代表者:市野澤潤平(宮城学院女子大学)
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抗HIV療法の副作用としてのうつ病との関係から
新ヶ江 章友
セッションID: PEb2
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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本発表では、HIV陽性者の身体と抗HIV療法による副作用としてのうつ病との関係について分析する。つまり、HIV感染そのものではなく、抗HIV療法にともなう服薬により生じる副作用と身体に着目する。HIV陽性者の身体は、HIV感染そのものではなく、服薬により誘発され、自らを語りはじめる。医学によりHIVをコントロールしようとする状況が、HIV陽性者の身体に新たな不確実性を生み出している状況を分析する。
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循環器疾患の診察現場におけるフィールドワークを通じて
磯野 磯野
セッションID: PEb3
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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循環器疾患は、エビデンスに基づくガイドラインが数多く策定され、疾患の数値化・画像化が高度に進んだ「確かな」疾患である。しかし、診察現場に訪れる患者の「個」の身体は、そのような「確かさ」をしばしば覆す。本研究は、循環器疾患の診察現場において、患者の「個」の身体はいかに「不確か」になり、医師と患者はそのような不確実性にいかに対峙するかを明らかにすることを目指したものである。
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アトピー性皮膚炎患者の事例から
牛山 美穂
セッションID: PEb4
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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アトピー性皮膚炎は、複数のレベルにおいて不確実性を内包した病気である。発症の原因となる〈異物〉が何か、治療法は何が正しいのか、こうした問題に対し確実な見解が定まらないからこそ、情報が大量に溢れ、その中で患者は不確実性の渦に呑み込まれる。本発表では、治療ガイドラインが想定する治療シナリオ通りにいかない患者に注目し、その身体がいかにガイドラインに抗するような不確実性を備えたものであるか、議論を行う。
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観光ダイビングの経験における減圧症の問題
市野澤 潤平
セッションID: PEb5
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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観光ダイビングにおける主要な危険の一つである減圧症は、潜水中の呼吸による窒素の身体への蓄積によって引き起こされる。しかしその過程は、当人において知覚し得ないため、減圧症を警戒するダイバーたちは、大きな不確実性に直面する。本発表は、ダイバーたちが減圧症をめぐる不確実性をどのように捉え、対処しているのかを描き出し、累積的リスクという観点から考察を加えることを、主たる目的とする。
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分科会
8日(土) 10:00-12:25 F会場(531 教室)
分科会PFa 「応答/態度の人類学 ―現場のアクチュアリティへの民族誌的接近に向けて」
代表者:岩佐光広(高知大学)
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現場のアクチュアリティへの民族誌的接近に向けて
岩佐 光広
セッションID: PFa0
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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本分科会では、「応答」と「態度」という概念を手がかりに、現場と人びとが相互に働きかけあい応答しあうという相互性に注目しながら、アフリカ・東南アジア・ラテンアメリカの状況を異にする4つの現場について考察する。その作業を通じて、現場のアクチュアリティにいかに接近するかという民族誌をめぐる課題に取り組むための手掛かりを示したい。
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ベトナム北部地域の宗教コミュニティにおける「逸脱した」態度をめぐって
伊藤 まり子
セッションID: PFa1
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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本報告は、分科会「応答/態度の人類学-現場のアクチュアリティへの民族誌的接近に向けて(組織者:岩佐光広)」の一つである。ここでは、特定のコミュニティや社会において、反道徳的と捉えられるような行為に対する人びとの応答を民族誌的にいかに記述することが可能かという課題について、現場とそこに関わる人びとの相互性と、そこに具体的に現れる人びとの「応答」の局面に着目することから検討していく。事例として取り上げるのは、ベトナムのハノイで活動する宗教コミュニティ「カオダイ教ハノイ聖室」である。出家者と在家信者間の宗教活動に対する意識のズレと、そこで顕在化する態度と応答をみていくことで、一時的に「道徳性」が破綻した現場が、不確定あるいは偶発的な応答によって秩序の再編がはかられていく過程を指摘し、そこから「道徳的」/「反道徳的」という単純な二項対立では捉えきれない「道徳性」をめぐる現場の現実を浮き彫りにすることを試みる。
