目的: 本研究の目的は, 正常者の咀嚼運動における代表的な2種類の運動経路のパターン間の咬合接触状態の差異を明らかにすることである.
方法: 20歳代の正常有歯顎者で, 中心咬合位から作業側へ向かって開口後, 中心咬合位へconvexを呈して閉口するパターンを呈する20名 (I群) と中心咬合位から非作業側に向かって開口後, 作業側へ向かい, その後中心咬合位へconvexを呈して閉口するパターンを呈する20名 (III群) について, 下顎切歯点を中心咬合位から側方へそれぞれ1mm (L1), 2mm (L2), 3mm (L3) 滑走させた側方咬合位の咬合接触状態を側方咬合位間と群間で比較した.
結果: 咬合接触歯数は, 作業側, 平衡側ともにL1, L2, L3の順に有意に減少した. 咬合接触歯数の発現頻度は, 作業側, 平衡側ともに, I群のほうがIII群よりも少ない歯数に分布する傾向を示し, L2の作業側と平衡側, L3の作業側で両群間にそれぞれ高度な有意差が認められた.
結論: 側方咬合位の咬合接触状態は, 側方咬合位の側方移動距離の差異によって変化するが, I群のほうがIII群よりも少ない歯数に分布し, 特に下顎切歯点を中心咬合位から側方へ2mm滑走させた側方咬合位で顕著であり, この下顎位における咬合接触状態の差異が代表的な2種類の咀嚼時の運動経路のパターンの差異に関与していることが示唆された.
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