日本地球化学会年会要旨集
2008年度日本地球化学会第55回年会講演要旨集
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口頭発表(第一日)
地球外および海底系熱水系有機物と生命の起源
  • George D. Cody, Conel M. O' D. Alexander, Marilyn Fogel, 藪田 ひかる
    セッションID: 1A01 21-01
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    炭素質コンドライト中の有機物は星間物質中の反応や、それに続く初期太陽系星雲の形成・進化に伴う反応、さらに隕石母天体中での水熱変成などによる反応といった一連の化学史を記録している可能性がある。近年の様々な分類に属するコンドライト中の不溶性有機物をNMRやXANEで分析することにより、単純な前駆体分子から起きるある種の反応が明らかなった。一方、私たちは、不溶性有機物の同位体の特徴は、室内実験で得られた反応過程から説明される同位体的変化とは相関しないことを見いだした。
  • 奈良岡 浩, 大場 康弘
    セッションID: 1A02 21-02
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    元素の宇宙存在度で、化学反応的に不活性なヘリウムを除いて、存在度の最も高い水素・酸素・炭素・窒素は有機物を構成する元素である。これを反映して、星間に存在する分子の多くがこれらの元素の組み合わせからなっており、CO, H2O, NH3, HCN, HCHOなどが星間分子として存在度が高い。これらの分子からの生体関連化合物の非生物的生成過程(化学進化)がいつ、どこで、どのように起こったかは非常に興味が持たれる。有機化学の知識ではこれら簡単な分子からアミノ酸・カルボン酸・糖・核酸塩基などが生成することが知られているが、反応を進めるためには液体の水で加熱(加水分解)することが必要である。原始太陽系における始原物質のひとつである炭素質コンドライトには液体の水による作用が知られており、始原天体上における水質変成や熱変成が始源的有機物をどのように変化させるかは化学進化を理解する上で重要である。本発表では、炭素質隕石中に含まれる有機物を熱水反応させ、その化学・同位体的特徴を議論する。
  • 山岸 明彦, 矢野 創, 小林 憲正, 横堀 伸一, 河合 秀幸, 橋本 博文, 山下 雅道
    セッションID: 1A03 21-03
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    「TANPOPO」(たんぽぽ、蒲公英、dandelion)は綿毛のついた種子を風に乗せて頒布し、その生息域を広げる多年草である。我々は、この名前のもと、ISS-JEM(国際宇宙ステーション・日本実験棟)上での微生物と生命材料となり得る有機化合物の天体間の移動の可能性の検討と微小隕石の検出および解析実験を提案する。我々は、超低密度エアロゲルを用いることで、微小隕石やその他の微粒子を捕集することが可能であると考えている。低軌道上で超低密度エアロゲルを一定期間曝露することで宇宙空間で微粒子を捕集する。エアロゲル表面と衝突トラックの顕微観察の後、エアロゲルの様々な解析を行う。。衝突トラックの詳細な検討により、ISS周辺のデブリのサイズと速度が明らかにできると期待される。エアロゲル中に残存した粒子に関して、鉱物学的、有機化学的、及び微生物学的な検討を行う。一方、宇宙環境下での微生物の生存可能性について検討するため、微生物を直接宇宙空間に曝露する実験も行う。同様に、宇宙環境下での有機化合物の変性の可能性を検討するため、有機化合物の宇宙空間への直接曝露実験も行う。これらの実験を行うための装置はすべて受動的な装置であり、そのための装置の基本構造、装置回収後の解析法も、既に確立されている。
  • 三田 肇, 小林 憲正, 藪下 さやか, 藤崎 健太, 中嶋 悟, 癸生川 陽子, 鈴木 彰子, 福島 和彦, 齋藤 香織, 奈良岡 浩, ...
