日本地球化学会年会要旨集
2008年度日本地球化学会第55回年会講演要旨集
選択された号の論文の421件中251~300を表示しています
同位体で見る地球表層環境変動
  • 齋藤 拓也, 渋谷 岳造, 西澤 学, 北島 宏輝, 昆 慶明, 澤木 佑介, 小宮 剛, 平田 岳史, 丸山 茂徳
    セッションID: 2P24 13-P02
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    太古代や原生代の海水組成を推定することは、地球表層や生命の進化に対して制限をすることが期待できる。しかし、これらの時代を通じた海水組成に関するデータは明らかに不足している。そこで本研究では、海水成分が保存されていると考えられる海洋底熱水変質作用によって形成された熱水性石英中の流体包有物の氷点と均質化温度を測定した。そして、得られた氷点をNaCl-CaCl2-H2Oの三成分系で近似して、それぞれの流体包有物Na、Ca、Clの濃度を推定した。その結果と現在の中央海嶺の熱水成分の分布を比較し、海水組成を推定した。
  • 原 淳子, 駒井 武, 川辺 能成
    セッションID: 2P25 13-P03
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    土壌中に含まれる鉛には様々な起源のものが混在しており、その主なものとしては大気粉塵、人為的な投機や河川などへの排水、母岩、鉱床などが挙げられる。我々はこれまでに宮城県北部において大気粉塵の影響を極力排除した表層土壌(sub-surface soil)中重金属調査を行うことで、栗駒山南山麓より流れる迫川下流流域で周辺よりも高い鉛濃度分布があることを報告している。そこでここでは土壌中の鉛同位体比を用い、下流域に分布する高濃度鉛の起源の推定を試みた。<BR>土壌試料の有する鉛同位体比は岩石試料とほぼ同じ分布範囲に収まり、同様のトレンドを示した。この結果から土壌中鉛の起源はこの地域の母岩に由来するものであると推定される。また、一部の土壌は鉱床周辺の変質岩と類似した同位体組成を示しており、これらの岩層に由来可能性が示唆された。
  • 山本 洋輝, 平田 岳史, 西澤 学, 上野 雄一郎, 小宮 剛, 丸山 茂徳
    セッションID: 2P26 13-P04
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    本研究では先カンブリア紀の浅海炭酸塩岩に保存された黄鉄鉱の局所鉄同位体比を測定し、浅海における鉄循環の進化について考察した。
  • 堀川 恵司, 浅原 良浩, 山本 鋼志
    セッションID: 2P27 13-P05
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    有孔虫のNd同位体比は,Palmer and Elderfield (1985)において初めて報告され,深層水のNd同位体比と近い値を示すことが報告された.この事は,堆積物中でカルサイトの表面にFe-Mn水酸化物が吸着し,同時に深層水由来のNdが多く取り込まれている事を示唆する.Vance and Burton (1999),Vance et al. (2004)は,浮遊性有孔虫殻のFe-Mn水酸化物フェーズ中のNdを取り除くクリーニング処理を行い,浮遊性有孔虫がその生育水深であった表層水のNd同位体比と近い値をもつ事を明らかにしている.この事から彼らは,浮遊性有孔虫が表層水Nd同位体比を記録している可能性を指摘している.しかしながら,検証数がまだ少ないこととその確度の曖昧さもあり,指標としての有用性については,さらに慎重に検証する必要がある.本研究では,太平洋で採取された表層堆積物中の浮遊性有孔虫について,クリーニングを行い,REEとNd同位体比の測定を行う.
  • 熊田 英峰, 内田 昌男, 小崎 沙織, 青木 元秀, 藤原 祺多夫
    セッションID: 2P28 13-P06
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    ブラックカーボン(BC)は,高度に凝集した結晶製の構造を持つ高分子炭素系物質の総称である.海洋堆積物中に存在するBCの起源は従来,燃焼過程の気相反応で生成されるスス状炭素(soot-BC)であるとされていたが,近年,地質過程で生成されるグラファイト様炭素系物質(GBC)の存在が重要である可能性が示されている.本講演ではChukchi~Bering海表層堆積物中に含まれるこれら炭素種の安定同位体比の測定に基づいて,BCとGBCの相対的寄与を識別した結果について報告する.
