日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
選択された号の論文の493件中201~250を表示しています
一般演題 口演
  • 中村 和昭, 相澤 和子, 堀 尚子, 田上 昭人
    セッションID: O-6
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    マウス胚性幹細胞(ES細胞)は高栄養条件下で培養すると特別な誘導を行わなくても自然に心筋細胞へ分化し、その自律的収縮運動によって心筋細胞への分化を容易に検知できる。Embryonic Stem Cell Test(EST法)は、このようなマウスES細胞の特性を利用し、培養液に薬物を添加することにより、細胞生存率および心筋細胞への分化における薬物の影響を調べ、薬物の発生毒性を評価する方法である。西洋弟切草(セントジョーンズワート; SJW)は抗うつ作用、抗炎症作用、抗腫瘍作用を持つハーブとして知られており、その有効成分の一つとしてヒペルホリンが知られている。SJWはハーブティーとして摂取され、またヒペルホリンはドイツでは医薬品として処方され、副作用の少ない抗うつ薬として使用されている。軽度から中等度のうつ症状に効果があるとされ、妊娠を想定していない女性が妊娠前から妊娠初期にかけて摂取している事例も少なくないと考えられる。これまで行われた観察コホート研究において、妊娠中のSJWの使用は、奇形発生率、早産率に影響を与えなかったと報告されており、胎児への安全性も高いと考えられている。しかしSJWの催奇形性に関する実験的な評価は乏しく、催奇形性に関するさらなる評価がSJWおよびヒペルホリンの安全性を評価する上で必要と考えられる。今回我々はEST法を基に、ヒペルホリンの発生毒性について検討を行った。ヒペルホリンは繊維芽細胞に対してはアポトーシスを誘導し、一方、マウスES細胞に対しては細胞周期を停止させることにより細胞生存率を減少させ、細胞種によってその作用が異なると考えられた。また、組織特異的遺伝子発現解析から、ヒペルホリンはマウスES細胞の分化を抑制すると考えられた。しかし、ヒペルホリンのin vitroにおけるこれらの効果は、想定されるSJW摂取時のヒペルホリン血中濃度に比べて相当に高濃度のヒペルホリン添加により認められるものであり、通常用量のSJWあるいはヒペルホリンの摂取において催奇形性は極めて低いものの、過剰摂取には留意する必要があると考えられた。
  • 井上 敦人, 西村 有平, 梅本 紀子, 島田 康人, 丸山 透, 栢菅 佳奈, 森原 元彦, 廣田 泰, 金 淳二, 田中 利男
    セッションID: O-7
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    生殖発生毒性試験は,化合物の催奇形性を評価する試験の一つである.化合物の催奇形性の判断には,ガイドライン(ICH-S5)上では,化合物の投与期間を着床から器官形成終了時期までの間として実施する「胚・胎児発生に関する試験」が規定されている.一方,本試験は,化合物が大量に必要であること,費用が高額であること,試験が長期間になることから,創薬初期からスクリーニング的に実施するには困難な試験系である.また,近年動物削減の動きが活発になっており,生殖発生毒性試験の代替法の構築が活発に行われている.代替法として,マウスEST試験,全胚培養系などと共に,ゼブラフィッシュを用いた生殖発生毒性試験の可能性が近年注目されている.そこで,本研究では,ゼブラフィッシュを用いた生殖発生毒性評価試験を実施し,本試験系の予測性を判断した.その結果,その正答率は69%であること,本結果に他の予測試験結果を併用することで更に正答率が上昇することが明らかになった.以上から,本系の有用性が示され,創薬初期からスクリーニング的に実施することで,化合物の催奇形性リスクを早期に検出し,リスクの低い化合物を創製できる可能性があると考えられた.
  • 西村 有平, 村上 宗一郎, 芦川 芳史, 笹川 翔太, 川端 美湖, 梅本 紀子, 有吉 美稚子, 張 貝貝, 島田 康人, 田中 利男
    セッションID: O-8
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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     妊婦の喫煙は胎児の発達だけでなく、出産後の子供の発育にも様々な悪影響を及ぼすことが明らかにされている。特に、注意欠陥多動性障害(ADHD)や学習障害、不安障害などの精神神経疾患の発症と密接に関連することが報告されている。例えばSchmitzらは、妊婦の喫煙によりアメリカにおけるADHD児が27万人以上増加したと試算している。このような妊婦の喫煙の発達神経毒性は主としてニコチンの副作用であることが明らかにされている。しかし、ニコチンによる発達神経毒性の分子機構に関しては依然として不明な点が多く残されている。また、ニコチン性アセチルコリン受容体の作動薬が禁煙補助薬として臨床で使用されているが、この禁煙補助薬の発達神経毒性に関しても不明な点が多い。
     本研究では、ニコチン性アセチルコリン受容体のサブタイプを、人工酵素TALエフェクターヌクレアーゼ (TALEN)を用いたゲノム編集によりノックアウトしたゼブラフィッシュを用いて、ニコチンの発達神経毒性を評価した。具体的には、受精後8時間より96時間まで、ニコチンまたはニコチン受容体部分作動薬を様々な濃度でノックアウトゼブラフィッシュに曝露した。受精後7日目に外表奇形を認めない最高濃度を決定し、その濃度よりも低い濃度で曝露したゼブラフィッシュの行動を、光の明暗変化や、てんかん誘発薬曝露に対する運動量の変化を指標として定量的に解析した。その結果、ニコチンの発達神経毒性機構解析における遺伝子改変ゼブラフィッシュの有用性を明らかにしたので報告する。
  • 筧 麻友, 池中 良徳, 中山 翔太, 水川 葉月, 渡邊 研右, 坂本 健太郎, 和田 昭彦, 服部 薫, 田辺 信介, 野見山 桂, 石 ...
    セッションID: O-9
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【目的】グルクロン酸抱合酵素(UGT)は、異物代謝の第Ⅱ相抱合反応を担い、各動物の化学物質感受性決定に関与することが報告されている。食肉目ネコ亜目(Feliformia)では環境化学物質や薬物等の代謝に関与するUGT1A6の偽遺伝子化が報告されており、この偽遺伝子化によりアセトアミノフェン等の薬物の毒性作用が強く表れることが知られている。一方、食肉目に属する鰭脚類(Pennipedia)では、PCB、DDTなどの残留性有機汚染物質の高濃度蓄積が報告されているが、感受性に関与するUGTについての研究がほとんど行われていない。そこで、鰭脚類を中心とした食肉目において、UGTの機能解析及び系統解析を行い、種差を明らかにすることを目的とした。
    【方法】食肉目に属するネコ(Felis catus)、イヌ(Canis familiaris)、鰭脚類であるトド(Eumetopias jubatus)、キタオットセイ(Callorhinus ursinus)、カスピカイアザラシ(Phoca caspica)及び対照としてラット(Rattus norvegicus)の肝臓ミクロソームを調整した。この肝臓ミクロソームを用いて、1-ヒドロキシピレンを基質としてUGT活性を測定した。さらに食肉目UGT1A遺伝子について、他の哺乳類と比較し、系統解析を行った。
    【結果及び考察】1-ヒドロキシピレンを基質として用いたところ、イヌはラットと同程度のUGT活性を示したが、鰭脚類3種およびネコのUGT活性はラットの3分の1以下だった。また、UGT1A遺伝子は一般に2-10程度のホモログが近接して染色体上に存在しているが、系統解析及びシンテニー解析より、食肉目は齧歯目に比べUGT1A領域が短くUGT1A分子種数が少ないことが確認された。さらに、トドおよびキタオットセイでは、UGT1A6のエクソン1領域に2塩基挿入によるストップコドンが生じ、偽遺伝子化していることが明らかになった。以上の結果より、鰭脚類は、UGTによる異物代謝能が低く、環境化学物質に対する感受性が高い可能性が考えられた。
  • Saganuwan Alhaji SAGANUWAN, Patrick Azubuike ONYEYILI
    セッションID: O-10
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    The knowledge about toxicity of Abrus precatorius seed is ubiquitous. However there is need to define the toxicity limit of Abrus precatorius leaf in monogastric animals. Therapeutic animal-human and human-animal equivalent doses were determined using human equivalent dose formular. Human Equivalent Dose (HED) is equal to animal dose multiplied by animal km factor divided by human Km factor. Whereas Km factor is body weight (kg) divided by body surface area (m2). Human Equivalent No-observable Adverse Effects Dose is equal to animal no-observable adverse effect level (NOAEL) multiplied by animal weight (Wa) divided by human weight (Wh) rest to the power of 0.33 was used to confirm 12.5mg/kg body weight of mice (relatively safe dose) translated to human and other animal’s safe doses. The LD50 of aqueous leaf extract of Abrus precatorius in mice was estimated to be 2559.5 to 3123.3mg/kg body weight. Whereas the LD50 extrapolated from mouse to rat (1349.3-1646.6mg/kg), hamster (1855.3-2264.1mg/kg), guinea pig (1279.5-1561.4mg/kg), rabbit (618.4-754.7mg/kg), monkey (593.7-724.5mg/kg), cat (392.7-479.2mg/kg), dog and baboon (371.1-452.8mg/kg), child (297-362mg/kg) and adult human (197.8-241.5mg/kg) body weight respectively could be a reality. The therapeutic safe dose range for the animals was 1-12.5mg/kg body weight for a period of 7 days, but at dose ≤ 200mg/kg bodyweight the leaf extract have haematonic effect. However, at higher dose > 200mg/kg, the extract showed haemolytic activity in rat, whereas at dose ≥ 25.0mg/kg. The leaf extract might be organotoxic to monogastric animals.
  • 戸邊 隆夫, 清水 香琳, 本山 美貴, 植田 康次, 岡本 誉士典, 小嶋 仲夫
    セッションID: O-11
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【目的】白金4価[Pt(IV)]錯体は,すでに臨床応用されている抗がん剤シスプラチンなどの白金2価[Pt(II)]錯体のプロドラッグであり,生体内でPt(II)錯体へと還元されて抗がん作用を発揮する.Pt(IV)錯体の状態では生体分子との反応性が低く消化管内では反応しないため,経口投与できるという利点がある.また基礎研究レベルでは,シスプラチン耐性がんに対しても効果を示すことが知られている.本研究は,どのようにPt(IV)錯体がシスプラチン耐性がんを克服するのか,その分子基盤を明らかとすることを目的としてPt(IV)錯体によるヒト卵巣がん細胞障害性ならびに細胞内分布挙動,ゲノムDNAに対する影響について検討した.
    【方法】ヒト卵巣がん細胞株(A2780)とシスプラチン耐性株(A2780cis)を用い,細胞生存率を生細胞蛍光染色法で評価.Ptの細胞内蓄積量・排出量・DNA結合量はICP-MS法で定量.
    【結果および考察】A2780に細胞障害性を示す濃度域においてシスプラチンはA2780cisに対しては無効だったが,シスプラチンのPt(IV)錯体であるcis-Pt(IV)は同濃度域において両細胞株に高い細胞障害性を示した.このとき,細胞内Pt蓄積量および細胞外排出パターンにはcis-Pt(IV)とシスプラチン間で差は見られなかった.また,Pt細胞内輸送に関係する銅トランスポーター(CTR1)をCuCl2で競合阻害し細胞内Pt蓄積量を約50%低下させても,シスプラチンおよびcis-Pt(IV)による細胞障害性を抑制することはできなかった.加えて,Pt錯体の標的と考えられるDNAに対してはcis-Pt(IV)およびシスプラチンの結合量に差は見られなかった.以上の結果から,Pt錯体の一部はCTR1を介して細胞内に輸送されているが,細胞障害性にはCTR1を介さないPt輸送経路が重要な役割を担っている可能性がある.さらに,cis-Pt(IV)はシスプラチンと異なる様式でDNAに結合し効果的に影響を及ぼしているか,あるいはDNAとは異なる標的に対しても作用してシスプラチン耐性がんを克服しているものと考えられる.