    セッションID: 1A04 21-04
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    「たんぽぽ」計画の中で予定されている、大気圏突入前に宇宙塵を捕獲し地球に運び込まれる有機物分析と、生体関連有機物の宇宙環境での安定性を調べる曝露実験という2つのサブテーマに関わる地上模擬実験で得られた結果について報告する。二段式軽ガス銃を用いた宇宙塵捕獲実験では、不溶性有機物として存在するアミノ酸は、遊離のアミノ酸と比べ安定性が高いことが裏付けられたとともに、超低密度シリカエアロゲルを用いることにより宇宙塵を変成が抑制された条件で捕獲できることを確認した。また、原子状酸素による有機物の変成を調べるために、アミノ酸やタンパク質を曝露用アルミ板に詰め、曝露模擬実験を行った。AO照射量 8.2 × 1019 atoms cm-2の時、標準試料であるカプトン膜では約10%の重量減少が、芳香族炭化水素などには着色が観測された。
  • 高橋 淳一, 上野 祐子, 小川 智也, 島 壮一郎, 金子 竹男, 小林 憲正, 三田 肇, 阿達 正浩, 保坂 将人, 加藤 政博
    セッションID: 1A05 21-05
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    ラセミックな DL-イソバリン固相薄膜に,自由電子レーザーからの純粋円偏光を照射したところ、照射前には観測されなかった円二色性が観測された。Cotton 極大の符号は照射円偏光のヘリシティ符号(左 or 右まわり)により完全に逆転し,対称的な二色性スペクトルが得られた。照射後の吸収スペクトルはわずかに低エネルギー側にシフトするものの極大形状は照射前とほぼ変化がなかったことから,分子の単純な不斉分解ではなく,分子配座変化を伴う構造変化によるキラル発現であると推測される。この結果は,無生物的に生成されたラセミックな有機物が,低温の星間物質表面に吸着した状態であっても,宇宙空間に存在する円偏光への曝露により,そのヘリシティに対応した対称性方向のキラリティを発現しうることを示す。
  • 小林 憲正, 谷内 俊範, 栗原 広成, 金子 竹男, 高橋 淳一, 高野 淑識, 三田 肇, 吉田 聡, 山岸 明彦
    セッションID: 1A06 21-06
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    星間塵アイスマントルを模した混合物に重粒子線を照射したところ、高分子状アミノ酸前駆体が生成した。同様な複雑有機物に円偏光紫外線を照射したのち加水分解するとアミノ酸のエナンチオ過剰が得られた。この結果は星間で生成したアミノ酸前駆体が円偏光により不斉発現し、惑星間塵などにより地球に届けられた可能性を示唆する。宇宙ステーション上で惑星間塵を採取する「たんぽぽ計画」を計画している。
  • 高井 研
    セッションID: 1A07 21-07
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    「熱水環境が地球生命誕生の場であった」とする仮説は、20 世紀の様々な分野の科学分野的成果に基づく大仮説であった。その最も基幹的な根拠は、微生物進化系統学の成果であり、微生物系統学の始まりとなったWoese の論文において、すでに最古の生物は深海底熱水活動域や温泉に生育する好熱性古細菌であることが示唆されている。現時点においても、現存する生物の共通祖先(Last Universal Common Ancestor; LUCA)がどのような遺伝メカニズムを有していたかについて論争が続いており、決定的な結論はでていないが、原始生命が好熱性生命として誕生したことを支持する研究例が圧涛Iに多い。また化学進化の面からは、深海底熱水活動域における熱水循環を模した実験系において、タンパク質や核酸の前駆体であるアミノ酸やヌクレオチドが無機合成され、高分子化することが確かめられている。一方地質学の分野においても、現存する微生物化石様構造の由来環境に対する古地質学的考察から、最古の微生物化石様構造が産出する古環境として、始生代における深海底熱水活動域の可能性が示唆されている。これら多分野からの研究成果によって、「熱水環境が地球生命誕生の場であった」とする仮説の大枠としての整合性は支持されていると言えよう。しかしながらこれらの研究は,分散した個々の研究とそれをつなげた抽象的な概念としてのものでしかなく,諸過程の物理・化学・生物学的な解明とそれらのリンケージの明確な証明が行われる段階ではなかった.地球における生命の起源とそれに続く初期進化の舞台を考える上で重要な条件は、生命を誕生させやすい場であること以上に生命活動を持続させうる場であるという点である。つまり、生命が誕生してもすぐに死に絶えるような場や状況では、40 億年も続く地球と生命の共進化を導くことはできないであろう。誕生と同時に持続可能な生命活動が機能するメカニズムが必要となる。どのような熱水環境において、どのようなメカニズムで、どのような持続可能な初期生命のエコシステム(生態系)が形成されたのか?その最も確からしいストーリーとして、我々はウルトラエッチキューブリンケージ仮説を提唱した。