日本水文科学会誌
Online ISSN : 1883-7166
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ISSN-L : 1342-9612
53 巻
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巻頭言
企画「最前線の現場」
講演再録
論文
  • 飯田 真一, 田中 憲蔵, 清水 貴範, 荒木 誠, 壁谷 直記, 清水 晃, 宮本 麻子, 漢那 賢作, 古堅 公
    2023 年53 巻 p. 43-54
    発行日: 2023/04/24
    公開日: 2023/04/24
    ジャーナル フリー

    スダジイは沖縄から関東地方を超えて広く分布する代表的な常緑広葉樹の一つであるが,樹液流速測定に基づく蒸散量の評価や,それに基づく水利用特性に関する知見は限られた状況にある。そこで,森林総合研究所構内に生育するスダジイ3個体を対象として,熱消散法に基づく蒸散量の計測を行った。スダジイの単木蒸散量は冬季(1月)に最小値を,夏の始め(6–7月)に最大値を示した。樹木1個体の葉群の気孔開度を表す樹冠コンダクタンスは日中平均日射量が200 W m-2を超えると飽和し,日中平均飽差が増加すると減少傾向を示した。解析対象期間における日平均土壌体積含水率は概ね0.3–0.5の範囲であったが,樹冠コンダクタンスへの影響は少ないことが分かった。また,樹冠コンダクタンスの最適気温は日中平均気温が10–20°Cの範囲であった。樹冠コンダクタンスの飽差に対する応答特性に基づく解析から,スダジイ3個体はいずれも水節約型であることが明らかとなった。すなわち,本研究で対象としたスダジイは乾燥時には気孔を閉じて日中の葉の水ポテンシャルを一定に保つことで,極端な乾燥条件下でも通水欠損が生じにくい特徴を有するものと考えられた。

企画「最前線の現場」
資料
  • 一柳 錦平, Irfan Tsany RAHMAWAN, 井手 淨, 嶋田 純
    2023 年53 巻 p. 61-66
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー

    熊本市の水前寺・江津湖地域において,2016年4月14日,16日に発生した熊本地震前後の地下水湧出量の変化を明らかにした。研究地域を4つのゾーンに分けて,各湧出量の正の値だけ合計した結果,地震前の2015年5月から2016年4月までの平均値は約490,000 m3/dayだったが,地震後の2016年5月から2018年4月までの平均値は約620,000 m3/dayと大きく増加した。この原因は,上江津湖ゾーンと中江津湖ゾーンで地下水湧出量が大きく増加したためである。反対に,下江津湖ゾーンでは湖水から地下への浸透量が大きく増加した。その後,2018年5月から2020年4月までの全湧出量の平均値は約510,000 m3/dayまで減少し,2020年5月以降は約550,000 m3/dayとなった。ただし,地震後に観測された河川流量は,主に上江津湖の復旧工事による影響も考えられる。

企画「最前線の現場」
報告
総説
  • 谷口 真人
    2023 年53 巻 p. 79-95
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

    この総説では,持続可能な社会に必要な総合知の創出に向けた水文学の可能性について論じた。まず,水が持つ4つの特徴,水文学の歴史,地球環境研究と持続可能性研究の統合の動向について説明した。さらに,水文学の変化と工業化,都市化,緑の革命などの社会変革との関係を整理した。これらに加えて,この総説では,自然水文学,社会水文学,人文水文学の分類だけでなく,学問,学際,超学際としての水文学についても議論した。最後に,この総説では,地球と人類のシステムに組み込まれた歴史として,総合知の創出に向けた水文学の可能性を概観した。

受賞記念寄稿
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