目的:本研究は咳嗽時に発生する飛沫を調べる基礎研究として,胸骨圧迫を大きく超える胸腔内圧変化を生ずる咳嗽時のエアロゾル発生を可視化し,改良型ポケットマスクを用いて,咳嗽に伴う飛沫量に対する効果を検討することを目的とした。方法:被験者(大学生10名)が発する咳嗽の飛沫量の比較を3種のマスク条件で比較検討した。結果:通常のポケットマスクの使用に加え,頭部を覆うビニールカバーおよびHEPAフィルターを取り付けることで傷病者からの飛沫を抑えられることが示唆された(p<0.01)。結論:ポケットマスクを使用することで飛沫感染リスクを軽減できる可能性がある。
目的:傷病者および都道府県レベルでのアドレナリン投与時間と神経学的転帰の関連を検討すること。
方法:ウツタインデータ2015-2019年において,病院前にてアドレナリン投与を受けた18歳以上のOHCAを対象とした。マルチレベルロジスティック回帰分析を行い,傷病者および都道府県レベルでのアドレナリン投与時間(1分増加単位)と神経学的転帰良好(CPC1-2)の関連を検討した。
結果:Shockable群とNon-shockable群において,傷病者レベルおよび都道府県レベルのアドレナリン投与時間の遅延(1分増加単位)はCPC1-2に有意な負の関連を示した。
結語:傷病者および都道府県レベルでのアドレナリン投与の遅延とCPC1-2の有意な負の関連を示した。
ショック傷病者に対する病院前静脈路確保が救急救命士の特定行為に追加され,その活動の質は傷病者の転帰に影響する因子として注目されている。今回,活動の質を評価することを目的に,神戸市消防局データベースよりショック傷病者に対する静脈路確保成功率と現場滞在時間を算出した。成功率は外因(傷病者)80%,内因70%であった。外因の処置成功を処置未実施と比較すると,現場滞在時間は延長しなかった。神戸市では外因症例で病院前診療が介入する頻度が高く,救命士が病院到着まで対応する傷病者は内因症例が多い。地域性により結果と問題点が異なるため,地域ごとにデータを示していく必要がある。
産科危機的出血ガイドラインではショックインデックス(S.I.)≧1を介入開始基準としているが,麻酔薬や,昇圧薬,輸液量など介入変数の多い帝王切開において,その数値の重要性について検討がされていない。今回当院で経験した2000ml以上の出血を認めた帝王切開症例3例でS.I.の有用性を検討した。全例で児娩出直後に低血圧をきたし,S.I.は1以上となり,出血継続時はおおむね1を超え続けたが,止血後は速やかに1を下回る傾向があった。児娩出直後の低血圧とS.I≧1は出血と輸血の必要性を示しており,血管収縮薬などバイタルサインに影響する他の因子があっても信頼できる指標と考えられた。