日本地球化学会年会要旨集
2008年度日本地球化学会第55回年会講演要旨集
選択された号の論文の421件中101~150を表示しています
ナノジオケミストリー:鉱物表面・界面、地球化学プロセスの基礎科学
新しい分析技術の開発とその応用
  • 増川 恭子, 西尾 嘉朗
    セッションID: 1F01 25-01
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    鉱物内に保持された流体包有物は地殻内流体の様々な情報をもたらす有用な試料である.特に鉱床学分野においては,金属の運搬や鉱石鉱物の沈殿メカニズムを知る上で,単一流体包有物の化学分析は,鉱化流体の組成を直接求めることができるため非常に重要とされ,特に定量分析においてはこれまでに様々な試みが行われてきた(Shephred and Rankin, 1998).その中で,近年最も精力的に試みられている方法が,非破壊分析である荷電粒子励起X線分光法(PIXI)(Baker et al., 2003),および放射光蛍光X線分析法(SXRF) (Nagaseki and Hayashi, 2008)である.このように,流体包有物における定量分析技術の発展はめざましい一方で,地殻内流体の起源や挙動を理解する上でより強力な情報を与えてくれることが期待される元素同位体の研究は一部の揮発性元素を除けば極めて限られていた(Banks et al., 2000など).特に鉱床試料の流体包有物の同位体研究においては,固体地球分野では汎用的に利用されているストロンチウム(Sr)同位体比でも指標として用いた研究例はほとんど皆無である.流体包有物の難揮発性元素の同位体研究が進んでいない主たる理由は鉱物試料中の流体包有物に含まれるSr等の元素量が極めて少ないことである.この抽出できる元素量の少なさ故に流体包有物を選んで分析することは極めて困難となる.そこで本研究では,タングステン鉱床の鉱液を保持する石英を全岩破壊することで抽出した流体包有物の化学組成及びSrとLiの同位体組成等を同時に測定することを試みる.こうして得られた多元素指標をマルチトレーサーとして用いて流体包有物の起源等に関して多次元的な解析を試みる.鉱物からの流体包有物抽出から元素分離までクリーンルーム内で作業を行うことで分析時の汚染を低減する.抽出された極微量のLiやSrの同位体組成の分析は高知コアセンターのNEPTUNE-MC-ICP-MS及びTRITON-TIMSを用いた.
  • 平田 岳史, 昆 慶明, 横山 隆臣, 横山 哲也
    セッションID: 1F02 25-02
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    高周波誘導結合プラズマ質量分析計(ICP質量分析計)はイオン源に大気圧高温プラズマを用いた質量分析計である。レーザーアブレーション(Laser Ablation)試料導入法は固体試料の局所部分の迅速かつ高感度な化学組成・同位体組成分析が可能である。レーザーアブレーションにエネルギー光束密度の高いフェムト秒レーザーを用いることにより、これまで分析が困難であった金属試料や鉱物試料などに対しても高感度・高精度元素分析が可能となった。本講演ではチタンサファイアレーザーを用いた次世代レーザーアブレーションICP質量分析計の最新の開発動向をレビューするとともに、東工大で取り組んでいるレーザー開発の現状を紹介する。
  • 横山 哲也, Walker David, Walker Richard J.
