目的: クラウンが合着された支台歯の辺縁漏洩に, 咬合力がどのように関与しているか検討する.
方法: 同一規格の支台歯形成を行ったヒト抜去大臼歯にメタルクラウンを合着し, 咬合面の負荷点に, 内斜面および外斜面方向から, 歯軸に対して45゜の角度で, 30kgf, 1Hz, 10万回の繰り返し荷重をかけた. 試験後, 染色液に浸漬し, 支台歯軸面に浸入した色素の面積を測定して比較を行った. また, 負荷後のクラウン辺縁部の様相を走査型電子顕微鏡 (SEM) にて観察した.
結果: エリートセメント100 (EL) は, 対照群で著しい色素浸入が認められた. フジI (FI), ビトレマールーティングセメント (VT), フジルーティングS (FL), パナビアフルオロセメント (PF) は内斜面方向からの負荷における負荷側直下の色素浸入面積が, そのほかの測定条件と比較して有意 (p<0.01) に大きかった. ADゲル法を併用したパナビアフルオロセメント (AD) およびリライエックスARC (RX) は, 負荷後もほとんど色素浸入がなかった. 負荷後のSEMによる所見は, FI, FLではセメントの凝集破壊, VT, PFでは象牙質界面破壊が認められ, AD, RXは対照群と比較して変化はなかった.
結論: クラウンの合着において, ADゲル法を併用したパナビアフルオロセメントおよびリライエックスARCは, 咬合力に対する耐久性が優れた合着材料であることが結論づけられた.
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