  • 武田 志乃, 北原 圭祐, 沼子 千弥, 寺田 靖子, 新田 清文, 島田 義也
    セッションID: O-12
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【緒言】
     ウランは腎臓に高濃度に蓄積し、腎障害を引き起こすことが知られている。ウランは重金属としての化学毒性とα線核種としての放射線毒性と合わせ持つ核種であり、一般に化学毒性が優勢であると考えられているが、詳細な化学毒性発現機序はよく理解されていない。腎臓中のウランは近位尿細管の下流領域(S3セグメント)に選択的に濃集していることが確認されているが、その部位選択性の機序も明らかになっていない。この腎臓へのウランの蓄積とそれに続き生じる腎障害のメカニズムを明らかにするためには、腎臓に蓄積したウランの化学形を知ることが重要である。本研究では、シンクロトロン放射光を用いた蛍光X線分析(SR-XRF)とX線吸収微細構造(XAFS)法による非破壊状態分析を試み、ラットの腎尿細管に蓄積したウランの化学状態を明らかにすることを目的とした。
    【実験】
     幼若(3週齢)および成熟(10週齢)のWistar系雄性ラットに対し、0.5 mg/kg、または2 mg/kgの酢酸ウラニルを背部皮下に投与した。投与後1日目、3日目、8日目、および15日目にこれらのラットを解剖し腎臓を摘出した。摘出した腎臓は10 μm厚の凍結薄切切片にし、放射光施設SPring-8にてSR-XRFによる分布解析とXAFS測定による化学状態解析を行なった。
    【結果・考察】
     バルク状態の腎臓のXAFS測定では、腎臓のX線吸収端近傍構造(XANES)スペクトルは全て6価のウラニルイオンと類似しており、腎臓全体としては主に6価のウランとして蓄積していると考えられた。次に、マイクロビームを腎臓内のウラン濃集部位に照射しXAFS測定を行なった。その結果、濃集部位の多くはウラニルイオンと同様のスペクトルであったが、一部の濃集部位で4価のウランに類似したスペクトルが観察された。この結果より、腎臓内の濃集部位ではウランの還元が行われていることが示唆された。さらに、4価のウランと類似したスペクトルが成熟ラットのみから検出されたことより、ウランの還元機構には年齢依存性がある可能性も考えられた。
  • 平林 容子, 壷井 功, 五十嵐 勝秀, 菅野 純, 楠 洋一郎, 井上 達
    セッションID: O-13
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    マウスに2Gyのガンマ線照射をすることによって惹き起こされる末梢血細胞数の減少は、6週間程度以内の早期に回復する。一方、より未分化な造血幹・前駆細胞においては、回復は不完全なまま推移し、照射による効果が遷延し長期にわたって遺残することが見出された。即ち、6週齢のマウスに2Gyのガンマ線を単回全身照射すると、分化型の血球数は照射直後の減少から早期に回復するのに対して、造血幹・前駆細胞分画ではその分化階層の低い分画ほど回復の遅延が見られ、より未分化な造血幹細胞(LKS)分画では、照射18ヶ月後でも非照射対照群の約50%の回復に留まった。更に、照射4週後の骨髄細胞における網羅的遺伝子発現解析で注目された細胞増殖やアポトーシスの関連遺伝子に対して定量PCR法で解析したところ、照射4週後の骨髄細胞ではこれまでの結果がよく再現され、ATM/CHEK2/Trp53 pathwayの活性化やAKT/PI3K pathwayの抑制に符合する一連の遺伝子の発現変動が見られた。同時にLKS分画でも同様の変化が観察され、骨髄細胞一般でもLKS分画でもアポトーシスの進行が示唆された。尚、照射19.5ヶ月後では、このうちCcnd1Fyn及びPiK3r1の過剰発現が、LKS分画に限局して観察されている。これは、造血幹・前駆細胞分画での数的な回復不全に伴う、細胞動態の亢進に起因する結果と考えられる。一方、非照射の21ヶ月齢のマウスにおいても、2ヶ月齢のマウスと比べると、LKS分画に限局したCcnd1及びPiK3r1の発現亢進が認められた。加えて、LKS分画の、加齢に伴う数の増加や細胞内酸化的ストレスの亢進も観察されており、これらの加齢に伴う変化は生涯時間をパラメターとした生体異物応答とも考えられる。更に、これらの遺伝子の発現レベルは、若齢期における単回照射によって、非照射対照群よりも更に増加することが見出された。以上の結果は照射による造血幹・前駆細胞の回復の遷延が、加齢変化を促進することを示唆するものとして興味深い。
  • 大森 紀人, 堀川 袷志, 岡田 孝
    セッションID: O-14
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    医薬品の重篤な副作用を化学構造から説明できるか否かを検証した.JAPIC 2012版に所載された1187種の低分子医薬品から,添付文書の重大な副作用に横紋筋融解症を含む92種の医薬品に特徴的なBAS(Basic Active Structure,基本活性構造)16種を抽出した.これらの構造を有する医薬は124種存在し,その内副作用記述のあるものが54種,ないものが38種であった.これらの活性構造にはスタチンやARBに特徴的なものや,ビフェニルや含フッ素化合物なども存在した.これら活性構造の有意性を国外の医薬品で検証するため,DrugBankとSIDER2をJAPICのデータベースと統合した.なお,DrugBankからはapproved, withdrawnの2種のカテゴリーにあるもののみを用いた.統合データベースには2002医薬品が含まれるが,その内の703医薬品がDrugBankとJAPIC双方に現れ,767医薬品がDrugBankのみに記載されている.BAS群を後者に適用して有意性を検証する際,毒性判断の指標が問題となる.共通する医薬品703種において,DrugBankのtoxicity検索は7種のみが毒性であるのに対し,SIDER2(postmarketing以上)では46種が毒性となり.JAPICの75種に近い.そこで767種の共通医薬品でも,SIDER2の毒性を指標として用いた.DrugBankのみに現れる767種の医薬品にBASを含むものは76種存在し,その内の6種がSIDER2の毒性有となり,これは毒性有の全10種で過半を占めた. 次にPMDAのJADER自発報告データベースにおいて,各BASを持つ医薬品群がどの程度現れるかを検証した.PMDAではROR指標値の95%信頼限界の下限値が1.0を超えるとシグナル有りとしている.16種のBAS中の大部分である13種において,シグナル有との結果を得られた.これらの結果は,本報告で抽出したBAS群が横紋筋融解症副作用のアラートとして有効であることを示している.
  • 新開 泰弘, 吉田 映子, Bruce A. FREEMAN, 西田 基宏, 澤 智裕, 赤池 孝章, 熊谷 嘉人
    セッションID: O-15
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】環境中には様々な親電子物質が偏在しており、これらが生体内に侵入すると非意図的に内因性の親電子シグナル制御を模倣・攪乱することが考えられる。我々は大気中親電子物質である1,2-ナフトキノン(1,2-NQ)および内因性親電子物質であるニトロオレイン酸(OA-NO2)が、epidermal growth factor receptor(EGFR)を負に制御しているprotein tyrosine phosphatase 1B(PTP1B)の反応性システイン残基を修飾すると、本酵素活性が低下してEGFRシグナルを活性化することを見出した。本研究では、PTP1B/EGFRを介した親電子シグナルに対する活性イオウ分子とその産生酵素cystathionineβ-synthase(CBS)の役割を明らかにすることを目的とした。【方法】親電子物質の代謝物の同定:LC-MSにて解析した。細胞:A431細胞を用いた。タンパク質のS-アリール化:1,2-NQ抗体を用いたウエスタンブロット(WB)で検出した。EGFRおよびERKのリン酸化:WBにて調べた。【結果・考察】1,2-NQを活性イオウ分子のモデル化合物であるNa2S4と反応させると、1,2-NQ-SH結合体や1,2-NQ-S-1,2-NQH2結合体の分子量と一致する代謝物の生成が観察された。A431細胞にCBSを高発現したところ、1,2-NQによる細胞内タンパク質のS-アリール化は抑制され、EGFR/ERKの活性化レベルは低下した。一方、CBSのノックダウンにより1,2-NQによる細胞内タンパク質のS-アリール化は増加し、EGFR/ERKシグナルの活性化は増強した。また、OA-NO2を用いても同様の結果が得られた。以上より、CBSは活性イオウ分子の産生を介して親電子リガンドを不活性化し、親電子シグナルを負に制御する働きがあることが示唆された。
  • 相場 俊樹, 齋藤 俊行, 林 昭子, 佐藤 伸司, 湯野川 春信, 栗田 尚佳, 丸山 徹, 藤渕 航, 遠山 千春, 大迫 誠一郎
    セッションID: O-16
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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     環境要因によるエピゲノム変化は、個体の後天的表現型にとって重要であるが、個体間のバラツキが大きく変動率も微弱であると予想される。しかし、CpGメチル化の微弱変動も捉える感度を有しつつ同時に現実的コストでゲノムワイド解析ができる有効な既存手法がない。そこで本研究では、環境毒性学に応用可能な新規ゲノムワイドDNAメチル化解析法(Methylated site display (MSD)-AFLP)を開発した。
     この手法を評価するため、マウスの3組織(肝臓・腎臓・海馬)のDNAメチル化状態を測定し、既存の部位特異的な高感度測定法であるメチル化感受性制限酵素PCR(MSRE-PCR)法でも測定し、新解析法の評価をおこなった。その結果、3組織間のメチル化頻度差は両手法でほぼ一致していた。さらに、10%以下の変動率かつ5%以下のMF値の差を示す25個のCpGを検出でき、感度、精度共に高い網羅的解析法であることが判かった。
     次に妊娠マウスにBPAを連続経口投与し、その雄産仔脳の海馬DNAのメチル化解析を実施した。Vehicle投与群(n=6)とBPA 200 µg/kg投与群(n=6)、計12検体をMSD-AFLPによりメチル化解析しし、検出された43,840のCpGのうちBPA曝露により統計学的に有意なメチル化変動を示すものは存在せず、BPAのDNAメチル化変動を検出することは出来なかった。
     今回の結果から、まず本MSD-AFLP法は未知のCpGメチル化変動をスクリーニングできることが示され、微弱なDNAメチル化変化を捉える有用な手法となると考えられた。次に、この高精度な解析方法によってもBPAによる海馬のDNAメチル化変化は検出できなかったことから、BPAの胎児期曝露によるエピゲノム影響は極めて少ないことが示唆された。
  • 石田 誠一, 金 秀良, 久保 崇, 黒田 幸恵, 北条 麻紀, 宮島 敦子, 松下 琢, 関野 祐子
    セッションID: O-17
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
    会議録・要旨集 フリー
    [目的] 肝臓は生体内の様々な化学物質の代謝において中心的な役割を果たす器官である。胎児・新生児においても重要な器官であると考えられているが、成人とは機能に差異があることが知られている。本研究では、個体の成長期における化学物質の健康影響評価法を確立することを目的として、ヒト胎児肝細胞と成人肝細胞を対象にメタボローム解析を行い、胎児および成人肝細胞間の基礎代謝機能を比較検討した。さらに、ヒト胎児および成人肝細胞の化学物質に対する感受性の差異を明らかにするため、化学物質による暴露実験を行った。[方法] ヒト胎児および成人肝細胞の代謝物は、CE-TOFMSにより網羅的に解析した。化学物質による暴露実験にはトリブチルスズ、アセトアミノフェン、バルプロ酸、酢酸鉛、ペルフルオロオクタンスルホン酸の5種の化学物質を用い、各化学物質のIC50値は、WST-8アッセイより算出した。[結果と考察] ヒト胎児および成人肝細胞に対するメタボローム解析では、尿素回路の代謝産物が胎児肝細胞と比較して、成人肝細胞で増加していた。これは、胎児肝細胞が細胞内に生ずるアンモニアを尿素回路により代謝できないことを示す。また、グルクロン酸抱合およびグルタチオン経路など、第II相代謝に関与する代謝物も成人の肝細胞で増加していた。上記の5種の化学物質をそれぞれの細胞に暴露したところ、化学物質ごとに、胎児肝細胞と成人肝細胞で毒性発現の感受性が異なっていることが分かった。[結論] メタボローム解析の結果は、胎児および成人肝細胞間で基礎代謝能に差異があることを示し、化学物質に対する感受性の違いの基となると思われた。これらの結果は、メタボローム解析に基づく新規毒性試験系を確立するうえで重要な知見となる。
  • 北嶋 聡, 小川 幸男, 大西 誠, 相磯 成敏, 相崎 健一, 五十嵐 勝秀, 高橋 祐次, 菅野 純
    セッションID: O-18
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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     日常生活で暴露される様々な化学物質の毒性評価は、実験動物における毒性所見を人に外挿することで実施されている。しかし、気化性化学物質の吸入毒性の内、シックハウス症候群については、人における被害報告濃度と実験動物で検出可能な器質変化濃度の乖離が甚だしく、現行の吸入毒性試験での毒性指標(器質的障害)を人へ外挿することは困難である。この問題に対し、器質的変化が誘発される以前の段階(時間的及び濃度的)での遺伝発現変動を網羅的に評価可能なPercellome トキシコゲノミクスを極低濃度暴露時の肺及び肝に適用した結果、病態の惹起或いは生体防御の発動を示唆する影響を高感度に捕捉することができた。