海洋における微量元素・同位体の分布と循環
大気水圏地球化学
大気水圏とそれらの相互作用、気候変動
  • 宮袋 智弘, 豊田 栄, 吉田 磨, 吉田 尚弘
    セッションID: 2P33 16-P01
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    一酸化二窒素(以下N2O)は温室効果気体の一種であり、成層圏オゾンの消長に関与する気体でもある。海洋から大気へのN2Oの放出量は全放出量の約17%を占めるといわれ、海洋はN2Oの重要な生成源であることが知られている。海洋のN2Oは主に微生物活動による硝化反応による副生成物、脱窒反応による中間生成物として生成する。しかし精確な放出量や、硝化、脱窒による生成量の相対比率は不明確なままである。ここでN2Oのアイソトャ}ー比(分子内窒素同位体分布を含む、窒素・酸素安定同位体比)は、起源物質の同位体比や、生成、消滅過程における固有の同位体分別で決定されるため、N2Oの反応経路や循環についてより詳細な知見が得られることが期待されている。そこで本研究では北太平洋におけるN2Oの濃度、アイソトャ}ー比を測定し、この海域におけるN2Oの生成、消滅過程について解析した。
  • 三好 拓朗, 高橋 嘉夫, 東 将之, 金井 豊, 張 仁健, 清水 洋
    セッションID: 2P34 16-P02
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    大気エアロゾルの性状を表す因子は多数あるが、エアロゾル中の元素の化学状態を知ることは起源や動態、環境影響を明らかにする上で重要である。我々は天然系でのエアロゾル中の元素の化学状態を直接同定できる手法としてX線吸収微細構造(XAFS法)をエアロゾル試料に適用した(Takahashi et al., 2006, 2008.)。カルシウムはエアロゾル中の主成分であるが、鉱物エアロゾル(1-2 μm以上)中ではカルサイトとして大気中の硫酸を中和して石コウを生成し、酸性雨を抑制する働きがある。一方で、微小粒子(1-2 μm以下)中では有機酸と反応して存在している可能性もあり、発生源や大気中での他の物質との相互作用によってカルシウム化学種の粒径依存性も様々であると考えられる。本研究ではXAFS法を用いて中国と日本で粒径別に採取したエアロゾル試料中のカルシウム化学種を明らかにしその粒径依存性を調べ、カルシウム化学種の起源や反応過程について粒径ごとに議論した。
  • 今井 翔, 吉田 磨, 河野 恒平, 豊田 栄, 藤井 彩子, 山田 桂大, 渡邉 修一, 吉田 尚弘
    セッションID: 2P35 16-P03
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    WOCEの2ラインにおけるメタンの空間的特徴や起源、大気海洋フラックスについて明らかにすることを目的とし、北太平洋において溶存メタン濃度と炭素安定同位体比を測定した。 海水試料は海洋地球研究船みらいによる2005年10月~2006年2月のMR05-05航海(WHP-P03)と、2007年7月~9月のMR07-04航海(WHP-P01)で得た。研究室に持ち帰り海水試料を脱気・精製し、FID-GCを用いてメタン濃度、GC/C/IRMSを用いて炭素安定同位体比(δ13C-CH4)を測定した。通常濃度の試料から得られた測定精度はそれぞれ~5%と~1‰となった。P01観測ではメタンの極大及び20-50%の過飽和が、表層300 m以浅において観測された。炭素安定同位体比から水柱での生成が示唆され、東部では生成経路が異なることを示唆している。P03観測東部沿岸域では沿岸湧昇にともなって現場でのメタン生成が表層に限定されることがわかった。密度躍層を境界に表層では生成、深層では酸化され、表面水のメタン過飽和により大気へ逃散していることがわかった。
  • 山岸 洋明, 遠嶋 康徳, 向井 人史, 島野 富士雄, 曾 継業, 笹岡 晃征
    セッションID: 2P36 16-P04
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    2005年3月より北海道東部に位置する落石ステーションにおいて酸素/窒素比の現場観測を開始した。落石においては、酸素濃度とCO2濃度の和として表されるトレーサー、大気ャeンシャル酸素(APO)が、初夏に大きく変動する特徴を持つ。APOは陸域生態系による呼吸と光合成に対して変化しないように定義されていることから、初夏のAPOの変動は海洋からの酸素放出によるものと考えられる。2005年の4月から7月上旬までの期間に非常に高いAPOが観測された。数時間から数日程度の短期間変動の要因を解析するため大気塊のバックトラジェクトリー解析を行うと、落石岬で高いAPOが観測される際には大気塊が純一次生産量の高い海域の上空を輸送されていることが確かめられた。したがって、落石岬において観測される短時間のAPOの高まりは、海洋の春季ブルームによる活発な純一次生産により放出された酸素に起因することが示唆された。
