本研究では,500 °C以下の熱エネルギーで制御可能な熱化学水分解技術として,アルカリ金属(リチウムLi,ナトリウムNa, カリウムK)の酸化還元反応を利用したサイクルの系統的な特性評価を実施した。熱力学的な平衡条件下でサイクルを制御することを想定した場合,理論的にはいずれも1000 °C以上の温度が必要となる。そこで,反応温度を低温化するために,アルカリ金属の相転移を利用した平衡制御技術を用いた。Liサイクルでは,Li金属の高い蒸気圧を得るために高温が必要とされ,制御温度は800 °Cであった。K サイクルは500 °C以下の温度で制御できる可能性を有しているが,強い腐食性が実用化に向けた課題である。 これらアルカリ金属を用いた熱化学サイクルの中で,Naサイクルが400 °Cという最も低い制御温度を示した。以上のことから,Naサイクルは有望な熱化学水分解技術であると考えられる。