドーズ(MD)試験における高感度LC/MS/MS測定技術が挙げられる。当社においても、通常の臨床試験の100倍近い感度アップが求められるMD試験において、非放射線標識体のCold化合物でもLC/MS/MS測定技術を駆使することで十分な測定結果が得られることを経験した。一方MD試験におけるヒト血漿使用量は0.5~1mLであり、高感度測定に相応の採血量が必要であった。小動物のPMSに対応するにはさらに高感度化が必要であり、LC/MS/MSの装置感度上昇やミクロLCのようにインレットを微量化することによる感度上昇を試みた。結果、これら最新技術を組み合わせることで小動物のPMSに対応できる高感度化が可能であると考えられた。高感度化測定の事例として、erythromycin測定法の紹介、ならびにイナリサーチ社と共同の検証試験における、erythromycinを投与しPMS法で微量採血したラットおよびマウスの血中濃度測定結果を報告する。
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鈴木 勝也, 栃内 亮太, 小松 加代子, 原 裕一, 加藤 幾雄, 小林 稔秀, 金子 公幸
セッションID: P-134
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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[目的
] 心毒性は直接的な死因につながる重篤な毒性であることから、医薬品開発において候補化合物の毒性を評価する際に、心毒性を検出することが重要となる。今回、心臓に特異的なバイオマーカーの一つである心筋トロポニンT(cTnT)を定性検査できる試験紙(Roche社)について、ラット心筋あるいは骨格筋障害モデルを用いて、ラットの心毒性評価における有用性を検討した。
[方法
] 6週齢の雄性SDラットを用いて、以下の試験を実施した。実験1:ラットに、1.5 mg/kg Isoproterenolを単回静脈内投与(ISO群)、0.5 mg/kg Colchicineを単回(COL単回群)あるいは4日間反復(COL反復群)で静脈内投与、9 mg/kg 2,3,5,6-Tetramethyl-1,4-phenyleneamineを単回経口投与(TMPD群)し、最終投与の24時間後に解剖し、病理検査および血液化学的検査を実施した。実験2:ラットに、Colchicineを0.5 mg/kgの用量で4日間反復静脈内投与した。初回の投与時より2、24、48、72、96時間後に採血を行い、血液化学的検査を実施した。
[結果
] 実験1:病理検査の結果、ISO群、COL単回群およびCOL反復群の心臓に、COL反復群およびTMPD群の骨格筋にそれぞれ病理組織学的変化が認められた。血液化学的検査では、ISO群およびCOL反復群にcTnTの陽性反応が認められた。また、ISO群でLDH1およびLDH2の上昇が、COL単回群ではAST、LDH1、LDH2およびCK-MMの上昇が、COL反復群ではAST、LDH、LDH1、LDH2およびCK-MMの上昇が、TMPD群ではLDHおよびLDH5の上昇がそれぞれ認められた。実験2:COL投与群で、初回投与後48時間よりcTnTの陽性反応が認められ、その後も継続して認められた。従来マーカーでは、初回投与後24時間よりAST、LDH1およびLDH2の上昇がそれぞれ認められた。
[考察
] 本検討の結果より、試験紙を用いるcTnT定性検査は、ラット心毒性に対して高い組織特異性と感度を有することが示された。また、従来の心毒性マーカーと相補的に用いることで、非臨床試験における心毒性をより的確に評価できると考えられた。
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宮本 六美, C M KELLY, T ZIEGELHOFER, J SENTZ, J SHEEHAN
セッションID: P-135
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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A critical but challenging aspect of inhalation cardiorespiratory safety pharmacology studies is the collection of high quality cardiovascular and respiratory data immediately prior to, during and immediately after dose in order to recognize any acute effects of the inhaled test article. This poster describes methods for achieving a successful outcome in studies, including factors that must be considered in the design and execution. Effects of proper habituation to equipment and carefully scheduled study activities were assessed based on the overall character of cardiorespiratory response from 3 different studies. Prior to data collection, all animals were surgically implanted with telemetry transmitters and habituated to the exposure/data collection system. Telemetry data were collected continuously for 2 hours while animals were in their home cage, after transfer to the exposure suite for 0.5 hours prior to air or vehicle exposure, during the 1 hour exposure, 0.5 hour after exposure and for 24 hours post dose. Each study used a different vehicle and an air (sham) control was administered for assessment of the vehicle effect. Administration of the vehicle produced no effects on blood pressure, heart rate, body temperature, respiratory rate, tidal and minute volume, when compared to the air control in all 3 studies. These data confirm we have developed a reliable method of collecting cardiorespiratory parameters in inhalation safety studies.
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木村 恵人, 美濃部 典子, 木村 輝理, 松田 仁美, 飯高 健, 石本 明宏, 堀 克彦, 左近上 博司
セッションID: P-136
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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【目的】これまで硫酸多糖体の1つであるデキストラン硫酸ナトリウム水溶液をラットに連日自由飲水させ、実験的潰瘍性大腸炎モデルの検討を重ねてきた。今回、デキストラン硫酸ナトリウム水溶液をマウスに自由飲水させ潰瘍性大腸炎モデルの作製を試みた。また、潰瘍性大腸炎治療薬の検討としてタクロリムス及びサラゾスルファピリジンの効果を検討した。
【方法】8週齢のC57BL/6J系雄性マウスにデキストラン硫酸ナトリウム(以下DSS)水溶液を7日間自由飲水させた。DSS水溶液飲水期間中、体重、飲水量、便の状態を毎日観察した。最終日に採血し、血液学的検査(RBC、WBC、Hb、Ht)及び血中サイトカイン(IL-6、SAA)の測定を行った。また、大腸(回盲部~肛門)を摘出し、大腸長の測定及び病理組織学的検査を行った。タクロリムス及びサラゾスルファピリジンの検討においては、DSS水溶液飲水開始日から経口投与した。
【結果】DSS水溶液を7日間自由飲水させることで、潰瘍性大腸炎の特徴的所見である、体重の増加抑制、血便及び貧血症状並びに大腸長の短縮が認められた。タクロリムスは、これらの症状を顕著に改善した。
今回の検討により、マウスにDSS水溶液を7日間自由飲水させることで、実験的潰瘍性大腸炎モデルを作製することができ、本モデルに対する既存薬の効果を確認することができた。
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藤原 淳, 有賀 和枝, 飯野 雅彦, 井上 貴史, 西銘 千代子, 井上 亮, 佐藤 伸一
セッションID: P-137
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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コモンマーモセット(マーモセット)は,非臨床試験において,ラットと同様,カニクイザルやアカゲザルと比べて被験物質必要量が少量で済み,また,ハンドリングが容易である利点がある.また,バイオ医薬品の開発では,ラットよりヒトとの交差反応性が高いことが期待される.演者らは,第5回日本安全性薬理研究会(2014)において,マーモセットに中枢神経系興奮薬のコカイン及び中枢神経系抑制薬のクロルプロマジンを静脈内投与して機能観察総合評価法(FOB)を実施した結果,両薬物の中枢神経効果は,カニクイザルとほぼ同様に検出された.このことから,マーモセットはバイオ医薬品だけではなく,中枢神経系作用薬の開発にも貢献できる可能性があることを報告した.今回は他の種類の中枢神経系抑制薬,モルヒネ及びペントバルビタールを用いてFOBを実施し,その結果をアカゲザルの一般状態観察結果と比較検討した.雄性マーモセット(282~352 g)4匹に,生理食塩液,モルヒネ1 mg/kg及びペントバルビタール3 mg/kgを静脈内投与し,投与後5及び30分,1,2,4及び6時間にFOB観察を実施した.その結果,モルヒネでは閉眼,運動失調,軽度の鎮静及び観察者への反応低下,ペントバルビタールでは閉眼,運動失調及び観察者への反応低下などが,それぞれ投与後5分から1または2時間まで認められた.これらの所見はアカゲザルと類似していた.モルヒネ1 mg/kg及びペントバルビタール3 mg/kgはアカゲザルにおける一般状態観察の効果発現最小用量にほぼ一致しており,したがって,両薬物の中枢神経作用に対するマーモセットの感受性は,アカゲザルと比較的近い可能性が示唆された.今後,用量反応及びさらに他の種類の中枢神経系薬物の観察を追加し,また,マーモセットに特徴的な観察項目をさらに探索し,マーモセットFOBの検出力向上に取り組む.