    セッションID: 1F03 25-03
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    Os濃度および同位体組成が大きく異なる二つの天然物(鉄隕石およびコマチアイト質玄武岩)を出発物質とした高温・高圧実験を行い、Osの金属<Vリケイト間の分配係数を決定した。出発物質をグラファイトカプセルに封入し、ピストンシリンダーを用いて10-20kbar・1450-2400Cの条件下で実験を行った。実験生成物の187Os/188Os比およびOs濃度は非常に幅広い値を示し、シリケイトガラスに出発物質がマイクロナゲットとして混入していることを示している。マイクロナゲットを含まないシリケイトガラスから得られるOsの金属<Vリケイト間の分配係数は3×10^5である。20kb・>2000Cの実験からも同様に高い分配係数が得られており、マグマオーシャンにおける金属<Vリケイト間の平衡分配では、マントルの高いOs濃度を説明できないことが示唆される。
  • 鍵 裕之
    セッションID: 1F04 25-04
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    原子力科学研究所の敷地内に建設されている世界最高性能の大強度陽子加速器施設、J-PARCにおいて今後展開される地球内部関係の研究の方向などについて議論する。
  • 高橋 嘉夫
    セッションID: 1F05 25-05
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    価数などを反映するX線吸収端構造(XANES)と局所構造の情報を与える広域X線吸収微細構造(EXAFS)からなるX線吸収微細構造法(XAFS法)は、地球化学や環境化学の研究に必須の手段となっている。得られる情報の多さや微量元素まで適用できる点は、他に比類のない長所であり、今後もXAFS法を用いた地球化学・環境化学の研究が広く行われるであろう。本講演では、我々の最近の研究を紹介しながら、その中で今後注目すべき点や改善されるべき点を示し、環境化学・地球化学への応用に焦点を当てたXAFSの今後を展望したい。
  • 岩森 光
    セッションID: 1F06 25-06
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    多くの統計解析の手法がデータやそのばらつきの正規性を仮定して成立しているが、実際の地球化学データセットでは必ずしも真ではない。独立成分分析を適応することでマントルの同位体不均質の起源に関して分かってきたこと、およびこの手法をさまざまな地球化学データ解析(時系列解析、ノイズ除去など)に応用可能であることを、その原理とともに紹介する。
土壌・陸域生態系の物質循環
  • 大手 信人, 尾坂 兼一, 舘野 隆之輔, 徳地 直子
    セッションID: 1F07 18-01
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    硝酸のδ18Oは,大気降下物中のNO3-で顕著に高く,大気由来の硝酸インプットの顕著な指標になる.表層(20cmまで)では,大気降下物由来のNO3-のシグナルが色濃く見られるが,それ以下で直ちにδ18Oは減少し,土壌中での硝化由来のNO3-がドミナントになることが示された.この土壌プロファイルにおける年間の純硝化量は約18kg/haで,年間のNO3-降下量は約6kg/haである.大気降下物のNO3-の酸素安定同位体比の平均は65‰であり,土壌での硝化由来のNO3-の同位体比の平均値が約0‰ぐらいであるとするならば,土壌中のプールにおけるNO3-の平均的な同位体比は15‰前後になると考えられる.しかしながら,土壌水,地下水のδ18Oは,高くて5‰であり,純硝化量からマスバランスによって推定される同位体比よりも明らかに低い.このことから,土壌中での硝化によって生産される硝酸の総量が純硝化量よりも十分に大きく,生産されたNO3-の大半が微生物にrecycleされていることが推察される.北米の冷温帯の森林土壌中の総硝化量が純硝化量の数倍以上であることが実験室での迫{実験で示されているが,本研究における土壌水中のδ18Oのシグナルから,このことがフィールドの土壌中で確かに生じていることを確認することができる.
  • 木村 園子ドロテア, 当真 要, 山田 浩之, 木 志堅, 波多野 隆介
    セッションID: 1F08 18-02
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    本報告では、地域レベルにおいて温室効果ガス放出量の推定方法を作成し、その推定方法を用い、土地利用の変化による地球温暖化ャeンシャル削減策をエコバランス評価によって解析した。2002年から2007年にかけて、この流域内において21の圃場(9種の土地利用、延べ47地点・年)において、クローズドチャンバー法によりメタン、亜酸化窒素および二酸化炭素フラックスを測定した。ガスフラックスは、土壌環境因子および肥矧ヌ理因子によってパラメタリゼーションし、年間放出量を推定した。
