蘇生
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32 巻, 1 号
蘇生32巻1号
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総説
  • 金森 修
    原稿種別: 総説
    2013 年 32 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2013/03/28
    公開日: 2013/05/02
    ジャーナル フリー
     医療倫理学という概念が出現した19世紀初頭には,その言葉は,医師同士の行動規範を主として意味していた。だが,1970年前後,つまりそれが現代的制度化を受けて以降は,その学問の目標や客体は遙かに複雑なものになる。特に80年代以降には経済学的視座も組み込まれ,患者個人の福祉と医療制度全体の有効な保存という異なる視座の併存状態が顕著になる。そんな中,制度化は惰性的になり,医療倫理学は医療界の傍らでの技術的補助機構のようなものになりつつある。だが,それは適切ではない。医療倫理学の精髄に触れ続けるためには,事務化に抵抗し,哲学的問題設定の眼差しの中に留まり続けるという決意をもたなければならない。
原著
  • 佐久間 貴裕, 金田 徹, 斎藤 啓一郎, 鈴木 利保
    2013 年 32 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 2013/03/28
    公開日: 2013/05/02
    ジャーナル フリー
     重症熱傷患者の予後は不良のことが多く,受症直後の治療方針が予後に影響を与える可能性がある。今回重症熱傷患者の初期治療の方針を決める上で熱傷予後指数(PBI:prognostic burn index)を含め予後に関連すると推測される因子の影響を後ろ向きに検討した。当院救命救急センターに救急搬送された69例(年齢6ヶ月-95歳)を対象とした。解析は生命予後を目的変数,年齢,性別,受傷機転,自傷・外傷,手術回数,PBIを説明変数とした多重ロジスティック解析を行い,生命予後とPBIからROC曲線(Receiver Operating Characteristic curve,受信者動作特性曲線)を求めた。その結果PBIのみが生命予後に有意に影響する因子(オッズ比1.33, p<0.05)であり,PBIが93.675以上で死亡率100%であった。PBIは重症熱傷患者の初期治療方針の決定に重要な因子であると考えられる。
  • 爲廣 一仁, 瀧 健治, 矢野 和美, 吉田 訓浩, 山下 寿
    2013 年 32 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2013/03/28
    公開日: 2013/05/02
    ジャーナル フリー
     CPA傷病者の救急搬送における胸骨圧迫の質を検討する目的で,傷病者宅から病院までの搬送経路でボランティア30名と自動胸骨圧迫装置による胸骨圧迫の深さについて蘇生訓練用人形を用いて測定し,その深さとばらつきを統計学的に比較検討した。用手で深さ5.0cmを越えた人は傷病者宅の床で60%であったが,移動しながらでは1.3%と少なく,ばらつきの大きい質の悪い胸骨圧迫となっていた。一方,自動胸骨圧迫装置では何れの搬送状況でも胸骨圧迫の深さはほぼ一定で,質の高い胸骨圧が維持されていた。これらの比較から,質の高い胸骨圧迫が得られる自動胸骨圧迫装置が搬送中に使用されるべきと推奨された。
症例
  • 長田 圭司, 伊佐 泰樹, 二瓶 俊一, 原山 信也, 相原 啓二, 蒲地 正幸
    2013 年 32 巻 1 号 p. 16-19
    発行日: 2013/03/28
    公開日: 2013/05/02
    ジャーナル フリー
     症例は49歳,男性。大量のインスリンを自己注射し自殺をはかり,心肺停止状態で搬送された。低血糖と判断し心肺蘇生を継続しながらただちに50%ブドウ糖液20 mlの静脈内投与を行った。その直後の大腿(動脈血)から採取した血糖値は1262 mg/dlと高値を呈していた。しかし,その5分後に採取した血糖値は33 mg/dl,さらにその4分後では305 mg/dlと短時間の間に激しく変動した。心肺蘇生時における循環時間の遅延により,ブドウ糖の血管内不均等分布を起こしたことが原因と考えられた。心肺蘇生中は,循環時間の遅延がブドウ糖投与後の血糖測定値に大きな影響を与えることを念頭に置くべきである。
  • 古谷 明子, 飯田 靖彦, 脊戸山 景子, 平田 孝夫, 松本 美志也
    2013 年 32 巻 1 号 p. 20-22
    発行日: 2013/03/28
    公開日: 2013/05/02
