沙漠研究
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34 巻, 1 号
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総説
  • 真木 太一, 守田 治, 鈴木 義則, 西山 浩司, 脇水 健次
    2024 年 34 巻 1 号 p. 1-16
    発行日: 2024/06/30
    公開日: 2024/06/30
    ジャーナル フリー

    液体炭酸(LCD)散布による人工降雨実験は東京・伊豆諸島で6回,九州・佐賀で1回,四国・西条で1回実施された.

    2012年2月27日の三宅島では,散布された雲は発達し,上層域のSW風によって三宅島の北東域に移動した.人工雲の下層に発生した雨脚はNE~NNE風で御蔵島の西方に移動した.そしてほぼ逆向きの下層域のWSW風によって御蔵島上に上昇し,再び発達して鎖状の雲がENE方向に形成された.レーダーエコーに映った人工雲は3000-5000 mに達した.人工降雨量はトータルで2000万トンと推定された.

    2013年3月14日の三宅島では,強い逆転層が2000-2200 mにあった.三宅島・御蔵島間での散布による人工降雨のため,2時間後には直径50 kmの雲のない領域が発生した.推定降水量は200万トンとなった.

    2013年12月16日の新島では,散布によってできた3列の雲列は散布20分後に人工衛星テラ画像で確認できた.2時間後には御蔵島の東方に3列の雲の消えた空域が人工衛星アクア画像で確認できた.推定降水量は10万トンとなった.

    2013年12月26日の唐津では,散布された雲は3500 m高に発達し,雲の厚さは1250 mから1400 mと150 m増加した.2時間後の人工雲の最終的影響距離は100 km以上に達した.人工雲と自然雲による推定降水量は2時間後に15万トンとなった.レーダーエコーによる推定人工降雨量と地上の実降水量は一致した.

    2013年12月27日の西条では,ほとんど消えていた自然雲は散布によって刺激され,人工雲が発達した.観測点20ヶ所の降水量は散布時間,降水地点,WNW風向・風速から人工降雨と推測された.人工降雨の主域は西条-菅生間の距離90 kmに達した.降水量は130万トンと推定された.

    散布量は5 g/sで,対流雲か層雲が有効である.散布雲の気温は–5°C程度が適する.雲の厚さは1000-3000 mが適する.地形効果,対流気層,上昇気流,風速が重要である.気象条件や地形条件が適しておれば,液体炭酸人工降雨法はどこでも成功するであろう.

資料・報告
  • 竹中 浩一, コアラ ジョナス, 山寺 喜成
    2024 年 34 巻 1 号 p. 17-33
    発行日: 2024/06/30
    公開日: 2024/06/30
    ジャーナル フリー

    ブルキナファソにおいて,硬盤層を形成するPlinthosolsが見られる土地に4樹種(Sesbania sesbanLeucaena leucocephalaPiliostigma reticulatumParkia biglobosa)の苗木植栽を行い,その地上部と地下部の成長傾向を観察した.苗木育成法として,日本国内の脊悪地における緑化試験に実績があり,健全な直根の育成に主眼を置く保育ブロック方式(SB)法を用い,プラスティックポット(PP)苗との植栽比較を行った(合計288本,2017年7月植栽).SB苗は病虫害発生等の被害木を除き植栽後29ヶ月の間に約90%の生存率を維持した.また29ヶ月時点の平均根元直径(D)および平均樹高(H)は,SB苗がPP苗に対して4樹種とも僅かに高くP. reticulatumではDH共に有意差が検出された.二回行った試験木掘削調査の結果,植栽12ヶ月後(サンプル本数61本,2018年8月採集)と39ヶ月後(同65本,2020年10月採集)には,地上部,地下部および合計バイオマス(AGB,BGB,Total)がP. reticulatumを除く3樹種においてSB苗がPP苗を平均値で上廻り一部に有意差が検出された.根の最大到達深度(MRD)とBGBとの間には植栽12ヶ月後と39ヶ月後のいずれにも相関は見られず,12ヶ月後のMRDの70%(最頻値42 cm)が地下40-55 cmに分布した状況は39ヶ月目になっても同率70%(最頻値は40 cm)と変わらなかった.試験隣接地をエンジンオーガーにより掘削(162箇所)した硬盤層深の計測では最頻値が深さ40 cmにあり,比較的浅い位置に根の伸長にとって障壁のあることが判明した.さらに,二回の掘削木調査の時点間に,BGBは2.4-9.8倍(4樹種,SB・PP苗間の有意差は認められず)に増加していたことを考慮すると,樹種・育苗方法に関わらず,直根の垂直的な成長は大半が浅い位置の硬盤層によって制限され,多くの根は硬盤層より浅い土層のみで増加・成長したと推察された.アフリカの植林活動に初めて導入した保育ブロック苗は,育苗・植林法として適用可能なことが確認されたが,硬盤層の存在する土地では樹木の直根を誘導するために岩石穿孔など補助的手法が必要と考えられ,さらなる検討の機会が期待される.

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