  • 八木 一行, 顔 暁元, 秋山 博子, 秋元 肇
    セッションID: 1F09 18-03
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    水田は大気メタンの重要な発生源であると考えられているが、グローバルな発生量の見積もりには、未だ、大きな不確実性が残されている。そこで、ボトムアップアプローチによる発生量の見積もりを行った。既往文献を収集し、わが国とアジア地域の水田における発生実測値のデータベース化を行った。次に、これらのデータを解析し、ベースライン管理条件での排出係数と現場の水分状況や有機物投入量の要因についての拡大係数を算出した。これらの結果は、2006年版IPCCガイドラインにおけるデフォルト値として採用された。この方法にしたがって、世界の水田からのメタン発生量見積もりを行った。その結果、世界の水田からのメタン排出量は25.1 Tg yr-1と推定された。また、削減ャeンシャルの推定を行った結果、間断灌漑と有機物(わら)の管理により、それぞれ、4.3 Tg yr-1のメタンが削減可能であると推定された。
  • 高橋 善幸, 梁 乃申
    セッションID: 1F10 18-04
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    自然環境下における土壌有機物の分解起源のCO2の炭素安定同位体比の変動性を検証することを目的として、観測手法の開発を行い、北東ユーラシアを代表する植生である落葉針葉樹林(カラマツ林)で、3年間にわたる観測を実施した。根呼吸を排除したプロットにおいて土壌から放出されるCO2の炭素安定同位体比は、著しい空間的な不均一を示すとともに、短期的・長期的に明らかな時間的変動性を持つことが明らかになった。特に注目すべき点は、土壌有機物分解起源のCO2の炭素安定同位体比が1‰以上の有意な振幅で季節変動をしていることである。これはリターの集積・分解の季節サイクルに関連したCO2の起源となる有機物プールの質的変化に由来するものと考えられる。
  • 長尾 誠也, 岩月 輝希, 吉川 英樹
    セッションID: 1F11 18-05
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    地下水の腐植物質はその複雑な構造、多様な構成有機物の組み合わせにより、多くの機能性を有し、多価の原子価の元素との錯形成能が高く、放射性廃棄物の地層処分の安全評価において放射性核種の移行動態を支配する要因の1つと考えられている。しかしながら、腐植物質の構造特性、官能基組成等が生成される環境等により異なること、地下水中では低濃度であることから、その定量的な評価が困難であった。本研究では、北海道の幌延地域において深部塩水系地下水から腐植物質を分離精製し、各種の分析項目により腐植物質の特徴を検討した。
  • 近藤 美由紀, 内田 昌男, 和穎 朗太
    セッションID: 1F12 18-06
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    土壌は、陸域最大の炭素リザーバーとして重要な役割を担っているが、土壌有機炭素蓄積・分解のメカニズムには不明な点が多く残されており、温暖化が土壌有機物蓄積に及ぼす影響の規模や程度の予測は大きな不確実性を伴う。土壌有機物蓄積・分解のメカニズムを解明するためには、炭素の供給と分解のサイクルがどの程度の時間で起きているか、滞留時間を把握することが必要である。本研究では、土壌有機物を比重によって物理的に画分し、放射性炭素を指標に、日本の森林土壌に蓄積されている有機炭素の滞留時間がどの程度か、有機炭素の質を考慮した推定を行うことを目的とした。Asia Flux サイトの1つである高山サイトで採取した土壌試料を用いて、土壌を低比重から高比重画分に分け、その炭素含有量、安定・放射性炭素同位体比の測定を行った。本発表では、これの結果から推定した分解特性の異なる炭素プールの滞留時間の結果について報告する。
  • 赤木 右
    セッションID: 1F13 18-07
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    大気中の二酸化炭素濃度が1ppm変化するとミズゴケの炭素同位体比(d13C)がおよそ0.1‰変化する。この変化は、二酸化炭素濃度の変化に伴う炭酸固定速度の変化で生じるとされている。しかし、二酸化炭素濃度が高くなると炭酸固定速度がそれに比例して多くなっても、同位体比分別の変化の説明は簡単ではない。従来は、この変化は異なる同位体比を持つ端成分のミキシングでは説明できないとされ、代謝に由来するものとして取り扱われている。しかし、ミキシングでも、この変化を説明することができることを明らかにしたので、報告する。