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合田 圭佑, 美谷島 克宏, 谷合 枝里子, 小林 章男, 高橋 統一, 正田 俊之, 公納 秀幸, 菅井 象一郎
セッションID: P-138
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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【緒言】金属キレート剤であるエチレンジアミン四酢酸(EDTA)は,臨床において急性高カルシウム血症の治療に用いられている。その類縁物質であるグリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)は生体内において,EDTAと比べカルシウムとのキレートを形成しやすいことが知られている。そこで我々は、EGTAを雄性ラットに1ヵ月間反復投与して,消化管でのカルシウム吸収抑制に伴うカルシウム欠乏状態を作り出し,その影響を検討した。また,給餌条件の違いによる毒性発現の差異についても詳細な検討を行ったので報告する。
【方法】通常給餌及び時間制限給餌経口投与: EGTAを0及び2000 mg/kgの用量で1ヵ月間反復経口投与した。混餌投与:EGTAを0,2及び5%の用量で1ヵ月間反復投与した。投与期間中,一般状態観察,体重・摂餌量測定,尿検査及び血液生化学的検査を経日的に実施した。また,投与終了時に剖検,臓器重量測定及び病理組織学的検査を実施した。
【結果】全ての給餌条件でEGTA投与群では尿中カルシウム排泄量が減少しており,無機リン排泄量が著増していたため,カルシウム欠乏状態にあると考えられた。また,時間制限給餌経口投与及び混餌投与により,カルシウム欠乏に起因すると考えられる種々の変化が認められたが,通常給餌経口投与では明らかな毒性は見られなかった。本学会では,全身諸臓器の病理学的検査結果も交え,カルシウム欠乏により発現する毒性に関して総括したい。
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青島 拓也, 大石 勝章, 坪井 優, 太田 泰史, 田中 翔, 名波 加奈, 竹原 広, 田中 亮太, 納屋 聖人, 林 真
セッションID: P-139
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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2系統のWistar Han系ラット(Slc:WistarHannover/Rcc、以下Rcc系、Crj:WI(Glx/BRL/Han)、以下Han系)を5週齢から109週齢までの104週間飼育し、そのデータを収集した。飼育期間を通じ、体重推移及び摂餌量推移を観察し、定期的に雌雄各10匹を用いて血液学的検査及び病理学的検査を行った。得られたデータは、過去に収集したCrl:CD(SD)系ラット(以下SD系)およびF344/DuCrj系ラット(以下F344系)の成績と比較した。
雄では、Rcc系の生存率が他3系統よりも高く推移し、Han系は、SD系より高く、F344系よりも低く推移した。104週(109週齢)時の生存率は、Rcc系で92%、F344系で82%、Han系で69%、SD系で54%であった。一方雌では、Han系が4系統の中で最も高く推移し、Rcc系は、SD系よりも高く,F344系よりも低く推移した.104週(109週齢)時の生存率は,Han系で80%,F344系で70%,Rcc系で66%,SD系で39%であった.
飼育期間中の体重および摂餌量は、Rcc系およびHan系の雌雄ともに、概ねSD系とF344系の中間を推移した。
Rcc系の雌雄に共通の特徴的な肉眼的観察所見としては、リンパ節の肥大が雄で74%、雌で58%と高頻度に認められた。また、雄では心臓の白色斑点、総胆管の拡張、肝臓の褐色斑点が高頻度に認められたが、雌でのこれらの発生率は低く、代わりに下垂体の肥大、肺の白色斑点、皮下の塊(乳腺)が高頻度に認められた。
Han系では、肺の白色斑点および総胆管の内腔拡張が雌雄に共通して高頻度に認められた。その他、雄では肝臓の白色斑点、腎臓の表面粗ぞうが、雌では、下垂体の肥大、皮下の塊(乳腺)、肝臓の赤色斑点が高頻度に認められた。また、Rcc系、Han系ともに、下垂体の肥大が雌でそれぞれ60%および37%と高頻度に認められたのに対し、雄では両系統ともに、その発現頻度は低位であった。
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谷口 雄三, 吉里 ゆかり, 石本 明宏, 飯高 健, 六角 香, 守永 太賀彦, 古川 茂典, 藤井 登志之
セッションID: P-140
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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Summary: Chronic insulinopenic diabetes was induced by i.v. streptozotocin in the non- human primate
Macaca fascicularis. Six diabetic monkeys were kept for 8 – 19 months and six for 24 – 48 months without any insulin treatment. Hyperglycemia (236 ± 22 mg/dL) progressed to 368 ± 33 mg/dL and ketosis to 3.5 mM during the course of diabetes; this was roughly inversely proportional to hypoinsulinemia (3.3 μU/mL). Serum cholesterol increased from 180 ± 11 to 321 ± 65 mg/dL with the major increase in LDL-cholesterol (2.7-fold over control). HDL-cholesterol did not change at all throughout the experimental period. TG increased from 141 ± 24 to 662 ± 114 with a major increase in the VLDL fraction (15-fold over control). Serum levels of apo B increased to 132 ± 12 and 199 ± 8 mg/dL in contrast to control, 68 ± 2. Morphologically, lipid depositions in the intima and fatty streaks have been observed in the abdominal aorta of all the diabetic monkeys with duration of more than 2 years. In six of the diabetic monkeys athermanous changes such as intimal and medial thickening with smooth muscle cell proliferation were observed with foam cell formation. Similar atherosclerotic lesions were observed in renal and coronary arteries in at least six of these monkeys. In diabetic monkeys with duration of less than 2 years, mild atherosclerotic lesions were observed in two out of six. The results indicate that long standing insulinopenic leads to metabolic derangements characterized by hyperglycemia, ketonemia and hyperlipidemia. Elevation of LDL-cholesterol and VLDL TG with an increase of apo B is characteristic of lipoprotein disorder. Morphologically, early to moderately advanced lesions of atherosclerosis were observed in aorta, renal and coronary arteries as a result of metabolic derangement due to insulin deficiency.
Materials and Methods: Twelve monkeys (
Macaca fascicularis) at 3 ± 2 years weighing 2.7 – 4.2 kg were injected with streptozotocin (50 mg/kg, Sigma) dissolved in 0.1 M citrate buffer (pH 4.2) intravenously. Control monkeys were injected with citrate buffer alone. The
Macaca fascicularis are mature at age 3 – 4 years, and the control monkeys were in general free from atherosclerotic lesions up to 3 – 5 years. The chow contains by weight 26.5% protein, 6.8% fat, 1.5% fiber and 50.4% carbohydrate other than vitamins and essential elements. They gradually lost weigh during the observation period. Blood was obtained for the saphenous vein after anesthesia with Ketaral (0.1 mL/kg/BW). All of monkeys given water
ad libitum.
