研究では,D - マンニトールを相変化材料(PCM)として用いる場合に,熱利用効率の低下を引き起こす過冷却を緩和するために,核剤として8つのゼオライトを添加した材料を調製し,その熱的特性について検討した。XRDとFT-IRを用いて試料のキャラクタリゼーションを行った結果,試料調製時にD-マンニトール以外の化合物は生成することはなく,H型モルデナイトを添加した場合を除いて,試料の融解凝固を繰り返しても化学的に安定であることを確認した。
ゼオライトの添加がD-マンニトールの結晶化挙動に及ぼす影響について,DSCを用いて検討した結果,A型ゼオライトとモルデナイトは,D-マンニトールの結晶化を誘起し,10wt% の添加量が最適であることを示した。
試料の融解凝固操作を繰り返した際の挙動を検討した結果,H型モルデナイトはD-マンニトールの融解エンタルピーを減少させ,さらに結晶化温度も低下させることを明らかにした。一方,Na型モルデナイトやA 型ゼオライトを添加した試料は融解エンタルピーが比較的安定していた。特にNa型モルデナイトを添加した場合は,A型ゼオライトを添加した場合よりも融解エンタルピーの変化が小さく,その減少量は1.0% であった。