     この成果を踏まえ、シックハウス症候群において通常の検査からは病因が特定されない「不定愁訴」の分子実態を検討する目的で、「厚生労働省シックハウス問題に関する検討会」が掲げる物質の内、ホルムアルデヒド、キシレン及びパラジクロロベンゼンについて、指針値付近の極低濃度下での海馬を対象とした吸入暴露実験を実施した。12週齢の雄性C57BL/6マウスを使用し、6時間/日×7日間暴露 [労働暴露モデル]、及び22時間/日×7日間暴露 [生活暴露モデル])(各4用量・4時点)にて吸入暴露させた際の海馬のmRNAを採取しGeneChip MOE430v2 (affymetrix社)を用い、約45,000プローブセットの遺伝子発現の絶対量をPercellome法により得て網羅的解析をおこなった。
     その結果、化学構造の異なる3物質に共通して、22時間/日×7日間反復暴露時に、神経活動の指標となる複数のImmediate early geneの発現が強く抑制され、海馬での神経活動の抑制が示唆された。この抑制所見は「不定愁訴」の原因解明の手がかりとなる可能性がある。
  • 山田 隆志, 長谷川 隆一, 三浦 稔, 櫻谷 祐企, 山添 康, 小野 敦, 広瀬 明彦, 林 真
    セッションID: O-19
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    有害性評価支援システム統合プラットフォーム(HESS)は、化学物質審査規制法(化審法)を中心にGLP基準で実施されたラットの反復投与毒性試験の結果及び代謝情報をデータベース化しており、カテゴリーアプローチによる未試験化学物質の毒性予測を支援する機能を備えている。Ethylene Glycol Methyl Ether (EGME)は精巣萎縮、精細管上皮の変性など精巣毒性を引き起こすことが知られている。Ethylene Glycol Ethyl Ether (EGEE)の毒性はEGMEより弱い。末端アルキル基の炭素数が3以上では精巣毒性は発現しない。EGME及びEGEEには生殖発生毒性も認められ、EUのREACHでは高懸念物質の候補に挙げられている。EGMEとEGEEは主に肝臓においてそれぞれメトキシ酢酸とエトキシ酢酸へ代謝され、精巣に酸化ストレス、内在性代謝の撹乱など種々の毒性影響を引き起こすと考えられている。そこで本研究では、メトキシ酢酸又はエトキシ酢酸に代謝されて精巣毒性を誘導する物質群をカテゴリーとして定義し、これに該当する化学物質を検索した。ラット肝代謝シミュレータを用いて、化審法既存化学物質のインベントリーからメトキシ酢酸又はエトキシ酢酸を生成する可能性がある化学物質をスクリーニングし、既報の代謝情報を考慮して20物質を得た。そのうち8物質は、代謝試験の結果からEGME、EGEE、メトキシ酢酸又はエトキシ酢酸いずれかが確認でき、毒性試験の結果からいずれも精巣毒性があることが確認できた。残りの物質も代謝活性化の可能性を考慮すると精巣毒性が懸念される。In vitro代謝試験等で代謝物の生成に関する情報を追加することによって、精巣毒性の予測の信頼性を向上させることが可能であると考えられる。
  • 向井 麻莉奈, 田中 佐和子, 山本 康平, 村田 実希郎, 岡田 賢二, 重山 昌人, 比知屋 寛之, 埴岡 伸光
    セッションID: O-20
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【目的】臨床においてプロポフォールを適正に使用するためには、肝臓及び肝外組織に発現しているUGT1A9のプロポフォールに対する代謝能の基礎研究に基づく詳細な解析が必要不可欠である。そこで本研究では、ヒトの肝臓ミクロゾーム(HLM)、小腸ミクロゾーム(HIM)及び腎臓ミクロゾーム(HKM)を用いてプロポフォールグルクロン酸抱合反応におけるUGT1A9の役割を明らかにするためにin vitro解析を行った。
    【方法】HLM、HIM及びHKMにおけるUGT1A9酵素タンパク質の発現は抗ヒトUGT1A9抗体を用いたイムノブロッティングにより解析した。プロポフォールグルクロン酸抱合活性は、プロポフォール(5–1000 μM)をミクロゾーム画分(HLM及びHIM,20 μg protein;HKM,5 μg protein)と37ºCで10分間(HLM及びHKM)あるいは40分間(HIM)反応し、生成したプロポフォールグルクロニドをHPLCによりそれぞれ定量することにより測定した。
    【結果・考察】ミクロゾーム画分におけるUGT1A9酵素タンパク質の発現量は、HKM>HLM≫HIMであった。プロポフォールグルクロン酸抱合反応の速度論的挙動は、HLM及びHKMでは基質阻害を示したのに対し、HIMではMichaelis-Menten式に従った。また、速度論的パラメーター値もミクロゾーム間で大きく異なり(Km,HIM≫HLM(41.8 µM)≒HKM;Vmax,HKM>HLM(5.21 nmol/min/mg protein)≫HIM;CLint,HKM≫HLM(126 µL/min/mg protein)≫HIM)、Vmax値とミクロゾーム画分のUGT1A9酵素タンパク質の発現量は概ね相関するものであった。これらの結果より、プロポフォールのグルクロン酸抱合反応には肝臓と同様に腎臓に発現しているUGT1A9も重要な役割を担っていることが示唆された。
  • 福原 裕司, 村上 純太, 小松 加代子, 吉澤 和彦, 永田 剛, 加藤 幾雄, 小林 稔秀, 金子 公幸
    セッションID: O-21
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【緒言】近年、小児医薬品開発においては、非臨床での安全性評価に幼若動物を用いた試験の実施が推奨されている。幼若動物ではCytochrome P450(CYP)の発現が発育の過程で変動することが知られているが、薬物に対する応答性の変動については詳細な報告がない。そこで我々は、幼若ラットを用いて食品や医薬品のCYPに対する影響や相互作用の有無を評価できる時期を明らかにするため、小腸と肝臓におけるCYP3Aの発現と薬物応答性の変動を経時的に解析した。【方法】生後4日目(Postnatal Day 4; PD4)から42日目までのCrl:CD(SD)系雄性ラットから小腸と肝臓を摘出し、調製したミクロソームを用いてCYP3Aのタンパク発現量と活性を、それぞれWestern blotting法とP450-GloTM CYP450 Assay Systemを用いての発光法により解析した。各日齢の剖検前日には、蒸留水またはCYP3A誘導剤のDexamethasone(DEX)を単回経口投与した。【結果】小腸ではPD 21までCYP3Aの活性は検出されず、PD 28に大きく上昇して検出された。DEXの投与に対しては、小腸のCYP3Aのタンパク発現はPD 21から有意な増加を示したが、活性は7日間遅れてPD 28に有意な増加が確認された。肝臓ではPD 4からCYP3Aのタンパク発現・活性ともに検出され、DEXの投与により有意な増加を示した。【考察】幼若ラットでは消化管におけるCYP3Aの発現と活性が発育に伴って増加し、PD 28以降に成ラットと同等の薬物応答性を獲得することが明らかとなった。現在、消化管CYPを介した食-薬または薬-薬相互作用の発現について、幼若ラットでは成獣と異なる結果を示すのかどうか検討しているので、その結果も併せて報告する。
  • 高橋 由衣, 倉冨 雅, 栗田 隆三, 根本 清光, 関本 征史, 出川 雅邦
    セッションID: O-22
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【背景】ダイオキシン類(TCDD)暴露動物では血清コレステロール量の増加などの脂質異常が観察されるが、その機序は明確にされておらず、また、類似化合物のヒトにおける作用も明らかとなっていない。本研究では、TCDDなどの作用発現に重要と考えられている芳香族炭化水素受容体(AhR)に焦点を当て、AhR活性化が肝コレステロール合成・異化などに及ぼす影響についてヒト肝がん由来培養細胞株HepG2を用いて検討した。
    【方法】本研究では、HepG2細胞、ならびに AhR活性化をルシフェラーゼ活性として検出できるHepG2細胞由来HepG2-XL24細胞を用いた。通常条件(5%血清、5%CO2)で培養したHepG2-XL24細胞を、AhRリガンドの 3-methylcholanthrene(MC、1 µM)で処理し、AhR活性化の変化をルシフェラーゼアッセイにより、また、AhR標的遺伝子(CYP1A1)および肝コレステロール量調節に関わる種々遺伝子の発現変動をリアルタイム RT-PCR法により検討した。また、CYP7A1遺伝子プロモーターを含むルシフェラーゼレポータープラスミドをHepG2細胞に導入し、その転写活性に及ぼすAhRリガンドの影響を解析した。
    【結果・考察】HepG2-XL24細胞ではMC処理後12時間において最大のAhR活性化およびCYP1A1遺伝子の発現誘導が認められた。一方、肝コレステロール合成分子(HMG-CoA reductase)、コレステロール取込分子(LDLR)の遺伝子発現に顕著な変化は見られなかった。コレステロール排泄分子(ABCA1)およびコレステロール異化分子(CYP7A1)の遺伝子発現量は、MC処理12時間後、それぞれ対照群の約1/2、約1/10にまで減少した。さらに、MCをはじめとする種々AhRリガンドの処理によりCYP7A1プロモーター活性が有意に低下した。以上の結果から、AhRリガンドはその機序は明らかでないが、肝CYP7A1遺伝子発現抑制(肝コレステロール異化の低下)を介して血清コレステロール量を増加させると考えられる。
  • セッションID: O-23
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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  • 武藤 朋子, 和久井 信, 鰐淵 英機, 福島 昭治
    セッションID: O-24
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    Generically, carcinogenic effects of chemicals in bladder carcinogenesis are judged by papillary or nodular (PN) hyperplasia induction in rats given N-butyl-N-(4-hydroxybutyl) nitrosamine (BBN) for four weeks and the test chemicals for 22-28 weeks. However, up-regulation of vascular endothelial growth factor (VEGF) begins early in rat BBN bladder carcinogenesis. To establish a short term rat bladder carcinogenic bioassay, we analyzed the correlation of VEGF, VEGF mRNA and bladder lesions inductions between 10 and 26 weeks after BBN treatment. Six-week-old male Wistar (slc) rats were given 0.05% BBN for 4, 10 or 26 weeks. To avoid individual rat bias, the bladders were investigated by partial cystectomy at 10 weeks and total cystectomy at 26 weeks. After induction, PN hyperplasia and carcinoma in rats increased with length of BBN treatment and immunohistochemical VEGF expression also increased following carcinogenesis, but immunoreactivity of individual lesions was quite variable. Moreover, induction of PN hyperplasia at 10 weeks BBN treatment was not significantly correlation with that of 26 weeks treatment; then, it was impossible to predict the carcinogenic effect by the induction of PN hyperplasia at 26 weeks BBN treatment by that at 10 weeks BBN treatment. However, VEGF mRNA levels of rat bladders at 10 weeks BBN treatment revealed a strong significant correlation with the incidence of bladder lesions at 26 weeks treatment. Here, we suggest the quantitative VEGF mRNA levels are a good biomarker for short-term BBN induced rat bladder carcinogenesis bioassay.