Conclusion: Hyperlipidemia characterized by elevated LDL, apo B and VLDL is postulated to play an important role. Coexisting insulinopenia in itself also seems to accelerate the initiation or progression of diabetic macroangiopathy.
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野崎 裕美, 横谷 亮, 佐々木 啓, 伊藤 浩太, 奥村 佳奈子, 中山 拓生, 石川 典子, 古川 正敏, 平田 真理子, 堀本 政夫, ...
セッションID: P-141
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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【目的】我々は特殊精製飼料(飼料A)を用いて,脂肪肝の形成や内臓脂肪の増加等を示す食餌性肥満動物モデルを作出し,昨年の本学術年会において,コレステロール吸収阻害剤に対する本モデルの有用性について報告した.今回,脂質代謝や糖代謝の改善,体脂肪低減等の作用が報告されている難消化性デキストリンを用いて本モデルの有用性について検討したので報告する.
【方法】5週齢のSD系雄ラット各群8匹を用いて,飼料Aを28日間自由に摂取させた群(モデル群)および飼料Aの摂取と同時に5%難消化性デキストリンを飲水投与した群(投与群)を設け,対照群には標準飼料を摂取させた.体重および摂餌量を定期的に測定し,投与28日の翌日に剖検し,血液生化学的検査,器官および脂肪重量測定および病理組織学的検査を実施した.また,肝臓の脂肪蓄積について,肝細胞の空胞化の程度をスコア化して評価した.
【結果・考察】モデル群は対照群に比べて血中総コレステロール(T-Cho)およびLDLコレステロールが高値となり,中性脂肪(TG)も高値傾向を示した.また,モデル群の肝臓は黄白色化し,肝臓重量,内臓脂肪および皮下脂肪重量が増加した.投与群ではモデル群に比べて,血中TGの低値およびT-Choの低値傾向,さらに皮下脂肪および内臓脂肪重量の増加抑制傾向が認められた.投与群の肝臓重量では,モデル群と比べて差はみられなかったものの,肝細胞の空胞化は低下傾向を示した.以上より,飼料Aを摂取させた食餌性肥満動物モデルを用いて,難消化性デキストリンによる脂質代謝改善作用および体脂肪低減作用を確認する結果が得られたことから,これらの作用に対する評価において本モデルは有用であることが示唆された.
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藤村 久子, 駒坂 太嘉雄, 香川 俊樹, 松尾 洋, 足立 民子, 北野 靖典, 竹川 晃司
セッションID: P-142
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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第39回年会で,難溶性化合物の経口投与毒性試験における曝露不足の解決策としてナノ化懸濁液による曝露改善を報告した.ナノ化懸濁液は静脈内投与により溶液と同様の体内動態を示すことが知られており,パクリタキセルなど静注剤としてもFDA承認のもと実用化されている.可溶化が難しい化合物の静脈内投与毒性試験に応用できると考えられたので,開発初期に静脈内投与試験に使用する目的でナノ化懸濁液の調製法を検討した.【材料と方法】難溶性モデル化合物としてシロスタゾール,プロブコール,スピロノラクトンを用いた.2 mLエッペンチューブ内で化合物10 mg,ジルコニアビーズ(0.3 mm径)0.5 g, 媒体 0.1 mLを混合し,ミキサーミル(Retsch社製)を用いて30Hz,30分間粉砕した(100 mg/mL).媒体で10 mg/mLに希釈し27G注射針を装着したディスポシリンジで吸引しジルコニアビーズを分離した.得られたナノ化懸濁液についてイヌ血漿中の溶解性をメノウ乳鉢法の懸濁液と比較した(添加直後,10分,30分).また,100 mg/mLについてオートクレーブ処理(121℃, 20分)による滅菌を検討した.【結果】文献報告のある媒体を比較検討したところ,0.5% HPC-0.5% Solutol HS 15および2% Poloxamer 338を用いた場合ナノ化が可能であった.粒径は,冷蔵保存下で15日間までナノレベルを維持した.シロスタゾールのナノ化懸濁液は血漿添加直後に飽和溶解度付近まで溶解し30分後も同等の濃度だった.これに対し,メノウ乳鉢法の懸濁液では添加直後ナノ化懸濁液の1/3程度の溶解で30分後も飽和溶解度付近には到達しなかった(ナノ化懸濁液の1/2程度).ナノ化後,オートクレーブ処理をおこなったところ粒度が大きくなったが,再度粉砕することでナノレベルに調製することが可能であった.オートクレーブ後のHPLC分析で化合物の分解は認められなかった.毒性試験で使用する高濃度の静脈内投与用ナノ化懸濁液が,汎用装置を用いて簡便に調製でき有用であると考えられた.実施中のイヌにおける媒体のヒスタミン遊離作用有無の確認とシロスタゾールのラット投与試験の結果も報告する.
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藤掛 登, 馬場 康司, 松本 建, 雜賀 修
セッションID: P-143
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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環境省は水環境保全のための今後の取り組み(第三次環境基本計画)に掲げられた「新たな排水管理手法の導入」として、生物応答を利用した排水管理手法などの有効性について検討会を発足させた。この手法は、物質単位での濃度に着目した分析結果による管理手法とは異なり、事業所からの排水中に含まれる化学物質の総体的な生物へのリスクを直接測るという新たな管理手法(毒性試験法)であり、水生生物の保全を目的とした手法である。検討会では、対象生物として藻類、甲殻類、魚類についての影響を評価するとした。
今回我々は魚類およびミジンコについて、環境省の請負事業として(独)国立環境研究所が設置した「平成24年度排水(環境水)管理のバイオアッセイ技術検討分科会」が検討している「胚・仔魚期の魚類を用いる短期毒性試験法 案」および「ニセネコゼミジンコを用いるミジンコ繁殖試験法 案」を基に試験系を立ち上げた。
魚類の試験法は胚を受精直後から供試試料(排水や環境水)に9日間(48時間換水)暴露し、試験期間中の生存率、ふ化率やふ化後の生存率を調べ、供試試料の胚期の魚類に対する急性および亜慢性毒性を明らかにすることを目的とした。ミジンコの試験法は生後24時以内の仔虫を供試試料に最長8日間暴露し(48時間換水)、3腹分の産仔数に基づいて繁殖に対する慢性毒性影響を明らかにすることを目的とした。今回被験物質として、基準物質であるCuSO
4およびNaClを用いて、それぞれの感受性試験を実施した。
結果、弊社施設におけるゼブラフィッシュのLC
50およびNOECはそれぞれCuSO
4:0.14 – 0.23 mg/Lおよび0.05 mg/L、およびNaCl:1.9 g/Lおよび0.375 g/Lであり、ミジンコ繁殖のLC
50およびNOECはそれぞれNaCl:0.93g/Lおよび0.750 g/Lであった。
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朝倉 圭一, 佐治 大介, 高橋 越史, 片山 義三, 清水 茂一
セッションID: P-144
