日本補綴歯科学会雑誌
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46 巻, 4 号
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  • 藤井 弘之
    2002 年 46 巻 4 号 p. 443
    発行日: 2002/08/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
  • 特に有歯顎者の咬頭嵌合位での評価基準について
    田中 昌博
    2002 年 46 巻 4 号 p. 444-450
    発行日: 2002/08/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    健常若年者における咬頭嵌合位での咬合接触状態について, ブラック・シリコーンを検査材料に選び, 咬合接触位置に関する情報をadd画像処理して数値化し, 咬合接触力と咬合接触時間に関する情報をT-Scanシステム®によって定量して, 得られた評価基準を提案する. 1. 弱い咬みしめで, 両側のすべての臼歯に接触がある. 2. 強い咬みしめで, 両側のすべての臼歯に接触がある. 3. 弱い咬みしめでの接触位置は, 強い咬みしめでも移動しない. 4. 接触力が両側臼歯で均等である. 5. 接触時間が両側臼歯で同時である. この評価基準は, 乳歯列咬合完成期から第二大臼歯萌出完了期までの健常小児 (3~17歳) を対象にしたところ, 側方歯群交換期に一時的に状態が嵌合不安定となるが, ほぼ成長発育中にあてはまることがわかった. さらに, 高齢有歯顎者 (70~78歳) でも安定した咬頭嵌合位を確認して, 評価基準が該当することを認めた.
  • 咬合評価のための顎運動測定
    中野 雅徳
    2002 年 46 巻 4 号 p. 451-462
    発行日: 2002/08/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    補綴治療にEvidenceを与えることは非常に難しいが, その第1段階として, 咬合の客観的評価法の確立が必要である. 本稿では徳島大学歯学部歯科補綴学第二講座の研究を紹介しながら, 咬合を顎運動と関連づけて動的に捉え, 客観的に評価する方法を確立するための道筋を示した. 6自由度顎運動データと歯列の三次元形態データの座標系を重ね合わせることで, 顎運動中の咬合接触状態を解析することができるようになった. 面の向く方向から6種類に分類した咬合小面について, 咀嚼中の咬合接触状態を解析して咬合小面の機能的役割を検討した. 一方, 顎関節断層X線写真から三次元再構築した顎関節の形態データと顎運動データをリンクさせて, 顎関節の立体的運動をグラフィック上で観察する方法を開発した. 側方滑走運動のM型とD型のガイドを実験的に与えた研究で, D型ガイドでは作業側顆頭を後方寄りに誘導し, 後方の関節空隙が狭くなり, 顎関節への負荷要因となりうることが示された. また, 顎運動に調和した咬合面形態を決定する基準である咬合参照面は, 咬合小面を定量的に評価するときの基準にもなる. 生体にとって何が望ましい咬合であるかを明らかにして, 咬合評価の基準値を求めなければならない. そのためには, 咬合を定量的に表示したうえで, 咬合と顎機能やヒトのQOLの関係に関する疫学的研究, あるいは咬合を変化させる介入研究や咬合治療の追跡研究を行う必要がある. また, 補綴治療の臨床成績は術者のスキルに依存するので, どのような咬合が与えられたかを定量的に評価することも重要である.
  • 佐々木 啓一
    2002 年 46 巻 4 号 p. 463-474
    発行日: 2002/08/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 嚥下とは食物を口腔に摂取, 咀嚼し咽頭へ送り込み, 咽頭, 食道を経て胃に送る一連の機能である. 咀嚼とは嚥下咽頭相の前準備としての口腔機能であり, 捕食から食物の粉砕・混和, 食塊形成, さらに咽頭への送り込みを含む過程である. これら咀嚼・嚥下機能の検査診断は, 歯科補綴学的な医療を科学的に遂行するうえで不可欠である. 本稿では上記の咀嚼・嚥下機能の本質を踏まえ, これまでの研究成果を探索し, 高齢社会に求められる咀嚼・嚥下機能の検査法を展望した.
    研究の選択: 咀嚼・嚥下の機能検査に関する教科書的文献ならびにMedline検索, ハンドサーチによる近年の文献を対象とし, 評価対象別に総説した.
    結果: 従来の機能評価は, 患者の主観的な評価である「咀嚼能力」と, 食物の粉砕などの機械的能力を食物の変容, 動態あるいは下顎運動や咀嚼筋活動などの生理学的指標により, 客観的に評価する「咀嚼能率」の両面からなされてきた. 開発された各種方法は, それぞれ評価対象とする機能を敏感に検知しうる性質を有している. しかし, いずれも一連の機能の一部のみを評価するものである.
    結論: 咀嚼・嚥下機能の検査診断システムを確立するうえでは, 各種検査が何を評価対象としているものかを理解し, これらを系統的に用いることが必要である.