ウルトラエッチキューブリンケージとは、Ultramafics-Hydrothermalsism-Hydrogenesis-HyperSLiME リンケージの略(UltraH3)である。日本語に訳すと超マフィック岩*̶熱水活動̶水素生成̶ハイパースライム連鎖である。この仮説を簡単に説明すると、「およそ40 億年前の海洋底には、熱いマントルと激しいマントル対流によって生じる超マフィック岩質マグマ(コマチアイト)を母体とする海底熱水活動が多数存在していた。このような深海熱水活動域では、地球内部エネルギーによって駆動される高温の海水‐岩石反応に伴って大量の水素が海底に供給され、超好熱水素酸化メタン菌を一次生産者とする化学合成微生物生態系を誕生させ、持続させた」ということになる。本発表では、このウルトラエッチキューブリンケージ仮説の提案に至る背景及び内容について紹介したい。
  • 川口 慎介, 高井 研, 蒲生 俊敬
    セッションID: 1A08 21-08
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    水素ガス(H2)の安定同位体比が、微生物代謝によるH2の消費の際に特異な変化をすることが、近年のいくつかの迫{実験と海底熱水域の観測によって指摘されている。現在これらの結果は「H2代謝酵素がH2- H2O同位体平衡反応を触媒している」と解釈されている。熱水周辺環境で見られる300‰を超える大きな同位体変動がすべて微生物活動によるならば、その変動様式を把握することにより、同位体比を熱水生態系におけるH2利用代謝の定量的指標として有効に用いることが出来る。しかしながら、H2代謝による同位体分別が、非生物的に進行するH2- H2O同位体平衡反応とまさに同一視できるかどうかはいまだ不確かである。本研究では、H2代謝時のdel-Dの変動について体系的な理解を得ることを目的とし微生物の迫{を行った。
  • 川村 邦男, 竹家 均, 嶋橋 政徳, 秋吉 藍, 西 輝之, 崎山 智文
    セッションID: 1A09 21-09
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    好熱性細菌の一連の研究によって,生命は超高温の海水中で誕生したとする生命熱水起原説が提案された.この仮説が正しければ,熱水環境下でペプチドが効率よく生成する経路があったはずである.しかしこれまでの模擬実験で生成したオリゴペプチドは鎖長(~6鎖長)・収率(0.1~1 %)と,意外に効率が低い.我々は,400 ℃までの熱水反応をミリ秒レベルで追跡する熱水マイクロフローリアクター技術を開発した.これらを用いて熱水中でアミノ酸の挙動を調べたところ,従来よりも効率的な2種類のペプチド生成反応を発見した.
  • 掛川 武
    セッションID: 1A10 21-10
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    ペプチドをいかなる条件で作り出すかは、生命起源において最も重要な問題である。さらにどのような地質条件がペプチド生成に適していたかも、明確な答えは存在しない。そこで本研究では高温高圧条件に着目し各種実験を行った。その結果、グリシン,ヴァリン,アスパラギン酸の高度重合が確認された。このことは冥王代地球の海洋底深部でペプチドが生成された可能性を示す結果である。
  • 古川 善博, 関根 利守, 大庭 雅寛, 掛川 武, 中沢 弘基
    セッションID: 1A11 21-11
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    生命誕生前の地球における有機分子の出現は化学進化の第一段階と考えられてきた。しかし、二酸化炭素、窒素を主成分とする弱酸化的大気を原料として、有機物生成は非常に困難であることが分っている。本研究では隕石の海洋衝突を作業仮説として、その模擬実験により生体有機分子が生成し得るかどうかを検証する。実験は一段式火薬銃を用い、衝突回収実験を行い。出発試料は鉄、ニッケル、炭素(13C)の混合粉末に水を加えたものをステンレス製の試料容器に窒素ガスと共に封入した。衝突後の試料は水に抽出し、LC/MSによるアミン、アミノ酸の分析を、GC/MSによるカルボン酸の分析を行った。この結果、13Cから構成された種々のカルボン酸、アミンの生成を確認した。さらに、アンモニアを含む試料においてはグリシンの生成も確認した。この結果、初期地球において隕石の海洋衝突が生体有機物分子生成としての有効な機構であったことが示唆される。
  • 出口 茂
    セッションID: 1A12 21-12
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    我々は、生命の起源における熱水環境の役割を解明すべく、熱水噴出孔の物理化学環境を再現した流通型化学反応装置を開発した。本講演では、熱水噴出孔模擬環境でのアミノ酸の脱水縮合に関する研究を紹介する。
陸と海の熱水循環システムの地球化学
  • 土岐 知弘, 岩田 大吾, 大森 保, 石橋 純一郎, 角皆 潤, 佐野 有司, 川口 慎介, 蒲生 俊敬, 山中 寿朗, 高井 研