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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薬剤誘発性の致死性不整脈(TdP: Torsade de Pointes)は、心室細動や心突然死を引き起こす重大な副作用であり、医薬品開発において大きな問題となっている。現在、非臨床における予測法として、ICH S7Bガイドラインに基づくQT間隔延長 のエンドポイントとして、hERGチャネル阻害試験、覚醒下動物を用いた心電図(QT間隔延長)試験および種々のフォローアップ試験が行われている。しかしながら、種差の問題やhERGチャネルを含む複数のイオンチャネルに影響する化合物では、QT間隔延長が必ずしも催不整脈作用の指標にならないことから、臨床での催不整脈作用を的確に予測しうるより総合的な評価方法が望まれている。
近年,市販のヒトiPS由来心筋細胞が複数のメーカーから入手可能となっており、非臨床において薬剤誘発性催不整脈リスクの直接評価が可能なプラットホームとしての期待が高まっている。
そこで我々は製薬協主催「ヒトiPS細胞応用安全性評価コンソーシアム」を母体として、ヒトiPS/ ES細胞由来心筋細胞を用いたQT延長及び催不整脈の評価系の確立を目指し検証実験を行っている。その一環として、国内製薬会社およびCRO計5社において、パッチクランプシステムを用い市販のヒトiPS細胞由来心筋細胞の電気生理学的特性を評価している。さらに、近年その用途が広がっているオートパッチクランプシステム(Sophion社製QPatchシステム、Cytocentrics社製CytoPatch2システム、など)についても検証実験を行っている。本発表では、各社で取得した種々のデータについて報告する。また、マニュアルパッチクランプシステムとオートパッチクランプシステムを比較した結果についても併せて報告する。
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朝倉 圭一, 池田 徹矢, 本間 俊樹
セッションID: P-145
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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薬剤誘発性の致死性不整脈(TdP: Torsade de Pointes)は、心室細動や心突然死を引き起こす重大な副作用であり、医薬品開発において大きな問題となっている。現在、非臨床における予測法のなかで、ICH S7Bガイドラインに基づくQT間隔延長のエンドポイントとして、hERGチャネル阻害試験、覚醒下動物を用いた心電図(QT間隔延長)試験および種々のフォローアップ試験が行われている。しかしながら、種差の問題やhERGチャネルを含む複数のイオンチャネルに影響する化合物では、QT間隔延長が必ずしも催不整脈作用のサロゲートにならないことから、臨床での催不整脈作用を的確に予測しうるより総合的な評価方法が望まれている。
近年,市販のヒトiPS由来心筋細胞が複数のメーカーから入手可能となっており、非臨床評価において薬剤誘発性催不整脈リスクの直接評価が可能なプラットホームとしての期待が高まっている。
そこで我々は製薬協主催「ヒトiPS細胞応用安全性評価コンソーシアム」を母体として、ヒトiPS/ ES細胞由来心筋細胞を用いたQT延長及び催不整脈の評価系の確立を目指し検証実験を行っている。その一環として、国内製薬会社2社においてMEA(Multi-Electrode Array)のうち、Axion社製MEA(Maestro™)を用いて、モデル薬物のFPD(Field Potential Duration)への影響および不整脈波形発現の有無等の検討を行っている。今回、各社のデータ及び本評価系の施設間差について報告する。
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国松 武史, 本田 弥生, 野﨑 裕美子, 渡辺 仁, 山西 充洋, 遠藤 裕子, 篠﨑 順子, 野川 央, 齋木 翔太, 永沢 千穂, 中 ...
セッションID: P-146
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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TdP(Torsade de Pointes)は、心室細動や心突然死を引き起こす致死性の多型性心室頻拍であり、先行して認められるQT延長が催不整脈作用の指標として用いられている。現在、非臨床試験では、
in vitroのhERG assayとイヌ及びサルなどを用いた
in vivo心電図実験によりQT延長作用を検出することが世界標準となっている。
しかし、hERG assayはhERGチャネルのみに対する作用を評価する系であり、マルチチャネルに影響する化合物の評価は十分ではない。また、動物実験でのQT延長作用とヒトでのQT延長/催不整脈作用の間には必ずしも相関しないケースが存在し、その一要因として種差が指摘されている。
現在、この状況を打開しうる新たな研究プラットホームとして最も期待されているのが、「ヒトiPS/ES細胞由来心筋細胞(hiPS/ES-CMs)を用いた心毒性評価システム」である。
多電極アレイシステム(MEA)は、播種した細胞の細胞外電位を測定できるシステムであり、これを用いて測定したhiPS-CMsの細胞外電位は、心電図に類似した電位変化を示す。細胞外電位における始めの鋭い大きな波形と2つ目の緩やかな波形が基線に戻る点の2点間隔(FPD)は、心電図におけるQT間隔に相当し、化合物のQT延長作用を予測しうるという報告がある。
現在我々は、製薬協主催「ヒトiPS細胞応用安全性評価コンソーシアム」を母体として、hiPS/ES-CMsを用いたQT延長及び催不整脈の評価系の確立を目指し、検証実験を行っている。その一環として、国内製薬会社5社において、MEAのうち、MCS(Multi Channel Systems)社製MEAを用いて、モデル化合物のFPDへの影響および不整脈波形誘発の有無等の検討を行っている。今回は、各社のデータ及び本評価系の施設間差について報告する。
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北口 隆, 森山 友太, 宮本 憲優, 谷口 智彦, 安藤 博之, 宇田 宗晃, 小田部 耕二, 小口 正夫, 清水 茂一, 斉藤 裕之, ...
セッションID: P-147
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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【背景】
現在,医薬品の開発において薬剤誘発性の致死性不整脈(TdP)の非臨床における予測法のなかで,ICH S7Bガイドラインに基づくQT間隔延長をエンドポイントとして,hERGチャネル阻害試験,覚醒下動物を用いた心電図(QT間隔延長)試験および種々のフォローアップ試験が行われている.しかし,ヒトへの外挿性を考えると,さらに確度の高い試験法の開発が望まれている.
近年,市販のヒトiPS由来心筋細胞が複数のメーカーから入手可能となっており,薬剤誘発性不整脈の非臨床評価において,種差の壁を越え、hERGチャネル直接阻害以外の機序による不整脈も含めた催不整脈性の直接評価が可能なプラットホームとしての期待が高まっている.
そこで我々は製薬協主催「ヒトiPS細胞応用安全性評価コンソーシアム」を母体として,市販のヒトiPS由来心筋細胞の医薬品安全性評価への応用可能性について,多電極アレイシステム(multi-electrode array:MEA)を用いた既知薬剤の細胞外電位に対する影響を複数施設で評価した.
【方法・結果】
iCell心筋細胞(CDI)を6 well plate上で7日間培養し,フィブロネクチンコートした電極(MED-P515A,アルファメッドサイエンティフィック)上に3×10
4 cells/2 μLを播種した.電極上への播種後5から10日でMED64(アルファメッドサイエンティフィック)を用いてField potentialを測定した.解析パラメータは拍動数,field potential duration (FPD),1st peak amplitude,short term variability (STV) of FPDとした.評価薬剤はE-4031,AspirinおよびTerfenadineとし,これらを累積投与した.
本発表では複数施設より得られたベースライン値,および薬剤反応性について報告する.
