植物研究雑誌
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84 巻, 4 号
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  • 原稿種別: 表紙
    2009 年 84 巻 4 号 論文ID: 84_4_10143
    発行日: 2009/08/20
    公開日: 2022/10/20
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  • 大橋広好 , 根本智行 , 大橋一晶
    原稿種別: 原著
    2009 年 84 巻 4 号 p. 197-223
    発行日: 2009/08/20
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

    本論文は先に発表した中国産ハギ属ハギ亜属についての論文(Ohashi, Nemoto and K. Ohashi 2009a) と同じ目的でまとめたもので,中国産ヤマハギ亜属の研究史,種の検索表,正名および異名の出典と文献,各種の分布,種の分類学的扱いの根拠などをまとめたものである.各種の記載文は近く刊行される予定のFlora of China,vol. 10 Fabaceae に含まれるので,ここでは省略した.

     中国でのハギ属の分類は地方的植物誌の報告は多数あるが全体をまとめたものは中国植物志41 巻 (1995) があるだけで,ここではハギ属(=胡枝子属)を胡枝子組sect. Lespedeza と大胡枝子組sect. Macrolespedeza とに分けていて,大胡枝子組に12 種を認めている.われわれはハギ属をハギ亜属とヤマハギ亜属に分け,さらにヤマハギ亜属をヤマハギ節sect. Macrolespedezaとキハギ節sect. Hetelolespedeza とに細分した.ヤマハギ亜属には8種を認め,ヤマハギ節に4種,キハギ節にはこれまでキハギとチョウセンキハギの2種より成るとされていたが,新たに2種を加えて4種とした.これまでの中国産のヤマハギ亜属の構成種の扱いとして,Schindler(1913),Akiyama (1988),中国植物志 (1995) と本論文の結論を比較して,表1に示した.

     Ohashi (2001) はミヤギノハギLespedeza thunbergii を日本,朝鮮半島,台湾,中国,インド東部に広く分布する種とした.本論文ではミヤギノハギの種内分類群の設定をOhashi (2001) から一部変更した.subsp. thunbergiiは日本, 朝鮮半島, 中国に,subsp. formosa (Vogel) H. Ohashi は台湾と中国南部に,subsp.elliptica (Benth. ex Maxim.) H. Ohashi は中国西南部とインド東部に分布する地理的亜種とみなした.

  • 山本伸子 , 矢野興一 , 池田博
    原稿種別: 原著
    2009 年 84 巻 4 号 p. 224-228
    発行日: 2009/08/20
    公開日: 2022/10/20
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    岡山県西部の石灰岩地域(阿哲地域)から,キク科タンポポ連のヤクシソウ(Crepidiastrum denticulatum (Houtt.) J. H. Pak & Kawano)とナガバヤクシソウ(C. yoshinoi (Makino) J. H. Pak & Kawano)の推定雑種を記載した.推定新雑種アテツヤクシソウ(C. ×semiauriculatum N. Yamam.& H. Ikeda)は,推定両親種から 1) 花序の苞の基部はやや茎を抱く(ヤクシソウは深 く茎を抱き,ナガバヤクシソウは漸先形とな る), 2) 頭花は6個から8個の小花からなる(ヤウは5個),3) 舌状花の花冠は長さ8.5-9.0 mm (ヤクシソウは7.8-8.3mm,ナガバヤクシソウは9.0-9.3 mm),4) 痩果は長さ3.8-4.3mm(ヤクシソウは3.2-3.8 mm,ナガバヤクシソウは4.5-5.0 mm)などにより区別される.

     アテツヤクシソウの染色体数は 2n = 10である.アテツヤクシソウは,ヤクシソウとナガバヤクシソウが近接して生育する石灰岩地域で,交雑により生じたと推定される.

  • T. K. パウル
    原稿種別: 原著
    2009 年 84 巻 4 号 p. 229-232
    発行日: 2009/08/20
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

    インド・グレートニコバル諸島からSaurauia属(マタタビ科)の1新種Saurauia nicobarica T. K. Paul を記載した.これまでグレートニコバル諸島からはSaurauia bracteosa DC. のみが知られていたが,CAL(インド国立中央標本館)に所蔵された標本の中にこれと区別されるものがあり,新種として記載した.本種は,葉の基部が鋭形または鈍形,苞は線形~披針形で密毛に被われ,外側の2枚の萼片には茶色の密綿毛があり,果実にまばらに軟毛があるなどの特徴 がある.

  • V. ランジャン , S. C. スリヴァスタヴァ
    原稿種別: 原著
    2009 年 84 巻 4 号 p. 233-236
    発行日: 2009/08/20
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

    インド・ヤルカンド州からSaurauia 属( マタタビ科) の1 新種Saurauia parasnathensis V. Ranjan & S. C. Srivastava を記載した. 本種はS. cerea Dyer に類縁があるが,多数の黄色い花が束状につく集散花序をもち,27-35 本の雄蕊が2 列に配列するなどの特徴があり新種として記載した

  • 大場秀章 , 秋山忍 , G. タイセ
    原稿種別: 原著
    2009 年 84 巻 4 号 p. 237-254
    発行日: 2009/08/20
    公開日: 2022/10/20
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    Blumeは,日本からのSiebold,Bürger,Pierot,Textor,Mohnike,Keiske(伊藤圭介)らの採集品からなるシーボルト・コレクション中のブナ科を研究し,その結果を1851年に論文にまとめた.そのなかで多数の新種や新変種が発表されたが,記載ではまったくタイプの指定がなされなかった.学名の安定化などの目的で,ライデンならびにミュンヘンに収蔵される シーボルト・コレクションからBlumeが記載に用いた標本(原資料)を特定した.16種27変種については,記載に最もよく合致する標本を選定し,レクトタイプに指定した.しかし,記載された分類群のうち,5種1変種について は該当する標本を見出すことができなかった.

