マーシャル諸島共和国は,干ばつに被災し,水問題が深刻である。マジュロ環礁ローラ島の淡水レンズ(ローラレンズ)からの過剰揚水により,ローラレンズ中にアップコーニングが観測された。しかし,ローラレンズはアップコーニングからすぐに回復しなかった。本研究の目的は,ローラレンズの水理水頭と電気伝導度の観測結果から,地下水流動とローラレンズ形状を推定することである。アップコーニング発生前後の水理水頭分布と電気伝導度分布を比較した。その結果,アップコーニングの回復に時間を要する要因は,1)水理水頭が低い場所に地下水流動が集中し,地下水流動経路が形成され,塩分濃度が高い地下水流動が生じたこと,及び2)雨水による側方流動が大きく,鉛直方向の地下水の入れ替わりに時間を要したことであるとわかった。この観測技術はマーシャル諸島共和国以外の淡水レンズにも適用できることが期待される。