地球大気化学:ガス・エアロゾル
水圏環境地球化学
  • 児玉 将大, 山本 温彦
    セッションID: 2P42 19-P01
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    南九州には,後期更新世の入戸火砕流堆積物からなるシラス台地が広く分布している。シラス台地の水環境は,台地上に降る雨水,シラス粒子間に付着する間隙水,シラス下位から流出する湧水,および台地を開析する河川水によって形成される。本研究では,鹿児島県国分地域における,シラス台地の水環境について,それぞれ溶存成分の分析を行い,考察することにした。
    間隙水に溶存する一価の主要陽イオンとシラス粒子表面に吸着される二価の主要陽イオンは,シラスの化学組成,間隙水中の水溶性イオンおよびシラス粒子表面の交換性イオン,ならびに湧水および河川水のそれぞれについて,相互に関係することがわかった。このことより,シラス台地の水環境では,雨水とシラスが相互作用を起こし,間隙水の水溶性陽イオンだけでなく,シラス粒子表面の交換性陽イオンも水質に影響を与えていることが考えられる。
  • 大場 康弘, Simom R. POULSON
    セッションID: 2P43 19-P02
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    溶存酸素は水圏環境において溶存硫化物の最も多く、最も重要な酸化剤である。本研究では、硫化物の種類、塩濃度、温度の違いによる硫化物による還元に伴う酸素分子の酸素同位体分別を明らかにした。酸素分子が硫化物に還元されるに伴い、酸素分子の酸素同位体比は大きくなっていった。この程度は硫化物の種類によって異なるが、塩濃度の違いによる変化は見られなかった。したがって酸素分子の同位体分別は反応経路に依存していることから、自然環境下における酸素の挙動を調べるのに有効である。
  • 江里口 和隆, 高嶋 温子, 栗崎 弘輔, 能登 征美, 廣瀬 孝, 井倉 洋二, 高相 徳志郎, 吉村 和久
    セッションID: 2P44 19-P03
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    沖縄県西表島の河川について、化学組成分析と炭素同位体比分析から水質形成メカニズムと炭酸水素イオンの起源の解明を行った。島内河川の水質は、海塩と化学風化の寄与により形成されており、酸性雨に対する緩衝能である炭酸水素イオンの起源は島内にわずかにしか存在しない石灰質砂岩であることが分かった。
  • 大城 恵理, 村松 容一
    セッションID: 2P45 19-P04
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    農業が盛んな茨城県西部に位置する菅生沼地域では,近年,富栄養化などによる水質の悪化が懸念されている。今回,菅生沼および流入河川を対象に,水質組成の季節的・二次元的変化を調査して水質汚染の現状を把握するとともに,窒素安定同位体比を測定して硝酸性窒素の汚染源を特定した。さらに,沼水の土壌への浸透に伴う水質組成の変化を明らかにするとともに,土壌水の水質形成機構を水″z物相互作用の化学平衡論によって考察した。
  • 村松 容一, 荒井 寛未, 中山 ふみ乃, 近藤 史也
    セッションID: 2P46 19-P05
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    水質汚濁防止法による環境基準を超える全国の地下水汚染事例のうち約4割が硝酸・亜硝酸性窒素によるものであり(環境省,2007),東京理科大学野田キャンパスのある野田市では深度約20mより浅い自由地下水で,硝酸性窒素による汚染が進んでいる(村松・福田,2006)。今回,野田市全域の自由地下水を対象に,水質組成を調査して硝酸性窒素汚染の二次元的な広がりを明らかにするとともに,窒素・硫黄安定同位体比を測定して硝酸性窒素の汚染源を特定した。さらに、高硝酸性窒素汚染の進む1地点で長期連続の採水分析を実施し,地下水の硝酸性窒素濃度へ与える化学肥料の経時的影響,および降水の自由地下水への涵養を検討した。
  • 杉本 雅明, 齊藤 友比古
    セッションID: 2P47 19-P06
