MgO/SiO2及びMgO/carbon触媒を用いた接触分解により,油脂類や脂肪酸類から脱炭酸反応を経て高品質のバイオディーゼル(HiBD)が得られることが報告されている。本研究では,触媒担体の種類やMgO担持量の効果を明らかにするために,物性の異なる数種のSiO2及びカーボン担体を用いて触媒を調製し,HiBD生成に対する触媒活性を調べた。ディーゼル留分の選択性は,比表面積,細孔容積の大きなものほど向上した。SiO2担体の粒子径は,生成する炭化水素の2次的な分解に影響し,粒径が大きいほどその反応が抑制された。また,30 nm以下の小さな細孔径をもつSiO2担体の触媒では,脂肪酸から炭化水素への中間体であるケトンの生成が抑制されることが示唆された。カーボン担体については,高比表面積の担体ほどディーゼル留分の選択性が向上するとともに,担体自体が触媒活性を示し,接触分解に異なるメカニズムを与える事が示唆された。炭化水素選択性およびCO2収率はMgOの担持量が増加するとともに上昇し,30wt%で最大となった。
汚泥と石炭の混合炭化や混合ガス化プロセスにおいて,汚泥や石炭の熱分解や熱分解チャーのガス化反応が複雑に作用していることから,これらプロセスを理解するためにはまず原料およびチャーの性状やその反応性を明らかにする必要がある。そこで本研究では汚泥,石炭をそれぞれ熱分解したチャー,それぞれの熱分解チャーを配合したチャー,また熱分解前に汚泥と石炭を混合して異なる雰囲気で作成した混合チャーおよび混合熱分解チャーの性状およびその反応性評価を行った。その結果,混合方法や熱分解雰囲気によりチャーの性状には違いが見られ,チャーの水蒸気ガス化反応開始温度や反応挙動も異なることが明らかになった。汚泥と石炭の混合により得られたチャーの細孔構造には大きな違いが見られ,また異なる雰囲気で作成した混合チャーの細孔構造も異なっており混合熱分解により比表面積の低下が見られた。水蒸気によるチャーのガス化反応性はチャー作成条件により異なっており,特にチャーの細孔構造がガス化反応性に大きな影響を与えている可能性が示唆された。
本研究では,12種の再生可能エネルギー発電技術を対象に,ライフサイクルにわたる雇用創出効果の分析を行った。著者らが開発した再生可能エネルギー部門拡張産業連関表(REFIO)を用いて直接間接の雇用創出量を推計し,各技術の特徴を定量的に明らかにした。REFIOを用いることにより,12種の再生可能エネルギー発電技術について,共通の手法論に基づく比較を行うことができる。分析より,各発電技術固有の特徴が見出された。推計されたライフサイクル雇用創出ポテンシャルは,1.01~5.04人・年/GWhと技術により大きく異なることが示された。また,本研究では,雇用がどこで創出されるかに着目し,輸入による影響の分析を行った。その結果,太陽光発電と風力発電は,他の技術に比べて海外での雇用創出量が大きいことが示された。さらに,本研究では,量的側面だけでなく,創出される雇用機会の質的側面についても検討している。例えば,地熱発電における地熱井の掘削や木質バイオマス発電におけるプラント運転など,各技術に固有の活動を行うための人材が求められる。その一方で,全技術に共通して,法務・財務・会計サービスや輸送をはじめとする幅広いサービス部門において多くの雇用が誘発される。
廃プラスチックペレットは,石灰焼成炉において使用されるCOG(コークス炉ガス)の重要な代替燃料の一つである。しかし,廃プラスチックの発生量には限りがある。そこで,廃木材を利用する可能性について検討し,廃プラスチックと廃木材を混合したペレットを開発した。ペレットの燃焼性を明らかにするためラボスケールの試験を実施し,さらに実機の石灰焼成炉への吹込み試験を実施した。廃木材を重量比で10,20,30%混合したペレット(直径6 mm)の燃焼時間は,1000℃において,いずれも約25秒であった。この燃焼時間は,従来から使用している廃プラスチック単独のペレットの燃焼時間と同等であった。次に,廃木材を重量比で10%混合したペレットを実機の石灰焼成炉に吹込んだ。このとき,コークス炉ガスと混合ペレットの両方を吹込んで操業した際に必要であった投入熱量は,コークス炉ガス単独で操業したときの投入熱量と比較して5%減少した。この結果は,従来から使用している廃プラスチック単独のペレットと同様であった。この効果は,ペレットが石灰焼成炉の中の石灰石の近傍で燃焼したことによりもたらされた。これらの結果は,廃木材を重量比で10%混合したペレットが,従来から使用している廃プラスチック単独のペレットと同様にCOGの代替燃料として利用可能であることを示している。