世界中において地下水の長期的な保全は,部分的に難透水層に依存している。なぜなら,難透水層は,自然・人為起源物質の移行に影響を与えるからである。そのため,難透水層中の溶存物質の分布,輸送,そして挙動を制御している過程を理解することが重要である。さらに,近年では地下水中における人為的な窒素循環量が増大し,関心を集めている。そのため,難透水層中における地下水のNO
3- の挙動が検証されなければならない。私たちは,筑波台地において,数メートルスケールで難透水層中(4m × 6m)のNO
3- 濃度の水平的な分布を調査し,その不均質性をもたらす機構を明らかにすることを試みた。なお,このような研究は私たちが知っている限り最初の研究である。高密度の観測は,ピエゾメータを用いて実施し,複雑な水平的なNO
3- の不均質性を明らかにした。ピエゾメータから採取された地下水の大きなNO
3- 濃度の差異は,わずか2m の範囲内において認められた。本観測で明らかになったNO
3- 濃度の不均質性をもたらす要因は,確定することはできなかったがおそらく脱窒やNO
3- 輸送過程の不均一性によるものであると推察される。本研究は,難透水層中地下水のNO
3- 濃度の不均質性を数メートルスケールで示した初めての研究であり,難透水層中におけるNO
3- の自然減衰に対して新たな視点を与えるものである。また同時に,少ない本数のピエゾメータの観測から得られた結果を用いて,NO
3- の自然減衰帯の広域評価を実施するのは困難であることが示唆された。
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