  • 酒々井 眞澄, 沼野 琢旬, 深町 勝巳, 二口 充, 津田 洋幸
    セッションID: O-25
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    多層カーボンナノチューブ(MWCNT)のラット肺内投与に伴う長期経過後の中皮腫発がんに関わるエビデンスはない。本研究ではラットにMWCNTを経気管的肺内スプレー法により投与する実験システムを用いて2年経過での中皮腫発がんを検証した。雄F344ラット(5群を設定、各群15匹)にMWCNT(FT分画平均長2.6 µm、W分画平均長4.2 µm、R分画平均長>2.6 µm)を 2週間で計8回(total amount 1.0 mg)を肺内スプレーし96週目までの間に死亡あるいは瀕死解剖された個体および109週目に剖検された個体について中皮腫発生を調べた。65週目に1個体に縦隔原発の中皮腫が発生し、以降剖検までに11個体に中皮腫が発生した。計12個体中10個体が縦隔あるいは心外膜原発であり、2個体が精巣tunica vaginalis原発と考えられた。胸腔での中皮腫発がんまでの平均経過は94週であった。無処置群およびvehicle control群には腫瘍は認めなかった。腫瘍および各臓器の組織学的検索の結果、気管内にスプレーされたMWCNTは上縦隔リンパ節、中皮腫組織、肥厚した横隔膜中皮などに存在した。少なくとも本実験条件下では、CNTが気管あるいは肺内から胸腔に移動し、胸膜や縦隔中皮を標的に中皮腫発がんに至ったと考えられる。
  • 野原 恵子, 鈴木 武博, 岡村 和幸, 村井 景, 上田 佳代
    セッションID: O-26
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    アジア大陸や南米各地を中心として、地質由来の無機ヒ素が皮膚疾患や発癌などの深刻な健康被害を引き起こしている。近年では、胎児・乳児期のヒ素曝露による発癌増加も報告されている。ヒ素による発癌増加の動物モデルとして、自然発癌がみられる系統であるC3Hマウスの妊娠中の母親(F0)に無機ヒ素を投与すると、雄の仔(F1)が74週令で対照群と比較して高率に肝癌を発症することが報告されている。私たちは先にこの実験系において、ヒ素投与群のF1雌雄を交配して得られたF2雄が、対照群と比較して高率に肝癌を発症することを報告した。本研究では、ヒ素投与群F2雄の肝癌増加が、F1雌雄のいずれに由来するかを検討した。
    対照群および妊娠期ヒ素投与群F0から得られたF1雌雄を以下の組み合わせで交配した:対照群雄x対照群雌(CC群)、対照群雄xヒ素群雌(CA群)、ヒ素群雄x対照群雌(AC群)、ヒ素群雄xヒ素群雌(AA群)。得られたF2雄マウスについて、約80週令で肝臓の癌発生率を観察し、また癌組織のHa-ras変異をPyrosequence法によって測定した。
    CC群、CA群、AC群、AA群F2の肝癌発生率はそれぞれ35%、36%、49%、45%で、F1雄が胎児期にヒ素曝露を受けた場合にF2で肝癌が増加することが示された。AC群+AA群の癌発生率はCC群+CA群と比較して統計的有意に高かった。一方、私たちの先の研究ではCC群と比較してAA群の癌組織に高率にHa-ras変異が見つかったが、今回の実験ではAA群癌組織でのHa-ras変異の増加は再現されなかった。
    以上の結果から、妊娠期ヒ素曝露を受けたF1雄の生殖細胞がF2において肝癌を増加させることが示された。この現象を理解するための分子機序の解明が今後重要である。
  • 深町 勝巳, 二口 充, 津田 洋幸, 酒々井 眞澄
    セッションID: O-27
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
    会議録・要旨集 フリー
    我々が確立したCre/loxPシステムを用いた活性型KrasV12コンディショナルトランスジェニックラットを用いて、Creリコンビナーゼ発現アデノウイルスを膵管内に注入することにより病理学的にヒトに類似した膵管がんを発生させることが可能である。これまでにラット膵管がんにおいてErc/Mesothelinが高発現しており、Erc/MesothelinのN末側がプロテアーゼにより切断され遊離したN-ERCの血清濃度が高くなっていることから、N-ERCがラット膵がんの血清診断マーカーとなることを報告した。本研究においては、この血清診断マーカーN-ERCが治療効果の判定に有効か検討した。
    発生したラット膵管がんの大きさと血清N-ERC濃度を測定すると、発生した膵腫瘍の重量と血清N-ERC濃度がよく相関した。また、発生した膵管がんより樹立した膵がん細胞株を移植したNOD-SCIDマウスにおいて、種々の大きさの腫瘍をもつ担癌マウスにおける血清中N-ERC濃度を測定したところ、移植腫瘍の大きさと血清N-ERC濃度がよく相関した。さらに、膵がん細胞を移植した担癌マウスに抗がん剤であるGemcitabineを投与するとコントロールに比べ腫瘍の大きさは小さかった。この際に腫瘍の大きさが小さくなったのに相関して血清N-ERC濃度も低下した。したがって、腫瘍の大きさと血清中N-ERC濃度がよく相関したことから、血清中N-ERC濃度が膵がんの大きさの指標として極めて有用であることが明らかとなった。また、血清N-ERC濃度により簡便に腫瘍の大きさを推定し、治療効果を判定することが可能であることから膵がんの化学療法剤の開発に有用なモデルと考える。
  • 信國 好俊, 升本 順子, 沼本 通孝, 好光 健彦
    セッションID: O-28
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【目的】三酸化ヒ素あるいはAgelastatin-Aの抗腫瘍作用機構の解明を目的に、それぞれに対する感受性関連候補遺伝子群のゲノム機能学的探索を行った。
    【背景】三酸化ヒ素は、近年その抗腫瘍作用が注目をされてきた。また、Agelastatin-Aは海綿Agelas dendromorpha (Axinellida)から見出された複雑な四環性縮環構造を有するアルカロイドであるが、種々のヒトがん細胞に対して強力な細胞増殖抑制活性を示すことが明らかとなった。しかしそれらの抗腫瘍作用や感受性決定の分子機構については未だ十分には理解されていない。
     我々はこれまで大規模ジーントラップ挿入変異細胞ライブラリーを用いた機能遺伝子群の系統的解明法の検討と開発を行ってきた。これは random mutagenesis による遺伝学的解析法の1つで、ジーントラップ法で様々な遺伝子を破壊した変異細胞ライブラリーの中から、特定の表現型を持つ変異細胞を単離できれば、その変異の責任遺伝子の解明が可能になる。このゲノム機能学的解析法を用いて、上記2つの抗腫瘍活性物質の感受性関連遺伝子群の探索を進めた。
    【方法】①大規模ジーントラップ挿入変異CHO細胞ライブラリーの中から、三酸化ヒ素、あるいはAgelastatin-A処理でも、生き残ってきた細胞を各感受性低下変異細胞とした。②各感受性低下変異細胞でトラップ(同時に破壊)された遺伝子を5’-RACE法で増幅後、シークエンス/BLAST解析によって同定した。
    【結果・考察】①変異細胞ライブラリーから単離された三酸化ヒ素、Agelastatin-A感受性低下細胞の解析からそれぞれ複数のトラップ(破壊)された遺伝子を明らかにした。②トラップされた遺伝子の中には、抗腫瘍作用あるいは感受性に関与するものが含まれると考えられる。③今後、遺伝子情報と機能解析からこれらの抗腫瘍活性を持つ物質の作用機構、耐性機構に関する更なる知見を得ることができると考えられる。④大規模ジーントラップ挿入変異細胞ライブラリーを用いた遺伝子探索は薬毒物の感受性に関与する遺伝子群の解明に有用である。
  • 田中 康太, 東阪 和馬, 國枝 章義, 岩原 有希, 角田 慎一, 吉岡 靖雄, 堤 康央
    セッションID: O-29
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
    会議録・要旨集 フリー
    近年、環境中微粒子が循環器・呼吸器疾患に加えて、パーキンソン病などの脳疾患の危険因子となり得ることが疫学研究により報告されている。一方で、食品や化粧品をはじめ、多様な分野において、ナノマテリアル(NM:1-100 nm)の実用化が進展するにつれて、我々がNMに対して意図的・非意図的に曝露する機会が増加している。しかし、脳組織に着目したNMの影響評価は、他の臓器と比べて著しく遅れているのが現状である。特に、鼻粘膜と脳をつなぐ嗅神経軸索の直径が200 nm程度であることから、吸入曝露したNMが、神経軸索を介して直接的に脳へ移行し、影響をおよぼす可能性が考えられる。従って、NMの脳に対する影響に焦点を当てた、ハザード・体内動態情報の収集が必須である。そこで本研究では、NMが鼻腔を介して脳へ移行し得る可能性を鑑み、既に汎用されている銀粒子を対象として、銀粒子の経鼻曝露後の脳内移行性を評価した。C57BL/6マウスに粒子径10 nmの銀粒子を単回経鼻投与し、24時間後に各脳領域内の銀をICP-MSにより定量的に解析した結果、嗅球では銀が検出されたが、他の領域では検出されなかった。また、28日間連日経鼻投与後の脳内移行性を解析した結果、嗅球のみならず、他の領域にも移行し得ることが明らかとなった。一方で、銀イオンを投与した対照群においても、脳に移行することを見出し、その移行量は銀粒子曝露群よりも多い傾向が示された。これらの結果から、銀粒子や銀イオンの経鼻曝露では、鼻腔に近い脳領域(嗅球)に移行した後に、他の脳領域にも分布すること、さらに、粒子とイオンでは異なる体内動態を示すことから、脳組織へ移行後の影響について、粒子とイオンの影響を比較検討していく必要があることが示唆された。今後、脳機能へおよぼす影響について精査することで、銀粒子の生体影響と体内動態との連関解析を推進していく予定である。
  • 瀧村 優也, 吉岡 靖雄, 森下 裕貴, 野尻 奈央, 高雄 啓三, 田熊 一敞, 吾郷 由希夫, 角田 慎一, 松田 敏夫, 宮川 剛, ...
    セッションID: O-30
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
    会議録・要旨集 フリー
    「子供は小さな大人ではない」と言われるように、乳幼児は成体と比較して、化学物質に対する感受性が高いことが知られており、慎重な安全性情報の収集が必要となっている。本観点から我々は、100 nm以下の素材であるナノマテリアルに関して、乳幼児などの脆弱な個体に着目した安全性評価研究を推進している。我々はこれまでに、10 nmのナノ銀(nAg10)を授乳期の母マウスが経口摂取すると、母乳中に移行することを明らかとしており、nAg10が母乳を介して乳幼仔へ移行する可能性が懸念される。以上の点から本研究では、母乳を介した乳幼児のナノマテリアル曝露に関する情報を収集する目的で、授乳期の母マウスにnAg10を経口投与し、母乳育仔された乳幼仔への移行性を評価した。本研究では、nAg10、および、イオンのコントロールとして銀イオン(Ag+)を用いた。出産日から21日間、nAg10、Ag+を0.5、0.1、0.02 mg/kgの用量で、母マウスに連日経口投与し、母乳を介して乳幼仔に曝露させた。経週的に、乳幼仔から採血し、誘導結合プラズマ質量分析装置により乳幼仔血中の銀濃度を測定した。その結果、nAg10、Ag+投与群のいずれも、母体への総投与量の約0.01 %の銀が乳幼仔血中で検出されたことから、母マウスが経口摂取したnAg10が、母乳を介して乳幼仔へ移行する可能性が示された。また、nAg10、Ag+投与群のいずれも、母体への総投与量に対する乳幼仔血中への移行率は、投与量依存的に減少していることが明らかとなった。現在、乳幼仔の曝露に関する情報の収集にとどまらず、母乳を介してnAg10に曝露した乳幼仔へのハザードを、一般毒性、発達神経毒性(本会の別演題にて発表)などの観点から評価しており、Sustainable Nanotechnologyに貢献できればと考えている。
  • 半田 貴之, 吉岡 靖雄, 平井 敏郎, 高橋 秀樹, 市橋 宏一, 森 宣瑛, 西嶌 伸郎, 山口 真奈美, 角田 慎一, 東阪 和馬, ...
