植物研究雑誌
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96 巻, 5 号
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  • 原稿種別: 表紙
    2021 年96 巻5 号 論文ID: 96_5_11118
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2022/10/22
    ジャーナル フリー
  • 大井・東馬哲雄 , 渡邉・東馬加奈 , 李 攀 , 菅原 敬 , 邑田 仁
    原稿種別: 原著
    2021 年96 巻5 号 p. 253-263
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2022/10/22
    ジャーナル フリー

    中国浙江省磐安県,大盤山の麓にある花渓区において,見慣れないウマノスズクサ科ウマノスズクサ属オオバウマノスズクサ亜属Aristolochia L. subgenus Siphisia (Duch.) O.C.Schmidt の植物を発見した.花がオオバウマノスズクサA. kaempferi Willd. に似ているが,植物体全体が黄褐色の毛に被われることで区別でき,葉緑体DNA による系統解析では特異的な塩基配列により区別できることから,新種A. vestita Ohi-Toma, Pan Li & Watan.-Tomaとして発表した.Aristolochia vestita は,系統的にオオバウマノスズクサ群A. kaempferi group に含まれることから,本群に含まれる東アジア産10 種についての検索表を付記した.

  • 大橋広好 , 大橋一晶 , 那谷耕司 , P.Souladeth , 田金秀一郎
    原稿種別: 原著
    2021 年96 巻5 号 p. 264-278
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2022/10/22
    ジャーナル フリー

    インドシナはアコウマイハギ連tribe Desmodieae のアコウマイハギ群Desmodium group の属レベルでの分化の中心地の一部である(Ohashi 2005, Ohashi and Ohashi 2019).この地域のアコウマイハギ群の種類についてはOhashi and Ohashi (2020)によって明らかにされたと考えられていた.しかし,2019 年12 月にNational University of Laos と鹿児島大学総合研究博物館の調査によってシバハギ属Gronaの未知の植物がラオスで発見された.この植物は形態的にシバハギGrona heterocarpos (L.) H.Ohashi & K.Ohashi およびその近縁種に似たものであった.これらの種群の分子系統学的解析をおこなった結果(Figs. 1, 2),未知の植物は新種と判定できた.本論文でこの新種をG. laosensis H.Ohashi, K.Ohashi & Tagane と命名した (Figs. 3, 4).形容語は国名ラオスLao P.D.R.に基づく.また,この分子系統学的解析の結果,G. heterocarpos subsp. ovalifolia (Prain) H.Ohashi & K.Ohashi を独立種と認め,G. ovalifolia (Prain) H.Ohashi, K.Ohashi & Tagane (Figs. 5–7)とした.この機会に2020年に発表したインドシナのアコウマイハギ属 ( 広義) Desmodium s.l. の目録(Ohashi and Ohashi 2020) を改訂した.この目録ではアコウマイハギ属2 種を所属不明として暫定的にDesmodium としていたが,その後の研究でこのうちの1 種Desmodium craibii H.Ohashi はMurtonia kerrii Crib (Ohashi et al. 2020),他の1種D. siamense (Schindl.) CraibはOtotropis siamensis (Schindl.) H.Ohashi & K.Ohashi (Ohashi et al. 2021) として,それぞれの分類学的位置が明らかとなった. さらにその分子系統学的解析の結果に基づいてG.reticulata (Champ. ex Benth.) H.Ohashi & K.Ohashiを独立種と認めた(Ohashi et al. 2021).今回の前目録の改訂にはこれらの結果も含めた結果,インドシナにはアコウマイハギ属 ( 広義) は14 属45 種あり(Table 2),カンボジアには9 属19 種,ラオス13 属34 種,タイ13 属34種,ベトナム12 属29 種の存在が明らかとなった (Table 3).