  • 中川 麻悠子, 上野 雄一郎, 吉田 尚弘
    セッションID: 1F14 18-08
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    これまで硫黄の安定同位体はd34Sの研究が盛んであったが、近年の測定技術が改善したことにより33S/32S,36S/32Sも高精度に測定可能となった。これによりd34Sでは分らなかった微生物生態内代謝過程やd34Sの変動が小さいために評価できなかった硫黄酸化細菌などの影響を定量的に評価できる手段として注目されている。但し極めて新しい手法のため基本的なデータが不足している。岩石や迫{実験に関しての報告はあるが、天然の環境における測定例はない。そこで本研究では天然の微生物活動による四種硫黄同位体比の挙動に関して知見を深めることを目的として、成層湖であり、硫黄化合物を消費・生成する菌が数種存在する長野県の深見池の季節変動について発表する。
  • 代田 里子, 小松 大祐, 大久保 智, 中川 書子, 角皆 潤, 田中 敦
    セッションID: 1F15 18-09
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    本研究では、GEMS/Waterプロジェクトの一貫として、超貧栄養湖である摩周湖においてNO3-のD17O値の定量を行った。摩周湖は流出流入河川がなく、狭い集水域内の降水のみで水位を維持しているため、栄養塩濃度は極めて低く、大気から沈着したNO3-が湖内の一次生産に対して直接的に寄与している可能性がある。そこで、春季の全層混合直後で、水質がほぼ均一化した6月と正層化した8月の湖水中のD17O値を求め、その値と変化から摩周湖湖水中のNO3-の挙動の解析を行った。定量値は国際標準物質(USGS32,USGS35)を用いて校正した。 その結果、6月の湖水中のD17O値はおよそ+2.5‰、濃度はおよそ1.0μMで、表層以外は鉛直方向にほぼ一定であった。これに対して8月は、表層・中層ではD17O値はほとんど変化しなかったのに対し濃度はおよそ0.5μM程度の減少が見られ、深層ではおよそ1.1‰のD17O値の減少とおよそ0.6μMの濃度の増加が見られた。降水中のNO3-のD17O値はおよそ+24‰なので、摩周湖湖水中の全NO3-に占める大気由来NO3-の寄与率はおよそ10%程度と見積もられる。また、湖水中のNO3-は、6月の観測から8月の観測までの間に、表層で45%近くが同化され、一方、深層では40%近くが再生されていると考えられる。湖内では効率的にN栄養塩の同化と再生が進行して、一次生産を維持していることが明らかになった。
  • 角皆 潤, 小松 大祐, 代田 里子, 中川 書子, 張 勁
    セッションID: 1F16 18-10
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    硝酸の三酸素同位体組成は、大気沈着に由来するものだけが自然発生源で唯一0以外の値を示し、かつ一般の反応過程おいて値が変化しない特徴を持つ天然トレサーである。そこで北海道利尻島において、陸上生態系を経由して溶出した地下水中に含まれる硝酸の三酸素同位体組成を定量化することで、大気から沈着する硝酸と陸上生態系間の相互作用を定量化することに挑戦した。その結果、湧水中の全硝酸に占める大気沈着由来の硝酸の混合比は平均10 %弱であり、大気沈着した硝酸の多くは効率的に生態系に利用されていることが明らかになった。また吸収分を補うように再生した硝酸が溶出していることから、同島内の窒素循環系は定常状態に達していて、窒素循環系内に取り込んだ硝酸とほぼ等量の硝酸を系外に排出しているものと考えられる。
  • 楊 宗興, 中下 留美子, 北澤 陽子, 深山 景亮, 宮本 侑, 泉山 茂之
    セッションID: 1F17 18-11
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    大気沈着窒素の安定同位体比の測定が欧米、わが国で行われているが、その値の変動に、これまであまり明確な説明が与えられていない。従来測定のない森林限界を越えるような高標高山岳域での窒素沈着物の測定を実施した結果、大気沈着物として負荷されるNO(SUB>3(SUP>-が、山麓ならびに都市近郊域に対して有意に低い窒素安定同位体比をもつことが観察された。さらに、そこに生息する植物、地衣類、サルも、低標高域に比べ有意に低い窒素安定同位体比を示すことが見出された。
ポスター発表(第1日)
マントル物質の化学とダイナミクス
  • 遠山 知亜紀, 村松 康行, 山本 順司, 中井 俊一, 兼岡 一郎
    セッションID: 1P01 05-P01
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    キンバーライトの化学組成を調べることで、マントルの情報やそこでのマグマの生成に関する知見を得られる可能性がある。そこで、前回までに中国(山東省、遼寧省)と南アフリカで採取されたキンバーライトの全岩における33元素についてICP-MS法を用いて分析した。これらの特徴をさらに考察するため、今回含有鉱物を分離し、それらの元素分析を行った。