  • 柏谷博之 , 小林圭介 , 文 光喜
    原稿種別: 原著
    2009 年 84 巻 4 号 p. 255-258
    発行日: 2009/08/20
    公開日: 2022/10/20
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    Dictyocatenulata alba Finley & E. F. Morris(サントクチイ,新称)地衣化しない不完全糸状菌としてすでに日本から報告されていた(Seifert et al. 1987)が,Diederich等(2008)の研究により地衣化菌であることが確かめられた.日本の産地としては和歌山県と沖縄県が知られており,このたび滋賀県伊吹山山頂近くのオオイタヤメイゲツの幹にも多産することが確認された.地衣体は固着性で帯黄緑色,分生子柄束は肌色,長さ1 mmほどで頂端には類白色の分生子塊を生じる.

     Lepraria ohmiensis Kashiw., Keis. Kobay. & K. H. Moon(アツミチイ,新称)地衣体は固着性, 綿毛状の集まりからなる.明瞭な裂片は全く発 達せず,多くの粉芽塊をつける.仮性菌糸は淡色で主な地衣成分としてレカノール酸とパンナリン酸を持つ.日本産のLepraria lobificansも同様の成分を持つが地衣体縁部が明瞭で裂片を持つので区別できる.

     Protoblastenia rupestris (Scop.) Steiner (セッカイニセザクロゴケ,新称)石灰岩生の固着地衣類で亀裂を生じる地衣体と半球状に突出した裸子器を持ち,単室,無色の胞子を持つので他の類似種から容易に区別できる.日本の他の石灰岩地にも産すると思われるが,これまでに日本から報告された記録はない.

  • 金井弘夫
    原稿種別: 短報
    2009 年 84 巻 4 号 p. 259-260
    発行日: 2009/08/20
    公開日: 2022/10/20
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    本項で述べるのは和名の表音式かなづかいの綴り(以下表音式綴り)と歴史的かなづかいの綴り(以下歴史的綴り)の問題で,ローマ字は直接関係ないが,現在日本の植物分類学で用いられている植物和名のローマ字表記は, 発音を示す役目はしているが,元のかな綴りを反映するものではないことを示すために,あえて一連の流れとしておく.

     学術用語集植物学編の付録には, 日本植物分類学会編「植物科名の標準和名」の表がついている.用語集増訂版刊行当時,「これが『正しく』て,これ以外の綴りを使うと誤りなのか?」という質問が頻繁にあった.とくに,教育現場の人に多かったようだ.彼らは学生・生徒に教える立場にあり,正解は一つしかないという環境に慣らされているので,心配するのは無理もない.私の返事は「大勢の人がてんでに自分の好みの名前や綴りを使うと,整理や情報交換がうまくいかないので,『ことある時にはこれを使う』という認識だから,正誤の問題ではない」というものだった.私は科の和名の選定の際に原資料を提供しており,日本植物分類学会の選定会議の基本方針はそういうニュアンスとして受け取っている.さもなければ質問には答えず,分類学会へ廻しただろう.だから「ことある時」でない場合にどんな綴りを使うかは,その人の自由であると考えている.Ericaceae に対してツツジ科を使うかシャクナゲ科を使うかについても同様である.表音式綴り,たとえば「キズタ」「カワジシャ」に対して,「キヅタ」「カハヂシャ」と綴るべきであると,歴史的綴りを主張する人もいる.名前の語源からするとこれはもっともな主張なのだが,表音式が優勢な今日では,索引や検索という立場からすると例外的で使いにくい.しかし表音式綴り一点張りになってしまうと,これらの名前は単なる記号の列に過ぎなくなる.歴史的綴りの主張がときどきなされることによって,われわれが依って立つ文化の底流を知り,その変遷の果てに現在の綴りや発音があるのだということを認識するのに有用なので, 歓迎すべきことだと思う.ただ,そういう意見表明は, 特定の綴りだけでなく,なるべくまんべんなくいろいろな綴りに目配りしてもらいたいものである.

     表1に思いつくままに植物名の表音式綴りとその歴史的綴り,およびそれらのローマ字綴りとの関係を示す.* 印は科名であり,植物科名の標準和名による.歴史的綴りは木村陽二郎(監):図説草木辞苑(1988)による.前項からの流れで,ローマ字綴りも示した.これによれば,普通に和名の表現に用いられているローマ字綴りは「発音」を表すものであり,その綴りからは元のかな綴りを復元できないことは明らかと思う.つまり和名ローマ字綴り=和名の発音であって,和名ローマ字綴り=和名かな綴りではないのである.本報では訓令式を用いたが,これはヘボン式でも同じことだろう.

  • 門田裕一
    原稿種別: 新刊
    2009 年 84 巻 4 号 p. 261
    発行日: 2009/08/20
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー
  • 金井弘夫
    原稿種別: 新刊
    2009 年 84 巻 4 号 p. 261-262
    発行日: 2009/08/20
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー
  • 近藤健児
    原稿種別: 新刊
    2009 年 84 巻 4 号 p. 262
    発行日: 2009/08/20
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー
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