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    地球上の物質は移動しながら、その経路上の様々な情報を水温・残留イオン・同位体比などのファクターとして記録していることがある。これら複数のファクターの観測結果と地質調査などの結果を組み合わせて使うことで、より鮮明に地下構造が解明されると共に、地下構造の時間的変化が捉えられると考える。本発表において一ヶ所ではなく、ある程度細かいメッシュで特定の温泉地域の源泉を、面的にリアルタイム観測を行うことの意義と期待を述べる。
  • 牛江 裕行, 鈴木 淳, 川幡 穂高
    セッションID: 2P48 19-P07
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    流域の地質が河川水とその炭素輸送に対してどの程度鋭敏に影響をおよぼすのかを評価することを目的として、沖縄県石垣島と西表島で採水調査を行った。流域地質の大部分を琉球石灰岩が占める石垣島宮良川は、石灰岩風化の効果を反映して全体的に高い無機炭素濃度を示し、さらに下流域での大規模な地下水流入に伴って急激に増加する様子が見られた。対照的に、流域全体をケイ質の砂岩が占める西表島浦内川は、ケイ酸塩岩の風化速度が遅いことや、石垣島と比較して地下水の賦存量が少ないことを反映して、低い無機炭素濃度を示した。炭素安定同位体比δ13Cは、低濃度のサンプルでは大気と土壌の寄与のバランスによって-5から-15‰の間でばらつきが見られたが、無機炭素濃度の増加に伴い-8‰付近に収束する様子が見られた。この値は、土壌から供給された二酸化炭素による石灰岩の溶解のみでは説明できず、大陸由来の酸性物質などの影響により石灰岩の溶解が促進されている可能性を示唆している。
  • 伊藤 由紀, 宮川 公雄
    セッションID: 2P49 19-P08
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、有機物を含む地下水の分類・流動の指標として、腐植物質およびSi, Al, B等の無機元素の適用可能性を検討するため、十勝平野帯水層の褐色地下水を対象に、腐植物質を中心とした溶存有機物の性質と無機元素量から地下水の分類を行った。
バイオミネラリゼーションと石灰化 -遺伝子から地球環境まで
  • 豊島 考作, 高畑 直人, 白井 厚太朗, 北島 宏輝, 天川 裕史, 佐野 有司
    セッションID: 2P50 22-P01
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    海水中のストロンチウム同位体比の測定を行う研究は、数億年スケールでの海洋環境変動を引き出す上で重要である。リン酸カルシウムの結晶であるサメの歯のエナメル質は続成作用の影響を受けにくく、過去のオリジナルなストロンチウム同位体比復元に適していると考えられるが、従来の研究ではサメの歯のバルク分析、または比較的大きなサメの歯のエナメル質を削って行う分析のみであった。本研究の目的はサメの歯のエナメル質を局所分析することにより、より正しい値のストロンチウム同位体比の復元を行うことである。このために現世のサメについてバルクの分析値とNanoSIMSによる分析値を比較し、分析法の確立を行い、いくつかの化石について局所分析を行った。この結果、現世のサメの歯は現在の海水の値を示し、中新世の化石以外は炭酸塩のデータによるストロンチウム同位体比進化曲線と誤差範囲内で一致した。
加速器質量分析が拓く地球環境学・年代学・考古化学
口頭発表(第3日)
新しいサンプルリターン時代の分析法・体制とその成果
島弧・海嶺衝突帯の火成作用とテクトニクス
  • 新正 裕尚, 柴田 知之, 芳川 雅子, 折橋 裕二, 角井 朝昭
    セッションID: 3A12 09-01
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    西南日本の海溝寄り地域には中新世に活動した玄武岩質火成岩体が点在する.それらのうち,アルカリ岩質の種子島,足摺岬岩体,およびソレアイト質の室戸岬,潮岬岩体から採取された試料について,全岩の微量元素,Sr-Nd-Pb同位体組成を報告するとともに,それらのマグマ成因について検討した.ソレアイト質の岩体については四 国海盆の活動最後期の縁海性ソレアイト質玄武岩質マグマが付加体に貫入したものという,従来唱えられている考えと矛盾はない.アルカリ岩質の岩体は四国海盆のオフリッジアルカリ玄武岩よりエンリッチした組成を持ち,さらに種子島,足摺岬岩体の間で同位体組成に差異が見られる.それは両者の活動時代の差異と関連するものとみられる.
