液体炭酸(LCD)散布による人工降雨実験は東京・伊豆諸島で6回,九州・佐賀で1回,四国・西条で1回実施された.
2012年2月27日の三宅島では,散布された雲は発達し,上層域のSW風によって三宅島の北東域に移動した.人工雲の下層に発生した雨脚はNE~NNE風で御蔵島の西方に移動した.そしてほぼ逆向きの下層域のWSW風によって御蔵島上に上昇し,再び発達して鎖状の雲がENE方向に形成された.レーダーエコーに映った人工雲は3000-5000 mに達した.人工降雨量はトータルで2000万トンと推定された.
2013年3月14日の三宅島では,強い逆転層が2000-2200 mにあった.三宅島・御蔵島間での散布による人工降雨のため,2時間後には直径50 kmの雲のない領域が発生した.推定降水量は200万トンとなった.
2013年12月16日の新島では,散布によってできた3列の雲列は散布20分後に人工衛星テラ画像で確認できた.2時間後には御蔵島の東方に3列の雲の消えた空域が人工衛星アクア画像で確認できた.推定降水量は10万トンとなった.
2013年12月26日の唐津では,散布された雲は3500 m高に発達し,雲の厚さは1250 mから1400 mと150 m増加した.2時間後の人工雲の最終的影響距離は100 km以上に達した.人工雲と自然雲による推定降水量は2時間後に15万トンとなった.レーダーエコーによる推定人工降雨量と地上の実降水量は一致した.
2013年12月27日の西条では,ほとんど消えていた自然雲は散布によって刺激され,人工雲が発達した.観測点20ヶ所の降水量は散布時間,降水地点,WNW風向・風速から人工降雨と推測された.人工降雨の主域は西条-菅生間の距離90 kmに達した.降水量は130万トンと推定された.
散布量は5 g/sで,対流雲か層雲が有効である.散布雲の気温は–5°C程度が適する.雲の厚さは1000-3000 mが適する.地形効果,対流気層,上昇気流,風速が重要である.気象条件や地形条件が適しておれば,液体炭酸人工降雨法はどこでも成功するであろう.
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