  • 池田 博 , 清水晶子 , P.Efimov
    原稿種別: 原著
    2021 年96 巻5 号 p. 279-283
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2022/10/22
    ジャーナル フリー

    ラン科マメヅタランBulbophyllum drymoglossum Maxim. ex Ōkubo は日本,中国,台湾,朝鮮半島南部に分布する着生ランである.大久保三郎による初発表文には,1882 年6 月に清澄山(千葉県)で採集し,[標本を送付して]マキシモウィッチに同定を求めたところ,新種であることがわかったので以下に記載するとあり,マキシモウィッチの学名を採用し和文記載とともに正式発表されている.Christenson (1995) は,マメヅタランのタイプ標本として,ロシア・コマロフ研究所 (LE) に収蔵されている標本2 点をホロタイプ(正基準標本) とアイソタイプ(副基準標本)と指定した.Christenson の指定は,ICN 第9.10 条および実例11 により,それぞれレクトタイプ(選定基準標本)およびアイソレクトタイプ(副選定基準標本)と訂正されるべきものであるが,1) LE の標本は原資料と原資料でないものの混合物と考えられ,その中から原資料だけを取り出してレクトタイプを指定することは不可能であること,2) Christenson は学名の命名者をマキシモウィッチと考察してタイプ指定をおこなったものの,実際の命名者は大久保であり,レクトタイプの選定には大久保が実見したと考えられる東京大学植物標本室 (TI) の標本から選定する方が適当であることから,Christenson のレクトタイプ指定を破棄し,新たにレクトタイプを選定した.大久保三郎が記載に用いたと考えられる原資料を探したところ,1882 年6 月に清澄山(千葉県)で採集された4 点 (TI00011342–00011345) と,1883 年7 月に紀州宇久井(和歌山県)で採集された1 点のマメヅタランが TIから見出された.それらのうち,花をつけ記載に合う1点 (TI00011344) をレクトタイプに選定した.また,ロシア・コマロフ植物研究所 (LE) にはマキシモウィッチが検討し,新種と考証したと考えられる日本から送られたマメヅタランの標本が2 点確認された (LE01012281, LE01012282).それらは1882 年6 月に清澄山で採集されたもの(アイソレクトタイプと考えられる)と,1882年8 月に霧島(宮崎県) で採集されたものを合わせたものであった.霧島産の標本はTI にも保管されている(TI00011346) が,大久保がこれを調べた証拠はなく,原記載にも日向の地名の引用がないため,これは原資料とは認められない.したがって,この2 点の標本にはアイソレクトタイプが含まれていると考えられるが,明確に識別することはできなかった.

  • R.S.Pagare , W.Arisdason
    原稿種別: 原著
    2021 年96 巻5 号 p. 284-291
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2022/10/22
    ジャーナル フリー

    Dioscorea bulbifera L. カシュウイモ(ニガカシュウ) は熱帯地域で広く栽培され, また各地で野生化しており,外部形態上の変異が多く,異名も多い.また,D. pentaphylla L. アケビドコロは熱帯アジア原産でかっては広く栽培されていて,いくつかの変種が記載された.次の種名は D. bulbifera のシノニムと考えられ,これらのレクトタイプを選定した.D. tamifolia Salisb. (Fig. 1A),D. heterophylla Roxb. (Fig. 1B),D. crispata Roxb. (Fig. 2),D. pulchella Roxb. (Fig. 3A),D. tenuiflora Schltdl. (Fig.3B),D. latifolia Benth. (Fig.4A),D. perrieri R.Knuth (Fig. 4B).また,D. pentaphylla L. の変種 var. linnaei Prain & Burkill (Fig. 5A),var. malaica Prain & Burkil (Fig. 5B), var. thwaitesii Prain & Burkill (Fig. 6) のレクトタイプを選定した.

  • H.R.Paudel , B.P.Timsina , R.M.Kunwar , G.S.Bhandari , P.Poudel
    原稿種別: 短報
    2021 年96 巻5 号 p. 292-293
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2022/10/22
    ジャーナル フリー

    Fritillaria crassicaulis S.C.Chen( ユリ科バイモ属)をネパール西部から初めて報告した. 本種は, よく似たF. cirrhosa D.Donからは,茎の先のほうに白粉があり,葉先が巻きひげ状にならないことで区別できる.Fritillaria crassicaulisはこれまで中国の四川省と雲南省にのみ知られていた.

  • 藤井伸二 , 牧 雅之
    原稿種別: 短報
    2021 年96 巻5 号 p. 294-296
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2022/10/22
    ジャーナル フリー

    root を持つことを見いだしたので報告する.日本国内で観察したソクシンランのすべての個体群でニンジン型根が確認されたが,同属のネバリノギランでは同様の形態は観察されなかった.また,中国植物誌15 巻(1978) の記載と図から中国産ソクシンランとAletris capitata もニンジン型根を持つことが確認できた.ニンジン型根はこれまでカヤツリグサ科とイグサ科から知られていたが,キンコウカ科では初めての確認である.