  • 角井 朝昭, 新正 裕尚
    セッションID: 3A13 09-02
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    西南日本の中央構造線周辺から外帯にかけての地域には,初期-中期中新世の地質ユニットが多数分布する.これらの地質ユニットに関する年代学-古地磁気学的研究によって1980年代初頭に西南日本ブロックの回転モデルが提案された.それ以降,これらの地質体の個々の形成年代に関する理解は大きく改定されており,テクトニクスに関する大枠も再考が必要である.本講演では,これらの地質ユニットについて時空分布を整理し,問題点などを述べる.
  • 木村 純一
    セッションID: 3A14 09-03
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    西南日本弧下では,過去15Myにわたり四国海盆の累進的サブダクションが引き続いている.このため前弧側から背弧側へと火成活動が遷移し,リッジサブダクションによるMORB的玄武岩,スラブ融解-マントル反応による高マグネシウム安山岩,スラブ融解によるアダカイト,スラブ脱水マントル融解による島弧型玄武岩が活動している.これらはフィリピン海プレートの脱水と融解作用によって形成されたと考えられる.本講演では,その地球化学的証拠について報告する.
  • 本多 了, 吉田 武義, 青池 寛
    セッションID: 3A15 09-04
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    本講演では、最近10 Myrの東北日本弧と伊豆―小笠原弧における島弧火山活動史を元にして、マントルウエッジ内に小規模対流が存在する可能性を数値シミュレーションの立場から示唆する.東北日本弧では、現在の火山活動域は島弧に対してほぼ垂直な方向に伸びた数個の群れからなる空間分布を示している(いわゆるホット・フィンガー)。しかし、最近5 Myr程度の火山活動域を調べると、背弧側から火山フロント側に向かって移動したように見え、また、群れの位置も約5 Maに入れ替わったように見える(少なくとも現在とはパターンが異なる)。これに対し、伊豆―小笠原弧にも、東北日本弧の群れと似た島弧を横切る海山列が認められる。これらの海山列の火山活動は約17 Maから3 Ma頃までの間にあったが、現在の火山活動は島弧に平行な軸を持つ拡大に変わっている。我々は、島弧下で小規模対流が起こる数値モデルを構築した結果、温度分布のパターンが、少なくとも定性的には、これらの特徴と良く似ている事を明らかにする。また、斜め沈み込みのモデル計算の結果から、伊豆―小笠原弧のテクトニクスに関する幾つかの推測を行う。まず、伊豆―小笠原弧では、沈み込むスラブの角度が、次第に増加したと考えられる。こう仮定する事により、島弧を横切る海山列に沿った火山活動が消滅し、現在の島弧に沿った狭い地域で起こっている拡大に変化する事が説明できる。また、現在の海山列の走向は、島弧に対して斜交しているが、それは、本来的な特徴ではなく、海山列形成後の島弧の走向に沿った背弧側の横ずれ運動によるものと解釈される。これらの推測は、伊豆―小笠原弧の今後の詳細な地形学的、年代学的研究により検証出来るであろう。
  • 折橋 裕二, 中井 俊一, 新正 裕尚, ナランホ ホセ, 元木 昭寿, クリスマシー グループ
    セッションID: 3A16 09-05
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    アンデス弧・第四紀火山列はチリ三重点近傍において全長約350kmの非火山地帯となり,これを境に大陸弧火成作用からスラブ溶融による火成活動へ移行する.したがって,この近傍の第四紀火山のマグマティズムの変遷を明らかにすれば,中央海嶺沈み込みによるマントルウェッジの温度構造やスラブ脱水作用とH20の循環機構の変化を明らかにすることができる.そこで南部火山地域最南端のハドソン火山に注目し,同火山構成岩の化学組成と既知の噴出年代から,第四紀マグマティズムの変遷史を議論する.