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荒木 誠一, 石富 暁博, 岡井 佳子, 北村 哲生, 本多 正樹
セッションID: P-148
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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【背景・目的】医薬品の開発において心毒性は重大なリスクであるため、可能な限り開発の初期段階で当該リスクを回避するためのスループットの高いin vitro心機能評価系の構築が求められている。拍動等の動画から動きを定量できるmotion vector prediction(MVP)法(ソニー株式会社)では、一般的に使用されるプラスチックプレートにて単層培養した心筋細胞の位相差動画から収縮変化を定量的に長時間非侵襲的に解析することが可能であり、低コストで多検体の同時測定が可能な心機能毒性評価法である。近年利用可能となったヒトiPS細胞由来心筋細胞の薄層標本を用いて、その収縮特性のみならず収縮伝播パターンについても解析可能であり、よりヒトへの外挿性の高い心毒性リスク評価系として期待されている新規プラットホームである。現在、製薬協主催のヒトiPS細胞応用安全性評価コンソーシアムでは、MVP法を用いて、ヒトiPS細胞由来心筋細胞の機能的挙動に対する既知薬剤の影響を複数の施設で測定し、医薬品安全性評価への応用可能性について検討を開始している。
【方法・結果】市販のヒトiPS細胞由来心筋細胞をゼラチンコートした6 well plateに2×10
6 cells/wellで播種し(D0)、37℃、5% CO
2条件下で培養した。播種4日後(D4)に、コラーゲンコートした48 well plateに6×10
4 cells/wellで再播種し、37℃、5%CO
2条件下で培養した。再播種4(D8)及び7(D11)日後に、MVPシステムを用いて、3種類の既知薬剤(isoproterenol, verapamil, E-4031)について心筋細胞の拍動挙動(拍動数、拍動持続時間、最大収縮速度、最大弛緩速度、平均収縮長、拍動伝播など)に対する影響を測定した。今回、薬剤に対する反応性及び結果の施設間差について報告する。
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井上 智彰, 岩崎 紀彦, 齋藤 文代, 岩浅 央, 二村 真祐美, 堤 靖, 佐藤 了平, 泉川 健, 伊勢 良太, 中村 稚加, 田村 ...
セッションID: P-149
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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従来から,ヒト初代培養肝細胞は,医薬品開発過程でのin vitroでの薬物代謝・毒性評価に使用されているが,ドナーによる肝機能の差や同じロットの細胞に限りのあることなどから,データのばらつきの原因でもあった。最近,ヒトiPS細胞から分化誘導した肝細胞が市販されるようになり,一定の肝機能を持った細胞が継続して供給され,再現性のあるデータを取得できることが期待されている。本ヒトiPS細胞応用安全性評価コンソーシアム 肝臓チームでは,肝毒性,薬物代謝の評価系に使用する細胞として,ヒトiPS細胞由来肝細胞をヒト初代培養肝細胞と比較し,有用性及び問題点を提示することを目的に,ReproCELLおよびCellectisから市販されているヒトiPS細胞由来肝細胞について評価した。
毒性評価では,比較対照細胞としてヒト初代培養肝細胞に加え,肝機能が低いとされているHepG2細胞も用い,ヒトiPS細胞由来肝細胞にCYP阻害剤を加えた系の評価も行なった。既知の肝毒性を示す5化合物について,48時間曝露後のATPおよびLDHを測定し,IC50値や毒性の程度を比較した。
代謝評価では,CYP代謝とCYP誘導についてヒト初代培養肝細胞と比較した。CYP代謝活性は,CYP1A1/2,CYP2C9,CYP2C19,CYP2D6,CYP3A4/5について代謝物をLC-MS/MSにて測定した。CYP誘導については,CYP1A2,CYP2B6,CYP3A4について,当該CYPのmRNA発現の測定を行なった。
本発表では,実験結果の個別データについて示す。
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荒木 徹朗, 川上 哲, 中薗 修, 鶴井 一幸
セッションID: P-150
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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[背景]薬物性肝障害の発生は臨床試験の中断や市販後の市場撤退の主たる要因の一つであり、医薬品候補化合物の肝毒性リスクを適切に評価し、薬物性肝障害の発生を防ぐことは医薬品の安全性評価における重要な課題である。これまで、医薬品候補化合物のヒト肝毒性を予測する非臨床試験系について様々な研究がなされ、今日では、HepG2や凍結初代ヒト肝細胞を用いた細胞毒性試験系が広く用いられている。しかし、培養細胞は安定して利用できる反面、シトクロムP450をはじめとする薬物代謝酵素の発現がきわめて低いため、代謝物由来の毒性を評価できないという問題点がある。さらに、凍結ヒト肝細胞にも同一ロットの持続的な供給が不可能な上、ドナーの違いに由来する薬物代謝能のロット間差が大きいこと、培養時間に伴って薬物代謝酵素の活性が急激に低下することなどの問題点がある。そこで、ヒトiPS細胞から分化誘導した肝細胞を毒性評価に用いることができれば、同一ロットの安定的な供給や、凍結肝細胞に比べて複数ドナー由来の肝細胞を容易に利用できるようになると期待されることから、ヒトiPS細胞由来肝細胞を用いた肝毒性評価が近年注目を集めている。
[目的]現在、製薬協ヒトiPS細胞安全性評価応用コンソーシアムでは市販のヒトiPS由来肝細胞を用いた細胞毒性試験を行い、その有用性と課題を検証している。今回我々は同コンソーシアムのプロトコルに従って、Cellectis社のヒトiPS細胞由来肝細胞hiPS-HEPを用いた細胞毒性試験を行った。
[方法]hiPS-HEPを96ウェルプレートに播種後、臨床で肝毒性が報告されている5化合物を48時間暴露し、ATPおよび上清中LDHを測定した。また、比較対象として、HepG2細胞と2ロットの凍結ヒト肝細胞の細胞毒性試験を同様に行った。本発表ではこれらの結果をもとに、それぞれの細胞種における細胞毒性の違いやヒトiPS細胞由来肝細胞の有用性と今後の課題について考察する。
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三好 智也, 東 恵理子, 安藤 晃裕, 冨樫 裕子, 宮本 庸平
セッションID: P-151
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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肝毒性や薬物代謝酵素への影響は、医薬品候補化合物の開発中止につながる主たる要因の一つであり、創薬早期段階において潜在的な肝障害リスクを予測することが重要である。In vitro肝毒性・薬物代謝評価にはヒト初代培養肝細胞が汎用されているが、安定的な入手が困難であることや薬物代謝酵素活性のロット間差により、データがばらつくなどの問題点がある。ヒトiPS細胞から分化誘導させた肝細胞(ヒトiPS肝細胞)は、安定的な入手が可能であり、ロット間差も少なく、ヒト初代培養肝細胞に近い特性を有していると考えられ、医薬品開発早期の毒性・薬物代謝評価研究におけるiPS肝細胞の活用に期待が高まっている。今回、日本製薬工業協会が新たに立ち上げたヒトiPS細胞応用安全性評価コンソーシアム 肝臓チームの共同研究の一環として、Cellular Dyanmics International社のヒトiPS肝細胞について以下の評価を実施した。
毒性評価では、ヒトiPS肝細胞、ヒト初代培養肝細胞およびHepG2細胞を前培養した後、acetaminophen、amiodarone、cyclophosphamide、diclofenacおよびflutamideを添加し、48時間後に培地上清中LDH量および細胞中ATP量を測定した。また、各化合物と同時にCYP酵素阻害剤を添加し、各種CYP酵素による代謝が各化合物の毒性発現に及ぼす影響を評価した。
薬物代謝評価では、ヒトiPS肝細胞およびヒト初代培養肝細胞を前培養した後、phenacetin、midazolam、diclofenac、S-mephenytoinおよびbufuralolを基質として添加し、CYP1A1/2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP3A4/5活性を測定した。また、omeprazole、3-methylcholanthrene、phenobarbitalおよびrifampicinを添加し、48時間後のmRNA発現量を指標として、CYP1A2、CYP2B6、CYP3A4誘導能を検討した。