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マプーチェ先住民組織の議論の過程にみる態度の多面性と重層性
工藤 由美
セッションID: PFa2
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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本発表では、チリの首都に住む先住民マプーチェの組織活動における議論の場面を事例として、態度の持つ多面性と重層性を明らかにし、それが人々にとって持つ意味と、人類学的記述にとって持つ意味とを考察する。具体的には、組織として実施したが、「盛り上がらなかった」フィエスタについて、関係する2つの異なる議論の場面を取り上げ、参加者それぞれの発言と態度を、日常的な態度や行為と関係づけながら分析を加えていく。
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タンザニア路上商人組合の展開を事例に
小川 さやか
セッションID: PFa3
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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本発表では、異なる政党・団体と結びついた路上商人組合間の対立・連携について、自己増殖的/自己変質的にはしる噂やゴシップに着目して検討する。噂をめぐる路上商人たちの態度は、「ストリートの政治」を規定するリテラシーを浮かび上がらせると同時に、この政治が政党・政策をめぐる駆け引きや合議ではなく、噂を通じて特定の社会状況に応答する人びとの「態度」を調整することによって動いていることを明らかにする。
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ラオス低地農村部の看取りの現場における感情的応答と態度のせめぎあい
岩佐 光広
セッションID: PFa4
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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本発表では、現場における感情の表出、特に「不意に発露した感情」をめぐる経験について、ラオス低地農村部の看取りの事例を取り上げながら考察する。そこから「不意に発露する感情」を感情的応答と態度のせめぎあいにおいて捉える着目点を見出し、それを理論的に整理することで、現場におけるアクチュアルな感情経験に接近するための1つの手掛かりとして提示する。
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分科会
8日(土) 13:30-16:25 G会場(532 教室)
分科会PGa 「東日本大震災に対する人類学者の社会関与とその可能性 ―2011-12 年度宮城県震災無形民俗文化財調査事業より」
代表者:高倉浩樹(東北大学東北アジア研究センター)
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2011-12年度宮城県震災無形民俗文化財調査事業より
高倉 浩樹
セッションID: PGa0
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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東日本大震災の被災地の民俗にかかわる委託調査にかかわった人類学者による調査事業とそこからわかった事例について報告を行い、それをふまえて人類学者の実践的社会的関与の可能性と課題について考える。
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宮城県本吉郡南三陸町戸倉波伝谷の場合
政岡 伸洋
セッションID: PGa1
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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本報告は、宮城県本吉郡南三陸町戸倉波伝谷地区の事例を対象に、東日本大震災以降の暮らしの再建過程を報告するとともに、そこに見られるさまざまな現象を、災害の文脈のみならず、震災前の暮らしのあり方と比較しつつ検討することにより、被災地で何が起こっているのか、また葛藤も含めたその背景には何があるのかを明らかにする。と同時に、被災以前も含めた民俗誌作成の重要性、その際の方法論的課題についても考えたい。
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宮城県七ヶ浜町花渕浜を例として
兼城 糸絵
セッションID: PGa2
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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本発表では、東日本大震災における津波によって被災した地域社会が復興へと歩みをすすめる過程においてアニメ聖地巡礼者たちが果たしてきた役割について具体的事例とともに考察していく。地縁血縁的枠組みに基づくローカルな組織でも災害復興を目指すアドホックな組織でもない、趣味に基づいて形成された組織が災害復興において重要な役割のひとつを担っていることを震災前後のコンテクストに基づいて明らかにする。
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宮城県東松島町大曲浜獅子舞の「伝統」と近代性
岡田 浩樹
セッションID: PGa3
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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本発表では、宮城県東松島市大曲浜地区の獅子舞の事例を中心に、震災前後の社会的コンテクストを踏まえ、民俗文化復興に関する外部の言説と、これに応答する被災地住民の語りの背後に隠れている地域社会と保存会の変化を検討する。獅子舞の復活においては、「伝統的な」コミュニティ基盤から離脱し、「近代性」を備えた保存会の再編と「伝統」民俗芸能の流用・変更の過程があったという、パラドキシカルな状況を明らかにする。