    セッションID: O-31
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    ナノマテリアル(NM)は、組織浸透性や薬剤保持能に優れた革新的素材として医薬品等に広く用いられているものの、その微小サイズ故、これまでのサブミクロンサイズ以上の粒子とは異なるハザードを呈する可能性が懸念されている。しかし、粒子サイズや表面特性といった物性とハザードとの連関は未だ明確ではなく、NM特有のハザード同定に向けて、さらなる解析が必要不可欠となっている。そこで本検討では、粒子径10-100 nmの非晶質ナノシリカ、および100-1000 nmの従来サイズの非晶質シリカを用い、過剰量投与による急性毒性と粒子サイズの連関を精査することで、NM特有のハザード同定を試みた。まず、C3H/HeNマウスに各粒子径のシリカを尾静脈投与後、体温変化を解析した。その結果、粒子径50 nm~1000 nmのシリカ投与群においては、粒子径の減少に伴い、体温低下をより強く誘発する傾向が確認された。一方で、10、30 nmのナノシリカ投与群では、50 nmのナノシリカ投与群と比較して、逆に体温低下が減弱した。しかし、血小板数の減少や致死毒性は、粒子径の減少に伴って増大し、10 nmのナノシリカ投与群で最も顕著に観察された。今回解析した急性毒性の観点からナノシリカのハザードを考えると、50 nm以上の粒子径では、粒子径の減少に伴いハザードが増大すること、即ち、サイズの増減に強く影響を受ける可能性が示された。一方で、50 nm以下のナノシリカにおいては、一部のハザードは増大するものの、減弱するハザードも存在することが示された。今後、急性毒性との関与が疑われる補体や凝固因子との相互作用解析を含め、より詳細に解析する予定である。また、分子と同等サイズである10 nm以下のサブナノマテリアルについても、検討する必要があると考えている。本検討が、NM特有のハザード同定に向けた基盤情報になることを期待している。
  • 小野寺 章, 屋山 勝俊, 武田 直也, 矢埜 みなみ, 米村 重信, 堤 康央, 河合 裕一
    セッションID: O-32
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【目的】経皮・経口曝露によるナノマテリアル(NM)の体内動態は、皮膚や腸管から取り込まれ循環血から全身へ分布する。本研究では心血管機能へのNMの影響に着目し、in vitro、ex vivo、in vivoでの心血管機能解析を進めている。本発表では、医薬品や化粧品基材に用いられているシリカ・銀・酸化亜鉛のナノ粒子をモデル材料に細胞内遊離Ca2+調節、血管弛緩・収縮調節、血圧動態への影響について報告する。
    【材料】シリカは、一次粒子径が30nm(nSP30)、70 nm (nSP70)、300 nm(nSP300)及び1000 nm(mSP1000) の粒子を用いた。銀は、一次粒子径が70 nm(AgNPs-70)の粒子を用いた。酸化亜鉛は、100 nm(nZnO100) の粒子を用いた。
    【方法】細胞内遊離Ca2+調節の解析は、ウシ大動脈内皮細胞BAECを用い、蛍光プローブ(Fluo 4)によるCa2+をイメージングし、共焦点レーザー走査型顕微鏡FV1000により観察した(全材料を解析)。血管弛緩・収縮調節の解析は、Wistar系雄性ラットの摘出胸部大動脈を用い、フェニレフリン収縮条件下での血管弛緩をマグヌス法により評価した(全材料を解析)。血圧動態の解析は、BALB/c雄性マウスを用い、腹腔及び頸静脈から単回投与し1、2、7日後の心拍数と収縮期血圧をtail-cuff法により測定した(nZnOのみ解析)。
    【結果・考察】BAECの細胞内遊離Ca2+濃度は、ATP処置により増加する。BAECへのnSP30、nSP70、AgNPs-70曝露は、ATPと同様に細胞内遊離ca2+を増加させ、その他粒子による影響は観察されなかった。血管は、フェニレフリン処置により収縮し、アセチルコリン処置により弛緩する。血管へのnSP30、nSP70曝露は、アセチルコリンと同様に血管を弛緩させ、AgNPs-70、nZnO100曝露は一過性の血管弛緩であり、その他粒子は、血管弛緩・収縮への影響は観察されなかった。BALB/cマウスの収縮期血圧は、nZnO100の単回投与により上昇し、2日後まで高血圧状態が続いた。一方、心拍の乱れや増減は観察されなかった。
  • 野村 博紀, 羽二生 久夫, 高梨 誠司, 小林 伸輔, 青木 薫, 丸山 佳与, 薄井 雄企, 加藤 博之, 齋藤 直人
    セッションID: O-33
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々は超高分子量ポリエチレン(PE)の強度及び耐久性,耐摩耗性を向上させることを目的に強化材として多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を複合したPE/CNTコンポジットの開発を行っている.今回,関節内にMWCNTが溶出した場合を想定した動物実験と細胞実験を行った.【方法】動物実験はWisterラット(10週齢,♂)の膝関節内にMWCNT (MWNT-7;保土谷化学)を2種類の投与量(0.2mg;CNT-H & 0.02mg;CNT-L)で注射した.注射後2日,1,4,12週の時点での組織評価を行った.Sham群として生理食塩水,negative control群としてホソカワミクロンのカーボンブラック(0.2mg;HCB)を用いた.細胞実験ではヒト正常滑膜線維芽細胞(HFLS)にHCBとMWCNTを24時間暴露した時の細胞毒性とサイトカイン分泌を調べた.【結果】膝関節内注射後のHE染色による組織評価では2日の時点ではsham群以外の全ての群において投与マテリアルの滑膜細胞表面への付着が認められた.1週間後MWCNT群は濃度に関係なく滑膜内に取り込まれ,周辺は染色性の強い異形細胞に囲まれていたのに対し,HCB群では1週間経過時でも滑膜細胞表面に付着したままであった.4週の時点では全ての群で滑膜内への取り込みが認められ,12週の時点でもほとんど変わらなかった.HFLSにおける細胞毒性試験ではMWCNTは濃度依存的に細胞毒性が増加したが,炎症反応に関しては有意に増加したサイトカインはなかった.【考察・結語】動物・細胞実験からCNT-HはHCBと比較し,膝関節滑膜内への取り込み時期や炎症反応が若干強く出る傾向があったが,4週でほぼ収束しており,コンポジットに含まれる量やその磨耗予測から毒性はほとんどないと考えられる.
  • 田中 亮太, 竹原 広, 牧田 真輝, 土屋 舞, 納屋 聖人, 林 真
    セッションID: O-34
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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     肺に対する化学物質の毒性を評価する際に、気管支肺胞洗浄液(BALF)ならびに胸腔洗浄液(PLF)の検査が有用であるかをラットの気管内投与法を用いて検討した。ラットの麻酔に多用されるジエチルエーテルならびにイソフルランについて肺に対する影響を検討したところ、BALF検査項目は両者間で本質的な差はみられなかった。次に、気管内投与試験の陰性対照として用いられるリン酸緩衝生理食塩液ならびに注射用蒸留水の2 ml/kgをそれぞれラットに気管内投与して、投与後翌日に肺に対する影響を検討したところ、BALF検査項目は両者間で差はみられなかった。PLF検査の有用性を検討するために、ラットにリン酸緩衝生理食塩液を気管内投与し、投与後1日および7日にPLFの細胞学的検査をしたところ、BALFの結果と類似していた。陽性対照として塩化亜鉛の0.9 mg/kgを気管内投与して、投与後7日にBALF検査したところ、炎症性の変化が認められた。以上のことから、ラット気管内投与試験においてBALF検査およびPLF検査は有用であることが確認された。
  • 森本 泰夫, 和泉 弘人, 堀江 祐範, 吉浦 由貴子, 友永 泰介, 李 秉雨, 岡田 崇顧, 大藪 貴子, 明星 敏彦, 島田 学, 久 ...
    セッションID: O-35
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    吸入暴露試験は、ナノ粒子を含めた吸入性化学物質の有害性評価においてゴールドスタンダード試験と考えられるが、コストや設備等の問題があり、多くの施設で行うことは困難である。一方、気管内注入試験は、比較的簡便な手法であるが、肺毒性の十分な知見がなく有害性評価は限定的である。本研究の最終目標は、気管内注入試験が吸入曝露試験のスクリーニングに有用であるかを検討することであり、そのファーストステップとして同じナノ粒子試料を用い気管内注入試験および吸入曝露試験を実施し、肺内の反応性の差異を検討した。ナノ材料として、高い肺毒性を有する酸化ニッケルナノ粒子と比較的低毒性の二酸化チタンナノ粒子を用いた。気管内注入試験に関しては、F344ラットに0.2mg、1mg/ratの用量で気管内注入を行った。一方、吸入暴露試験に関しては、1.65-1.84 mg/m3の暴露濃度で4週間(6時間/日、5日/週)の吸入暴露を行った。両試験とも曝露終了後、3日後および1ヶ月後に解剖し、BALFの細胞解析と酸化的ストレスの指標であるHO-1濃度の解析を行った。
    酸化ニッケルナノ粒子に関しては、気管内注入試験も吸入暴露試験もBALFの総細胞数、好中球数、HO-1の濃度上昇を認めたが、気管内注入試験は持続傾向を認めた。二酸化チタンナノ粒子に関しては、気管内注入試験では、3日後、1週間後にBALFの好中球数とHO-1濃度の上昇を認めた。一方、吸入暴露試験では、肺の炎症反応はほとんど認めなかった。以上より、吸入暴露試験と気管内注入試験の反応性の差異は急性期を中心に認められおり、両者の相違を少なくするためには、肺炎症のエンドポイントは、急性期のみならず慢性期でも評価されることが必要と考えられた。
    本研究は経済産業省からの委託研究「ナノ材料の安全・安心確保のための国際先導的安全性評価技術の開発」による。
  • 坂本 義光, 小縣 昭夫, 北條 幹, 山本 行男, 広瀬 明彦, 井上 義之, 橋爪 直樹, 猪又 明子, 中江 大
    セッションID: O-36
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    (目的)多層カ-ボンナノチュ-ブ(MWCNT)は,陰嚢内/腹腔内投与によりラットに中皮腫を誘発するため,長期間ばく露によるアスベスト類似の呼吸器系への影響が懸念されている.本研究では,ヒトへのばく露条件を反映した経気管反復投与によるMWCNTのラット呼吸器系への影響を観察した.(材料・方法)動物は,Han:WIST系雄性ラット10週齢を用いた.MWCNTは,MWNT-7[長さ2μm,径75 nm,Fe含有量0.344%]を分散液に懸濁し,0.01,0.05及び0.25 mg/kg体重の用量で,各群20匹に,1回/4週間で12回(44週間)経気管噴霧投与した.動物は,投与終了後52週間を目処に飼育し,終了時生存例について,病理学的に検索した.(結果・考察)投与期間中の途中死亡例,瀕死例の発現,終了時生存例の一般症状及び体重増加推移に,投与と関連した異常は,認められなかった.終了時生存例における MWCNTの沈着は,主にマクロファージに貪食された状態で,肺胞腔,肺胞壁,細気管支や血管壁周囲間質及び細気管支周囲リンパ組織内に認められた.MWCNTの肺内沈着量は0.25 mg/kg群で顕著に多かったが,肉芽腫の形成はまれであった.また,呼吸細気管支,肺胞管及び肺胞に末梢性の増殖性病変が認められ,これらの病変の性状や投与との関連の有無については,現在検討中である.中皮細胞の増殖性病変としては,0.05及び0.25 mg/kg群で腹腔内中皮腫,0.2 5mg/kg群で心嚢膜の中皮腫,臓側胸膜の中皮細胞の過形成及び肥大が認められたが,いずれも発現率が低かった.またMWCNT投与群における肺実質及び胸膜における腫瘍の発現は認められなかった.以上より,ラットに経気管投与したMWCNTは肺の増殖性病変と低頻度ながら中皮種を誘発する可能性を示したが,その生物学的意義については現在なお検討中である.