    元素分析は主にかんらん石・蛇紋石・金雲母の3鉱物について行った。分析の結果より、かんらん石のREEの含有量は他の鉱物に比べ1-2桁低い値を示した。かんらん石のU濃度はとても低く、蛇紋石・金雲母は比較的高かったが、全岩の濃度を説明するほどではなかった。Thの濃度もこれらの鉱物では全岩の濃度を説明できなかった。したがって、Th,Uは他のサイトに濃集していると考えられる。分析は現在も進行中で、分析データは今後増える予定である。
  • 鈴木 勝彦, 仙田 量子, 清水 健二, 巽 好幸
    セッションID: 1P02 05-P02
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    島弧火山岩は,一般的に高いOs同位体比を持つ。島弧火山岩の高いOs同位体比が沈み込んだスラブからのリサイクルなのか,マグマ上昇時の地殻の同化作用なのかは議論が続いている。我々は,瀬戸内火山帯の高Mg安山岩(HMA)と玄武岩からクロムスピネルを抽出し,初生マグマのOs同位体比を決めることを試みた。クロムスピネルは,マグマの分別結晶過程の初期段階に析出するため,マグマ上昇時の地殻の同化作用を無視できる。その結果,全岩とクロムスピネル,クロムスピネルと上部マントルのOs同位体比にそれぞれ有意に差が見られた。今回の結果で,クロムスピネルのOs同位体比を分析することにより,地殻の同化作用とスラブからのリサイクルを始めて区別することができた。
  • 田子 修也, 角野 浩史, 松藤 京介, Zedgenizov Dmitry, 鍵 裕之, 長尾 敬介
    セッションID: 1P03 05-P03
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    シベリア産のキュービックダイヤモンドのコアとコートについて、顕微FT-IRによる赤外スペクトルマッピングと、段階加熱法による希ガス同位体分析を行った。各サンプル中の包有物の量(CO3濃度)と始原的成分である3Heの放出量には相関関係がみられた。1600℃で抽出された希ガスでは、3He/4Heは大陸下マントルと近い値を示したが、2000℃で抽出された希ガスではより低い3He/4Heを示した。これらのことから、まず1600℃で包有物の一部が破裂して、ダイヤモンドの生成時にマントルから包有物として捕獲した高い3He/4Heをもつガスが放出され、その後2000℃でダイヤモンドのグラファイト化が起き、ダイヤモンドの結晶格子中に捕らわれていた放射壊変起源4Heが包有物中のHeと同時に放出されたと考えられる。以上のことから、本実験で用いたダイヤモンドが大陸下マントルにおける成長段階を経ていることを示している。
揮発性成分を理解することで地球内部の現象がよりよくわかる
地震発生素過程、断層帯・活断層の化学、地震活動に関連した化学観測
大気水圏地球化学
陸と海の熱水循環システムの地球化学
  • 三好 陽子, 石橋 純一郎, 松倉 誠也, 中島 美和子, 大村 亜希子, 前藤 晃太郎, 山中 寿朗, 千葉 仁
    セッションID: 1P09 14-P01
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    鹿児島湾若尊火口では、ここ数年の航海調査により、North Site、South Siteと呼ばれる地点において海底からのゆるやかな熱水湧出が確認されていたが、2007年6月の潜航調査で熱水チムニーを伴う活発な熱水噴出域(高温噴出孔域)が発見された。本講演では、上記の3つの熱水域(North Site、South Site、高温噴出孔域)においてピストンコアにより採取された堆積物試料(最大深度約4m)をXRDにより解析して、見出された変質鉱物について報告する。また、間隙水の化学組成(前藤ほか、本年会)と合わせて議論することで堆積層内の熱水変質反応について考察する。
  • 平尾 真吾, 石橋 純一郎
    セッションID: 1P10 14-P02
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    鹿児島湾湾奥部の北岸沿いには、採掘深度700~1200mのNa-Cl型の温泉が多く分布しており、これらの温泉では海水や海洋性の堆積物の寄与からホウ素濃度が高いことが期待される。また、鹿児島湾湾奥部の若尊火口では水深200mから湧出する温泉が明らかにされており、陸上の温泉との関連についても興味深い。この地域の温泉水7試料、地下水2試料を採水し分析を行った。ホウ素濃度と塩素濃度の関係から、温泉水中のホウ素は海水由来であると考えられるグループとそれ以外の起源であると考えられるグループに分類できる。それぞれのグループ内でアルカリ度が高くなるとホウ素濃度も高くなる傾向が見られるので、有機物の分解のような、アルカリ度とホウ素の濃度がともに高くなるような反応が起こっている可能性がある。
