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高田 彰, 古川 ひろみ, 鳥谷 由紀子, 松本 敦, 中辻 幸恵, 石川 健, 遠藤 幹也, 千田 勝一
2013 年 26 巻 1 号 p.
77-81
発行日: 2013/04/15
公開日: 2013/10/15
ジャーナル
フリー
血液浄化装置の圧力モニタをライン式からエアフリーチャンバ式に変更したことで,回路内凝血が防止でき,回路寿命が延長した2小児例を経験した。症例1は生後2日のカルバミルリン酸合成酵素I欠損症。症例2は6歳の神経芽細胞腫。ライン式圧力モニタ搭載装置で持続的腎代替療法を開始したところ,両症例とも装置が突然停止し,モニタ回路内に凝血を認めた。エアフリーチャンバ式圧力モニタ搭載装置に変更した結果,両症例とも回路寿命が延長し,凝血を認めなかった。後者はモニタ回路内で血液と空気との接触面がなく,また,停滞や乱流を起こしにくいことが抗凝血に有利に働いたものと考えられた。
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林 麻子, 早坂 格, 鈴木 秀久, 小林 徳雄, 佐々木 聡
2013 年 26 巻 1 号 p.
82-87
発行日: 2013/04/15
公開日: 2013/10/15
ジャーナル
フリー
漢方薬の関与が考えられた薬剤性膀胱炎の2例を経験した。症例1は6歳女児。原因不明の肉眼的血尿と頻尿にて当科受診,検尿にて高度蛋白尿が認められた。MRIを含む画像検査にて一部隆起性の膀胱壁肥厚,粘膜肥厚がみられ腫瘍性病変との鑑別を要した。症例2は11歳女児で,2か月間続く血尿と蛋白尿,無菌性膿尿のため当科紹介受診となった。超音波検査にて膀胱壁肥厚を認めた。症例1は柴胡加竜骨牡蠣湯エキスを約3年前から,症例2は温清飲を約1年前から内服しており,両者とも薬剤中止により膀胱炎症状が徐々に改善し,画像検査所見も正常化した。薬剤性膀胱炎は多彩な臨床症状を呈し得る疾患であり,時に画像検査上,腫瘍病変と類似した膀胱の形態異常を示すことがあり,その診断,治療に際して十分に留意すべきであると思われた。
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布山 正貴, 池田 裕一, 渡邊 常樹, 磯山 恵一
2013 年 26 巻 1 号 p.
88-93
発行日: 2013/04/15
公開日: 2013/10/15
ジャーナル
フリー
症例は11歳男児。生後から右腎低形成を指摘されていたが,11歳時,感冒を契機に肉眼的血尿が出現した後,蛋白尿,血尿が3か月間持続した。膀胱鏡で左右尿管から採尿し同程度の血尿,蛋白尿を認めたため両腎に同様の腎疾患が存在すると推定した。左健側腎を開放腎生検しIgA腎症重症例と診断した。ステロイドパルス療法後,多剤併用療法を行い3か月後に蛋白尿は消失した。残存ネフロン数が減少した先天性腎疾患に後天性腎炎が合併すると急速に末期腎不全へ進行することがある。自験例はステロイドパルス療法など強力な治療によって腎機能を保持することができた。また,片側低形成腎では長期的に対側腎が過濾過になり糸球体硬化が進行し蛋白尿などの尿異常を呈することがある。そのため後天性腎疾患の合併がないか判断に苦慮することがある。片側低形成腎の腎生検の適応を決めるにあたり左右尿管からの採尿は有用であると考えた。
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杉本 哲, 森 潤, 森田 高史, 短田 浩一, 小松 博史, 中島 久和, 小坂 喜太郎
2013 年 26 巻 1 号 p.