実験結果、ならびにヒトiPS肝細胞の毒性・薬物代謝評価系としての有用性および問題点について、本発表で報告する。
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板野 泰弘, 石井 美沢, 岡村 智雄, 近藤 卓也, 土山 博美, 松田 純一, 宮本 憲優, 森川 崇
セッションID: P-152
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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医薬品による副作用の中で中枢神経系(CNS)副作用は重篤性が高く、かつ非臨床試験からその発現を予測することが困難である副作用の一つとして知られている(J. Toxicol. Sci. 2013)。したがって、臨床でのCNS副作用を的確に予測できる非臨床評価法の確立は、製薬企業にとって極めて重要な課題である。現在、一般的に用いられているCNS副作用の非臨床評価法は、
in vivo試験としては主に安全性薬理試験(ICH S7A)ガイドライン記載のFOB (Functional Observational Battery)法やIrwin法であり、
in vitro試験としては初代培養神経細胞等の動物由来標本を用いた評価が中心となっている。しかし、いずれも種差の課題がありヒトでのCNS副作用の予測性は高くない。
このような状況下、近年、ヒト iPS細胞から神経細胞の分化誘導が可能となり、ヒト神経細胞を用いた安全性評価系にCNS副作用評価ツールとしての期待が高まっている。
そこで我々は、製薬協「ヒトiPS細胞応用安全性評価コンソーシアム」神経チームの活動の一環として、市販ヒト iPS細胞由来神経細胞が成熟神経細胞としての特性を獲得しているかどうかを検証するために、神経細胞特異的細胞死の1つであるグルタミン酸受容体を介した興奮毒性に着目し、グルタミン酸を含む既知神経細胞毒性物質の細胞生存に対する影響について検討した。
ヒト iPS細胞由来の神経細胞としてiCell Neuron(CDI)を用いた。また、細胞死の神経細胞特異性を検証するため、ラット初代培養大脳皮質神経細胞及びマウス3T3細胞(非神経系株化細胞)を比較対照細胞として用いた。各細胞をグルタミン酸、N-methyl-D-aspartate (NMDA)、ピクロトキシン及びスタウロスポリンで24-48時間処理した後、細胞内ATP量及びLDH漏出量を測定することにより細胞生存及び細胞死をそれぞれ定量化した。さらに、細胞内ATP量及びLDH漏出量に対する各物質の IC50を算出し、細胞間で比較することにより、iCell Neuronの神経細胞特性について検証した。本発表では、iCell Neuronの特性を電気生理学的に検討した結果についても合わせて報告する。
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齋藤 文代, 伊藤 雅彦, 貞本 和代, 宮本 憲優
セッションID: P-153
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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【
背景及び目的】日本製薬工業協会のヒトiPS細胞応用安全性評価タスクフォースでは、心筋・肝臓・神経に関するヒトiPS細胞を安全性評価へ応用することを目的とし、平成25年度より基礎データの取得を行っている。本研究では、ヒトiPS細胞由来肝細胞(iPS-Hep)がどのような細胞性状を有しているかを調べるために、マイクロアレイを用いた網羅的な遺伝子発現量解析を行い、ヒト肝臓組織、ヒト初代培養肝細胞、HepG2細胞との比較検討を行った。更にiPS-Hepのロット間差やベンダー間の比較も行った。【
方法】iPS-HepにはReproCELL.社とCellectis社のものを用い、ヒト初代培養肝細胞及びHepG2細胞についても所定の方法で前培養した後、培地のみ若しくは0.1%DMSO添加後48時間培養し、各細胞からtotal RNAを抽出した。網羅的な遺伝子発現量解析にはSurePrint G3 Human GE マイクロアレイ 8×60K V2 (Agilent)を用い、ヒト肝臓組織から取得したアレイデータを加え、主に薬物代謝酵素(CYP、GST、UGT等)に着目し、細胞間の遺伝子発現レベルの比較を行った。【
結果及び考察】CYP1A2、CYP2C9、CYP3A4等はヒト初代培養肝細胞がヒト肝臓組織の発現レベルに最も近く、iPS-HepはHepG2細胞より若干高い若しくは同等の発現レベルを示すことが分かった。GST及びUGTの発現量からもiPS-Hepはヒト初代培養肝細胞よりも薬物代謝酵素の発現レベルが低い傾向を示し、そのレベルはベンダー間で若干異なることが分かった。また、iPS-Hepのロット間差は非常に小さかったことから安定したデータを取得できる可能性が示唆された。今後は化合物曝露後のiPS-Hepの遺伝子発現量データを得ることで、安全性評価への応用性を検討する予定である。
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北村 哲生, 榊原 基嗣, 武内 史英, 南 大輔, 藤崎 由記子, 関島 勝, 長田 智治, 大西 康之, 平塚 秀明
セッションID: P-154
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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【目的】我々は細胞外電位測定法によるヒト人工多能性幹細胞由来心筋細胞(hiPS心筋)を用いた化合物の
in vitroヒト心臓安全性評価系を提案してきた(Medical Science Digest 39, 2013, 44-47)。催不整脈作用を評価するための細胞外電位測定における指標については幾つかの提案がなされている。細胞外電位測定系より得られたデータから、催不整脈作用の評価に有効な指標の検討を行った。【方法】催不整脈作用を有する薬剤 14種、Vaughan-Williamsに分類される抗不整脈薬 19種、分類されない抗不整脈薬 3種、強心薬 1種、IKsブロッカー 1種、ネガティブコントロール 1種、媒体1種、合計40種の化合物について自律拍動下または強制刺激下(一部は両方)にて濃度依存的な細胞外電位の変化を記録した。拍動数(BPM)、振幅、Field Potential Duration (FPD)、Short Term Variability of FPD (STV)、 異常波形の一つとしてearly afterdepolarization (EAD)様波形の発生頻度等を定量化し、化合物の催不整脈作用評価手法の検討を行った。【結果】STV とEAD様波形の発生頻度から、化合物適用後のSTV増大が100%以上の場合に15/17(88%)でEAD様波形が発生し、STV増大が100%未満の場合に7/20(35%)でEAD様波形が発生した。細胞外電位におけるSTV増大はEAD様波形発生の前に起こる事が認められたことから、STV増大がEAD様波形発生予測の指標となり得る可能性が認められた。なお、FPD10%延長とEAD様波形の発生の相関は同様に7/10(70%), 15/27(55%)であった。【考察】催不整脈作用と相関する指標を見出し、適切な評価に適した組み合わせを見出す事はhiPS心筋による催不整脈作用を予測するために有効である。更なる解析を行い、本試験系の予測精度を向上させたい。
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片山 義三, 和泉 拓, 冨澤 里美, 金納 明宏
セッションID: P-155
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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薬物誘発性QT延長症候群の非臨床での予測手段の一つとして、in vitroではhERGチャネルへの阻害評価が行われている。しかし近年では、QT延長リスクのみならず、催不整脈作用および心機能に対する安全性評価がより重要視されている。これらの評価をin vitroで行う方法として、心筋細胞の活動電位形成を担う各種イオンチャネル電流への薬物の作用検討が挙げられ、パッチクランプ法によるアプローチが最適な手段の一つであると考えられる。
そこで我々は、オートパッチクランプシステム (CytoPatch
