日本小児腎臓病学会雑誌
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13 巻, 1 号
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総説
  • 渡辺 徹, 河内 裕, 柳原 俊雄, 小田 良彦, 清水 不二雄
    2000 年 13 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2000/04/30
    公開日: 2008/08/27
    ジャーナル フリー
     紫斑病性腎炎 (HSPN) およびIgA腎症の発症・進行における細胞性免疫の関与の有無を明らかにするために,蛍光抗体法を用いて生検腎組織のT細胞 (CD4,CD8) 浸潤,α-SMA,TGF-β発現について検討した。IgA腎症においては糸球体CD8陽性細胞浸潤およびα-SMA発現は尿蛋白・組織所見の程度および予後を反映していた。HSPNにおいては間質のCD8陽性細胞浸潤と尿蛋白に相関を認めた。糸球体CD8陽性細胞浸潤はIgA腎症に比しHSPNで有意に多かった。CD4陽性細胞浸潤,TGF-β発現は,IgA腎症,HSPNともに尿蛋白量・組織所見と有意な相関を認めなかった。以上の結果よりIgA腎症の発症・進行およびHSPNの発症にCD8陽性細胞が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
  • 中畑 徹, 和賀 忍, 館山 尚, 田中 完
    2000 年 13 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 2000/04/30
    公開日: 2008/08/27
    ジャーナル フリー
     IgA腎症におけるメサンギウム基質へのIgA沈着は,免疫複合体などの巨大分子化したIgAによるとされるが沈着機序についてはいまだ不明である。我々はこれまで,IgA腎症患者血清中にはフィブロネクチンカルボキシ末端S-S結合部を含む43kDaの断片化物が特異的に検出され,IgAとの親和性を有することを報告してきた。今回,IgAとカテプシンD処理フィブロネクチン断片化物との混合物が,細胞外基質産生モデルである培養線維芽細胞上でIgAの沈着物を作りうるかを検討した。その結果,IgA腎症に類似したIgAの沈着を見た。IgGを同様な系で検討するとIgAとは異なる細胞外基質線維束に沿った繊細な沈着をみ,これら免疫グロブリンの沈着はフィブロネクチン断片化物の細胞外基質への取り込みを介しうることが明らかとなった。IgA沈着に必要なフィブロネクチン断片化物は上述の43kDaを含むゲラチン非結合性,ヘパリン結合性の分画と考えられた。
  • 松山 健, 相原 敏則, 福嶋 義光, 大橋 博文, 上山 泰淳, 本田 雅敬, 永井 敏郎, 詫間 由一, 横山 哲夫, 伊藤 拓
    2000 年 13 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2000/04/30
    公開日: 2008/08/27
    ジャーナル フリー
     以下の先天性7疾患 (Beckwith-Wiedemam症候群,半側肥大,Sotos症候群,von Recklinghausen病,無虹彩症,Drash症候群,馬蹄腎) はWilms腫瘍を合併する頻度が高いことが知られている。今回各疾患の具体的な腹部腫瘍合併頻度などの文献的考察を行った。また筆者らの計98症例における経過観察中にも早期に無虹彩症からWilms腫瘍が1例,Beckwith-Wiedemam症候群から肝芽腫,混合性肝過誤腫が各1例発見された。
     従ってこれらの疾患群に対してはWilms腫瘍のみならず肝の評価も必要で,また低年齢児に対してはより高頻度に超音波検査を行う必要がある。今後全国的な共同調査によりわが国の疾患毎の年齢別腫瘍発生頻度を明らかにし,腫瘍の早期発見のためのさらに合理的な検査マニュアルを作成すべきである。
  • 津田 正彦, 北沢 恵美子
    2000 年 13 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 2000/04/30
    公開日: 2008/08/27
    ジャーナル フリー
     Fanconi-Bickel症候群は常染色体劣性遺伝形式をとる,ガラクトース代謝異常と特異な近位尿細管異常を同時に生ずる他の糖原病とは異なった病態を示すまれな疾患である1)2)
     1997年,本疾患の責任遺伝子がグルコース輸送蛋白の1つであるGlut2であることが同定された3)。我々は日本人Fanconi-Bickel症候群2例の遺伝子解析を施行したところ,1例ではexon6のCがTへ変異し,その結果365Argがストップコドンへ置換された対立遺伝子 (R365X) と,exon9においてTがCへ変異した結果444TrpがAlaに置換された対立遺伝子 (W444A) の複合ヘテロ接合体,もう1例ではexon3においてCがTへ変異し,その結果53Argがストップコドンへ置換されたホモ接合体 (R53X) であった。今回検索した4つの対立遺伝子中,3つの対立遺伝子に新しい変異が同定され,W444Aは2番目のミスセンス変異であった。GLUT2の11番目の膜貫通部分に位置する444番目のTrpはグルコース輸送蛋白であるGLUT1から5で保存されているアミノ酸であり,グルコース輸送蛋白の機能を保持するのに重要なアミノ酸であることが推測された。
原著
  • 清水 次子, 梶本 博子, 安 柄文, 楠瀬 すみ, 民田 永理, 立花 佳代, 納谷 真由美, 岡野 創造, 北條 誠, 川勝 秀一, 大 ...
