日本小児腎臓病学会雑誌
Online ISSN : 1881-3933
Print ISSN : 0915-2245
ISSN-L : 0915-2245
7 巻, 1 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
原著
  • ——多施設でのアンケート調査から——
    和合 正邦, 清水 凡生, 矢野 美津子
    1994 年 7 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2010/05/18
    ジャーナル フリー
     電顕的に診断された菲薄性基底膜症候群について,アンケート調査による臨床的検討を行った。(1)全国42施設にアンケート調査表を送付し,34施設 (81.0%) から回答を得た。(2)家系に腎疾患歴を有するI群73家系87例と,孤発例と考えられるII群26家系26例について検討した。(3)I群の腎疾患家族歴のうち,腎不全歴は5家系5例に,腎死は1例に認められた。(4)性別,発症年齢,最終年齢,平均観察期間,発見動機,初診時ならびに最終観察時の検尿・BUN・Cr,初診時と最終観察時の諸検査の推移については,両群間で差は認めず,腎機能低下例はなかった。(5)感染罹患に伴った尿所見悪化例は,I群29.9%,II群30.8%であった。(6)尿所見改善例はI群で9例認め,うち女性が8例であった。(7)投薬例 は,I群17.2%,II群23.1%で,いずれも積極的な治療は施行されていなかった。以上より,本疾患の中・長期的予後は,良好であることが示唆された。
  • 及川 剛, 岡部 武史, 秋本 憲一, 片山 章, 宿谷 明紀, 津田 隆, 樋口 薫, 望月 弘, 臼井 信男, 城 謙輔, 藍澤 茂雄
    1994 年 7 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2010/05/18
    ジャーナル フリー
     小児特発性ネフローゼ症候群39例の酵素抗体法 (PAP法) による糸球体内IgM沈着について検討し,IgM沈着陽性例と陰性例の臨床所見および予後を比較した。39例中25例 (64%) にメサンジウムヘのIgM沈着を認め,C1qの沈着を伴う症例が多かった。IgM沈着陽性例と陰性例との間に腎生検の時期,一日蛋白尿,蛋白尿持続期間,ステロイド反応性,長期予後に明らかな差はなかったが,IgM沈着陽性例では陰性例に比して高年齢 (P<0.05),活動期血清IgM高値 (P<0.05),selectivity index高値 (P<0.01) の傾向がみられた。
  • 辻 祐一郎, 高柳 隆章, 近岡 弘, 瀧田 誠司, 奥山 和男
    1994 年 7 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2010/05/18
    ジャーナル フリー
     近年,超音波診断装置の進歩は目ざましく,腹部臓器用のカラードプラ断層装置が臨床診断にも応用されている。腎臓についても検討が始まっており,諸家の報告がみられている。我々は,ネフローゼ症候群と溶連菌感染後急性糸球体腎炎の患児においてカラードプラ断層装置を用い,腎臓の区域動脈と葉間動脈の収縮期最高血流速度と拡張期最低血流速度の測定を行った。その結果,ネフローゼ症候群及び溶連菌感染後急性糸球体腎炎では,病初期に上昇していた血流速度が,病状の回復に伴い低下する傾向が認められた。このことから,腎血流速度を経時的に測定することにより,病期の把握に有用であることが示唆された。
  • 笠置 綱清, 蓑原 美奈恵, 岡空 輝夫, 宇都宮 靖, 林原 博, 瀧川 孝子, 白木 和夫
    1994 年 7 巻 1 号 p. 47-53
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2010/05/18
    ジャーナル フリー
     腎疾患の治療の中で食事療法は重要な位置を占めているが,外来通院中の慢性腎疾患児の食事療法のコンプライアンスの確認をすることは難しく,適切な食事指導が行われていない症例に遭遇することがある。今回,私たちは小児慢性腎疾患に対する食事指導の重要性を再確認するため,鳥取大学医学部附属病院小児科外来通院中の慢性腎疾患児57例の味覚識別能を測定するとともに,その臨床検査成績との比較検討を行った。
     腎不全患児は慢性腎炎患児に比べて,4味質とも有意に鈍化していた。血清尿素窒素,クレアチニンが高値なものほど4味質とも味覚識別能は鈍感であり,クロールは甘味と塩味,カリウムは甘味と有意な関係を認めた。さらに,慢性腎炎患児では蛋白尿および血尿の程度の強いものほど塩味の味覚識別能は鈍化している傾向にあった。小児慢性腎炎の悪化例では塩味を中心とした味覚識別能が鈍化している傾向にあるので,その生活管理の中で食生活に関する指導は重要であり,味覚検査はその際の有用な指標 となるであろう。
  • 石館 武夫, 金子 治司, 島崎 道広, 五十嵐 すみ子
    1994 年 7 巻 1 号 p. 54-59
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2010/05/18
    ジャーナル フリー
     平成2年度から4年間,神奈川県下の学校検尿にて合計73例の一過性円柱尿と蛋白尿の症例を経験した。年齢は男女とも12歳前後に多く,2次検尿の沈渣では近位尿細管由来と思われる粗大顆粒円柱を多量かつ均一に認められたが3次検査では異常が見つからなかった。検尿前の運動,感冒,発熱などの誘因も考えられたが,成長期の一時的な現象であり腎疾患とは結び付かない状態と思われた。