TM 2; Cytocentrics Bioscience GmbH) を用い、各種イオンチャネル電流の評価方法を確立した。hERG (I
Kr)、K
VLQT1/minK (I
Ks)、K
V1.5 (I
Kur)、K
V4.3 (I
to)、K
ir2.1 (I
K1)、Na
V1.5 (I
Na) およびCa
V1.2 (I
Ca,L) をそれぞれ安定発現した細胞からの電流応答を測定し、マニュアルパッチクランプで得た結果との比較も行った。評価には催不整脈作用が報告されているイオンチャネルブロッカーを使用した。
本発表では、マニュアルパッチクランプとの比較を基に確認されたCytoPatch
TM 2の有用性とともに、各種イオンチャネルの評価プロトコルおよび解析パラメータについて報告する。
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鈎 克江, 尾崎 通, 大畠 武二
セッションID: P-156
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
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【目的】薬物の市場撤退あるいは開発中止の原因として、心循環器毒性が大きな要因となっていることから、開発候補化合物の心循環器毒性リスクについての、創薬早期におけるより効率的な抽出が重要である。そこで本研究では、創薬初期における心筋細胞毒性、収縮力や活動電位への影響、催不整脈性等の心循環毒性リスクの網羅的な抽出を目的として、心筋細胞の拍動をインピーダンスの変化として測定できるxCELLigence RTCA Cardioシステム(以下、xCELLigence)の有用性について検証した。
【方法及び結果】マウスES由来拍動心筋細胞あるいはヒトiPS由来拍動心筋細胞を用い、xCELLigenceにより培養条件下で各種パラメータ(Cell index、Beating rate、Amplitude、IBD10、Beating rhythm irregularity)を経時的に測定し、陽性対照薬の作用の検出可否及びその感度について検討した。陽性対照薬には、各種心筋イオンチャネル阻害剤、hERG trafficking阻害剤、β受容体のアゴニスト/アンタゴニスト、核酸合成阻害剤等の抗がん剤等、多様なメカニズムの薬剤を用いた。その結果、各パラメータの変化により、陽性対照薬の各作用が検出可能であり、また、急性作用だけではなく遅発性作用をも長期のモニタリングにより検出可能であることを確認した。また、一方で、本評価系では細胞の電位変化を直接測定するのではなく、インピーダンスによる間接的評価である為、インピーダンス変化の原因を推察するうえでは限界があり、他の評価系での追加評価が必要であることが明らかになった。なお、マウス・ヒト両細胞での検討結果の比較により、細胞全体の間接評価という特徴から、本評価系では種を超えて定性的に同様の結果が得られることも確認された。
【結論】xCELLigenceは、急性から遅発性までの心循環器毒性について、細胞の拍動機能の状態変化から、幅広く抽出可能であり、変化の詳細を確認する他の評価系を組み合わせることにより、創薬早期におけるより効率的な安全性評価に有用であることが確認された。
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吉川 公人, 原田 英樹, 武内 史英, 榊原 基嗣, 大保 真由美, 平塚 秀明
セッションID: P-157
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
会議録・要旨集
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医薬品開発過程において,薬剤の不整脈誘発作用について確認することは重要である.薬剤誘発性不整脈の原因の一つとしてhERGタンパク質の膜移行阻害が知られている.これまで膜移行阻害はhERG遺伝子を強制発現したHEK293細胞などの心筋細胞以外の細胞で評価していた.近年,ヒトiPS細胞から心筋細胞を作製することが可能になり,ヒトの心臓に近い条件で薬剤の不整脈誘発リスクを評価できるようになった.そこで本研究では膜移行阻害作用が知られているPentamidineを用いてhERGタンパク質の膜移行阻害作用の評価がヒトiPS由来心筋細胞で可能か検討した.
ヒトiPS由来心筋細胞をPentamidine含有培地で長時間培養した.細胞を回収後, hERGタンパク質の細胞外ドメインを認識する1次抗体および蛍光色素でラベルされた2次抗体により蛍光免疫染色を行った.染色後,フローサイトメーターを用いて蛍光強度を測定し,膜上のhERGタンパク質発現量を確認した.また,蛍光顕微鏡を用いて細胞を観察し,膜上のhERGタンパク質が実際に減少しているのか確認した.今回の発表では,hERG導入HEK293細胞における結果と比較することで,ヒトiPS由来心筋細胞を用いたhERGタンパク質の膜移行阻害の評価の有用性について検討する.
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竹本 知代, 佐藤 剛, 吉岡 直也, 森 華奈子, 川本 達也, 嶋田 圭祐, 廣田 里香, 青木 嘉信
セッションID: P-158
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
会議録・要旨集
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哺乳類の網膜は、高度に分化した非再生性の組織であり、非臨床安全性試験において化学物質の暴露により網膜毒性が惹起された場合、その変化の多くは非可逆性であり、医薬品開発において開発が制限される因子となり得る。そのため、網膜毒性スクリーニングや網膜毒性機序解明のための高質な
in vitro試験系の確立が望まれるが、現在汎用されているヒト網膜色素上皮由来の細胞株であるARPE-19は、その需要を完全に満たしているとは言い難い。今回我々はヒトiPS細胞由来網膜色素上皮細胞(hiPS-RPE)の分化誘導法及びそのプロファイリング法を導入・確立し、hiPS-RPEを用いた
in vitro網膜毒性評価系の有用性を検討した。
まず、ヒトiPS細胞から分化誘導したhiPS-RPEについて、形態、マーカー遺伝子発現(qRT-PCR)、マーカー蛋白発現(免疫染色)、及び貪食能(pHrodo
TM)を検討した。その結果、hiPS-RPEは生体のRPEと同様に敷石構造及び色素発現を示し,マーカー遺伝子及びマーカー蛋白の発現及び貪食能が確認され、ヒトiPS細胞から網膜色素上皮細胞への分化誘導が適切に行えていることが確認された。また、形態、マーカー遺伝子発現等において、hiPS-RPEはARPE-19よりも生体RPEに近いプロファイルを有する事が明らかとなった。本ポスター発表では、さらに網膜毒性が報告されている化合物に24h暴露した後の形態変化、細胞傷害性(培養液上清中LDH濃度測定)及び貪食能変化等を評価した結果を踏まえ、hiPS-RPEを用いたスクリーニング及び機序解明のための
in vitro網膜毒性評価系の可能性について紹介する。
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杉原 数美, 高田 鑑, 増田 莉奈, 大上 凌, 小林 秀丈, 清水 良, 北村 繁幸, 太田 茂
セッションID: P-159
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
会議録・要旨集
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【目的】近年、医薬品や生活関連化学物質 (PPCPs : pharmaceuticals and personal care products)による環境汚染が問題となっている。PPCPsを高濃度で含有する生活排水は、主に下水処理により浄水され河川や海域に放出されている。PPCPsには多様な性質を持つ化学物質があり、下水処理による除去率も異なり除去されず環境中に流出されるものもある。また、一般的公共下水処理場では、活性汚泥などによる処理の最終段階で塩素による消毒が行われており、塩素処理により構造変換を受け、変異原性などの毒性を発現することも懸念される。本研究では、環境中医薬品の塩素処理による構造変化と毒性変動に関して検討を行った。
【実験方法】イミプラミンをはじめとする医薬品を0.2 Mリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解し、次亜塩素酸ナトリウムを加え0.5~24時間反応させた。反応終了後0.2Mチオ硫酸ナトリウムを加え次亜塩素酸を中和後、Oasis HLBカートリッジで抽出し試料とした。経時的な分解率及び分解物の生成をHPLCで検出した。変異原性試験を
