国際ビジネス研究
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14 巻, 2 号
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巻頭言
統一論題
  • 藤田 正孝
    2022 年 14 巻 2 号 p. 1-14
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/10/16
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症の世界的拡大する中、バリュー・チェーンの強化と再構築を求める声が強まりました。調達の効率化を図った結果として、サプライ・チェーンまたは流通チェーンが限られた企業と国に集中したため、企業は、サプライヤーから必要な材料とインプットを継続的に受けられるかが大きな懸念となり、バリュー・チェーンが集中する場所はどこなのか、が問題となりました。

    この問題に対し、私は国際機関日本アセアンセンターからのある報告書(Resilient Global Value Chains for ASEAN and its Relationship with Partner Countries、https://www.asean.or.jp/en/centre-wide/resilient_gvcs/)の中で、国際生産ネットワークに参入しているASEAN加盟各国および企業は、それぞれの業界における外部リスクに対するバリュー・チェーンの脆弱性を求め、そのリスク度合いを考慮に入れGVC(グローバル・バリュー・チェーン)を検証すべきであると指摘しました。具体的には、2種類のリスク─GVCの上流部分に影響を与えるリスク(サプライヤー市場の集中)と、GVCの下流部分に影響を与えるリスク(バイヤー市場の集中)─を検証し、どの産業がリスクに対してより脆弱な傾向にあるかを特定しました。

    検証の結果、サプライヤー市場におけるパートナー国別の集中度を見ると、中国はASEANの様々な産業において最も重要なサプライヤーとなっており、ASEAN加盟国の標準化された222の産業の半分以上(129産業)で、競争上の懸念を引き起こすのに十分な市場占有率を占めていることがわかりました。一方、日本が、高い市場占有率を示しているのは、38の産業です。他方、バイヤー市場の集中に関しては、中国は多くの産業において主要なバイヤーとは見なされていません(中国が市場の集中において影響力をもつのは、11産業のみ)。日本は、24産業において、主要なバイヤーです。

    さらに、私はASEANにおいて強靭なGVCを構築するための、以下5つを含む戦略を提案しました:

    ● ASEAN加盟国によって実施されたパンデミック関連の政策措置の活用すること

    ● 民間セクターによる、リスク管理の改善すること

    ● 公的部門、民間部門双方によるデジタル変革の強力な推進すること

    ● 新しい危機に強い産業の促進すること

    ● 国際生産のための企業戦略の再検討すること(オフショアリングまたはリショアリング)

    最後に、政策立案関係者に対し、新型コロナウイルス感染症による危機とその経済的余波に効果的に対処するには、一時的な解決策や保護貿易主義に頼るのではなく、全体のバランスに配慮したビジネス環境を維持することが重要であると指摘しました。

  • The Basic Theory of Global Value Chains
    Peter J. Buckley
    2022 年 14 巻 2 号 p. 15-25
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/10/16
    ジャーナル フリー
研究論文
  • ─日本と米国を対象に─
    金 炯中
    2022 年 14 巻 2 号 p. 27-38
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/10/16
    ジャーナル フリー

    ソーシャルネットワークサービス(以下、SNS)の急速な成長にもかかわらず、SNS広告の特徴とその効果に関する実証的研究は限定的である。また、既存研究の大半は、ローカル市場の観点から議論されており、異文化の観点からSNS広告の有効性を検討した研究は非常に乏しい。そこで本研究は、広告価値及び社会的要因が、SNS広告に対する態度と行動意向にどのような影響を与えるかを異文化コンテクストで検証することを目的とする。分析に当たっては、日本と米国のSNSユーザーを対象に実施した質問紙調査結果を元に、共分散構造分析モデルを用いた。その結果、まず、信頼性は日本及び米国のSNSユーザーの広告態度に正の影響を与えることが明らかになった。また、情報性、インセンティブ性、そして主観的規範は米国と日本の間で異なるパターンを示していることが確認された。そして、広告に対する態度は両国ともユーザーの行動意向に強い影響を与えることが判明した。本研究は、SNS広告の国際的な活用における文化の役割について検証することにより、国際マーケティングの研究領域に理論的・実証的知見を示すことができた。

  • ─販売および調達の現地化とホスト国での事業経験─
    林 正
    2022 年 14 巻 2 号 p. 39-51
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/10/16
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は、国際合弁事業(IJV)における多国籍企業(MNC)と現地パートナー企業によるIJVの株式の取得と譲渡を促す要因を明らかにすることである。IJVにおける出資企業間の依存関係に注目し、IJVの現地販売と現地調達、またMNCのホスト国での事業経験が、IJVにおける各出資企業の出資比率の変化に影響するという議論を行う。日本における製造業のIJVを対象とした分析の結果、次の傾向が見いだされた。(1)現地販売比率や現地調達比率が高いIJVほど、MNCは当該IJVの株式を現地パートナー企業に譲渡する傾向を持つ。(2)現地調達比率が高いIJVほど、MNCは現地パートナー企業から当該IJVの株式を取得しなくなる。(3)MNCがホスト国での長い事業経験を持つ場合、IJVの現地販売比率とMNCによる現地パートナー企業からの当該IJVの株式取得の関係は正にモデレートされる。(4)MNCがホスト国での長い事業経験を持つ場合、IJVの現地調達比率とMNCによる現地パートナー企業に対する当該IJVの株式譲渡の関係は負にモデレートされる。これらのことは、IJVにおいて販売と調達の現地化がMNCと現地パートナー企業間の依存関係を生み出すものの、MNCはホスト国での事業経験を積むことでその関係を変化させられる可能性を示している。

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