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滝澤 克彦
セッションID: PGa4
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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本発表は、東日本大震災の被災地域における社会空間の再編過程における祭祀や祭礼の意味について、宮城県震災無形民俗文化財調査事業による現地調査にもとづきながら検証しようとするものである。震災後の地域社会は移動や解体などの極めて流動的な状況を経験しつつあるが、そのような動態をどのように記述し得るかが重要な課題となっている。本発表では、村落のレジリアンスという観点から祭礼の復興と持続に関わる諸機構について考察を行う。具体的には、宮城県内被災地域の事例を中心に、祭礼の復興が現実化されようとする場面において「社会空間」が果たしている役割について分析を行った。その結果、「震災前」の社会空間が、震災後においても祭礼の再開を含めた様々なプロセスにおいて重要な意味をもちつづけており、そこに関わる機構が村落のレジリアンスに対しても重要な影響をもっていることが明らかになりつつある。
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高倉 浩樹
セッションID: PGa5
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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本発表は、東日本大震災によって被災した人類学者としての経験をふまえて、震災にかかわるサルベージ人類学の必要性と、その理論的根拠、そこから見えてくる社会的実践の豊かなひろがりを論じるとともに、その実施に必要な調査体制についての展望について述べるものである。
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分科会
8日(土) 15:00-17:25 H会場(533 教室)
分科会PHa「日本認識の形成からみた植民地支配、戦争の記憶 ―台湾、韓国、パラオ、中国から」
代表者:上水流久彦(県立広島大学)
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台湾、韓国、パラオ、中国から
上水流 久彦
セッションID: PHa0
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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本分科会は日本の植民地支配や侵略を受けた台湾、韓国、パラオ、中国の対日感情の形成を取り上げる。植民地支配や侵略があった故に現在こうだという説明は不十分であり、現在の状況が生まれる構造や要因を過去から現在にいたる政治的、経済的、文化的要因と関連させて論じることが必要である。4つの地域の日本認識のあり方を比較することによって、その要因等を総合的に論じ、植民地主義的研究に回収されない視点を見いだす。
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植民地の遺物の暴力性が発揮される状況に関する一考察
宮岡 真央子
セッションID: PHa1
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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分科会「日本認識の形成からみた植民地支配、戦争の記憶」において、本発表では、台湾総督府が清朝期の通事(政府公認の原住民族との交易人)呉鳳なる人物を、自分の命と引き替えに原住民族ツォウの首狩り慣行を放棄させた「義人」に仕立て上げ、その廟を再建した歴史に注目し、現在の呉鳳をめぐる信仰・政治・記憶のあり方を検討することにより、植民地の遺物が原住民族に対してなお暴力性を発揮する状況について考察する。
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パラオ諸島アンガウル島の事例から
飯高 伸五
セッションID: PHa2
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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本発表では、20世紀初頭以降の燐鉱採掘および太平洋戦争期の日米交戦によって二重に甚大な破壊を被ってきたパラオ諸島のアンガウル島において、(1)日本の団体が建立した慰霊碑が近年になって移転を強いられた経緯、(2)鉱山採掘や戦争による被害の補償を旧宗主国に求めようとする近年の動向を取り上げ、日米による戦争の記憶のヘゲモニーに抗する地域社会の実践が、いかなる日本認識を生成していったかを民族誌的に検討する。
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ソウル市庁舎の建て替えをめぐって
中村 八重
セッションID: PHa3
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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本発表は、日本統治時代に京城府庁として建てられ、ソウル市庁として使われていた建物の建て替えか、保存かをめぐってソウル市と文化財庁が対立していた問題を題材に、従来強かった植民地の残滓を抹消しようとする議論から、保存復元による観光資源化を通じて地域のアイデンティティを確立しようとする文化消費論が力を得ていることを論じる。
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川口 幸大
セッションID: PHa4
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
フリー