    セッションID: 1A13 14-01
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    鳩間海丘における海底熱水の化学組成について,2007年における主成分陽/陰イオンの熱水端成分は2000年の調査と比較してCl−濃度がやや低いが,Na/Cl比などは変わっていないことから,以前よりも気相に富んだ熱水が噴出している可能性が示唆された。熱水中のCO2濃度はこれまで報告されている世界中の海底熱水系の中で世界最高の値を示した。炭素同位体とヘリウム同位体から,この豊富なCO2の起源は沖縄トラフに豊富に存在する堆積物と沈み込むスラブの影響を受けていることが示唆された。 メタンも世界最高レベルの濃度であり,メタン及びエタンの炭素同位体比から,微生物が生成したメタンが大きく寄与していることが示唆された。熱水からはメタン菌が得られていないことから,涵養域の堆積物中において強還元環境下で生成したメタンであると考えられる。
  • 寺西 源太, 小畑 元, 蒲生 俊敬, 石橋 純一郎, 木村 浩之
    セッションID: 1A14 14-02
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    希土類元素は一貫した化学挙動を示す元素グループであり、元素間には僅かだが系統的な化学性の違いがある。これらの特性を利用し、熱水環境を推定するためによく用いられてきたが、プレートの沈み込み帯で形成される、島弧型熱水系である水曜海山では、希土類元素組成の報告例はは未だなく、中央海嶺系や背弧系との明確な違いはよくわかっていない。本研究では島弧型熱水系において、初めて希土類元素分析を行った。また熱水噴出後における、各元素の除去過程を詳細に測定した。
  • 下島 公紀, 宮川 公雄, 前田 義明
    セッションID: 1A15 14-03
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    鹿児島湾奥部の若尊カルデラの海底噴気活動が確認されている2カ所において,潜水調査船を用いて,気体状態で海洋中に放出されたCO2の挙動についてナチュラルアナログを実施し,噴気気泡の浮上過程でのCO2溶解によって発生すると考えられる周辺海水の低pH・高CO2環境の検知や,その分布および消長について観測を行った。
有機地球化学
  • 金子 雅紀, 奈良岡 浩
    セッションID: 1A16 20-01
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    海底堆積物中で生成するメタンは二酸化炭素還元型のメタン生成菌に依るものが大きい事がメタンの炭素・水素同位体組成などから示唆されている。しかしながら、どのような代謝・生合成過程をもった古細菌が堆積物中のどのような場所でメタンを生成しているのかは未だに不明である。古細菌の膜脂質バイオマーカーは真核生物や真正細菌と大きく異なることから、堆積物中でのバイオマスのプロキシーとなる。また、膜脂質の炭素・水素同位体比は炭素・水素源や代謝・生合成経路を反映するため、さらに詳しい古細菌の活動を特定できると考えられる。本研究ではメタンハイドレート濃集域において、古細菌膜脂質の深度分布と炭素・水素同位体組成から堆積物深部での古細菌の活動からメタン生成場について考察する。
  • 新開 宏, 奈良岡 浩
    セッションID: 1A17 20-02
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    日本海は周辺の陸地に半隔離され、現在の平均水深1.4 kmで、<130 mの浅い水深で他の海と繋がっている。そのため、日本海は第四紀後期の世界的な気候変動、特に海水準変動の影響をかなり受けた。海水準の低下と河川からの淡水の流入が成層化を引き起こし、深部では無酸素状態になった。そして、海水準の上昇により、津軽海峡から親潮が、対馬海峡から対馬海流が流れ込み、現在の状態になった。このような日本海の氷期-間氷期における古細菌の膜脂質由来のビフィタンの存在度から、古細菌の活動度の変化を見積もることを目的とした。ビフィタンの存在度には、日本海が成層していた氷期と現代では、明らかに違いが見られたことから、現代と氷期では古細菌の活動度が異なることが考えられる。
  • 鈴木 徳行, ナリン ラトナヤケ
    セッションID: 1A18 20-03
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    東大海洋研白鳳丸の研究航海(KH-99-3)によって得た北太平洋深海堆積物中の長鎖n-アルカン(n-C27,n-C29,n-C31)とエステル態長鎖脂肪酸(C22,C24,C26)の過去35万年間の安定炭素同位体比の時系列変化は東アジア大陸中緯度地域における陸上植物の植生変化(C3,C4植物の消長)を反映したものと考えられる.しかしながら,同コア試料の帯磁率の変化と底生有孔虫酸素同位体比のSPECMAPタイムスケールから見積もられる氷期♀ヤ氷期サイクルと調和していない.これは高等植物ワックスの陸上での生成時期と深海底での堆積時期に見かけ上2~3万年程の時差があるためだと考えられる.