    2000 年 13 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2000/04/30
    公開日: 2008/08/27
    ジャーナル フリー
     小児の同種骨髄移植に合併する出血性膀胱炎について検討した。発症頻度は26.6% (64例中17例) で,移植前4日から移植後133日に発症し,持続期間は5日から6カ月であった。膀胱灌流を要した重症例は3例であった。膀胱炎合併例の発症年齢は非合併例に比べて高かったが,原疾患や急性GVHDの程度に有意な差は認めなかった。出血性膀胱炎の発症にシクロフォスファミドが関与したと考えられる症例は3例で,いずれも骨髄が生着するまでの早期に膀胱炎を発症した。アデノウイルスが証明された症例は3例で,膀胱炎の持続期間が長く,1例は間質性腎炎を併発して腎不全を残した。17例中13例にメルファランを含む前処置が行われており,他の薬剤と比較して有意に出血性膀胱炎の発症頻度が高かった。メルファランの強い粘膜障害が出血性膀胱炎の発症に関与している可能性が考えられた。
  • 須藤 博明, 辻 美代子, 卯西 元
    2000 年 13 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2000/04/30
    公開日: 2008/08/27
    ジャーナル フリー
     腎性低尿酸血症は,腎における尿酸クリアランスが亢進し尿酸の体内プールが減少している病態である1)。近年本症患者が,運動後急性腎不全を起こしやすいことが明らかになった2)。今回運動後急性腎不全を発症した15歳の男子を経験した。
     患者は,3日前運動会の後から腹痛と嘔吐を訴え,昨日から眼瞼浮腫を認め入院した。尿量約2,000ml,体重72.4kg (通常68kg),血圧154/90mmHg。
     血清生化学所見: 尿素窒素39.9mg/dl,クレアチニン5.3mg/dl,尿酸4.3mg/dl。
     尿所見: 蛋白 (+/-),潜血 (-),糖 (-),尿沈渣異常なし。
     非乏尿性急性腎不全と診断し,輸液,安静と塩分制限で治療したところ,腎機能は順調に改善した。回復時に体重は63.6kgとなり,血清尿酸値は0.6mg/dlと低値となった。5カ月後に施行したPyrazinamideとBenzbromarone抑制試験の結果から分泌前再吸収障害型の遺伝性腎性低尿酸血症と診断した。非乏尿性腎不全では血清尿酸値にも注目し,適切な治療と低尿酸血症者に対 して発症予防の指導が必要である。
  • 藤永 周一郎, 金子 一成, 山城 雄一郎, 小倉 律子, 榑林 智子, 大日方 薫, 中山 篤志
    2000 年 13 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 2000/04/30
    公開日: 2008/08/27
    ジャーナル フリー
     血尿は腎泌尿器疾患診断の手がかりとなる重要な所見である。本邦では血尿評価法として尿を遠心分離し,沈渣を鏡検する沈渣法が一般的であるが,誤差の大きいことが指摘されている。そこで筆者らは,沈渣法の問題点の検討,および全自動尿中有形成分分析器・UF-100の有用性の評価を行った。対象は血尿を有する小児の早朝尿で,(1)遠心操作後の尿上清への赤血球残留率,(2)尿比重と沈渣赤血球数の関連,(3)沈渣法とUF-100の結果の比較,を行い,以下の結果を得た。(1)遠心後の尿上清に平均20.6%の赤血球が残留する,(2)低比重尿 (1.020未満) では沈渣赤血球数が低値となる,(3)UF-100はこれらの影響を受けず簡便かつ迅速に,精度の高い結果が得られる。
     これらのことより,沈渣法による血尿の定量評価は限界があり,UF-100はこの点を改善し検尿の精度を高めるものと思われた。
  • 田中 里江子, 百井 亨
    2000 年 13 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2000/04/30
    公開日: 2008/08/27
    ジャーナル フリー