  • 昆 慶明, 平田 岳史, 小宮 剛, 安間 了, 丸山 茂徳
    セッションID: 3A17 09-06
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    『生命』、『海』、『プレートテクトニクス』と並んで、『花崗岩質大陸地殻』の存在は地球を特徴付ける要素であり、その生成プロセスを明らかにすることは地球史を解明する上で非常に重要である。 本研究では、LA-MC-ICPMSを用いてタイタオ半島花崗岩から分離したジルコンの局所Hf同位体比測定を行った。その結果ジルコンの177Hf/176Hfは、現在沈み込む海洋地殻の値と誤差範囲で一致し、およそ0Maのモデル年代が得られた。このモデル年代は花崗岩マグマの原岩がマントルから分離した年代を反映することから、タイタオ半島花崗岩マグマの原岩は古いモデル年代を持つ下部地殻ではなく、沈み込む海洋地殻であることが確かめられた。
  • 安間 了, 小宮 剛, 昆 慶明, 渋谷 岳造, 太田 努, 折橋 裕二, Armstrong Richard
    セッションID: 3A18 09-07
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    チリ海嶺が沈み込みつつあるタイタオ半島の西端部には、5.7 Maのオフィオライトとそれを取り囲むように5つの角閃石-黒雲母花崗岩体が分布する。これらの珪長質深成岩体のU-Pb年代測定と全岩化学分析をおこなった。リサイクル・ジルコンはほとんど見られず、若くて熱い海洋地殻の部分溶融や結晶分化作用によって、花崗岩マグマが生成し得たことを示した。海嶺の衝突・沈み込みという一連のテクトニックな過程の結果、さまざまな組成を持つ花崗岩が生成しうるということを議論したい。
  • 山崎 秀策, 宮下 純夫
    セッションID: 3A19 09-08
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    従来,伊豆マリアナ孤を代表とする島弧地殻の構成岩類は,サンプル採集の困難性から地球物理的な手法を中心として推定されてきた.白亜紀にアラビア半島上へ衝上したオマーンオフィオライトは,中央海嶺起源のMORB海洋地殻と,そこに貫入する島弧火成岩類の存在が知られており,この後期火成活動の起源がオフィオライト衝上時のオブダクションに由来するというモデルが提唱されている(Ishikawa et al., 2005など).これはすなわち,海洋地殻内に生じた沈み込み火成活動による初期島弧の発生を意味する.本発表では,オマーン北部地域において,ボニナイトを伴う超塩基性岩類の解析に基づき,この初期島弧発生プロセスを議論する.