94-98
発行日: 2013/04/15
公開日: 2013/10/15
ジャーナル
フリー
症例は生後8か月の女児。哺乳不良と体重増加不良を主訴に当科を受診した。初診時,低ナトリウム血症,高カリウム血症,高レニン血症及び高アルドステロン血症を認めた。画像検査で右重複腎盂尿管を認め,腎尿路奇形に伴う続発性偽性低アルドステロン症(secPHA)と診断した。輸液治療と塩化ナトリウムの補充で神経学的後遺症なく軽快した。secPHAには心停止・痙攣・意識障害といった重篤な経過をたどる例も存在するが,適切な治療を行えば予後は良好である。低ナトリウム血症,高カリウム血症を呈する乳児については,本疾患を鑑別疾患の一つとして念頭に置くべきである。尿細管の未熟性に尿路奇形・尿路感染症が合併することで,ミネラロコルチコイド受容体や上皮性Naチャネルの機能低下が生じ,secPHAを発症すると考えられているが,分子生物学的な背景を含めて病態の詳細は不明であり,病態解明には更なる基礎研究の進歩が望まれる。
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大木 乃理子, 和田 尚弘, 北山 浩嗣, 山田 昌由, 鵜野 裕一, 田中 靖彦, 中澤 祐介, 佐藤 慶介
2013 年 26 巻 1 号 p.
99-104
発行日: 2013/04/15
公開日: 2013/10/15
ジャーナル
フリー
エンドトキシン吸着療法(polymyxin-B immobilized column direct hemperfusion,以下PMX-DHP療法)は治療困難な敗血症性ショックの治療に広く用いられている。今回,超低出生体重児の胃破裂・敗血症性ショックにPMX-DHP療法を含めた集中治療を行い,救命し得たのでこれを報告する。症例は日齢20の男児。26週1日932 gで出生した。日齢20に消化管穿孔の診断で転院となった。同日緊急手術を施行したが,術後も頻脈と高IL-6血症を認めたためPMX-DHP療法と持続血液透析濾過(Continuous hemodiafiltration,以下CHDF)を導入した。PMX-DHP療法導入後より呼吸・循環の改善を認め,約60時間でCHDFも離脱した。低容量PMX-DHPカラムの開発により超低出生体重児においても同治療を安全に施行することが可能となってきた。エンドトキシン吸着療法の機序と適応について考察した。
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藤丸 季可, 菅 彩子, 中村 香絵, 岩見 裕子, 松村 寿子, 堀池 正樹, 原田 明佳, 田中 裕子, 中岡 達雄, 市場 博幸, 山 ...
2013 年 26 巻 1 号 p.
105-109
発行日: 2013/04/15
公開日: 2013/10/15
ジャーナル
フリー
腹膜透析を施行した双胎間輸血症候群供血児の剖検腎組織所見を検討した。症例は,一絨毛膜双胎の一児胎内死亡の生存児で,超低出生体重児の双胎間輸血症候群供血児であった。日齢2,無尿やカリウム上昇のため腹膜透析を開始。日齢10に腸管穿孔のため透析が困難となったが,日齢20頃より緩徐に尿量が増加した。日齢34,無尿状態は脱していたが,腹腔内出血を合併し永眠された。剖検では,尿細管腔数の減少,糸球体の密集,糸球体毛細血管内にフィブリン血栓の充満像を認めた。双胎間輸血症候群による胎児期の慢性的な組織低灌流に伴うrenal tubular dysgenesisが潜在的にあり,さらに一児胎内死亡時に吻合血管から本症例の血液が死亡児へ急性に血流移動(acute feto-fetal hemorrhage)したため,貧血や低血圧などの虚血性変化がさらに進行し,腎虚血から不可逆的腎不全に至った可能性が示唆された。
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渡邊 祥二郎, 千葉 奈歩, 相澤 知美, 敦賀 和志, 伊藤 悦朗, 城 謙輔, 尾田 高志, 田中 完
2013 年 26 巻 1 号 p.