  • 岩田 大吾, 土岐 知弘, 大森 保, 石橋 純一郎, 高井 研
    セッションID: 1P11 14-P03
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    鳩間海丘は南部沖縄トラフの水深1,500 mに位置する直径約4 kmのカルデラ火山である。沖縄トラフの海底熱水系は背弧・島弧系であり,堆積物が豊富であるという特殊な環境から世界で初めて海底面からの二酸化炭素ハイドレートの噴出が観測されるなど,日本における熱水研究に様々な科学的題材を提供してきた。鳩間海丘における熱水活動は,1999年の有人潜水探査船「しんかい2000」による潜航調査において初めて発見された。2006年8月に行われたNHKの取材時には,世界で初めて熱水が青く見える現象が観測された。過去の調査では観測されたことのない青色熱水であることから,海底熱水活動の活発化した可能性等が指摘された。本研究では,発見当時青く観測された熱水噴出孔から2007年3月及び7月に熱水試料を採取し,化学分析すると共に分光学的に解析を行い,2000年の分析結果と比較して化学組成の変化と青く観測された原因を明らかにした。
  • 前藤 晃太郎, 山中 寿朗, 石橋 純一郎, 三好 陽子, 松倉 誠也, 大村 亜希子, 横山 未来, 岡村 慶, 杉山 拓, 千葉 仁
    セッションID: 1P12 14-P04
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    鹿児島湾北部に位置する若尊火口の火口底における堆積物の熱水変質作用を明らかにするため、2008年5月に行われたKT08-9航海において5本のピストンコア採泥を行った。 本発表では得られたコア試料のうち既知の熱水域で採取し、船上に揚収直後にはまだコアの下部が暖かかったPC2コアと、海上保安庁により噴気活動の存在が指摘されている海域で採取し、コア半割時に激しい硫化水素臭のあったPC5コアを中心にコアの間隙水化学組成について報告する。 PC2の間隙水化学組成は熱水成分の混入を示すものであった。また、コアには熱水から沈殿したと考えられる脈状のst5ibniteや熱水変質によると考えられる硬化した層が観察された。 PC5の間隙水化学組成からは熱水成分の混入は認められない。しかし、硫酸イオン濃度は深度とともに顕著に減少する。有機物を電子供与体とした微生物的硫酸還元が起こっているためと考えられ、硫化物と硫酸の硫黄同位体比もそれを指示する結果であった。
  • 宮川 公雄, 下島 公紀, 前田 義明
    セッションID: 1P13 14-P05
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    最近の地球環境問題への意識の高まりを背景として、河川や湖沼などの水質変化から二酸化炭素の海洋や海底下貯留における影響評価まで、水環境に対する広汎な観測や調査のニーズが増している。電力中央研究所ではこのニーズに対応し、AUVを観測プラットフォームとして導入し、これに「鼻」となる多種の化学センサを搭載することで、水環境モニタリングや広範囲マッピングに特化した装置とした。若尊カルデラでの適用では、ドーム状地形の直上に位置する西側と斜面に位置する東側で各観測値に違いが認められる。pHデータはサイドスキャンソナーで得られた噴気泡の分布位置と関係し、噴気の成分であるCO2の溶解挙動を考える上で重要な観測結果が得られた。今回の調査に要した時間は1層あたり1時間であり、海域での広範囲の水環境のマッピング手段として、合理的で有効な手段であると考える。
  • 阪本 篤史, 石橋 純一郎, 上島 佳貴, 笹木 圭子
    セッションID: 1P14 14-P06
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    島根県中部の三瓶山南麓の三瓶温泉では、Fe2+を0.9-6.9ppm, Mn2+を1.1-1.6ppm溶存している最高39.0℃の温泉が湧出しており、温泉湧出口付近では鉄沈殿物(Fe=68.9-79.4%)とマンガン沈殿物(Mn=71.3-79.2%)が分布している。この温泉湧出口から東に20-100m離れた崖沿いの数十箇所からは鉱泉水はMn2+を最大0.6ppm溶存している(Fe2+は検出限界以下)11.8-20.1℃の鉱泉が湧出しており、鉱泉が流れる岩肌にマンガン沈殿物(Mn=0.48-80.9%)が分布しているのが認められる。本研究では、これらの沈殿物、温泉水、鉱泉水の詳細な化学分析結果を報告し、沈殿物の熱力学的および微生物学的生成過程を考察する。
土壌・陸域生態系の物質循環
  • 宮崎 あかね, 岩永 百合, 篠崎 潤緑, 中村 歩, 米津 幸太郎, 横山 拓史
    セッションID: 1P15 18-P01