  • 松村 千恵子, 西岡 正, 宇田川 淳子, 倉山 英昭, 秋草 文四郎, 長 雄一, 堀江 弘
    1994 年 7 巻 1 号 p. 60-64
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2010/05/18
    ジャーナル フリー
     症例は精神発達遅滞を合併した15歳男児で,7歳時学校検尿で血尿・蛋白尿・軽度高窒素血症を指摘され,以後腎不全が進行した。DIP・腎シンチにて左small kidneyを呈するが,左右共腎瘢痕所見は軽度であった。膀胱造影では右VURI度 (国際分類),膀胱鏡では両側尿管開口部の馬蹄型変形を認めた。右開放腎生検ではFGS病変と共に著明な糸球体肥大と糸球体populationの低下を認めた。本症例はVURのみで腎不全を説明するにはDIP・腎シンチにおける腎瘢痕所見に乏しく, Oligomeganephronia様の腎低形成を合併していると考えられた。
  • 小松 康宏, 川口 洋, 武田 優美子, 伊藤 克己, 高橋 公太, 太田 和夫
    1994 年 7 巻 1 号 p. 65-69
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2010/05/18
    ジャーナル フリー
     先天性ネフローゼ症候群フィンランド型 (CNF) は,その大半が3歳までに死亡するといわれた予後不良の疾患である。近年の透析,移植医療の発展に伴って予後の改善が得られつつあるものの,その治療管理はいまなお困難である。さらに,発達障害は小児末期腎不全の最大の合併症であり,小児期の腎不全治療は,発達,成長を考慮したものでなくてはならない。こうしたことから, 透析導入前に移植を行うこと (preemptive renal transplantation) は, 長期透析療法の合併症をきたすことなく末期腎不全を治療しうる手段となることが期待される。我々は,透析導入直前に生体腎移植を施行し,その後良好な移植腎機能,身体発育が得られたCNFの女児例を経験したので報告する。
  • 西本 五郎, 秋岡 祐子, 伊藤 圭子, 甲能 深雪, 伊藤 克己
    1994 年 7 巻 1 号 p. 70-75
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2010/05/18
    ジャーナル フリー
  • 船井 守, 岡田 要, 森本 雄次, 安友 康二, 香美 祥二, 川上 浩一郎, 久原 孝, 矢野 一郎, 黒田 泰弘
    1994 年 7 巻 1 号 p. 76-80
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2010/05/18
    ジャーナル フリー
     特発性ネフローゼ症候群におけるキャリーオーバー症例の臨床的検討を行った。小児期に発症し,成人期に至るまで長期観察しえた症例21例中10例 (47.6%) に16歳以後の再発を認めた。うち2例 (9.5%) は20歳以後にも再発の治療を要し,1例 (4.7%) は18歳で血液透析に至った。キャリーオーバー群と長期寛解群との比較検討を行ったが,臨床像,検査所見,ステロイド反応性等には有意な差異は認めなかった。本疾患の予後は良好と思われたが,成人期での再発もあり長期にわたる注意深い経過観察が必要と考えられた。
  • 和合 正邦, 浜田 浩之, 清水 凡生
    1994 年 7 巻 1 号 p. 81-86
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2010/05/18
    ジャーナル フリー
     反復性運動負荷による腎炎患者の昇圧系・降圧系ホルモンヘの影響を調べる目的で,血尿消失群9例, 無症候性血尿群6例,寛解期にあるIgA腎症5例を対象に,3日間連続トレッドミル負荷を施行した。その結果,各群とも昇圧系ホルモンは,第1日目負荷後には各群とも増加傾向を呈したが,第3日目負荷後の変動は軽微であった。また,無症候性血尿群とIgA腎症群では,血尿消失群に比して若干高い値をとる傾向にあったが,降圧系ホルモンは昇圧系ホルモンの産生亢進に対し相応する形で分泌が亢進していた。以上より, 各群とも昇圧系・降圧系ホルモンの自己調節の破綻はなく,反復性の運動負荷により昇圧系ホルモン分泌を軽減する方向に働くトレーニング効果の存在が示唆された。
  • 伊藤 克己, 長田 道夫, 角田 由理, 秋岡 祐子, 小松 康宏, 川口 洋, 甲能 深雪
    1994 年 7 巻 1 号 p. 87-91
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2010/05/18
    ジャーナル フリー
     当施設でこれまで診断 した小児IgA腎症180例について臨床的に調査し,さらに生検組織が十分検討可能であった168例について病理学的検討を加え,そのうち2年以上経過観察可能であった97例を尿所見を指標として予後を検討した。FGNと診断された64例中48例 (75%) が,DPGNと診断された51例中41例 (80.4%) が学校検尿で発見されている。さらに,FGN,DPGNの約30~35%が2年以上の経過観察で尿所見が悪化し,9例の末期腎不全移行例のうち8例が学校検尿で発見された。一方DPGN例の57.6%に尿所見の改善がみられた。以上から,小児IgA腎症の進行例の発見には学校検尿が果たす役割は大きいこと,しかし初回腎生検で増殖性病変が強い症例でも半数以上は尿所見が改善することが示され,小児IgA腎症の治療選択における新しい指標,および再生検の重要性が示唆された。
feedback
Top