     診断時3歳の男児を発端者とするDent病の一家系を経験した。患児は3歳児検尿で蛋白尿を指摘され初診。尿蛋白 (++),セルロースアセテート膜電気泳動でαグロブリンが46.9%,SDS-PAGE法による分子量4万以下の蛋白が49.5%を占め,尿中BMGが37,602μg/lと著増していた。8歳時に患児と母の遺伝子検索を行いCLCN5遺伝子異常のホモ接合で母はヘテロ接合であった。診断後7年の経過で腎石灰化の出現,1日尿蛋白の増加を認め,進行性であると考えられた。 家系内検索で母方伯父と母の従兄弟を本症と診断した。彼らはそれぞれ3歳時,8歳時に腎炎で入院の既往があるが,それぞれ30歳,34歳時点で,蛋白尿は (+) 程度であり,成長障害も認めなかった。母方伯父は38歳で再度検査を行い,腎機能正常で患児よりはるかに軽度の腎石灰化を認めている。これらにより,同一遺伝子異常であっても臨床像には差があることが示唆された。
  • 辻 祐一郎, 阿部 英祥, 澤田 まどか, 久野 正貴, 高柳 隆章, 近岡 弘, 飯倉 洋治, 酒井 糾
    2000 年 13 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 2000/04/30
    公開日: 2008/08/27
    ジャーナル フリー
     腎血流速度の計測は,各種腎疾患において有用な情報を提供することを,我々は報告してきた。今回は,これまでの計測で問題となった点について検討を加え,腎血流速度測定の再現性などを証明することによって,腎血流速度の有用性を証明し,より広く腎血流速度の計測が行われることを目的として検討を行った。その結果,計測機器の違いによって,計測値に有意の差異は生じないこと,被検者の体位によって計測値は有意の変動をきたさないこと,腎血流速度に日内変動が認められたことから,計測はなるべく同一時間帯に行うことが望ましいこと,健常人の左右腎で血流速度に有意差は認めないこと,腎血流速度の正常値は生後より上昇し,幼児期に最も高値となり,その後低下し成人の正常値にいたることなどが解った。これらの結果は,腎血流速度の計測がより一般的に用いられるようになるために,有用であると考えられたため報告する。
  • 西田 眞佐志, 川勝 秀一, 石割 康平, 玉井 恵, 澤田 淳, 粕淵 康郎
    2000 年 13 巻 1 号 p. 53-56
    発行日: 2000/04/30
    公開日: 2008/08/27
    ジャーナル フリー
     3歳児健診受診者に対し,一般検尿に加え尿β2-microglobulin (β2M)・尿N-acetyl-β-D-glucosaminidase (NAG) の測定,腎超音波検査を施行し,これらの有用性を検討した。腎エコー・一般検尿実施者1,185名のうち14名 (1.2%) に水腎症4例,矮小腎2例,重複腎盂尿管2例,腎回転異常2例,孤立性腎嚢胞2例,単腎1例,両側膀胱尿管逆流1例などの異常を認めた。また49名が尿潜血陽性,20名が尿蛋白陽性,82名が尿白血球陽性であったが,これらのなかに腎エコーにて異常を認めた者はいなかった。尿β2Mが平均値+2SD (497μg/gCr) 以上であった22名のなかに,手術を要した両側高度膀胱尿管逆流例が含まれていた。尿NAGが平均値+2SD (12.0U/gCr) 以上であった26名のなかに腎エコーにて異常を認めた者はいなかった。腎尿路奇形のスクリーニングのために一般検尿や尿NAG測定は有用でなかったが,高度膀胱尿管逆流に対する尿β2M測定の有用性が示唆された。
  • 嘉戸 摂, 神田 貴行, 岡田 晋一, 深澤 哲, 中川 孝子, 宇都宮 靖, 辻 靖博, 片山 章
    2000 年 13 巻 1 号 p. 57-60
    発行日: 2000/04/30
    公開日: 2008/08/27
    ジャーナル フリー
     川崎病発症17病目に強い低補体血症とともに肉眼的血尿と蛋白尿を認めた乳児例を経験した。肉眼的血尿は2週間持続した後は蛋白尿と顕微鏡的血尿となったが,これらの尿異常は約3カ月で消失した。低補体血症は4週で完全に正常化し,急性糸球体腎炎の経過をとった。患児は大量γグロブリン療法が無効で,腎合併症の他に心外膜炎,両側冠動脈瘤,顔面神経麻痺,肺炎胸膜炎などの多彩な合併症を呈した。川崎病の病勢が強かったことと大量のγグロブリンが,免疫複合体性疾患である急性糸球体腎炎の発症に関与した可能性がある。
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