110-115
発行日: 2013/04/15
公開日: 2013/10/15
ジャーナル
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Periodic fever with aphthous stomatitis, pharyngitis and cervical adenitis(PFAPA)は,周期性発熱,アフタ性口内炎,頸部リンパ節炎,咽頭炎を主症状とし乳幼児期に発症する非遺伝性自己炎症性疾患である。溶連菌感染後急性糸球体腎炎(poststreptococcal acute glomerulonephritis; PSAGN)は一般的に保存療法のみで治癒する予後良好な疾患で,血液浄化療法を必要とする重症例はまれである。症例は7歳男児。平成23年2月,発熱・咽頭痛に対して急患診療所で抗生剤を投与され1日で解熱。約2週間後に発熱,嘔吐,乏尿,浮腫のため 総合病院へ入院となった。炎症反応陽性,低 Alb血症,高K血症,腎機能障害を認めたが, ASOの上昇はなく,急性胃腸炎,脱水症として補液を施行された。しかし高K血症と腎機能障害増悪,血尿・蛋白尿,低補体血症(C3 15 mg/dl)が判明し当科へ紹介入院となった。無尿,腎機能障害(BUN 84 mg/dl,Cre 2.93 mg/dl)のため,血液透析を10日間施行し尿量の増加とともに腎機能は改善した。抗 dsDNA抗体は陰性であり,臨床経過からも AGNが疑われた。腎生検では,典型的なびまん性管内増殖性糸球体腎炎像に加えて細胞侵潤を伴う軽度の間質性腎炎の所見が得られた。組織 nephritis-associated streptococcal plasmin receptor染色,plasmin活性染色陽性所見と併せてPSAGNと診断した。本症例の PSAGN重症化の背景にあるPFAPAの何らかの免疫調整異常が関与した可能性も否定できない。両者の合併により臨床経過が修飾された可能性もあり興味深い症例と考えられた。
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石塚 潤, 澤田 真理子, 桑門 克治, 好川 貴久, 吉永 大介, 田中 紀子, 藤原 充弘, 武田 修明
2013 年 26 巻 1 号 p.
116-121
発行日: 2013/04/15
公開日: 2013/10/15
ジャーナル
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超低出生体重児に対して腹膜透析を行ったという報告はあるが,腹膜透析の導入基準や安全性は確立されていない。今回,超低出生体重児の循環不全による急性腎不全に対して腹膜透析を施行したので,当院NICUで施行した腹膜透析19症例(1,000 g未満10症例)とともに報告する。症例は,在胎28週2日,655 gで出生した双胎間輸血症候群の供血児である。日齢11より肺障害に対し長期にステロイドを使用していた。日齢31の抜管後に,左室壁肥厚と僧帽弁逆流(以下,MR)を認め,循環不全による急性腎不全をきたした。腹膜透析を4日間施行し,MRは一過性で改善したが,再抜管後にMR・循環不全による急性腎不全をきたした。腹膜透析を再度48日間施行し,ステロイド中止後に抜管した際には循環不全を起こさなかった。1,000 g未満の児であっても2,000~3,000 g前後の児と同様に腹膜透析が有効な治療手段となると考えられた。
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伊達 慶一, 石原 正行, 菊地 広朗, 松本 学, 成瀬 桂史, 浜田 義文, 藤枝 幹也
2013 年 26 巻 1 号 p.
122-125
発行日: 2013/04/15
公開日: 2013/10/15
ジャーナル
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症例は14歳男児。学校検尿で血尿蛋白尿を指摘され,精査で補体第4成分(C4)値の持続的低下を認めた。家族歴に特記事項はなく,身体所見も異常を認めなかった。C4値以外の血液検査所見,画像検査は異常を認めなかった。腎生検所見で多彩な病変を認め,ループス腎炎様の所見であった。ステロイドの投与により尿所見は改善し,外来経過観察中である。C4の低下は一般人口においてもみられるが,C4の完全欠損は全身性エリテマトーデスと密接な関係にあるといわれている。現時点では国内においてC4遺伝子検査が行えないため,今後も注意深い経過観察が必要である。
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