  • 山田 健太郎, 上野 雄一郎, 山田 桂大, 吉田 尚弘, 丸山 茂徳
    セッションID: 1A19 20-04
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    地球生命史において原生代/顕生累代境界は非常に重要な期間であり、生命進化とグローバルな環境変動の関連を探ることが非常に重要である。本研究ではこの期間の海中の環境変動を探るため、南中国三峡地域において掘削されたボーリングコア試料を用いてバイオマーカーの抽出を試みた。結果、n-アルカンやプリスタン・フィタンといった非環状イソプレノイドが検出された。n-アルカンのピーク分布は従来のこの時代の研究結果と一致した。また、プリスタン・フィタン比を用いた結果、原生代/顕生累代境界では還元的環境が示唆された。これは南中国での微量元素や炭素同位体比を用いた研究結果とも調和的である。
  • 岡野 和貴, 沢田 健, 高嶋 礼詩, 西 弘嗣
    セッションID: 1A20 20-05
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    白亜紀には、世界中の海洋が同時期に無酸素化した海洋無酸素事変(OAE)が数回起こったと考えられている。本研究では、南東フランスのボコンチアン堆積盆におけるOAE1aおよびOAE1bの黒色頁岩試料を用いてバイオマーカー分析を行った。OAE1aではシアノバクテリア由来の2-メチルホパンが顕著に検出され、その濃度が上位に向かって増加する傾向が見られた。これは、海洋の無酸素化に伴う脱窒や嫌気的メタン酸化の活発化によってシアノバクテリアが卓越しやすい環境が形成されたことに起因する可能性が考えられる。一方OAE1bではアーキア由来のバイオマーカーであるPMIやTMIが検出された。しかし、これらのバイオマーカーはKilianより上位では高濃度で検出されるものの、それより下位の黒色頁岩層からは検出されず、一般に言われるOAE1bにおけるアーキアの卓越がKilian以降のものである可能性が考えられ、その原因については考察中である。
  • 大庭 雅寛, 海保 邦夫, 掛川 武, 山本 正伸, 坂田 将, 古川 善博, 佐藤 誠悟
    セッションID: 1A21 20-06
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    古細菌由来のエーテル脂質を存在状態別に分析する手法を用いて、現世や地質時代の様々な試料について有機地球化学的研究を行った。1.暁新世/始新世の地球温暖化事変期(PETM)の堆積物中に含まれるテトラエーテル脂質を分析し、その濃度からTEX86を算出し、当時の海洋表層温度を推定した。その結果、PETM最初期に寒冷化を挟む2回の温暖化事変が起きたことが判明した。2.水曜海山の人口熱水孔から採取された沈殿物中のエーテル脂質を分析した結果、メタン菌に特徴的なエーテル脂質を検出した。他のバイオマーカー分析や鉱物分析などの結果も合わせて考察した結果、人工熱水孔内における微生物活動は多様性に富み、非常に活発であったことが判明した。
地球化学教育の現状と今後の課題、地球化学者のキャリアパス
都市環境の地球化学と人間-自然相互作用
都市環境の地球化学と人間-自然相互作用
地震発生素過程、断層帯・活断層の化学、地震活動に関連した化学観測
  • 小泉 尚嗣
    セッションID: 1B12 10-01
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    本セッションは、地球化学的手法による地震研究(地震化学)の一分野と考えられる。地震化学は、地震の短期予知に有望な手法として、文部省測地学審議会の建議「第三次地震予知計画の一部見直しについて」(1975年)で取り上げられ、以降、組織的に研究されるようになった。「地震化学の日本におけるスタートは1975年前後であり、1990年代後半には勢いを失い低迷期に入った。」というのが、ほぼ同時期に若手研究者として地震化学と取り組んだ筆者の見解である。したがって、筆者にとっては、本セッションは新生「地震化学」である。その出発に当たり、過去の日本における地震化学研究のレビューを行い、近年の地震研究も考慮して今後を展望する。
  • 堀口 桂香, 松田 准一
    セッションID: 1B13 10-02
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    2008年6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震は(M7.2),この低いヘリウム同位体の地域において発生した.そこで,地震直後のヘリウム同位体がどのように変化するかを調べるため,7月21?22日に9ヶ所で温泉ガス・水のサンプリングを行い,ヘリウム・ネオンの存在比とヘリウム同位体比を測定した.地震による変化をみるためにHoriguchi et al. (2007)により測定された同じ源泉にて,できる限り同じ手法により試料を採取した.その結果,同じ条件によりサンプルが採取された5ヶ所中の4ヶ所にて、10-80%のヘリウム同位体の上昇が明らかになった.これらのことは、地震に伴い、地下でマントル物質の上昇が起こったことの直接的な証拠になるかも知れない.
