植物研究雑誌
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95 巻, 2 号
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  • 原稿種別: 表紙
    2020 年 95 巻 2 号 論文ID: 95_2_10997
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2022/10/22
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  • S. Saensouk , P. Saensouk
    原稿種別: 原著
    2020 年 95 巻 2 号 p. 65-68
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2022/10/22
    ジャーナル フリー

    Boesenbergia isanensis Saensouk & P. Saensouk(ショウガ科)をタイ東北部から新種として記載し,生態写真,解剖図,地方名,分布,生態と生態的な説明を与えた.Boesenbergia Kuntzeは中国,インドから東南アジアに約60種があり,タイではこれまでに21種が知られていた.今回新しく記載したB. isanensisB. rotunda (L.) Mansf.に似るが,植物体が高さ70–80 cmと大きく,地下茎と根の内面が暗黄色で,葉身が無毛で上面の中肋が暗赤色となる点などで異なる.

  • 池谷祐幸 , 猪上信義 , 黒岩展子 , 岩坪美兼
    原稿種別: 原著
    2020 年 95 巻 2 号 p. 69-75
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2022/10/22
    ジャーナル フリー

     大分県中津市においてツクシカイドウMalus hupehensis (Pamp.) Rehder(バラ科)の野生集団を再発見した.本種は中国中南部に広く分布するが,日本では熊本県(当時の西山村)及び大分県(当時の下毛郡)で1920–1930年代に発見されたのみであった.このうち熊本県の集団は1970年頃に野生絶滅したため,栽培個体のみが現存する.大分県のものも長い間不明であったが,筆者のうちの猪上と黒岩は,中津市の山間部でリンゴ属植物の小集団を発見した.この植物の形態を調査し,熊本県のツクシカイドウなどと比較した結果,片巻きの幼芽,無毛で光沢のある葉身,卵形から三角形で鋭頭の萼裂片,散毛のある花柄等の特徴から,中津市のリンゴ属植物もツクシカイドウであり,日本に残るこの種の唯一の野生集団であると結論した.

     また,大分,熊本の両集団についてマイクロサテライト遺伝子型解析を行ったところ,どちらの集団も同一地域の個体間では遺伝的多型がなく,さらに,一部の遺伝子座では3つの対立遺伝子がみられるため,無融合生殖性の倍数体である可能性がある.これを証明するにはさらなる解析が必要であるが,リンゴ属植物の倍数体では条件的無融合生殖をすることが知られており,外交配をする可能性も考えられるので,保全や増殖に当たっては注意が必要である.

  • 大橋一晶 , 大橋広好 , 那谷耕司
    原稿種別: 原著
    2020 年 95 巻 2 号 p. 76-84
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2022/10/22
    ジャーナル フリー

     マメ科アコウマイハギ連Desmodieaeはハギ,ウチワツナギ,アコウマイハギの3群に分けられている (Ohashi 2005).アコウマイハギ群を代表するアコウマイハギ属Desmodiumは最近までOhashi (1973)およびOhashi et al. (1981)による属の定義で受け入れられていた.しかしこの属が多系統であると分かり,2018年以後分子系統解析の結果に基づいて明らかにされた単系統群をそれぞれ独立属として再分類されている (Ohashi and Ohashi 2018a, b, c, 2019, 2020, Ohashi et al. 2018a, b, 2019a, b).その結果,従来アコウマイハギ属として分類されていたアジアの自生種は,アメリカからの帰化種を除いてほとんどが別属とされている.しかし,いくつかの種は,既存の標本が数点しかなく形態的観察が不十分でかつ分子系統解析のサンプルが得られないため,まだアコウマイハギ属として残されている.