分科会「日本認識の形成からみた植民地支配、戦争の記憶」を構成する本発表では、中国広東省の村落に建てられた烈士記念碑、および宗族の族譜における烈士の記述中に言及された「日本」に着目し、少なくとも村落レベルに限って言えば、共産党が進める愛国主義教育や党が正統とする史観に表された「日本」は、人々の反日感情を過度にファシリテートする役割は担っていないことを明らかにする。
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分科会
8日(土) 9:30-12:25 I会場(524 教室)
分科会PIa 「東アジア・東南アジアにおける漁村形成の比較研究」
代表者:長沼さやか(日本学術振興会)
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長沼 さやか
セッションID: PIa0
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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本分科会では、沖縄、台湾、韓国、中国、タイのフィールドから個別具体的な漁村形成の事例を報告する。その際にとくに注目するのは、水上/陸上の他集団との社会・経済的関係と、国家など近代的公権力の影響(定住化政策、漁業開発、干拓事業など)である。これらを通地域的に比較するなかで、これまで移動から定住に至る一方向的なプロセスにおいて、分けて論じられてきた移動/定住漁民のあり方が、移動と定住の両方向的な動きにおけるバリエーションとして現われていることを実証する。
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沖縄・糸満漁民による漁村形成過程
玉城 毅
セッションID: PIa1
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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本研究は、沖縄の糸満漁民の移動から定住への過程に着目し、移住に始まった漁民の流動的な状況からどのような秩序がいかにして形成されたかを明らかにすることを目的としている。それによって、流動性の高さが指摘されてきた東アジア・東南アジアの多くの漁民と比べると、定住化の傾向が高い糸満漁民の特徴を明らかにするとともに、流動状況から秩序が形成され志向されるやり方についての沖縄的な文化モデルを提示する。
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海民モーケンの移動と定住の歴史
鈴木 佑記
セッションID: PIa2
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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東南アジアの多島海にはかつて、家船に暮らす「漂海民」と呼ばれる人々がいた。サマ、オラン・ラウト、モーケンといった集団がそれにあたる。ただし現在では各地で定住化が進み、家船に暮らす者はほとんど存在しない。サマとオラン・ラウトの定住化の過程について明らかにされつつある一方で、モーケンについては不明な点が多く残されている。そこで本報告では、モーケンの移動と定住の歴史を明らかにすることを目的とする。
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韓国の干拓による海洋変化と漁村の変貌
宇田川 飛鳥
セッションID: PIa3
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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本報告は、韓国全羅北道の沿岸を事例として、干拓事業による漁場の変化と海岸線の線的移動に着目して漁村と漁場が分断される過程を考察するものである。干拓工事の影響は長期的である。海岸線が徐々に移動し海洋は年々変化する。沿岸漁村はその漁場の変化に連動して盛衰する。本報告では、干拓事業という公権力による自然環境への介入が結果的に漁村の衰退や変貌を招いている過程を明らかにする。
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台湾東部漁業地への移動と移住
西村 一之
セッションID: PIa4
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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本報告は、日本植民統治期、台湾東部において実施された開発を契機として作られた漁業地(新興、仮名)の形成過程と、そこを行き交う漁民の姿に注目する。1930年代から2000年代までの歴史的変遷の中で、多様な構成を見せてきた漁民集団の関係と、マクロな政治経済システムの影響を視野に入れた漁業地の成り立ちと漁業の展開について明らかとし、この地を移動移住する人びとが新興の漁民となる様を示す。
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珠江デルタの水上居民からの考察
長沼 さやか
セッションID: PIa5
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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本報告では、中国広東省珠江デルタの内陸水域において移動漁労をしていた水上居民の漁業生活、および中華人民共和国成立後の政策にともなう定住と漁村形成の過程について明らかにする。その際、当該地域に古くから村落を形成してきた父系出自集団・宗族との関係に注目し、漁民の移動と定住が地域社会の状況によって選び取られた漁業生活の諸形態であることを考える。
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分科会
8日(土) 15:00-17:25 I会場(524 教室)
分科会PIb 「動物殺しの論理と倫理 ―種間/種内の検討」
代表者:奥野克巳(桜美林大学)