  • 小川 勇二郎, 黒澤 正紀, 平野 直人, 森 良太
    セッションID: 3A20 09-09
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
    会議録・要旨集 フリー
    陸上のオフィオライト・スイーツには島弧のシグネチャーを持つものが含まれ、また現在の島弧前弧域にもオフィオリティックな岩石が現出することから、オフィオライトの多くは島弧で形成されたものと信じられている。ある条件下で島弧の前弧域がスプレッディングを起こし、そこに拡大軸ができていわゆる拡大海嶺的なまた島弧的なセッティングが生じる、とのモデルは多いが、その実体に関しては推測の域を出ない。SSZ ophiolite, forearc ophioliteなどとされるものは次のどれかに属するか、その組み合わせである。1)沈み込みが開始した部分のかつての大洋プレートのリムナント(つまり島弧のできる前の大洋プレート)、2)島弧がその火山フロントから裂けて発達するときに、前弧へ押しやられた古い島弧部分、3)島弧そのもの、特にその発達初期に活動を停止したもの、4)別の場所にあったものが、島弧の発達とともに前弧域にもたらされたもの、5)島弧とは全く無関係の大洋側のプレートが、沈み込み帯へトラップされたもの(オブダクションを含む)、6)拡大海嶺の沈み込みやロールバックによって前島弧その場所に、in situで噴出・エンプレイスしたもの。7)背弧のもの。これらにエンプレイスメントのプロセスやメカニズム、発達順序などを組み合わせると、さまざまなセッティングがありうる。たとえば、島弧の火山フロントからはかけ離れた場所にある例(タイタオ;Espinosa et al., 2005 Island Arc)や、拡大海嶺近傍から次の沈み込みが始まって、結果的に拡大軸に島弧のものが重なった例(オマーンなど)もあり、改変(あるいは改編)という用語は適当だろう。われわれは房総半島嶺岡帯の例について以下のような知見を得たので、伊豆島弧の発達史からのアナロジーを展開したい(Hirano et al., 2003 GSLondonSpecPub; Ogawa & Takahashi, 2004 Tectonophysics; Mori et al., 2008 GSASpecPap, submitted)。房総沖には世界的にもまれなTTT-type triple junction(房総三重点)が存在し、それに関連した島弧-島弧の衝突が生じていると考えられる。このセッティングは”trinity clastics”(オフィオリティック、島弧、大陸由来の三者混合の砕屑岩)(Mori et al., 2008 GSASpecPap, submitted)の存在から、中期中新世からのものであろう。それはまた、四国海盆の拡大末期における日本海の観音開き、南部フォッサマグナの火山活動、伊豆弧の衝突開始などに符号することから、日本列島が現在の形となった時期に一致する。嶺岡帯は、基本的には四万十帯の延長であろうが、そのオフィオリティックな岩石と付随する地層・岩石群は、西南日本の一般の四万十帯に現れるものとは、産状などが根本的に異なっている。玄武岩はtholeiiteを主とし(MORBを主とするが、IATもある。すなわちフラットなスパイダーグラムで特徴的ないわゆるMORBタイプが多いが、一部にNb-Taがネガティブなアノマリーを示す島弧的なものが含まれる)、またwithin plate (A)のドメインに入るalkali basalt(petit spotかもしれない)もある。玄武岩は枕状溶岩からなり白亜紀(80Ma)から中新世(20Ma)までにわたる。斑レイ岩の大半は島弧的であるがMORB的なものもあり、ほかの玄武岩質岩類とともに熱水変質、マイロナイト化、ブレッチャ化など、拡大軸やトランスフォーム(コアコンプレックス)などに類似する変形・変質を受けている。時代的変化としては、明らかに島弧的な岩石は40Maころから普通になり(トーナライト、安山岩、ボニニティック(28.6+/-5.1Ma)など)、最後は15Maころののフォッサマグナ・グリーンタフと共通の安山岩のパミスフォールで終了し、相前後して形成される付加体である中新世前期(23Ma)以降の保田・江見層群には伊豆島弧由来の火山岩が顕著となる。以上のような状況からは、嶺岡帯のオフィオリティックな岩石は白亜紀から古第三紀のある時期までの大洋プレート(Ogawa & Taniguchi, 1988 Modern Geology; 佐藤暢ほか, 1999地学雑らの「嶺岡プレート」)と、40Ma以降の島弧的な玄武岩ほかの混合したものである蓋然性が高い。また、結晶片岩ブロック(4個)の存在も見逃せない。