     タイ固有の稀産種Desmodium craibii H. Ohashiはこの残された種の1つで,その分類上の位置については原発表以来問題視されてきた (Craib 1912, 1913, Hutchinson 1964, Ohashi 1982).原発表では本種はアコウマイハギ連とインゲンマメ連の中間とみられ,アコウマイハギ連としては独立属Murtoniaあるいはアコウマイハギ属の1種とみられてきた.標本数も少なかったが,幸い京都大学タイ植物調査の結果得られた標本の重複品がTUSにあり(Fig. 1),この問題の解決のためにこの標本からサンプルをとり,DNA解析を行うことができた.その結果得られた系統図によって(Figs. 3, 4),D. craibiiはアコウマイハギ連アコウマイハギ群に属すことが確定でき,その中でアコウマイハギ属から独立した固有のクレードを作っていた.これらの結果によってD. craibiiはアコウマイハギ連に属する独立属であると明らかになった.そこで所属をMurtoniaに戻し,その学名をMurtonia kerrii Craibとした.Murtoniaは花序に托葉状の苞(stipular bract)や腋芽を包む多数の鱗片葉があり,分子系統学的解析の結果を反映したこの属の新たな形態的特徴となった.

  • 邑田 仁 , M. M. Aung , 田中伸幸
    原稿種別: 原著
    2020 年 95 巻 2 号 p. 85-88
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2022/10/22
    ジャーナル フリー

    2019年のミャンマー,カヤ州での植物調査により,特異的に石灰岩の割れ目に生えているテンナンショウ属の新種Arisaema kayahense J. Murataを発見した.放射状の葉と2列縦生の葉序を持っており,クルマバテンナンショウ節に属する.種の識別点となる特徴には,小葉の縁が展開初期に強く外曲すること,仏炎苞の筒部が太短く,口辺部が急に幅広く開出して舷部に移行すること,雄花序の付属体が特に小さいことなどが上げられる.岩壁に着生する生態も特徴的である.

  • 藤原陸夫 , 阿部裕紀子 , 松田義徳
    原稿種別: 原著
    2020 年 95 巻 2 号 p. 89-94
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2022/10/22
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    北東北秋田県大仙市において,シソ科ヒキオコシIsodon japonicus (Burm. f.) H. HaraとクロバナヒキオコシI. trichocarpus (Maxim.) Kudôの自然雑種と推定される植物を見出したので,ミチノクヒキオコシIsodon ×akitaensis Fujiw., Yu. Abe & Y. Matsudaと命名し,記載発表する.茎葉の外観は両親種に類似しているが,萼の形や花冠の色などは両親種の中間的形質を有する.ヒキオコシからは萼裂片の先端が鋭頭であること,分果の先端部に白短毛があること,クロバナヒキオコシからは雄蕊と花柱が花外に突き出ること,果の白短毛が著しく少ないことなどで区別される.また,北東北における両親種と新雑種の分布状況を具体的に把握するため,それらの分布図を示した.

  • 高橋英樹 , A. Grabovskaya-Borodina , 勝山輝男
    原稿種別: 短報
    2020 年 95 巻 2 号 p. 95-101
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2022/10/22
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    ミヤマアシボソスゲCarex scita Maxim.(カヤツリグサ科)のタイプ産地はマキシモヴィッチによる1886年の初発表文では「verosimiliter in montibus Hakone [おそらく箱根の山中]」とあり,産地について不確実さを残した記述となっている.しかし本種(現在認識される6変種を含む種全体として)は箱根には自生していないことから,日本の植物学者の中には疑問を持つものもいた.サンクトペテルブルグのコマロフ植物学研究所標本庫(LE)に残されている3枚のタイプ標本(1枚のレクトタイプと2枚のアイソレクトタイプ)の標本ラベルには「Japonia, Nippon」と印刷されているのみで詳しい産地名(例えば「箱根」などと)は書かれていなかった.さらに新たに発見されたもう1枚の標本ラベルでは信濃の上に箱根と上書きされていた.マキシモヴィッチが1864年2月に横浜を離れた後,長之助は信濃,甲斐,富士~箱根で採集したとされ,新たに発見された標本ラベル上のオリジナルな記述“信濃”と矛盾しない.これらの状況証拠からミヤマアシボソスゲのタイプ産地は無条件に箱根とするべきでなく,むしろ信濃(長野県)の可能性がある.また同一論文中でミヤマアシボソスゲに続いて新種記載されたコタヌキランC. plocamostyla Maxim. (= C. doenitzii Boeck.)はミヤマアシボソスゲと共に採集されたように記載されているが,コタヌキランのレクトタイプ標本のラベルでは詳しい産地が記載されておらず,また採集年は1866年とあり,ミヤマアシボソスゲの採集年1864年と一致していなかった.このためコタヌキランにおいてはタイプ標本産地と採集年が不確かであった.