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種間/種内の検討
奥野 克巳
セッションID: PIb0
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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動物殺しは、一般に、人によって行われる動物殺しの面の問題検討に大きく傾いている。本分科会では、動物による動物殺し、動物による人殺し、人による人殺し、人の動物殺しを相互に比較検討することによって、動物殺しの論理と倫理について考察する。そのことは、動物殺しが人による動物殺しを中心に語られてきたことへの補正でもある。本分科会の目的は、動物殺しに関して、その人類学的な課題を浮かび上がらせることである。
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島田 将喜
セッションID: PIb1
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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動物行動への理解がすすむにつれて、私たちは動物に対して過剰な合理性を押し付け、動物は無駄な殺しをしないはずだと信じている。しかしヒトにもっとも近縁なチンパンジーにおいては、他の動物を殺す場合に、必ずしも明確な殺意や動機が存在しているとは解釈できない事例などが多数あることが分かった。こうした観察結果は、動物においても不合理な殺しはさまざまな形で遍在することを示唆している。
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中国西部における「人と動物」と「人と人」
シンジルト シンジルト
セッションID: PIb2
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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多民族多宗教が共在する中国西部牧畜地域には多様な屠畜規範があったが、こうした「在来の屠畜規範」を凌ぐものとして、今、動物福祉という思想に基づく「新しい屠畜規範」が導入されている。「新しい屠畜規範」の導入が、「人と動物」及び「人と人」の関係の在り方に何をもたらそうとしているのか。動物福祉という思想が誕生した政治的歴史的な背景、西部牧畜地域のおかれた社会的文化的な状況を射程にいれながら考察したい。
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山口 未花子
セッションID: PIb3
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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北米狩猟民カスカと動物の互酬性に基づくパートナーシップの背景としては野生哺乳動物への高い依存や、森の中で動物と接触する機会が多いことが想定される。しかし例えば身体的に圧倒的な強さを持つ存在クマなどの動物種に関しては、動物への恐怖等の要因についても考慮する必要がある。こうした点を踏まえ、本発表では狩猟民カスカと動物との結びつきのなかに、動物から殺されるという視点を導入して再検討することを目的とした。
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カメルーン東南部熱帯林における動物殺しを事例に
大石 高典
セッションID: PIb4
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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これまで動物殺しは食料調達の一部をなすに過ぎず、動物食の問題に回収されがちであった。本発表では、カメルーン東南部の熱帯林社会(バクウェレ人とバカ人)を事例に、動物殺しの多様な位相を把握する。ゾウは殺すが、ムカデは殺さないなど、動物殺しの論理は弱肉強食とは異なる。「殺す/殺さぬ」という位相が、人と動物の相互作用の中でどのような幅を持っており、どのように決定されていくのかを今後明らかにしてゆきたい。
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分科会
9日(日) 9:30- 11:55 C会場(528 教室)
分科会PCa 「宇宙人類学の挑戦 ―「宇宙」というフロンティアにおける人類学の可能性」
代表者:大村敬一(大阪大学)
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「宇宙」というフロンティアにおける人類学の可能性
大村 敬一, 木村 大治, 磯部 洋明, 佐藤 知久
セッションID: PCa0
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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人類の宇宙への飛躍が目前に迫っているかもしれない今日の状況下、人類学に何が求められ、人類学に何ができるのだろうか。本分科会の目的は、宇宙空間への人類の進出が同時代的な課題となりつつある今日の世界にあって、「地球」という限定された空間を超えて、「宇宙」 という新たなフロンティアから人類を見つめ直す宇宙人類学の可能性を示し、問題提起を行うことにある。
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木村 大治
セッションID: PCa1
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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この発表では,SFの一ジャンルである「ファースト・コンタクト」,すなわち,異星人との最初の接触の「事例」を梃子として,出会いとコミュニケーションにおける「理解」の成立について論じる。