  • 二口 充, 徐  結苟, 井上 義之, 高月 峰夫, 津田 洋幸, 酒々井 眞澄
    セッションID: O-37
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    これまでに我々は三井製カーボンナノチューブ(CNT-M)およびカーボンブラック(CB)の二段階発がん性試験において、発がん物質により誘発された腫瘍性病変とは別の領域に肺胞過形成様病変が観察された。今回、この病変の病理組織学的検索を行った。6週齢の雄F344ラットに N-nitrosobis (2-hydroxypropyl) amine (DHPN)を2週間0.2%の用量で飲水投与した。2週の休薬後より肺内噴霧を開始した。CNT-M噴霧試験では、250μg/mlの濃度で氷砂糖溶液に懸濁したCNT-Mを1回あたり0.5mlを週に1回の割合で44週まで肺内噴霧した。CB噴霧試験では、500μg/mlのCB/氷砂糖懸濁液を同様の方法で2週に1回の割合で24週まで肺内噴霧した。噴霧終了後、屠殺剖検し病理学的に肺腫瘍性病変の発生頻度・個数の定量解析を行った。さらに病変を形成する上皮を免疫組織学的に解析した。DHPNにより誘発された肺の腫瘍性病変(過形成、腺腫および腺癌)が観察され、これとは別の部位にCNT-Mを貪食したマクロファージが集族像が多数観察され、マクロファージを取り囲むように肺胞過形成様の病変が観察された。CB噴霧試験においても同様に、CBを貪食したマクロファージの周囲に肺胞過形成様病変が観察された。肺胞過形成様病変はいずれもSP-C陽性、NapsinA弱陽性、CC10陰性で、DHPNにより誘発された腫瘍性病変と同じ染色性を示した。以上の結果から肺マクロファージの周囲に発生した肺胞過形成様病変が腫瘍性病変であるかどうかが、CNT-MおよびCBの肺内噴霧による肺発がん性の評価に重要であることが示唆された。
  • 高橋 祐次, 小川 幸男, 高木 篤也, 辻 昌貴, 森田 紘一, 岸 宗佑, 今井田 克己, 菅野 純
    セッションID: O-38
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
    会議録・要旨集 フリー
    多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の慢性吸入毒性を調べるため、凝集体・凝固体を除去し単繊維成分のみを高度に分散した乾燥検体を得る方法(Taquann法)と、この検体をエアロゾル化するカートリッジ直噴式ダスト発生装置、及び暴露チャンバーを独自に開発し(J Tox Sci. 2013)、対照群、低用量群、高用量群の3群の構成でp53+/-マウスに2時間/日、週1回の暴露を5週間行った。暴露濃度の平均値は低用量1.2 mg/m3、高用量 2.5 mg/m3であった。エアロゾル化したMWCNT繊維の平均長は 7.3±4.9 µm、最大 33.0 µm、吸入終了直後にマウス肺から回収したMWCNT繊維の平均長は8.0±5.0 µm、最大33.1 µm(n=1)であり、エアロゾル化した繊維はその長さに関わらず、少なくとも肺門まで到達したと考えられた。吸入暴露直後の肺の病理組織検査では、凝集体・凝固体は観察されず、単離繊維が気管支上皮の粘膜層に小集合としてトラップされている像、終末細気管支から胸膜直下の肺胞内にまで到達している像が観察された。好中球浸潤像は弱く、肺胞内のMWCNTはもっぱらマクロファージに貪食されて存在していた。吸入暴露後13週目の所見として、肺には異物肉芽腫は認められず、単離MWCNTを貪食したマクロファージを肺胞内に認めた。横隔膜、胸膜面壁側には、MWCNTを貪食したマクロファージを伴う円形細胞小集簇巣を認め、そこを被覆する中皮の立方化を時に認めた。MWCNTは、吸入暴露により単線維は肺胞内にまで到達し、細気管支から肺胞レベルの病変を誘発すること、その一部は胸腔に達し、壁側胸膜面に中皮腫発がんを示唆する顕微鏡的病変を誘発することが確認された。(厚生労働科学研究費補助金による)
  • 大槻 剛巳, 前田 恵, 松崎 秀紀, 李 順姫, 武井 直子, 西村 泰光
    セッションID: O-39
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
    会議録・要旨集 フリー
    珪酸とアスベストの慢性職業性曝露は塵肺症として知られる肺の繊維化を惹起する。珪酸曝露症例は珪肺症と呼ばれるが,合併症として強皮症,関節リウマチ(Caplan症候群として知られる),ANCA関連血管炎などの自己免疫疾患が知られている。従来,珪酸のアジュバントとしての作用と捉えられてきたが,我々は,珪酸曝露が直接免疫系に対して,なんらかの影響(毒性あるいは活性化)を惹起する可能性を考えて,実験系あるいは症例の末梢血単核球や,リンパ球などを用いて検討を加えてきた。アスベストについては,悪性中皮腫や肺癌などの悪性腫瘍の合併が知られており,この観点でもアスベストによる免疫系への毒性としての,腫瘍免疫の減衰について,いくつかの知見を得ているが,本演題では珪酸の免疫担当細胞への影響について,報告する。まずリンパ球の細胞死に関連が深いCD95/Fas分子について,可溶性Fasやその他のFas媒介アポトーシス阻害因子が珪肺症例で上昇していること。一方,機能性抗Fas自己抗体の検出や内因性生理的Fas誘導アポトーシスの阻害因子の珪肺症例末梢血単核球での発現減弱などの所見より,珪肺症例では慢性活性化を受け,長期生存にいたり,おそらくは自己抗原とも反応している一群と,細胞死に陥ってはリクルートされている一群がある可能性が想起された。前者は,反応性T細胞で,その他可溶性IL-2受容体の血清中での上昇や,Decoy Receptor 3 (DcR3)分子の血漿中濃度上昇,PD-1 mRNAの発現上昇などの活性化指標が検出された。一方,後者は制御性T細胞の可能性があり,珪肺症例制御性T細胞では活性化に伴うFas分子の過剰発現とともに,早期の細胞死が誘導されることが観察された。これらの免疫バランスの異常が,珪肺症例での自己寛容の破綻を惹起している可能性がある。
  • 平井 敏郎, 吉岡 靖雄, 市橋 宏一, 森 宣瑛, 西嶌 伸郎, 半田 貴之, 髙橋 秀樹, 角田 慎一, 東阪 和馬, 堤 康央
    セッションID: O-40
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
    会議録・要旨集 フリー
    ナノマテリアル(NM)の使用は多くの産業で広がり続けており、2015年にはその世界市場が50兆円に達するとの予想もされている。一方で、PM2.5といった環境中微粒子への曝露が、アレルギーの悪化等、様々な健康被害を引き起こすことは疫学的な事実であり、微粒子状素材であるNMの安全性に対する詳細な評価が急がれている。微粒子がNLRP3インフラマソームを介した起炎性を発揮することが明らかとなって以降、微粒子による健康影響に対して、自然免疫を介した起炎性による説明が試みられてきた。本観点から、NMの安全性研究においても、自然免疫系との関連が多く研究されている。一方で、微粒子により誘発される病態の多くが未だに解明できない現状においては、微粒子に対する新たな免疫作用の可能性を考慮することが、NMの安全性確保においても重要であろう。本検討では、これまで全く解析されてこなかった、微粒子そのものに対する獲得免疫誘導の可能性(感作性)を、その抗菌作用から広く使用されるナノ銀粒子(nAg)をモデルに評価した。一般に、ハプテンや金属イオンなどの感作性物質を曝露後、再度同様の物質に曝露すると、獲得免疫により炎症反応が増大する。そこで本検討では、nAgを投与後、再度nAgを曝露した際(惹起投与)の炎症反応を指標として、nAgに対する獲得免疫誘導の可能性を評価した。その結果、nAgを事前に曝露した群において、非曝露群よりも強い投与部位(耳介)の腫脹が観察された。また、nAg投与とは異なり、銀イオンの投与では腫脹は観察されなかった。従って、nAgに対する起炎性の増強は、銀イオンに対する金属アレルギー応答ではなく、nAgそのものに対して獲得免疫応答が誘導された結果であることが示唆された。現在、nAgの獲得免疫系による認識機構をより詳細に追究し、獲得免疫系による微粒子認識の証明を試みている。
  • 西嶌 伸郎, 吉岡 靖雄, 平井 敏郎, 高橋 秀樹, 山口 真奈美, 半田 貴之, 角田 慎一, 東阪 和馬, 堤 康央
    セッションID: O-41
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
    会議録・要旨集 フリー
    ナノマテリアル(NM)のハザードに関する報告が相次ぐ中で、その安全性確保が急務となっている。本観点から我々は、有効かつ安全なNMの創製および設計指針の構築(ナノ最適デザイン)に資する安全性情報の集積を図る、ナノ安全科学研究を推進している。NMは粒子径の減少に伴い、従来までのサブミクロンサイズの素材と比較して、単位重量当たりの粒子数や表面積が飛躍的に増加する。これまで、NMの安全性評価においては、粒子径の異なる素材のハザードを比較する場合、同じ重量を作用させ比較することが主流であったため、単位粒子数や単位表面積当たりにおけるハザードの比較はほとんどなされていないのが現状である。そこで本検討では、様々な粒子径の非晶質シリカ(10-1000 nm)を用い、単位粒子数や単位表面積当たりにおけるハザードの比較検討を試みた。重量濃度を揃えた各粒子径のシリカを、ヒトマクロファージ細胞株であるTHP-1細胞に添加し、炎症性サイトカインであるIL-1βの産生量を評価した。その結果、単位重量当たりのIL-1β産生量は、50-1000 nmのシリカ作用群では、粒子径の減少に依存して増加した一方で、50 nm以下のナノシリカ作用群では、逆に低下することが明らかとなった。この結果を、単位粒子数当たりのIL-1β産生量に換算して評価すると、粒子径が増加するほど、起炎性が高いことが示された。一方で、単位表面積当たりのIL-1β産生は、50-1000 nmのシリカではほぼ同等となる一方で、50 nm以下のシリカでは低下することが明らかとなった。従って、50-1000 nmにおける、粒子径の減少に伴う単位重量当たりの起炎性の増大は、単位重量当たりの表面積の増加に依存していることが明らかとなった。現在、50 nm以下のナノシリカにおいて、起炎性が低下するメカニズムを追及しているところである。
  • 山口 真奈美, 吉岡 靖雄, 平井 敏郎, 髙橋 秀樹, 角田 慎一, 東阪 和馬, 堤 康央
    セッションID: O-42
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
    会議録・要旨集 フリー
    金ナノ粒子は、ナノサイズに微小化されたことで単位重量当たりの比表面積が増大し、多数の化合物を結合させることが可能となる。さらに、表面増強ラマン散乱により高感度に検出できるため、疾患の診断薬やDDSキャリアの開発など、金ナノ粒子の医薬品への応用が進められている。医薬品としての応用に向けて、金ナノ粒子の安全性確保が必須であり、体内動態・ハザード発現に関して、粒子径や表面修飾などの物性と関連付けた情報の収集が重要である。しかし、金ナノ粒子の急性的な毒性評価は進んでいるものの、長期的な検討は、ほとんど行われていない。そこで本検討では、様々な粒子径の金ナノ粒子を用い、その血中残留性や血液毒性の有無に関して長期的に評価した。粒子径10、30、50、70、90 nmの金ナノ粒子を、BALB/cマウスに単回尾静脈内投与した。投与から56日後まで経日的に採血し、ICP-MSを用いて血中金量を測定した。その結果、投与から24時間後、また56日後において、いずれの粒子径の金ナノ粒子も血中からほとんど検出されなかった。しかし、24時間後と56日後の血液で血球検査をしたところ、24時間後の血液では群間に差は認められなかったが、56日後の血液では粒子径の増大に伴い白血球数が減少する傾向が観察された。本結果から、金ナノ粒子は投与から24時間後には、血液からはほとんど消失するものの、体外には排泄されず、生体影響を引き起こした可能性が考えられた。さらに、粒子径依存的に白血球が減少したことから、粒子径によって臓器への蓄積性が異なる可能性も考えられた。現在、金粒子投与後の長期的な臓器分布の解析を進めている。本検討は、金ナノ粒子の安全性評価を長期的に行う必要性を示したものであり、安全かつ有効なナノ医薬の開発に資する情報となることを期待している。
優秀研究発表・一般演題 ポスター
優秀研究発表 ポスター
  • 李 辰竜, 徳本 真紀, 藤原 泰之, 佐藤 雅彦
    セッションID: P-1
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々は、ヒト由来の腎近位尿細管上皮細胞(HK-2細胞)を用いて、カドミウム(Cd)によるアポトーシス誘導にp53の過剰蓄積が関わっていることを見いだした。しかも、ユビキチンプロテアソームシステムのE2転移酵素群の一つであるUbe2dファミリーの遺伝子発現抑制がp53の過剰蓄積を引き起こすことも明らかにしている。そこで今回は、CdによるUbe2dファミリーの遺伝子発現抑制に関与する転写因子の同定を行った。
