再生可能エネルギーの電力利用を前提とした固体酸化物形電解セル(SOEC)を用いた高温水蒸気電解によるオンサイト水素ステーション(on-site HRS)のシステム効率と経済性評価を行った。本研究では,SOECによる水素製造,圧縮工程,高圧タンク貯蔵,冷却工程,および水素供給について,それぞれの技術革新や想定される技術オプションを踏まえ,システム効率とHRS設備コストについて検討した。具体的には,水素製造速度300 Nm3/hの標準的な小型HRS 向けのSOECシステムについて検討し,各要素技術の設計に基づき,HRS設備コストを低減させるための技術的な要件について議論した。これら技術シナリオに基づく感度分析を行い,2025年の国内の目標設備コストである2-3 億円/stationと同等のコストまで低減できる技術的な要請条件について明らかにした。
CFRP(炭素繊維強化プラスチック)廃棄物の炭化(熱分解)および焼成からなるCFRPリサイクルプロセスにおける炭化条件を最適化するために,ラボスケール炭化反応器に加えて市販の熱重量示差熱分析装置を用いて,エポキシ樹脂CFRP炭化条件の生成ガス・タール熱量とリサイクル炭素繊維特性への影響に加えて熱分解反応速度を検討した。さらに,ベンチスケール炭化炉におけるエポキシ樹脂CFRP炭化条件の最適化を試みた。エポキシ樹脂CFRPの高い炭化温度および過熱水蒸気の存在が生成ガス・タール熱量を増加させた。過熱水蒸気有無に関わらず,500℃以下で炭化したリサイクル炭素繊維はほとんど劣化していなかった。エポキシ樹脂CFRPの熱分解反応速度はナイロンおよびポリプロピレン樹脂よりも遅かった。ベンチスケール炭化炉での最高炭化温度は420℃となり,排熱利用を増加させることによって炭化エネルギーの自立化につながることがわかった。
石炭乾留過程における粒径が異なる粒子で構成される石炭充填層の軟化溶融特性を検討した。膨張性試験を用いて石炭充填層の膨張性を検討し,熱重量計を用いて石炭粒子から放出される揮発分の量を評価した。平均粒子径が67.0 µmの充填層のTD (Total dilatation)は127%であり,平均粒子径が60.5 µmの充填層のTDは80%であることから,石炭の粒径が石炭充填層の膨張に影響を及ぼすことを示した。また,揮発分の放出挙動(すなわち,温度および放出量)が粒径によって異なることを示した。 以上のことから,揮発分の放出速度および放出量が石炭粒子の大きさに依存し,石炭粒子の粒径が石炭充填層の膨張挙動に影響することが示された。