  • 角森 史昭, 郭 明錦
    セッションID: 1B14 10-03
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    1978年12 時24 分に伊豆大島近海地震が発生した(E139.25、N34.77、D15 km、M7.0)。この地震では、前兆現象が数多く報告された。中でも中伊豆町に掘削された井戸(SKE1)の地下水に含まれるラドン濃度の時間変化が、地震前に特徴的な変化を示した(Wakita et al. 1980)。また、石廊崎の体積ひずみ計に特徴的な変化が記録されており、この二つのデータの変化が良く対応していた。これにより、地下水中のラドン濃度が地震の前兆を捉えたと考えられている。これ以降、地震に先行したラドン濃度の変化に関する例が数多く報告されてきたが、それらのメカニズムはいまだ解明されていない。 近年、2003年の成功地震(台湾)に関連したラドン濃度の減少が、帯水層内の空隙増加にともなうラドンの気液分配に支配される、とするモデルに基づいて説明された(Kuo et al. 2006)。このモデルはラドン濃度の減少だけでなく上昇も説明できる。そこで、Kuoモデルを使って伊豆大島近海地震で観測されたラドン濃度の変化を再考する。 SKE1の水を採取し、液体シンチレーション法(Tri-Carb 3110/PerkinElmer)によって、気液分配に伴うラドンの溶存量を測定した。図2に示すように、ひずみ変化に伴う気相がラドンを含む地下水系に生成すると、ラドン濃度が減少することがわかる。ここから、図1に基づいて地震発生前の帯水層の空隙率を見積もると、2.2x10-5となった。
  • 安岡 由美, 川田 祐介, 長濱 裕幸, 大森 康孝, 石川 徹夫, 床次 眞司, 志野木 正樹
    セッションID: 1B15 10-04
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    神戸薬科大学において,電離箱を用いて、大気中ラドン濃度の連続測定(1984年1月から1996年2月,1989年欠測)をしていたところ,兵庫県南部地震(1995年1月17日)前に,ラドン濃度の異常な上昇が観測された。地殻歪の変化によって,岩石・土壌中の空隙率・空隙連結度が変化し,その結果ラドン散逸量も変化したと考えられる。また,地下水中ラドン濃度や地下水湧水量の変化は,観測地点の局所的な地殻歪を反映しているのに対し,大気中ラドン濃度変化は,ある程度広範囲の平均的な地殻歪変化を反映している。さらに,大気中ラドン濃度の変動パターンは臨界モデル式で回帰することができる。以上のことから,大気中ラドン濃度変化は,地震前兆の観測項目として有用だといえる。
  • 重松 紀生, 藤本 光一郎, 大谷 具幸
    セッションID: 1B16 10-05
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    陸域で発生する震源断層では、深度 10 km 付近に震源や滑り量の大きな領域が存在することが多く、深度 10 km 付近の断層構成物質で起こる現象は、内陸地震発生過程の解明の上で重要である。このような物質を解析する上で、削剥された地質断層が重要となる。筆者らはこのような観点から中生代白亜紀に活動した、福島県阿武隈山地東縁にある畑川破砕帯についての解析を行ってきた。本発表ではこれらの成果から明らかになった断層の深部で起こる現象を紹介する。
  • 村上 雅紀, 田中 秀実, 馬 國鳳
    セッションID: 1B17 10-06
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    1999年台湾集集地震の震源断層である台湾車籠埔断層では、2本の研究調査掘削抗が掘られた。これらの掘削坑を用いて行われた注水実験では、観測抗において断層帯から直接水を採取し、水質とガス測定を行うことで注水抗から注入された水の到着を監視した。注水に水道水を用いることで、大気ガス成分を検出対象とした水の追跡調査を行うことができた。注水実験を開始してから3日後、観測抗地下水の溶存酸素濃度と酸化還元電位値が上昇した。同時に酸素、アルゴン、窒素のガス濃度が上昇したことから、注水に使用した水道水が観測抗に到着したと考えられる。注水を開始してから10日後には、観測抗での地下水流量が増加した。注水実験における地下水流量の測定結果から、断層帯の透水率が10-16 m2 程度であると考えられる。本研究ではさらに、物理学的拡散モデルの中に化学的拡散モデルを組み込むことで、注水実験における化学的な水の追跡も反映させた。
  • 田中 秀実, 陳 維民, 陳 一銘, 宋 艶芳, 馬 國鳳
    セッションID: 1B18 10-07
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    断層滑り帯中の 100 nm 以下の超微粒子は,粉砕の産物ではなく,鉱物の溶解と沈殿によって形成されたものであることが明らかにされた.この微粒子は,断層すべりの際に摩擦の潤滑の役割を果たしていると考えられ,すべりの動的弱化過程に大きく寄与しているらしい.