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    イネ中の希土類元素濃度を成長時期、部位ごとに調べた。イネの成長の各過程で根、茎における濃度変化を調べたところ、希土類元素の濃度はほとんど変化しないことが明らかになった。出穂1ヶ月後の土壌、根、茎中の希土類濃度分布パターンは類似しており、軽希土の濃度が高くなっていた。また、根における希土類濃度は、土壌、茎の約10倍になっている。このことから、イネは成長の初期から根に希土類元素を濃縮していることが明らかになった。
  • 鄭 峻介, 杉本 敦子, T.C. Maximov
    セッションID: 1P16 18-P02
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    東シベリアタイガ林は永久凍土帯に位置しており、乾燥が厳しい地域である。このような乾燥地域において、樹木の成長量や年輪のδ13Cは水分環境のみによって決定されているのか、すなわち年輪解析により水分環境がそのまま復元されうるのかを調べる目的で優先種であるカラマツの成長量、葉、及び年輪の炭素同位体比の年々変動を観測、測定し、降水量、土壌水分量、日射量のデータと比較解析を行なった。結果は成長量、葉のδ13C共に水分環境で主に決定されるが、副次的に日射の影響を受けることを示している。また、葉のδ13Cはその年よりも前年の水分環境の影響を大きく受けていた。年輪の幅、δ13Cにおいても水分環境との相関が見られた。しかし、年輪においても、葉と同様に前年の環境が与える影響、及び日射の影響を考慮に入れた解析が必要である。
  • 内埜 裕子, 佐藤 勇一, 辻村 真貴, 石川 守, 杉本 敦子
    セッションID: 1P17 18-P03
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    モンゴルはユーラシア大陸北東部に広がる永久凍土帯の南限に位置しており、降水量は平均300mm程度である。モンゴル北部の森林はカラマツが優占し、草原との境界域では北向き斜面が森林、南向き斜面が草原域となっている。森林と草原の境界域に生育するカラマツの葉と枝、土壌を乾燥傾度に沿って採取し、森林-草原境界域での環境の指標となるかどうかを検討した。得られた結果は土壌の水分環境がδ15Nとδ13Cに反映されることを示している。δ15Nは、土壌水分の差が、窒素循環にも違いをもたらしていることを示している。
  • 服部 祥平, 山田 珪大, 豊田 栄, 鈴木 有理, 藤井 彩子, 吉田 尚弘, 河野 里名, 村山 康樹
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 土壌・陸域生態系の物質循環
    セッションID: 1P22 18-P08
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    下水高次処理過程における溶存態メタンの動態を濃度および炭素安定同位体比を用いて議論した。反応槽を通じてメタン濃度は減少し炭素安定同位体比は増加傾向を示した。メタン濃度およびメタンの炭素安定同位体比の関係から反応槽における同位体分別係数が求まった。反応槽におけるメタン濃度の減少は、嫌気槽および無酸素槽では返送汚泥や硝化液循環による希釈、好気槽ではメタン酸化やばっ気によるものと考えられた。第二沈殿池においてメタンの生成から、放流水中のメタン濃度は大気平衡よりも高く、溶存態のメタンが大気へ放出されている可能性が示唆された。
  • 上野 振一郎, 杉谷 健一郎, 山本 鋼志
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 土壌・陸域生態系の物質循環
    セッションID: 1P18 18-P04
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    土壌の化学組成を決定付ける要素は原岩組成、植生、大気や水環境など多岐にわたる。本研究の目的はこれらの要素のうち、植生が土壌の化学組成にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることである。試料採取地として、花崗岩が広く分布する愛知県豊田市月原町付近を選んだ。樹林が土壌の化学組成に及ぼす影響を検討するため広葉樹林内と針葉樹林内の土壌から試料を採取し、さらに岩石と土壌の化学組成を比較するため下部の露頭からも試料を採取した。
  • 高橋 麻子, 小豆川 勝見, 松尾 基之
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 土壌・陸域生態系の物質循環
    セッションID: 1P19 18-P05