  • 赤川 安正
    2002 年 46 巻 4 号 p. 475
    発行日: 2002/08/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
  • 川添 堯彬
    2002 年 46 巻 4 号 p. 476-478
    発行日: 2002/08/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    本論文は, 日本補綴歯科学会が近年押し進めているEvidence-Based Medicine (EBM) への取り組みの位置づけを明らかにし, 本学会が実施したEBMに関する研究教育研修の内容をまとめるにあたっての導入とした.
  • 窪木 拓男
    2002 年 46 巻 4 号 p. 479-492
    発行日: 2002/08/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    本論文では, まず, 歯科補綴臨床において臨床エビデンスがどのように位置づけられるかを, ある臨床決断プロセスを例にあげて, 概念的に解説した. 研究サイドからみると, このプロセスは, 研究概念モデルの作成という思考過程にあたり, ある補綴治療の効果に関する臨床エビデンスを明らかにするためには必要不可欠なステップである. そのうえで, 実際の研究計画の立案や論文の批判的吟味の際に必要となる, おのおのの研究構成要素のエッセンスを論じた. すなわち, リサーチクエッションのたて方, 研究の種類, 変数, 測定方法の信頼性と妥当性, バイアス, サンプリング, 解析デザインなどについて, 実際に臨床エビデンスを「創る」研究者の立場にたって論じた. 臨床エビデンスを「創る」というプロセスは, エビデンスに基づく歯科補綴学の確立にとって不可欠であり, エビデンスを縦横無尽に使う必要のある, 臨床医や教育者にとってもその内容の理解は欠くべからざるものと考えられる.
  • 佐藤 裕二
    2002 年 46 巻 4 号 p. 493-500
    発行日: 2002/08/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    診断とは, 診査を行ったうえで, 病気の有無や病状を判断し, 必要な処置を決定することである. この診断手順を, 補綴治療のうちでも比較的条件が均質であると考えられる総義歯治療において考えてみる. まず, 「診査」(一般的事項, 現症・現病歴, 旧義歯の状態, 咀嚼・嚥下・発音などの機能, 口腔内状態, 患者の特性など) を行う. 次に, 診査結果をもとに病気の有無や病状を「判断」する. 最後に, 提供できる医療の質, 予想される治療効果・リスク, 必要な期間・費用, 患者の意思などを総合的に判断し, 必要な処置 (修理, リライニング, 義歯新製, 専門医への紹介など) を「決定」する. このような診断の有用性は, 診断の再現性 (繰り返しても同じであること), 妥当性 (各種の状態を正当に評価すること), 普遍性 (だれがやっても同じであること) などを高めることによって確立できる. そのためには, 診査を定量的に行えるようにし, 明確な判断基準を作成し, 治療効果・リスクの予測精度を向上させることが必要である. ここでは, 診査を定量的に行えるようにする取り組みとして, 義歯の質, 咀嚼・嚥下, 顎堤状態, 患者の性格などの診査について, 著者らの研究成果を含めて文献レビューする. さらに, これらの診査をもとにして病気の有無や病状を判断するための基準のあり方や, 治療効果・リスクの予測を行うための手法について概説するとともに, 今後に残されている課題についても提示する.
  • 平田 智秀, 石川 俊哉, 芝 樺彦, 尾関 雅彦, 塚崎 弘明, 立川 哲彦
    2002 年 46 巻 4 号 p. 501-510
    発行日: 2002/08/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: キャスタブルセラミックスクラウンは審美性に優れているが, 強度に問題があることが指摘されている. そこで, 下顎第一大臼歯部における天然歯およびキャスタブルセラミックスクラウンとして知られるキャスミック®クラウンのモデルに生じる内部応力の差異について比較検討した.
    方法: 天然歯モデルとキャスミック®クラウンモデルを作製し, 荷重点および荷重方向を変化させて, クラウン, 支台歯, 周囲組織に生ずる内部応力の差異を, 三次元有限要素法により比較検討を行った.
    結果: 中心咬合位では相当応力, 引張応力および圧縮応力のすべてにおいて, キャスミック®クラウンモデルが天然歯モデルと比較して大きな値を示した. 偏心位では, 相当応力と圧縮応力は天然歯モデルの咬頭頂歯軸方向荷重において最も大きな値を示し, 引張応力はキャスミック®クラウンモデルが外斜面歯軸方向荷重において最も大きな値を示した. 引張応力分布は天然歯モデルでは荷重点下周囲表層, キャスミック®クラウンモデルでは荷重点下周囲表層とクラウン内側面に大きく認められた.
    結論: キャスミック®クラウンモデルは外斜面歯軸方向荷重で最も大きな引張応力値を示し, その応力分布の様相は, 荷重点下周囲クラウン表層からクラウン内側面にかけて認められた. したがって, この荷重条件で破折が起こる可能性が最も高いことが示唆された.