  • 福地 龍郎, 田中 大地, 松原 拓穂, 徐 垣, 宋 聖榮
    セッションID: 1B19 10-08
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    台湾チェルンプ断層掘削計画(TCDP)で採取されたHole B掘削コアでは,深度1136m付近,1194m付近及び1243m付近にそれぞれ断層ガウジ帯が確認されており(Hirono et al., 2007), この内,1136m付近の断層ガウジ帯が1999年の集集地震発生時に活動した可能性が高いと考えられている(Lin et al., 2008)。これらの断層ガウジ帯にはそれぞれ黒色化した高磁化率の部分があり,高温の断層摩擦熱により鉄含有鉱物が分解して磁性鉱物が新たに生成されたためであると推定されている (Mishima et al., 2006; Hirono et al., 2007)。一方,CO2電量分析により黒色ガウジ帯では無機炭素濃度が減少していることが明らかになっており,断層摩擦熱により方解石(CaCO3)などの炭酸塩鉱物が分解したためであると考えられている(Ikehara et al., 2007)。そこで今回,黒色ガウジ帯の摩擦熱による影響の程度を調べるために,ESR(電子スピン共鳴)による分析を実施した。1136m断層ガウジ帯では,ESR測定の結果,フェリ磁性鉱物(マグヘマイト,他)起源のフェリ磁性共鳴(FMR)信号(g=2.1付近),有機物起源と考えられる常磁性有機ラジカルの信号(g=2.0031~2.0036),石英中の酸素空孔起源の常磁性信号であるE’中心(g=2.001)の他,常磁性不純物であるFe3+イオン及びMn2+イオンの信号が検出された。この内,ガウジ帯中央部の黒色部分では,磁気分析結果からの予想に反して,周辺部に比べてFMR信号強度がずっと低いことが明らかとなった。また,石英のE’中心は著しく強度が減少しており,有機ラジカルも幾分減少していた。さらに,Mn2+イオンの信号はほとんど消滅しており,Fe3+イオンの信号は周辺部分とそれ程変わらないという結果が得られた。1194m及び1243mガウジ帯でも1136m ガウジ帯と同様の結果が得られた。1136m黒色ガウジ帯では低いFMR信号強度が得られ,加熱実験結果を考慮すると最近の地震活動時における摩擦熱温度は(被熱時間にも依存するが)せいぜい350℃程度までしか上昇しなかったと推定される。また,より酸化的な環境でガウジ中に生成するレピドクロサイト(gamma-FeOOH)は摩擦熱による脱水反応でマグヘマイト(gamma-Fe2O3)に変化するが,熱水中ではマグヘマイトがヘマタイト(alpha-Fe2O3)に変態する温度が著しく減少することが判明しており(Swaddle & Oltmann, 1980),マグヘマイト生成後に熱水による影響を被った可能性がある。黒色ガウジ帯が酸化的環境であったことは,Fe3+イオンの信号が検出されることからも予想される。一方,Mn2+イオンの信号は方解石からしばしば検出されるが,これは還元的な環境の下で結晶中にMn2+イオンが閉じ込められることに起因する。方解石はCO2を含んだ弱酸性水に溶ける(CaCO3+CO2+H2O→Ca2++2HCO3-)ので,黒色ガウジで方解石が減少している原因はCO2を含む熱水流体が通過した可能性が指摘される。この場合,結晶から溶け出たMn2+イオンは酸素と結びついてMnOを形成するが,その後の断層摩擦熱により酸化が進むと,黒色で常温では常磁性のMn3O4が生成される。低FMR信号強度のガウジ帯が黒色化している原因はMn3O4である可能性がある。
  • 齊藤 友比古, 田中 秀実
    セッションID: 1B20 10-09
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    バッチ式の粉砕実験機を使用し、サンプルに各種鉱物を用いて岩石破壊励起反応を室内実験にて再現した。粉砕の程度を比表面積で表し、天然の粉砕岩である断層ガウジやカタクレーサイトの比表面積をあらかじめ測定しておき、その値に一致するまでの範囲内で粉砕を行った。さらに、同一の比表面積実験において、固体鉱物の重量と水の重量を変化させることで、出発物質の重量がpH変化, 金属イオン濃度の変化に与える影響をみた。発表では、これらの結果と、現在開発中のフロースルー式の(高温高圧型)粉砕実験機で将来行われる実験との関連も紹介する。
  • 山口 飛鳥, 木村 学
    セッションID: 1B21 10-10
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    断層帯における鉱物沈殿現象は、1. 断層帯の強度回復、2. 浸透率減少に伴う流体圧の増加@L効応力の減少$Vたな破壊の誘発、という相反する2つの現象の要因であり、地震サイクルを考える上で重要な要素と考えられている (e.g. Sibson et al., 1988; Cox, 1995)。しかしその機構や時間スケールには不明な点が多く、地球化学的もしくは実験的アプローチに基づいた制約が望まれる。沈み込み帯の陸上アナログと考えられる過去の付加体中の断層近傍には多量の鉱物脈が観察され、地震時の活発な流体移動・鉱物沈殿が示唆される。本研究ではこのような付加体の大規模衝上断層沿いに見られる鉱物脈の微細組成分析から、沈み込み帯における断層運動と鉱物沈殿の関係、および断層帯内部で起こる地震時の化学反応について考察する。