  • D. Narah , N. A. Bhat , P. Mipun , Y. Kumar
    原稿種別: 短報
    2020 年 95 巻 2 号 p. 102-105
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2022/10/22
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    インド・アッサム州のDhemaji Districtからショウガ科のZingiber flavofusiforme M. M. Aung & Nob. Tanakaを初めて報告し,このインド産の標本に基づいて,詳しく記載するとともに図示した.なお,本種はこれまでミャンマーから知られているのみであった.

  • S. Lahiri , S. S. Dash
    原稿種別: 短報
    2020 年 95 巻 2 号 p. 106-110
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2022/10/22
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    インド・シッキム産リンドウ属の3種,Gentiana recurvata C. B. Clarke, G. sikkimensis C. B. Clarke and G. stylophora C. B. Clarkeのレクトタイプを選定した.

  • 末次健司 , 福永裕一 , T.-C. Hsu
    原稿種別: 短報
    2020 年 95 巻 2 号 p. 111-114
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2022/10/22
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    ウスキムヨウランのホロタイプとして,国立科学博物館の維管束植物標本室(TNS)に収められているTNS111013の検討を行った.以下にその実態を説明する.上部に貼られた果実標本は,ラベルに書かれた採集日,かつウスキムヨウランの記載論文であるTuyama (1955) 中で,タイプ標本の採取日と書かれた1954年4月14日に標本にされたものであるが,そのうちの左端の大型の標本は,ウスキムヨウランではなく,ムヨウランである.このムヨウランの標本はすでに津山自身によりTNS111013に付けられたアノテーションにより,混合物として除かれており,原資料ではない.また,開花個体と花の解剖標本は,4月14日に採集された後,開花を待って5月18日に標本にされたものである.TNS111013には,この日付情報が書かれたラベルがついていない.しかしTuyama (1955)のprotologueに採取日の情報,ならびに,花形質に関する記載はこれらの標本に基づくことが述べられている.よって,これらも原資料とみなすことができる.その一方で,タイプとして引用された日付に標本にされておらず,ホロタイプとはみなせない.このためウスキムヨウランのホロタイプは,上部に貼られた果実の標本のうち,左端のものを除いたものが該当する.

  • R.-P. Zhang , S.-R. Zhang , J.-X. Wang , X.-Y. Zhu
    原稿種別: 短報
    2020 年 95 巻 2 号 p. 115-122
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2022/10/22
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    2018–2019年のミャンマー調査によって,5種のマメ科植物を新しく記録した.その内訳は,自生のCrotalaria medicaginea Lam. var. luxurians (Benth.) BakerとStylosanthes fruticosa (Retz.) Alston,S. humilis Kunth,帰化のAeschynomene americana L.とMacroptilium atropurpureum (Moc. & Sessé ex DC.) Urb.である.このうちMacroptilium (Benth.) Urb.とStylosanthes Sw.は属としてミャンマーから初めての報告となる.ここでは上記の5種について,ミャンマー産の標本に基づいて形態的特徴の記載を行い,生態的な特徴と写真を付した.

  • 鳴橋直弘
    原稿種別: 短報
    2020 年 95 巻 2 号 p. 123-125
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2022/10/22
    ジャーナル フリー

    キイチゴ属の2新品種を記載した.花が上を向いて咲くハナタチモミジイチゴ(秋田県仙北市田沢湖田沢鎧畑産)と果実が黒いクロミノナワシロイチゴ(岡山県備前市日生町梅灘産)である.

  • 原稿種別: 新学名,新タイプ指定および新和名
    2020 年 95 巻 2 号 p. 126
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2022/10/22
    ジャーナル フリー
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