S.typhimuriumTA100及びTA98を用いて行った。また、細胞毒性試験はHepG2細胞を用いてWST-1法を行った。
【結果および考察】医薬品を塩素処理後抽出しHPLCで検出したところ、ほぼすべての医薬品で分解生成物が確認された。中でも顕著な変化がみられたのがイミプラミンで、塩素濃度の上昇、曝露時間の延長により分解率が高くなる傾向が観察され、分解物と予想される新たなピークがいくつか検出された。Ames試験を行ったところ、TA98株、TA100株共にコロニーの増加傾向が観察され、変異原性物質の生成が示唆された。今後、生成した変異原性物質の同定および環境中からの検出を行う予定である。
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舞原 文女, 西岡 亨, 佐々 友章, 本多 泰揮, 山根 雅之, 森田 修, 西山 直宏
セッションID: P-160
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
会議録・要旨集
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国際的な化学物質管理に関する戦略的アプローチ(SAICM)に沿って化学物質を適性に管理するためには、化学物質の有害性と暴露を定量的に評価し、ヒト健康と環境影響に関するリスクを科学的に解析することが重要である。
エステルアミド型ジアルキルアミン塩(EA)は良好な生分解性を有する陽イオン界面活性剤である。家庭用衣料柔軟仕上げ剤に配合されて国内で広範囲に使用されていることから、陰イオン界面活性剤等の河川水中濃度推計で実績のある全国1級河川水系の暴露評価が可能な産総研-水系暴露解析モデル(AIST-SHANEL)を用いて、吸着性の高い陽イオン界面活性剤であるEAへの適用性の検討と河川水濃度の推計を行った。その結果、モデル内に設定された流域内水路中の流下挙動に関するパラメータの掃流係数を最適化することで、陽イオン界面活性剤に対しても高精度な暴露推計が可能であることが明らかとなった。
また、化学物質の環境挙動解析や環境暴露モデル推計には、汚水処理施設内における挙動や除去率を明らかにすることが重要である。今回、これらの挙動を把握することが可能な好気反応槽を再現したモデル試験(OECD TG314)を実施した。その結果、吸着性の高いEAが曝気槽内で直ちに除去されること、および本試験より算出した下水道除去率が都市下水処理場と家庭用合併浄化槽を対象とした野外調査により取得した除去率とよく一致することを明らかにした。
ヒト健康影響では、動物を用いない有害性情報の推定・取得に加え、柔軟仕上げ剤使用後の衣類からの暴露と環境暴露推計の結果を活用した環境経由の暴露を考慮したヒト暴露量の推定を行った。ヒト健康と環境影響に関するリスクアセスメント手法について発表する。
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西岡 亨, 佐々 友章, 舞原 文女, 本多 泰揮, 山根 雅之, 森田 修, 西山 直宏
セッションID: P-161
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
会議録・要旨集
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国際的な化学物質管理に関する戦略的アプローチ(SAICM)に沿って化学物質を適性に管理するためには、化学物質の有害性と暴露を定量的に評価し、ヒト健康と環境影響に関するリスクを科学的に解析することが重要である。
アルコールエトキシレート(AE)は、高級アルコールにエチレンオキシド(EO)を付加重合して得られる非イオン界面活性剤であり、主に洗浄剤用途で使用されている。近年EOに加えてプロピレンオキシド(PO)が平均2モル程度付加重合された化合物も同じ用途で使用されている。そこで、PO付加が毒性や環境挙動に及ぼす影響について検討した。
皮膚透過係数(Kp)に対するPO付加の影響をEPIsuite4.1(DERMWIN)を用いて検討した結果、2モルのPO付加は1モルのEOが付加されることに相当した。また、EOに替えてPOを付加しても反復投与毒性試験における毒性の質や強さに大きな影響は認められなかった。
環境への影響については、生分解性を比較した結果、2モル程度のPO が付加されてもAEと同様の分解挙動が認められた。また、ミジンコを対象とした毒性試験において毒性値、毒性症状はAEと同等であり、疎水性(logKow)に依存した毒性挙動を示すことが示唆された。
以上のことから、AEへの2モル程度のPO付加が、ヒトおよび水生生物に対する毒性や環境挙動に及ぼす影響は小さいことが示唆された。
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佐々 友章, 西岡 亨, 舞原 文女, 本多 泰輝, 山根 雅之, 森田 修, 西山 直宏
セッションID: P-162
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
会議録・要旨集
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国際的な化学物質管理に関する戦略的アプローチ(SAICM)に沿って化学物質を適切に管理するためには、化学物質の有害性と暴露を定量的に評価し、ヒト健康と環境影響に関するリスクを科学的に解析することが重要である。
アルキルポリグルコシド(AG)は高級アルコールとグルコースから合成される非イオン界面活性剤であり、台所用洗剤、住居用洗剤、身体洗浄料、シャンプー等に幅広く使用されている。ヒトへの暴露量算出においては、AGの多様な使用実態を考慮し、製品使用による経皮および経口暴露に加え、産総研-水系暴露解析モデル(AIST-SHANEL)を用いて算出した環境経由の経口暴露を検討した。
環境暴露評価において河川水中の化学物質濃度を推算する際には、物理化学的性状や河川の流量、水質など多くの要因を検討する必要がある。今回、化学物質の河川水中濃度に大きく寄与することが知られている河川水半減期に着目して検討した。河川水中のAGを分析する手法を確立した上で都市河川水を用いた River die-away試験を実施し、反応速度論を用いて解析することで実環境を考慮したより現実的な河川水半減期を見積もった。
生分解予測モデル(CATALOGIC)、眼刺激性代替試験(STE試験)などin silicoおよびin vitro評価手法についても検討したので併せて報告する。
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香川(田中) 聡子, 大河原 晋, 田原 麻衣子, 川原 陽子, 真弓 加織, 五十嵐 良明, 神野 透人
セッションID: P-163
発行日: 2014年
公開日: 2014/08/26
会議録・要旨集
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【目的】近年、生活空間において“香り”を楽しむことがブームとなっており、高残香性の衣料用柔軟仕上げ剤や香り付けを目的とする加香剤商品の市場規模が拡大している。それに伴い、これら生活用品の使用に起因する危害情報も含めた相談件数が急増しており、呼吸器障害をはじめ、頭痛や吐き気等の体調不良が危害内容として報告されている。本研究では、柔軟仕上げ剤から放散する香料成分に着目し、侵害受容器であり気道過敏性の亢進にも関与することが明らかになりつつあるTRPA1イオンチャネルに対する影響を検討した。
【方法】ヒト後根神経節Total RNAよりTRPA1 cDNAをクローニングし、TRPA1を安定的に発現するFlp-In 293細胞を樹立した。得られた細胞株の細胞内Ca
2+濃度の増加を指標として、MonoTrap DCC18 (GLサイエンス社)を用いて衣料用柔軟仕上げ剤から抽出した揮発性成分についてTRPA1の活性化能を評価した。また、GC/MS分析により揮発性成分を推定した。
【結果】市販の高残香性衣料用柔軟仕上げ剤を対象として、それぞれの製品2 gから抽出した揮発性成分メタノール抽出液についてTRPA1に対する活性化能を評価した。その結果20製品中18製品が濃度依存的に溶媒対照群の2倍以上の活性化を引き起こすことが判明した。さらに、メタノール抽出液のGC/MS分析結果より、LimoneneやLinallolの他に、Dihydromyrcenol、Benzyl acetate、
n-Hexyl acetate、Rose oxide、Methyl ionone等の存在が推定され、これらの中で、Linalool 及びRose oxideがTRPA1を活性化することが明らかになった。これらの結果より、柔軟仕上げ剤中の香料成分がTRPイオンチャネルの活性化を介して気道過敏性の亢進を引き起こす可能性が考えられる。
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