放射性廃棄物と地球化学
  • 杤山 修
    セッションID: 1C01 28-01
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    放射性廃棄物の地層処分の安全性を評価する際には、地質環境という不均質な開放系空間に構築されるシステムの挙動の幅を長期にわたる時間にわたって予測する必要がある。このためには、様々な時空間スケールで進行する相互作用や変化を扱う多岐にわたる学問領域の情報を総合する必要があり、帰納的推論に基づくシステム論的アプローチを取らざるを得ない。地球化学的プロセスの理解は処分の安全研究に不可欠であるが、その際には、処分システムの安全性に関わる時間軸、空間軸においてそのプロセスの進行を理解するという視点が重要となる。この観点から、地層処分の安全性評価における地球化学的課題とはどのようなものであるのか、地球化学分野に対する期待を述べる。
  • 吉田 英一, 山本 鋼志
    セッションID: 1C02 28-02
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    地層処分の掘削~操業~閉鎖後という段階において、地下処分坑道周辺の地球化学的変化は避けることのできない現象である。その中でも坑道掘削に伴う大気の侵入や、酸化した地下水の流入に伴う酸化還元反応がもたらす岩石の変質や酸化物の沈殿・濃集は、坑道周辺の水理場を変化させるだけでなく、処分場閉鎖後の核種移行シナリオにも影響を及ぼすと考えられる。しかし地下環境下での、酸化還元反応プロセスや酸化物の沈殿・再溶解などのプロセスに関しては未だ不明な点が多いのが実状である。例えば自然界においては、岩石(鉱物)?地下水?微生物の複合反応によって、Fe 水酸化物が還元環境下で保持/保存されている多くの現象例が確認される。一方、地層処分の安全評価シナリオでは、地下坑道周辺に二次的に形成された酸化物は、封鎖後(還元状態の)地下水の再冠水によって、もとの状態に戻ることが想定されている。このような自然現象の事例から学んだことをどのように安全評価に反映していけばいいのか。地層処分のような万年オーダーのプロセスを外装するには、自然現象のアナログ的活用は不可欠である。今回の報告では、自然界に存在するFe水酸化物の‘アナログ’事例をもとに、地下環境での酸化還元プロセスと酸化物の長期的挙動についてその考え方を報告するとともに、地層処分の安全研究において、自然から学ぶ地球化学的プロセスの理解と応用の重要性を述べる
  • 日高 洋
    セッションID: 1C03 28-03
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    オクロ試料の同位体分析にイオンマイクロプローブを用いた微小領域での同位体分析を導入し,天然原子炉からその周囲母岩に散逸した微量な核分裂起源同位体の拡散・分布挙動を個々の鉱物レベルでトレースすることを試みてきた。本講演ではその中からイオンマイクロプローブを用いた局所同位体測定ゆえに特定できた放射性核種挙動の二例を紹介する。
  • 菊池 麻希子, 日高 洋
    セッションID: 1C04 28-04
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    中央アフリカ,ガボン共和国に存在するオクロ,オケロボンド,バゴンベウラン鉱床は今から約20億年前に天然で核分裂連鎖反応を起こした,いわゆる天然原子炉であるため,放射性廃棄物の地層処分に関するナチュラルアナログとして注目されている。これまでの研究から,核分裂反応によって多量に生成された核分裂起源Mo,Tc,Ru,Rh,Pdは天然原子炉内で金属微粒子を形成することが報告されており,同様の金属微粒子は使用済み核燃料内でも見つかっている。 本研究では,オクロ天然原子炉から採取した試料中の金属微粒子について高感度高分解能イオンマイクロプローブ(SHRIMP)を用いた局所同位体分析を行い,その形成過程や核分裂性遷移金属元素の長期間における地球化学的挙動について調べることを試みた。
  • 嶋本 洋子, 寺田 靖子, 高橋 嘉夫
    セッションID: 1C05 28-05
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    千葉県養老温泉付近で深度別(0, 3, 6, 9. 12 cm)に採取した土壌および間隙水のヨウ素の化学形態を、XANESとHPLC-ICP-MSを用いて決定した。土壌中では殆どが腐植物質などと結合した有機ヨウ素として存在し、間隙水中では有機ヨウ素と無機ヨウ素が共存していた。土壌中でヨウ素が有機態として存在していることは、micro-XRFを用いたヨウ素の局所分析からも確かめられた。間隙水中の有機ヨウ素の割合は0-6 cmで40%程度であったが、9-12 cmで数%しか存在しなかった。また、間隙水中の無機ヨウ素としてはI-のみが検出された。 天然環境中でヨウ素は有機態を形成した場合に固相に分配しやすくなることが示唆された。
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