  • 山田 欣伯
    2002 年 46 巻 4 号 p. 511-520
    発行日: 2002/08/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 失活歯の多くは, 支台築造が行われ全部被覆冠で修復される. しかし, 長期的な経過は常によい結果を示しているわけでなく, しばしば脱落や歯根破折のような臨床的なトラブルにみまわれる. 本研究の目的は, 失活臼歯に対する部分被覆での修復の可能性を明らかにすることである.
    方法: 一定の基準で選択した140本のヒト抜去小臼歯を用い, 各10試料の14条件とした. 2種類のMOD窩洞を形成し, 種々の方法で修復した. すなわち, 条件1は無形成歯, 条件2~4, 10は窩洞形成のみ, 条件5, 6, 11は光重合型コンポジットレジンによる修復, 条件7, 8, 12は鋳造インレーによる修復, 条件9, 13, 14は, 鋳造アンレーによる修復である. 各試料に対し荷重試験を行い, 破折強度および破折様相を求め, 相互に比較した.
    結果: すべての条件のなかで, 接着性レジンセメントで合着した鋳造アンレーが最も高い破折強度を示した. ただし, 破折様相は再修復が困難であった. 次に高い強度を示したのは鋳造インレーであった. コンポジットレジン修復は, 有意に低い破折強度を示したが, 破折様相は容易に再修復できるものだった.
    結論: 鋳造アンレーによる修復の破折強度は, 無形成歯よりも高い値を示し, 失活臼歯を部分被覆タイプの修復物で修復が可能であることが示された. また, コンポジットレジン修復におけるボンディング剤や鋳造修復における接着性レジンセメントの有効性が示された.
  • 柳澤 洋之
    2002 年 46 巻 4 号 p. 521-529
    発行日: 2002/08/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 高分子電解質錯体膜 (PEC) は, ポリアニオンとポリカチオンを混和して得られる人工膜であり, 生体材料としての臨床応用に向けて研究が続けられている. 今回, インプラントのコーティング材を検索することを目的として, 歯肉線維芽細胞とPECの接着性に関与する, 細胞膜裏打ちタンパクの発現およびシグナル伝達の解析をするため, 核内への最終伝達物質であるExtracellular signal-regulatedkinase (ERK) の発現を解析し, 同時に細胞周期についても検索した.
    方法: 140%硫酸化キチン (S-キチン140), Chondroitin sulfateをポリアニオンとして, 50%脱アセチル化キチン (DAC50) をポリカチオンとして使用し, Integrinβ1およびFocal adhesion kinase (FAK) を免疫染色により観察した. 同様にFAK, ERKの発現量の変化をイムノブロッティング法を用いて比較検討した. また, 細胞周期はflow cytometry (FACScan®) を用いて観察した.
    結果: 対照群, PEC群の両者ともに, Integrinβ1およびFAKを細胞周辺領域とほぼ同じ位置に確認した. また, イムノブロッティング法におけるFAKおよびERKは, ともに対照群とほぼ同等の発現が確認された. 細胞周期は, 0, 4, 8, 12時間後のDNA量に変化がみられ, 増殖を阻害していないことが確認された.
    結論: PECが生体材料として, 細胞の生理的作用を阻害するものではないことが示唆された.
  • 大村 直幹, 弘田 克彦, 蟹谷 容子, 永尾 寛, 柏原 稔也, 市川 哲雄
    2002 年 46 巻 4 号 p. 530-538
    発行日: 2002/08/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 高齢者の全身感染症の予防, 特に誤嚥性肺炎の予防が重要な課題の1つとなっており, われわれは, 義歯が微生物のリザーバーとなって誤嚥性肺炎などの感染症を引き起こしている危険性を指摘している. また, これらの感染症は, 薬剤耐性菌の出現により治療が困難となっている. そこで, デンチャープラークと咽頭より分離した微生物叢の関連性とカンジダの薬剤感受性について検討した.
    方法: 老人病院入院患者と大学病院外来患者の義歯装着者を対象に, 上顎義歯床口蓋部粘膜面および咽頭粘膜面における口腔レンサ球菌, ブドウ球菌, カンジダ, 緑膿菌, 大腸菌・大腸菌群, MRSAの検出率を評価し, さらにカンジダに関しては, 薬剤感受性試験を行った.
    結果: デンチャープラークから微生物が検出されると, 咽頭からも同種の微生物が検出される傾向にあった. 多くの微生物は, 大学病院外来患者より老人病院入院患者のほうが有意に高い検出率を示した. カンジダが検出されると, 同部位からブドウ球菌も検出されるケースが多かった. アムホテリシンBに対しては, 菌種に関係なく, 高感受性の傾向を示した. フルコナゾールに対しては, Gandida albicansが高感受性の傾向を示したが, Cglabrata, C. tropicalis, C. kruseiが低感受性の傾向を示し, 耐性株もあった.
    結論: デンチャープラークが, 咽頭の微生物叢に与える影響は大きいと考えられる.
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