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佐藤 知久
セッションID: PCa2
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
フリー
宇宙空間での生は、人類の自己認識にどのような知見をもたらしうるか、国際宇宙ステーション(ISS)を事例として考察する。ISSは国際共同プロジェクトであり、当初より多文化的な状況で運営されている。こうした経験が、個別国家のプロジェクトしてではなく文字通りグローバルな経験として地上の人類に共有されるとき、宇宙開発は、人類としての同一性が構築されていく具体的な回路たりえる可能性をもつと考えられることを指摘する。
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宇宙というフロンティアにおける認知人類学の可能性
大村 敬一
セッションID: PCa3
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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本発表では、これまでに認知人類学で「拡張した心」や「状況認知」、「分散認知」として提案されてきたいくつかのモデルを宇宙空間にまで拡張する試みを展開する。そうして拡張されたモデルによって、どのような問題系が生まれるのかを検討しながら、宇宙空間というフロンティアが人類学に拓く可能性を示すとともに、人類学が宇宙開発の最前線に貢献する可能性を示す。
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宇宙分野から人類学への期待
磯部 洋明
セッションID: PCa4
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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人類は様々な技術と文化を手にすることで、様々な環境に適応するだけでなく、その環境を能動的に変えたり、或いは作り出したりする能力を手にした。今後、人類は宇宙をかき乱すのか。一人の天文学者として言うならば、これは天文学者と人類学者こそが取り組むべき問題である。この発表では宇宙分野から人類学へのラブコールとして、宇宙の研究者から見た人類学への期待を述べたい。
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分科会
9日(日) 9:00-11:55 F会場(531 教室)
分科会PFb 「「生」の復興に向けて ―3.11 と人類学(3)」
代表者:木村周平(筑波大学)
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3.11と人類学(3)
木村 周平
セッションID: PFb0
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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東日本大震災が発生してから2年になる。災害はいまだ続いており、それがいつ終わることになるのか、想像もつかない。しかし、きわめて一般的に言って、災害は時間とともに問題の様相を変化させ、また人々の思いや態度も変化させる。本分科会は2年が経過した時点において見えてきた問題や可能性、および、変わらず問題であり続けているものについて、各発表者の報告をもとに、参加者を交えて議論したい。
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阿武隈山地のニホンミツバチの伝統養蜂の存在意義を通して
佐治 靖
セッションID: PFb1
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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原発事故による放射能汚染の被害を受けた阿武隈山地に暮らしてきた人びとが、どのような自然とのかかわりをもち、そこに経済的価値では測れない生きる質をみいだしてきたかを、ニホンミツバチの伝統的養蜂というマイナーサブシステンスを通して考えてみる。
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三陸沿岸の鹿踊り支援を通じて
林 勲男
セッションID: PFb2
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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東日本大震災の被災地では、民俗芸能支援が過去に例がない規模で、多くの団体や組織・個人によってなされてきた。その被災状況は多様であり、支援も流失した道具や衣装を新調するためのものから、公演の依頼、映像による記録化など様々である。支援を通じて生まれた新たな関係を糸口に、後継者不足等の災害以前からの課題の打開策を探ろうとするなど、災害を契機に生じた民俗芸能が置かれた新たな状況について考察する。
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旧雄勝町浜の事例から
李 仁子
セッションID: PFb3
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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大震災から約2年が経とうとしている今でも被災地の復旧はもたついている。宮城県石巻市の旧雄勝町地区では、行政による復旧事業を待ちきれない水産業関係者を中心に、自主的な生活再建の動きが活発化している。本発表ではA浜を事例に、そうした積極策が地元のコミュニティにもたらす光と影を立体的に浮き彫りにしつつ、震災後の復興プロセスがコミュニティ内の諸格差を拡大させ、被災「難民」を生む可能性を指摘する。
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東日本大震災の災害民話は創造可能か?