現在の伊豆・マリアナ弧には、1)30Ma以前のトランスフォーム断層(四国・パレセベラベイスンの最初の境界)に沿う大町海山には片状アンチゴライト蛇紋岩に伴って角閃岩相の結晶片岩が産する(Ueda et al., 2004 Geology)。2)島弧最前縁には、蛇紋岩ダイアピルが多産し、ブルーシスト、チャート(白亜紀)などが産する(Maekawa et al., 1995 AGUGeophMonog)、3)母島海山には、蛇紋岩、斑レイ岩、玄武岩などいわゆるforearc ophioliteが産する(Ishiwatari et al., 2006 Island Arc)。以上のような現在の産状をすべて組み合わせると、嶺岡帯の岩石を説明可能かもしれない。今後、すべての岩石の徹底的なケミストリー(同位体を含む)、年代測定、産状の考察が必要である。
  • 柴田 伊廣, 折橋 裕二, 木村 学, 橋本 善孝
    セッションID: 3A21 09-10
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    陸上付加体は主に付加プロセスの違いから大きく二つに分類される.それは,剥ぎ取り付加したと考えられている砂岩泥岩主体のタービダイト層と,底付け付加したと考えられているメランジュ帯である.四万十帯では,このダービダイト層とメランジュ帯が交互に繰り返している.本研究ではこの二つの付加体の堆積年代の差と,底付け付加体内部の堆積年代の変化の様子をとらえ,付加が間欠的か定常的かを明らかにした.さらに,海溝への堆積物の供給量とプレート相対運動速度をある期間において一定とした場合,付加せずに沈み込んだ堆積物の質量を算出した.これにより現在,未解明である沈み込み帯における,物質のフラックスを考える上でも重要な情報を与える可能性がある.
  • 森 康, 折橋 裕二, 宮本 知治, 島田 和彦, 重野 未来, 西山 忠男
    セッションID: 3A22 09-11
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/06
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    低温高圧型変成帯に発達する蛇紋岩メランジは、しばしば周囲の変成岩より高圧の変成条件を持つ構造岩塊を含む。そうした構造岩塊は、蛇紋岩の上昇時に捕獲されたものと考えられ、沈み込み帯深部で起きる諸現象の痕跡を保持している可能性がある。本研究では、西彼杵変成岩類の蛇紋岩メランジに構造岩塊として含まれるヒスイ輝石岩の成因解明を試みた。
    西彼杵変成岩類は、西南日本西端に位置する白亜紀後期の低温高圧型変成帯で、主に緑簾石青色片岩亜相の片岩類と蛇紋岩メランジからなる。Shigeno et al. (2005)は、蛇紋岩メランジから石英を含むヒスイ輝石岩を報告し、その変成条件を>1.3 GPa、>400℃と見積もった。これは、西彼杵変成岩類で最も高圧の変成条件である。
    ヒスイ輝石岩は、ヒスイ輝石中の包有物およびマトリックス鉱物としてジルコンを含む。ジルコン自身は、包有物として曹長石、白雲母、石英を含む。ジルコンは内部構造により、化学的に均質なもの(H-type)、振動累帯構造を持つもの(Z-type)、割れ目に沿った変質を示すもの(A-type)に分類される。H-typeジルコンとZ-typeジルコンのコアは、比較的高いTh/U比(0.5-1.0)と古い238U-206Pb年代(126 Ma)を示す。Z-typeジルコンのリムとA-typeジルコンは、低いTh/U比(0.5未満)と若い238U-206Pb年代(それぞれ80-90 Maとca. 100 Ma)を示す。Z-typeジルコンのリムの238U-206Pb年代は、ヒスイ輝石岩の40Ar/39Ar年代(80-90 Ma, Mori et al., 2007)や片岩類のK-Ar年代(65-85 Ma, Hattori & Shibata, 1982)と一致する。以上の事実は、ヒスイ輝石岩の原岩が珪長質火成岩だったことを示す。H-typeジルコンとZ-typeジルコンのコアは珪長質マグマから晶出したもの、Z-typeジルコンのリムとA-typeジルコンは、それぞれ変成作用時のオーバーグロースおよび熱水変質を表すと解釈される。H-typeジルコンとZ-typeジルコンのコアのTi含有量から推定した晶出温度(約750℃)は、この解釈と調和的である。さらに、H-typeジルコンとZ-typeジルコンのコアのREEパターンは、それらを晶出した珪長質マグマがLREEに富み、Eu異常を持たなかったこと示す。このことから、ヒスイ輝石岩の起源はスラブ融解で生成されたTTG質マグマだった可能性がある。
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