    【方法】HK-2細胞を40 µMのCdで3時間処理して核画分を抽出した。核画分を用いてProtein/DNAアレイを行い、Cdによって転写活性が変動する転写因子を同定した。siRNA法を用いて遺伝子発現を抑制させた後、遺伝子発現の変動(リアルタイムRT-PCR法)および細胞生存率(MTT法)を測定した。
    【結果および考察】Protein/DNAアレイの結果、20種の転写因子のDNA結合活性(転写活性)がCdによって上昇し、28種の転写因子活性がCdにより低下した。Cdによる転写活性の低下が認められた転写因子のうち、FOXF1の結合配列がUbe2dファミリーに属するUBE2D4遺伝子の上流に存在することが確認された。さらに、FOXF1のノックダウンはUBE2D4 mRNAレベルを有意に減少させ、HK-2細胞の生存率も有意に低下させた。以上の結果から、Cdは、FOXF1の転写活性を阻害し、UBE2D4遺伝子の発現抑制を介して細胞に障害を与える可能性が示唆された。
  • 村上 正樹, 藤江 智也, 松村 実生, 藤原 泰之, 木村 朋紀, 安池 修之, 山本 千夏, 佐藤 雅彦, 鍜冶 利幸
    セッションID: P-2
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
    会議録・要旨集 フリー
    【背景・目的】有機金属化合物はそれを構成する分子構造や金属イオンとは異なる生物活性を持ち得るため,生命科学への活用が期待される。メタロチオネイン(MT)は有害重金属の毒性軽減などに関与するが、誘導機構には不明な点が多い。本研究では,有機アンチモン化合物ライブラリーから見出された化合物(Sb35)によるMT誘導の特性について,ウシ大動脈由来血管内皮細胞(BAE)を用いて調べた。
    【方法】BAEをSb35で処理し,MTサブタイプおよびMTF-1 mRNAの発現をReal-Time RT PCR法により評価した。金属応答配列MREおよび抗酸化応答配列AREの活性をDual Luciferase Assayにより測定した。
    【結果・考察】Sb35は,BAEが発現するMTのすべてのサブタイプ(MT-1A,MT-1EおよびMT-2)のmRNA発現を濃度依存的に増加させたが,MREを顕著に活性化しなかった。しかしながら,転写因子MTF-1をノックダウンすると,すべてのMTサブタイプの発現が抑制された。一方,Sb35は転写因子Nrf2を活性化し,AREを強く活性化した。そこでNrf2をノックダウンしたところ,MT-1AおよびMT-1EのmRNA発現が有意に抑制された。MT-2の発現には変化は認められなかった。以上の結果より,Sb35はすべてのMTサブタイプの遺伝子発現を誘導するが,MT-1AおよびMT-1Eの誘導はMTF-1-MRE経路とNrf2-ARE経路の両方に介在されること,これに対しMT-2の誘導はNrf2-ARE経路に依存せず,MTF-1-MRE経路に介在されることが示唆された。Sb35がNrf2の活性化によってサブタイプ選択的にMT遺伝子の発現を誘導することは,この有機アンチモン化合物がMTの誘導機構解析の有用なツールであることを示している。
  • 徳本 真紀, 沓掛 夏子, 山西 絵利加, 阿南 弥寿美, 小椋 康光
    セッションID: P-3
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ヒ素 (As) が3価の無機態 (iAsIII) として生体内に取り込まれると3価ヒ素メチル転移酵素 (As3MT) によりメチル化代謝を受け、主に尿中に排出される。Asと同じ類金属であるテルル (Te) も生体内でメチル化代謝されることが知られているが、その分子機構すなわちメチル化に関わる酵素は不明である。そこで、ヒトAs3MTの組換えタンパク質およびAs3MTをノックダウンした細胞を用いて、iAsIIIと同様に4価の無機Te (iTeIV) もAs3MTの基質となり得るか、またAs3MTがiTeIVの毒性軽減に寄与するかを評価した。
    【方法】His-tagを付したAs3MT (rhAs3MT) を作製し、S-adenosyl-L-methionine、グルタチオン存在下でiAsIIIあるいはiTeIVを反応させた。その後、除タンパクし、H2O2により類金属化合物を酸化してHPLC-ICP-MSにより分析した。次に、ヒト肝癌由来HepG2細胞のAs3MTをノックダウンした細胞をiAsIIIあるいはiTeIVで処理して細胞生存率を測定した。As3MTのタンパク質量はWestern blotting法により、mRNA量はreal time RT-PCR法により測定した。
    【結果・考察】rhAs3MTによりiAsIIIはメチル化されたが、iTeIVのメチル化代謝物は検出されなかった。また、As3MTの発現の有無によるiAsIIIおよびiTeIVによる細胞毒性に違いは認められなかった。以上のことから、本実験条件下ではiTeIVのメチル化にAs3MTが関与する可能性は低いと考えられた。また、As3MTによるiAsIIIのメチル化は、必ずしもiAsIIIの解毒作用を伴わないことが示唆された。
  • 竹本 拓矢, 石原 康宏, 石田 敦彦, 山崎 岳
    セッションID: P-4
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
    会議録・要旨集 フリー
     メチル水銀 (MeHg) は水俣病の原因物質であり、これまでニューロンに対する毒性が広く調べられてきた。しかし、脳内にはニューロンの10倍以上のグリア細胞が存在し、中でも、グリア細胞の大多数を占めるアストロサイトは、生存因子の放出やイオン環境の維持などによりニューロンの生存に関与している。さらに、神経障害時における活性化も報告されており、MeHgの脳への影響を理解するには、アストロサイトへの作用も併せて調べる必要がある。本研究では、ニューロン-アストロサイト相互作用に着目して、アストロサイトに対するMeHgの影響を検討した。
     ラット初代ニューロンおよび初代アストロサイトをMeHgで処置すると、いずれも濃度依存的に細胞死が引き起こされたが、アストロサイトはニューロンよりもMeHgに対して耐性を示した。加えて、海馬スライス中のニューロンは、単独培養のニューロンと比較して、MeHg耐性が増大した。また、MeHg処置により、アストロサイトの神経成長因子 (NGF) および脳由来神経栄養因子 (BDNF) の発現上昇、および培養上清中への放出が見られた。ヒト神経芽細胞腫SH-SY5YをNGFもしくはBDNFで処置しても、MeHgによる細胞死に影響しなかったが、MeHg処置したアストロサイトのコンディショナルメディウムは、MeHgが引き起こすSH-SY5Yの細胞死を抑制した。さらに、その細胞死抑制効果はNGF受容体TrkAのアンタゴニストであるGW-441756、BDNF受容体TrkBのアンタゴニストであるCyclotraxin-Bにより消失した。
     以上より、アストロサイトはMeHgに応答してNGFとBDNFを放出し、ニューロンを保護していると考えられる。加えて、NGFやBDNF単独では保護作用を示さなかったことから、保護作用におけるNGF、BDNF以外の因子の関与も示唆される。
  • 石原 康宏, 川見 友人, 石田 敦彦, 山崎 岳
    セッションID: P-5
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
    会議録・要旨集 フリー
     最近、脳におけるステロイドホルモンの役割が注目されている。脳内ステロイドは、スパイン新生や樹状突起の伸長などの生理機能を有し、また、様々な病態から神経細胞を保護する。しかし、化学物質とステロイドとの関連は、ほとんど調べられていない。本研究では、環境化学物質であるトリブチルスズ(TBT)により生じる神経障害に対する、女性ホルモン、プロゲステロン(Prog)とエストラジオール(E2)の作用を調べた。
     ラット海馬スライスをTBTで処置すると、濃度依存的に神経細胞死が引き起こされた。ProgとE2は、ともにTBTによる神経細胞死を大きく抑制した。Progからアロプレグナノロン(Allo)への変換酵素5α-還元酵素を阻害するとProgの神経保護作用が消失したこと、AlloはTBTによる神経障害を抑制したことから、Progから変換されたAlloが、神経保護作用を有していると考えられる。また、Alloによる神経保護は、GABAA受容体のアンタゴニストであるビククリンによりキャンセルされたことから、GABAA受容体を介することが示唆される。一方、E2による保護作用は、エストロゲン受容体アンタゴニストであるICI182,780により抑制されたことから、エストロゲン受容体依存的である。E2は、TBTによる活性酸素生成を抑制した。また、TBTによりAktが不活性化し、E2はAktを活性化した。さらに、Akt阻害薬トリシリビンは、E2の活性酸素減弱作用と神経保護作用を抑制した。従って、E2による神経保護には、Akt活性化を介した活性酸素生成抑制が関与すると考えられる。
     本研究では、女性ホルモンがTBTによる神経障害を抑制することを示し、その抑制メカニズムを明らかにした。女性ホルモンの脳内での役割の1つは、環境化学物質からの神経保護であるかもしれない。
  • 河崎 陽一, 八木 健太, 坪井 千明, 正岡 康幸, 江角 悟, 北村 佳久, 千堂 年昭
    セッションID: P-6
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【目的】近年,印刷会社の従業員が胆のうがんを発症し話題となった。その発症原因物質は,ジクロロメタン(DCM)および1,2-ジクロロプロパン(DCP)とされている。我々は,以前の研究において,インクに含有する重合開始剤がヒト末梢血単核球を死滅させることを突き止めた。すなわち,印刷会社特異的な材料であるインクも細胞傷害に関与していることが推察される。そこで今回,DCMおよびDCPの細胞傷害性に対する重合開始剤の相加・相乗効果について検討した。
    【方法】細胞毒性試験は,MTT assayで評価した。96穴プレートにヒト胎児正常肺細胞(MRC-5)を1×105 cells/well播種し,対象薬剤を添加後5%CO2,37°Cで24時間培養した。その後,MTT溶液を加え3時間培養した。吸光度は,マイクロプレートリーダーを用いた。また,細胞死の形態観察は,フローサイトメーターを用いた。6穴プレートに細胞液(1×103 cells/cm2)と対象薬剤を添加し,5%CO2,37°Cで24時間培養した。その後Annexin VおよびPropidium Iodideを添加し,室温にて15分間反応させた後,FACSCalliburを用いて細胞数を計測した。
    【結果および考察】10-50 mMのDCP単独曝露において,有意な細胞生存率の低下を認めた。一方,DCM単独曝露では細胞死を認めなかった。また,DCPと2,2-DMPAP, 1-HCHPK, MBBあるいはMTMPの同時曝露では,相加・相乗効果を認めた。一方,DCPと2-EHDABあるいは2-ITXの同時曝露では,相加・相乗効果は認められなかった。さらに,同時曝露により,アポトーシス細胞の有意な増加を認めた。本成果は,印刷会社特異的に発症した胆のうがんの原因究明の一助になると考える。
  • 安孫子 ユミ, 溝河 真衣, 熊谷 嘉人
    セッションID: P-7
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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     [目的] Keap1/Nrf2システムは,抗酸化タンパク質,第二相薬物代謝酵素群および第三相トランスポーター群を包括的に制御する生体防御システムの一つである.転写因子Nrf2を負に制御するKeap1が親電子物質により修飾されると,Nrf2は活性化する.タンパク質世界中で広く摂取されるCoriandrum sativum L. 葉の抽出物 (CSLE) がNrf2を活性化することを示唆した報告はあるが,如何なる成分がCSLEによる本活性化に寄与するか不明である.そこで本研究では,CSLE中のNrf2活性化成分をUPLC-MSE解析を駆使して同定した.
    [結果および考察] CSLEにHepG2細胞を曝露したところ,Nrf2の活性化および下流タンパク質の誘導が見られた.CSLE中のNrf2活性化成分を同定するために,CSLEを分取用液体クロマトグラフィーにてI~V画分に分離し,各画分にHepG2細胞を曝露したところ,何れの画分でもNrf2の活性化が見られた.この結果を支持するように,画分Iを除く何れの画分にもα,β-不飽和アルデヒド構造を持つ(E)-2-alkenalを基本骨格としたC10~C13の炭素数の異なる脂肪族親電子物質が含まれており,炭素数というよりもα,β-不飽和アルデヒド構造がNrf2の活性化に重要であると示唆された.これを支持するように,C3 の(E)-2-alkenalである(E)-2-butenal曝露ではKeap1の修飾およびNrf2の活性化が認められたが,α,β-不飽和アルデヒド構造を持たないbutanalではNrf2の活性化は認められなかった.本検討から,Coriandrum sativum L.葉は,Nrf2活性化能を有する (E)-2-alkenalを基本骨格とした炭素数の異なる複数の脂肪族親電子物質を含有する植物であることが示されたことになる.