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    世界各地で酸性雨被害が報告されており、日本国内においても栃木県・群馬県境の金精峠ならびに神奈川県大山などで酸性雨被害が見られる。しかしながら、日本においては欧州と同程度の酸性雨が観測されているにもかかわらず、その被害はさほど顕著ではない。その原因の一つとして、日本の土壌が欧米諸国の土壌と比較して、酸性雨に対する緩衝能、すなわち酸中和能(ANC; Acid Neutralization Capacity)が大きいことが挙げられる。本研究では酸中和能に最も寄与する元素の詳細な挙動を解明するために金精峠の枯損域と非枯損域の土壌をそれぞれ鉛直方向に採取し、元素分析ならびにANCを測定することでその評価を試みた。
  • 石谷 貫悟, 上田 眞吾, 高 春心, 片瀬 隆雄, 姜 東鎮, 長坂 貞郎, ふめい ふめい
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 土壌・陸域生態系の物質循環
    セッションID: 1P20 18-P06
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    酸性硫酸塩土壌(ASS)は海成堆積物に含まれるパイライトの酸化により酸性化した土壌であり、世界の沿岸低湿地に広く分布する。ASSは潜在的な耕作地として重要であるにもかかわらず、不適切な開発や、それに続く不十分な管理のために荒廃地化したASS地域が東南アジアでは多く見受けられる。本研究は、ASSを耕地として持続的に利用するのに必要な基礎情報を得るため、ASSの生成過程と現状を把握し、隣接する水環境におけるSO42-の挙動について考察した。
  • 柴田 梓, 木庭 啓介, 楊 宗興
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 土壌・陸域生態系の物質循環
    セッションID: 1P21 18-P07
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    陸上では、火山性起源の温泉水または湧出水が高濃度の化学成分を含んだ天然の水源として知られている。本研究では、火山性湧水が河川水の水質変化および水質形成に与える影響を明らかにすることを目的とし、長野県上高地を水源にもつ梓川とその周辺域に湧出している温泉において水試料を採取し分析を行った。その結果、温泉水のECは約1000μS/cmであり、二価鉄は0.42mg/l、NH4+は8~20μmol/l検出された。温泉湧出地に隣接した河川水のECは600μS/cm前後であり、二価鉄は0.18 mg/l、NH4+は2.5~17μmol/l検出された。温泉湧出地から離れた地点の河川水のECは42~354μS/cmであり、二価鉄、NH4+は検出されなかった。よって温泉湧出地に隣接した河川水の水質は、温泉水の流入もしくは湧出による影響を受けていると考えられる。Cl≠?用いて河川水への火山性湧水寄与率を見積もったところ、62%であった。これらの結果より梓川の水質は、温泉湧出地に隣接した地点では火山性湧水の影響を顕著に受けていることが明らかとなった。
  • 和穎 朗太, 内田 昌男, 北山 兼弘
    セッションID: 1P23 18-P09
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    土壌中には反応性の異なる炭素プールが混在するため、分解・蓄積プロセスやその温度依存性については未解明な点が多い。我々は、熱帯山地林の標高傾度を利用し、「異なる気候下にある生態系は、風化速度の違いから鉱物による土壌有機物の安定化作用が異なるため、鉱物粒子と結合している土壌炭素プール(重画分)と植物遺骸を主とするプール(軽画分)では、気温に対する応答は異なる」という作業仮説を、ボルネオ島キナバル山の標高700m~2700m(年平均気温:24℃~12度)に広が森林土壌A層を用いて検証した。標高が上がるに従い、軽画分の炭素蓄積量のみが増加した。森林の純一次生産と土壌炭素量から推定した土壌炭素の回転速度は、低地で数年、高地で20~30年であった。さらに、放射性同位体炭素(14C)を利用して軽画分・重画分それぞれの平均回転速度を推定し、その値と土壌鉱物特性との関係を議論する。
有機地球化学
  • 荻原 成騎
    セッションID: 1P24 20-P01
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    “gem-アルカンの起源についての研究”において、試料採集に用いた器具、およびサンプル袋(瓶)などからの汚染を評価/検討した。フリーザーバッグからは、大量の2,2-ジメチルアルカンと少量の5,5-ジエチルアルカンが検出された。検出されたgem-アルカンの分布は、同種のフリーザーバッグに保存した試料から検出されたgem-アルカンのパターンと一致した。試料採取から保存までの過程において、有機化合物汚染を考慮されなかった試料について有機地球化学分析を行う場合には、種々の汚染について細心の注意が必要である。
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