  • 大井・東馬哲雄 , 田中伸幸 , 大西 亘 , 黒沢高秀
    原稿種別: 短報
    2021 年96 巻5 号 p. 297-303
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2022/10/22
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    バルカンノウルシEuphorbia oblongata Griseb.(トウダイグサ科)は,2018 年出版の『神奈川県植物誌2018』において,神奈川県内の市街地からの新しい帰化植物として報告された.本種は,南ヨーロッパや西アジアに自生する多年草で,英国,北米,オーストラリアなどに帰化し,園芸栽培からの逸出のようである.我々は,国内のバルカンノウルシについて,形態観察とDNA 同定を踏まえて,神奈川県だけではなく,茨城県,東京都,愛知県,和歌山県および岡山県の市街地において生育を確認した。また,高知県立牧野植物園と岡山市半田山植物園では,知らないうちに生育していることも確認した.国内でのバルカンノウルシは園芸逸出と考えられるが,現時点では生育場所は限定的である.

    高知県立牧野植物園の株の標本を提供して頂いた稲垣典年氏,藤井聖子氏,岡山市半田山植物園の株の標本を提供して頂いた夏井操氏,栽培株からDNA 解析用の試料を提供して頂いた瀬戸剛氏,岡山県の情報を提供して頂いた岡本泰典氏,愛知県の情報と試料を提供して頂いた中村肇氏,名古屋市の情報を提供して頂いた児玉京子氏,豊橋市の情報を提供して頂いた藤井伸二氏,和歌山県の情報を提供して頂いた稗田真也氏,神奈川県の情報を提供して頂いた神奈川県立生命の星・地球博物館の勝山輝男氏,大阪府の情報を提供して頂いた田中光彦氏,標本閲覧にご対応頂いた倉敷市立自然史博物館の狩山俊悟氏には御礼申し上げます.また,本報告をまとめるにあたり,多大なるご協力を頂いた大阪市立自然史博物館の横川昌史氏には特に感謝申し上げます.本研究の一部は,国立科学博物館の総合研究「過去150 年の都市環境における生物相変遷に関する研究-皇居を中心とした都心での収集標本の解析-」により実施した.

  • D.Maity
    原稿種別: 短報
    2021 年96 巻5 号 p. 304-307
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2022/10/22
    ジャーナル フリー

    ハマウツボ科シオガマギク属のPedicularis globifera Hook.f. は1884 年にシッキムから記載された種である.その後,中部ネパールやチベットからも得られたが,シッキムでは再確認されていなかった.しかし,シッキムの高山フロラを調査中,2014 年,2015 年,2018 年に四ヶ所で本種が見出された.これは実に110 年ぶりの再発見となる.

  • 勝木俊雄 , 林部直樹
    原稿種別: 短報
    2021 年96 巻5 号 p. 308-311
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2022/10/22
    ジャーナル フリー

    バラ科ウワミズザクラ属のウワミズザクラは, 北海道から九州・中国南部に分布する落葉高木であり,総状花序をつけることが特徴である.ところが,林部によって複総状花序となっているウワミズザクラが長野県の野生集団中で発見された. この花序の変異をもつ個体は,宮城県や新潟県,東京都,京都府などでも確認された.そこで,新品種Padus grayana (Maxim.) C.K.Schneid. f. pniculata T.Katsuki & Hayashibe フサザキウワミズザクラとして学名を発表する.この変異の安定性と遺伝性はこれから検証されるべきであるが,花序の変異を示す素材として学術上きわめて興味深い.また,将来の農業や園芸への利用が期待される.

  • 大橋広好
    原稿種別: 書評
    2021 年96 巻5 号 p. 312
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2022/10/22
    ジャーナル フリー
  • 樋口正信
    原稿種別: 書評
    2021 年96 巻5 号 p. 312-313
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2022/10/22
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 新学名,新タイプ指定および新和名
    2021 年96 巻5 号 p. 314
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2022/10/22
    ジャーナル フリー
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