  • 水上 拓郎, 百瀬 暖佳, 倉光 球, 滝澤 和也, 斎藤 益満, 古畑 啓子, 荒木 久美子, 石井 健, 浜口 功
    セッションID: P-8
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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     近年、免疫賦活化能をより一層高める目的で、新規アジュバントを添加するワクチンの開発や、接種ルートを経鼻や経皮に変更する手法の開発が進んでいる。しかし、アジュバントや接種ルートの安全性・有効性評価法に関しては従来の非臨床試験等に依存している現状であり、次々と開発される次世代ワクチンやアジュバント、多様な接種ルートに対応する新しい安全性試験法の開発は殆どされてこなかったといえる。我々は従来のワクチン安全性試験法に代わる新しい試験法として、トキシコゲノミクスをベースとした試験法を開発し (Vaccine. 2007; 25: 3355-64)、そこで同定された複数のバイオマーカーを1 wellで測定できる迅速試験法を開発することに成功した (Vaccine. 2008; 26: 4686-96.)。さらに、これらの方法によりH5N1インフルエンザワクチンの新規安全性評価法も開発し、18個のバイオマーカーを同定することに成功した (Vaccine. 2008; 26: 2270-83)。
     そこで本研究では、インフレンザワクチンをモデルに、我々が同定した新規バイオマーカーにより新規アジュバント(CpG)の安全性が評価できるか、接種ルートの違いを評価できるかを検討した。検体 (生食、HAワクチン (HA)、CpGアジュバント含有HAワクチン(HA+CpG))を経鼻ルートでBalb/cマウスに、また毒性の異なる種々のHAワクチンをラットに腹腔内投与し、接種翌日の体重、末梢血解析及びFACS解析を行った。また肺組織の遺伝子発現をQGP (Quanti Gene Plex) 法にて解析した。その結果、経鼻投与後1日目において体重減少の認められたHA+CpG接種群のみで、ほぼ全てのバイオマーカーの有意な遺伝子発現上昇が認められた。また、腹腔内投与モデルであるラットによる実験では、体重減少率(毒性)と遺伝子発現の上昇は相関し、我々の同定したバイオマーカーによって接種ルートやアジュバントの有無に関わらず、ワクチンの安全性を評価できる事が明らかとなった。また、本試験法を多施設間で標準化することにも成功した。
  • 森 宣瑛, 吉岡 靖雄, 平井 敏郎, 髙橋 秀樹, 市橋 宏一, 宇髙 麻子, 植村 瑛一郎, 西嶌 伸郎, 山口 真奈美, 半田 貴之, ...
    セッションID: P-9
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    近年、腸内細菌を有さないマウスの検討などにより、腸内細菌が宿主免疫細胞におよぼす影響が明らかになりつつあり、腸内細菌叢の有無が、免疫細胞の発達や各種免疫疾患の悪化・改善に寄与することが判明している。一方で、食事や抗生物質の服用などによる腸内細菌叢の変動が、免疫機能に与える影響は未だ不明な点が多い。従って、今後、環境要因による腸内細菌叢の変動を理解・制御できれば、各種疾患の予防や、健康増進に繋がるものと期待される。本観点から我々は、食餌成分や化学物質などが腸内細菌叢に与える影響を評価すると共に、腸内細菌叢の変動と宿主免疫機能の連関解析を図っている。本検討では、腸内細菌叢に最も大きな変動を誘導すると考えられる抗生物質の曝露が、宿主免疫系におよぼす影響を評価した。2週間連続で抗生物質を投与し、腸内細菌数の変動を解析したところ、コントロール群と比較して腸内細菌数が減少していた。次に、抗生物質を投与後、コレラトキシンとニワトリ卵白アルブミン(OVA)を経口免疫したところ、コントロール群と比較して、OVA特異的IgG・IgG1・IgEがほとんど誘導されないことが明らかとなった。また、抗生物質を投与した後、3週間後から免疫を開始した場合においても同様の傾向が認められた。次に、抗体産生抑制のメカニズムを解析するため、抗生物質を2週間投与後、宿主免疫系への影響を解析した。その結果、腸管の免疫組織であるパイエル板では、抗生物質投与によりCD4陽性T細胞の割合が減少しており、抗生物質投与終了3週間後にも、同様の傾向が認められた。即ち、抗生物質の一時的な投与は、長期間に渡って宿主免疫系に影響をおよぼし続けることが明らかとなった。今後、抗生物質をはじめとした様々な物質による、腸内細菌叢への作用機構、腸内細菌叢の変動による生体影響の関係を精査し、新たな毒性学・安全科学研究を推進したいと考えている。
  • 寒川 祐見, 吉田 敏則, 世戸 孝樹, 宮下 泰志, 中村 美智, 林 新茂, 渋谷 淳
    セッションID: P-10
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【背景・目的】大腸がんは先進国でのがんによる死亡原因の上位の疾患であり、効果的な予防・治療法の開発は長寿社会を迎えた現在の医療において重要課題である。大腸がんの背景病変として炎症性腸疾患が知られており、炎症性腸疾患患者の約40%で大腸炎から大腸がんに進展するとの報告がある。今回、マウスのDSS誘発性大腸炎モデルを用いて、新規大腸炎抑制物質の探索を行ったのでその概要を報告する。【方法】BALB/cAnNCrlCrlj系雌性マウスに抗酸化剤である酵素処理イソクエルシトリン(EMIQ)を0.5および1.5%、α-リポ酸を0.2%、ならびに血小板凝集抑制剤であるシロスタゾール(CZ)を0.1および0.3%の各用量で混餌投与した。混餌投与開始5日目より5%DSSを8日間混水投与して大腸炎を誘発した。CZについては10 mg/kgの用量で1日1回強制経口投与する群(CZ 10 mg/kg群)を別途設け、5%DSS処置開始日から7日間反復経口投与を行った。動物数は各群12匹とし、比較のためにDSS単独処置群を設定した。試験期間中、体重および糞便スコア(軟便、潜血)を測定し、剖検時に大腸の長さを測定後、大腸の病理組織学的検査を実施した。【結果】DSS処置によりいずれの処置群においても体重減少が認められた。糞便スコアは継時的に増加した。DSS単独処置群と比較して、他の併用処置群において軟便スコアは有意に減少し、CZ 10 mg/kg群では潜血スコアが有意に減少した。α-リポ酸0.2%群、CZ 0.3%群およびCZ 10 mg/kg群においてDSS処置による大腸の長さの短縮が有意に抑制された。病理組織学的にDSS誘発性の大腸の粘膜傷害および炎症がいずれの併用処置群においても抑制された。【考察】今回使用した3剤は抗酸化作用、抗炎症作用等により大腸炎を抑制したと考えられ、大腸炎抑制物質としての有効性が示唆された。
  • 大向 英夫, 根倉 司, 立花 滋博, 新藤 智子, 太田 亮
    セッションID: P-11
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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     ラットおよびマウスの新生児期に低用量のジエチルスチルベストロール(DES)を投与することにより遅発性の性周期異常を誘発することが明らかになったが、その発生時期には個体差がみられた。そこで、視床下部-下垂体-性腺軸の反応性の異なる2種の近交系ラット(Hatanoラット)を用いて新生児期DES暴露を行い遺伝的要因の関与について調べた。
     試験は、Hatano高および低回避(HAAおよびLAA)ラットの雌新生児に、哺育1日から哺育5日までの間、1日1回、0(媒体対照群)、 0.05および0.5 μg/kg/dayの用量でDESを強制経口投与し、体重推移(生後1日~52週齢)、性成熟(膣開口)、性周期(8週齢~37週齢)、能動的回避学習試験(49または50週齢)、握力検査(50週齢)および器官重量(52週齢)の検査を行った。
     その結果、性成熟の観察では0.05 μg/kg以上を投与したLAAラットにおいて膣開口時期が同系統の対照群と比較して有意に早まったが、HAAラットでは膣開口時期にDES投与の影響は認められなかった。体重推移では0.05 μg/kg以上を投与したLAAラットにおいて同系統の対照群と比較して高値を示したが、HAAラットではDES投与の影響は認められなかった。性周期の観察ではHAAラットおよびLAAラットの0.5 μg/kg群において遅発性の性周期異常が観察された。回避学習および握力測定では、両系統ともDES投与の影響は認められなかった。器官重量は下垂体および副腎の重量増加がHAAラットおよびLAAラット共に0.5 μg/kg群で認められた。
     以上の結果から、エストロゲン活性を有するDES投与において、性周期異常は遺伝的要因に関係なく発現するが、体重および性成熟への影響は遺伝的要因に左右されるものと考えられた。また、12ヶ月時における内分泌系の器官重量は化学物質の低用量影響を評価する上で有用な指標の一つになると考えられた。
  • 小野田 淳人, 梅澤 雅和, 井原 智美, 菅又 昌雄, 武田 健
    セッションID: P-12
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【背景・目的】ナノ粒子は比表面積が大きいため、質量あたりの比活性が大きい物質である。また、粒子径が小さいことにより、曝露部位から他の組織へ移行しやすいことが報告され、胎仔の脳への移行も確認されている。我々は胎仔の脳への移行経路の一つと考えられる脳血管周辺、特に脳血管周囲マクロファージ (PVM) に焦点を置いた。PVMは、微小血管と脳実質の境界空間に存在し、血管からの異物や病原体、実質内の老廃物処理を担う細胞である。本研究では、カーボンブラックナノ粒子 (CB-NP) と酸化チタンナノ粒子 (TiO2-NP) の胎仔期曝露がPVMとその血管に接触するアストロサイトに及ぼす影響を、組織学的解析を中心に検証する。
    【方法】凝集粒子を除去した一次粒子径14 nmのCB-NP (95 µg/kg体重) 、あるいは一次粒子径21 nmのルチル・アナターゼ型のTiO2-NP (8 mg/kg体重) を、妊娠5、9日目のICR系妊娠マウスに点鼻投与した。6週齢と12週齢の雄性産仔から脳を摘出し、PAS (Periodic acid-Schiff) 染色、電子顕微鏡観察、PAS-GFAP (Glial fibrillary acidic protein) 重染色を行い、組織学的解析を実施した。
    【結果】PAS染色の結果、CB-NP曝露群において2‐3倍に肥大化したPVM消化顆粒が観察されたほか、PAS陽性PVMの細胞数が有意に減少していた。特に大脳皮質、海馬、視床下部、中脳、小脳、延髄でPAS陽性PVM細胞数の有意な減少を示した。電子顕微鏡観察では、PVM消化顆粒が異常構造を形成し、アストロサイトのエンドフット膨潤化が確認された。PAS‐GFAP重染色の結果、大脳皮質でのアストロサイトのGFAP発現量増加が確認された。このGFAP陽性アストロサイトのエンドフットは肥大した顆粒を持つPVMに接触していた。TiO2-NP曝露群もCB-NP群と同様にPVM消化顆粒の肥大化、GFAP発現量増加が認められた。
    【考察・結論】ナノ粒子の胎仔期曝露がPVMとアストロサイトに形態変化を引き起こすことを示した。領域別解析の結果、血管密度の大きい領域で特に炭素ナノ粒子の影響を受けることが予想される。
  • 小林 憲弘, 田中 亮太, 竹原 広, 納屋 聖人, 久保田 領志, 五十嵐 良明, 広瀬 明彦
    セッションID: P-13
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
    会議録・要旨集 フリー
    近年,ナノマテリアルの曝露により生殖・発生毒性が発現することが報告されている.ナノマテリアルの生体影響を総合的に評価する上で,生殖・発生毒性の評価は重要であるが,その作用機序や曝露後の体内動態についてはまだ十分に解明されていないことから,より詳細な検討が必要である.本研究では,多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を妊娠マウスに反復気管内投与し,催奇形性を評価した.1%カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)を用いて液中分散させたMWCNTを妊娠6,9,12,15日にそれぞれ0(対照群),0.5,1,および2 mg/kg bwの用量で反復気管内投与し,妊娠17日に帝王切開して胎児への影響を検索した.また,4回の反復気管内投与自体が妊娠マウスに負荷を与えていないことを確認するため,無処置群と麻酔群を設定した.各群9~11匹の母動物および各群127~156匹の胎児を用いて評価した.その結果,MWCNT投与群で胎児体重が低値傾向を示し,2 mg/kg群で対照群に比べ雄胎児の体重が有意な低値を示した.MWCNT投与による発育抑制と考えられる.また,0.5 mg/kg群で平均死亡胚・胎児数が有意な高値を示したが,1 mg/kg以上の群では対照群との間に有意差は認められなかった.外表観察の結果,対照群で裂手および巻尾が同一個体の1例に,1 mg/kg群で短尾が1例に認められたが,1 mg/kg以上の群では異常はみられなかったことから,自然発生による変化と考えられる.なお,黄体数,着床痕数,生存胎児胎盤重量については,いずれの投与群も対照群との有意差はみられなかった.今回,既存の研究報告および我々の過去の試験においてマウス胎児の奇形がみられたMWCNTの用量(3 mg/kg)よりも高用量(合計で最大8 mg/kg)で投与したにも関わらず胎児の奇形がみられなかったことから,今後は,単回気管内投与と反復気管内投与による影響発現の差について更なる検討を行う予定である.
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