重質油の開発は,全体的な可採原油資源量を高める重要な手段になる。そのため,開発コストを下げ,重質油を地下から最大限回収することは,石油業界共通の課題である。その際,重質油に対してどのような回収技術を用いるかは,重質油の特性や賦存状況などによって異なる。さらに,重質油田の開発状況により,単一技術ではなく,他の回収技術も併用して回収率を高めることが重要である。中国は豊富な重質油資源を保有し,重質油の開発を加速させている。本稿では,中国の重質油開発における代表的な例として,遼河油田の開発状況を紹介するとともに,回収技術への応用に関する効果を検討した上で,得られた知見をまとめる。
本論文は,2016年の日本電力小売市場の自由化の後の国内CO2排出量増加量の推定と,その増加量の緩和のため,どのように再生可能エネルギーの大量導入を行っていくかについて考察を行うことを目的とする。石炭火力の安価な発電コストと福島原発事故以降の国内全原発停止によって,新規参入電力会社のみでなく既存電力会社によっても石炭発電所の建設計画が相次いでおり,それらの石炭火力施設によって2016年以降に国内CO2排出量の増加が予想されている。本研究では,最新の石炭火力新設計画を用いて,コスト最小化による最適電源計画モデルを構築し,CO2排出増加量の推定を行った。結果として,約10%のCO2排出量増加が自由化後に起こることが推定された。それに加えて,地域間の連系線容量の拡張と蓄電池の導入の双方についてコスト最適化を行う電源計画モデルを新たに構築し,再エネ大量導入を想定した際の最適なインフラ拡張について考察を行った。結果として,蓄電池価格の下落によって北海道地域と東北地域間の連系線の拡張がコスト的に優位となり,それによって北海道地域の再エネ導入ポテンシャルを効率的に利用することができることが明らかになった。
我が国では固定価格買取制度(FIT)により再生可能エネルギーの導入が年々増加している一方で,電力利用者に対する普及費用の金銭的負担(すなわちFIT 賦課金)もまた増加傾向にあり不満の高まりが予想される。本研究では再生可能エネルギー普及のための金銭的負担に対する人々の受容性を検討することを目的として,自らが住む地域に再生可能エネルギーが導入されることにどの程度の地域便益を見出しているかを推計した。様々な地域便益のうち,本研究では金銭的に示すことができない二種の地域便益に着目し,仮想的市場評価法を用いてそれに対する支払意思額(WTP)を計測した。2015年に長野県飯田市に住む1000人を対象に質問紙調査を実施した結果,WTPは686[円/(月・世帯)]であると推計された。また,現行のFIT制度に比べて,自らが住む地域に再生可能エネルギーが導入され地域便益が得られる場合,その導入に伴う金銭的負担に対する受容水準が高い可能性があることが示唆された。