内尾 太一
セッションID: PFb4
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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東日本大震災の発生から約2年が経過し、支援の内容の変化とともに、被災地域の文化の発展に寄与する事業の重要性が高まりつつある。本発表では、発表者が事務局長を務めるNPO法人「人間の安全保障」フォーラムが2012年冬から着手した東日本大震災の災害民話創造プロジェクトにおいて、東日本大震災の教訓の保存及び活動に関する実践的調査を行い、研究者とNGO、そして被災者の恊働の可能性を公共人類学的に考察する。
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散在する遠さと潜在する近さの間で
丹羽 朋子
セッションID: PFb5
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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東日本大震災の復興計画が掲げる「住民主体のまちづくり」や「持続可能性」等の標語は、避難所や仮設暮らし=「共に住まうこと」を経験した被災住民たちの生の営みにおいていかに翻訳され得るのか、そこにどのような工夫や課題、可能性が見出せるのか。この問題を端緒に本発表は、津波被災地で見た新たな〈共有〉のかたちを、震災後に既存の所有のあり方が揺らぐ3つの場所をめぐる被災者たちの経験を手がかりに論じていく。
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分科会
9日(日) 9:00-11:55 G会場(532 教室)
分科会PGb 「生活と人類学の間 ―“日本”で“人類学者”として“暮す”ということ」
代表者:沼崎一郎(東北大学)
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“日本”で“人類学者”として“暮す”ということ
沼崎 一郎
セッションID: PGb0
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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本分科会の目的は、人類学者の生活を人類学することである。人類学を学び、人類学を教えていることは、研究と教育以外の私たち人類学者の日常生活に何らかの影響を及ぼしているのか? 私たちの生育史、私たちの生活の場、私たちの働く場、私たちの取り結ぶ人間関係は、私たちの人類学的研究と実践に何らかの影響を及ぼしているのか?外国で人類学を学び、日本に暮らす5人の人類学者の実体験に基づく問題提起を行う。
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自分の暮らし、研究、社会実践を人類学する
陳 天璽
セッションID: PGb1
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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本報告は、自分の暮らしやライフヒストリーを振り返りながら、これまでの研究テーマの選択と自分の生活や世界観の関係性、自分の研究手法について人類学的に分析する。また、これまでの研究を通し、どのような社会的実践をしているのか、人類学は一体そこで役になっているのか?役に立っているならば、どのような役に立っているのか?もしくは、役立つためにはどうすればよいのか、などについて考えてみたい。
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コスモポリタン人類学のアイロニー
ハンセン ポール
セッションID: PGb2
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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このプレゼンテーションは、日本での人類学的生活を反映的に検証します。例え、ミクロのレベルでも、コスモポリタン理論に焦点を当てます。コスモポリタンを主題にしている著者に注目し、Ulrich Beck の「コスモポリタン・モーメント」と Nigel Rapportの「誰でも」です。このプレゼンテーションは、所謂ビジン日本語についてです。
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“生まれ育った仙台”で“アメリカ帰りの人類学者”として“暮す”ということ
沼崎 一郎
セッションID: PGb3
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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本発表の目的は、幼少時の交叉文化体験、青年期の留学体験、帰国後の教員体験を「ものがたる」ことを通して、生活と人類学の間で発表者のアイデンティティとポジショナリティが如何に揺れ動いてきたか、そしてその揺らぎは報告者の生活と人類学的態度とに如何なる影響を与えてきたかを考察することである。特に、人類学と日本研究に対する発表者の態度の揺らぎについて、反省的に検討を加えてみたい。
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吉田三郎と私の「ボアズ的実験」
ウッド ドナルド
セッションID: PGb4
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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本発表では、1930年代に農民でありながら人類学的に生きた吉田三郎と、1990年代半ばから今日までの人類学者である私自身の生活と著作の関係を読み解くことで、東京に代表される「都会」に対し、「田舎」と呼ばれる地域で暮らし働く研究者のアイデンティティーと多義性について探る。学問の世界の片隅に位置する吉田と私が、自身の不確定な状況(リミナリティー)と和解しようとする試みは、方法こそ違え妙に似ている。
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自/異文化 を 異/自国 で語ること
桑山 敬己
セッションID: PGb5
発行日: 2013年
公開日: 2013/05/27
会議録・要旨集
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グローバル化の結果、かつては明確であった自他の境界線が崩れ、異文化や異民族の語りを専門とした人類学者の仕事も様変わりした。だが、より遠くの異なった他者を求める傾向は相変わらず強く、人類学者の御膝下とも言うべき大学の教室における文化的邂逅が注目されることは少ない。本発表では、舞台をアメリカと日本の大学に設定して、自文化と異文化の語りがもたらす諸問題について考える。
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分科会
9日(日) 15:00-17:25 G会場(532 教室)
分科会PGc 「応答の人類学 ―その初志と課題」
代表者:飯嶋秀治(九州大学大学院)