    ジャーナル フリー
     糖尿病と高血圧の既往があり,中咽頭癌に対して治療を行っていた53歳の女性が,呼吸困難を訴えたために緊急で全身麻酔下に気管切開を行った。プロポフォールとフェンタニルで麻酔を導入し,気管支ファイバーを用いて気管挿管を行った。手術のために頸部を伸展し頭部後屈位としたところ,高度徐脈を認めたために,直ちに胸骨圧迫を開始しアトロピンを静注した。心拍数はすぐに正常化し,麻酔終了まで徐脈を認めなかった。高度徐脈の原因としては,既往の糖尿病による自律神経障害や麻酔薬の影響も考えられるが,頸動脈周囲に浸潤した腫瘍が,頸部伸展を契機にして頸動脈洞症候群による迷走神経反射を誘発したことが主な原因と思われた。
報告
  • 井上 義博, 菊池 哲, 小野寺 誠, 藤野 靖久, 秋冨 慎司, 山田 裕彦, 遠藤 重厚
    2013 年 32 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2013/03/28
    公開日: 2013/05/02
    ジャーナル フリー
     平成23年3月11日に発生した東日本大震災は,死者,行方不明者,災害関連死を含めると2万人を超える犠牲者を出した。発災から3月31日までの3週間に我々の施設に搬送された症例は23例で,内訳は溺水による呼吸不全3例,肺血栓塞栓症,うっ血性心不全,多発外傷が各2例,クラッシュ症候群,破傷風,熱傷,腸間膜動脈損傷,凍傷,脾動脈破裂が各1例,単独損傷7例であった。この内呼吸不全の3例はいずれも3週間以内に死亡したが,他の症例は救命された。津波肺は発症病態が生物学的(微生物),化学的(油脂が主体),物理学的(砂や泥)と複雑で,微生物も特殊なものに起因するため治療に難渋したものと思われた。
講座
  • 渡部 広明
    2013 年 32 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 2013/03/28
    公開日: 2013/05/02
    ジャーナル フリー
     集中治療管理を行う上で前負荷の正確な評価は極めて重要であると同時に難しい。近年,輸液管理においては,これまでの静的指標に対して呼吸性変動に伴う動的指標の信頼度が注目を集めており,輸液反応性の指標としての有用性が多数報告されている。動的指標であるSVV (stroke volume variation)は輸液反応性の優れた指標であり,これを用いた循環管理は過剰輸液を防止し最適な循環管理を行うことができる。一方,敗血症など重篤な基礎疾患の治療中に発生したARDS(Acute respiratory distress syndrome)治療はしばしば難渋する。近年,ARDSの治療において肺血管外水分量Extravascular lung water (EVLW)の測定が予後の改善に寄与する可能性が示されており,これを指標とした輸液管理を行うことで呼吸循環動態を改善しうる可能性が示唆されている。本論文では上記のSVVとEVLWの両者を用いた重症呼吸不全患者における目標指向型輸液療法の可能性について解説する。
  • 車 武丸
    2013 年 32 巻 1 号 p. 36-41
    発行日: 2013/03/28
    公開日: 2013/05/02
    ジャーナル フリー
     意識下挿管では,気道開存と自発呼吸が維持されやすい。また,最小限の麻酔薬で挿管できるため,循環動態変動を最小限に抑えることも可能である。異論はあるものの,消化管内容の逆流・誤嚥を予防する効果も期待される。気道確保困難症例に限らず,救急・集中治療領域でも有用な気道確保法となり得る。一方で,患者の負担が増す,気道損傷をきたすなどの心配から,意識下挿管を躊躇してしまう可能性もある。 挿管補助器具としてエアウェイスコープあるいは気管支ファイバースコープを選択し,適切な表面麻酔と鎮静を併用することで,多くの症例では安全かつ快適な意識下挿管は実現可能である。
  • 今宿 康彦
    2013 年 32 巻 1 号 p. 42-44
    発行日: 2013/03/28
    公開日: 2013/05/02
    ジャーナル フリー
     エアウェイスコープ(AWS)が挿管困難に有用と報告され臨床で汎用されて久しい。筆者は現時点では一度で確実に挿管を決めたい状況ではAwake intubationにおいてもAWSがファーストチョイスになると考えている。ただし分泌物には注意を要する。 他にも特殊状況下でさまざまな使用報告がなされている。AWSには間接型ビデオ喉頭鏡の利点を生かして常識にとらわれない使用法がある。今後さらに応用発展されていくアイテムと考えられる。
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