廃棄物資源循環学会論文誌
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20 巻, 1 号
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論文
  • 丸屋 英二, 坂井 悦郎, 大崎 雅史, 加藤 昌宏, 大門 正機
    2009 年 20 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    セメント産業は循環型社会の形成において中心的な機能を果たす一方,温暖化防止へ向けた取り組みにも一層の推進が望まれている。したがって,今後のセメントは,クリンカ焼成時の廃棄物使用量を増加し,CO2削減の観点から混合材を利用する必要がある。本研究では,調合計算と相組成モデルを組み合せた手法を用いることで,クリンカの鉱物組成および混合材添加量と廃棄物使用量,CO2排出量および強度発現性との関係を試算した。その結果,クリンカの間隙相量を増大することで,廃棄物使用量を増加しつつ,添加量25~35%を上限として混合材の利用が図れることがわかった。本手法により,現状の普通ポルトランドセメントよりも廃棄物使用量が多く,CO2排出量の低減が可能で,かつ実用的な強度発現性を具備するセメント組成物の設計範囲を示すことができた。
  • 柳瀬 龍二, 平田 修, 松藤 康司, 花嶋 正孝
    2009 年 20 巻 1 号 p. 12-23
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    1983年,水銀を含む乾電池が使用済み後に埋立処分され,乾電池から水銀が流出し環境汚染が懸念されるとして,大きな社会問題となった。筆者らは,1985年より乾電池と廃棄物を混合充填した大型埋立実験槽を用いて,水銀の浸出水への流出や水銀の気化特性等を長期にわたって調査研究してきた。本報は,埋立10年間にわたる嫌気性埋立実験と,埋立20年間にわたる準好気性埋立実験の結果を基に,埋立地における水銀の流出特性を比較検討した。埋立20年間に埋立実験槽から流出した水銀は総水銀量の2%以下であり,浸出水への流出は0.2%以下と小さく,大気拡散による流出が大部分を占めていた。埋立10年後,20年後に回収した乾電池は外装が腐食し,乾電池中の6%前後の水銀が乾電池から廃棄物層へ移行していた。また,埋立層内が嫌気性雰囲気の方が水銀の流出を抑制していた。したがって,埋立20年後も90%以上の水銀が埋立地に残存し,水銀の流出は極めて小さかった。
  • 門木 秀幸, 貴田 晶子, 細井 由彦
    2009 年 20 巻 1 号 p. 24-38
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    3種類の廃棄物再生材からの重金属類の溶出特性を,公定試験,アベイラビリティ試験,pH依存性試験およびカラム通水試験により検討した。
    pH依存性試験では,Pbは酸性側とアルカリ側で溶出量が高くなり,Cr(VI) はアルカリ側または中性付近で溶出量が高くなった。Asについては,溶融スラグでは酸性・アルカリ性で溶出量が高くなるのに対し,ガラスカレット,発泡ガラスでは中性付近で溶出量が高くなった。カラム通水試験ではPb,AsはL/S2~5までに大きく溶出濃度が低下するが,T-Cr,Cr(VI) は,L/S10まで溶出が継続する特性を示した。地下水への影響を雨水の浸透を模擬して評価した結果,Asについては,地下水環境基準に対して1,060%の影響があるものがあったが,その他の資材については地下水環境基準に適合した。
  • 角田 芳忠, 町田 高穂, 松藤 敏彦, 東條 安匡, 松尾 孝之
    2009 年 20 巻 1 号 p. 39-51
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    屋内外に大量に貯留・堆積されることが多い木くずやRDFなどの廃棄物試料を対象として,水分吸着による発熱現象を実験的に明らかにするとともに,数値シミュレーションにより自然発火の可能性を評価した。主要なパラメータである平衡含水率を測定し,熱分解残渣が他試料と異なる変化を示すことを確認した。水分吸着実験により吸着速度式を検討したところ,含水率の上昇とともに速度定数が低下するモデルが実験値とよく適合した。吸着熱を考慮した計算モデルが,水分吸着実験における温度測定結果と良好に一致し,水蒸気および液水吸着のいずれの場合も適合した。実堆積規模の内部温度変化に関する数値シミュレーションにより,低温酸化による常温からの自然発火の可能性は低いことを確認した。しかし,初期含水率が低い廃棄物試料では,水分吸着により30℃程度温度が上昇するため,自然発火を誘発する可能性がある。
  • 濱村 研吾, 志水 信弘, 土田 大輔, 永瀬 誠, 鳥羽 峰樹, 黒川 陽一, 高橋 浩司, 小渕 祐二, 末永 朋則, 成岡 朋弘, 江 ...
    2009 年 20 巻 1 号 p. 52-60
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    焼却残渣の有効利用は最終処分場の延命を図る有効な手段であり,セメントの代替原料としての資源化が代表的である。しかし,焼却残渣は高濃度の塩素を含有しており,セメントの代替原料として混合できる量も制限を受ける。そこで,焼却残渣に有機性コンポストを混合し,自然降雨や散水により,焼却残渣中の塩素濃度を低減させる技術について,大型のライシメータを用いて検討し,塩素の溶出挙動について解明した。その結果,都市ごみ焼却灰に生ごみコンポストを混合した試料の塩素含有率は,都市ごみ焼却灰単独試料の半分まで減少した。また,都市ごみ焼却灰中の難溶性塩素の可溶化と溶出は,大気や自然降雨由来の二酸化炭素によるアルカリ成分の中和およびアルカリ成分の溶脱により,微生物の活動に適した範囲までpHが低下し,微生物の活性が上昇した結果,生ごみコンポスト中の有機物から硫酸,二酸化炭素,有機酸等が産生し,さらにpHが低下したためと考えられた。
  • 石黒 泰, 熊谷 淳逸, 福井 博一
    2009 年 20 巻 1 号 p. 61-67
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    バーク堆肥の利用法としては,鉢物培土が有望であるが,発酵が不十分な堆肥ではアンモニアの発生や窒素飢餓などの障害が発生するため,正確な腐熟度判定が不可欠となる。バーク堆肥の一次発酵では,易分解性有機窒素化合物の微生物分解によって多くのアンモニアが発生すると同時に,そのアンモニアは他の微生物により有機化される。堆肥中の易分解性有機窒素化合物が減少すると,これらの微生物活性も低下する。本研究では微生物活性の指標としてアンモニアの消長に着目し,アンモニアと堆積日数との関係を検討した。堆積日数の短い堆肥のアンモニア含量は高く,アンモニア含量により一次発酵過程の判定が可能であった。一次発酵が終了したと推定された堆肥に硫酸アンモニウムを添加し,72時間後のアンモニアの消長を測定した。堆積日数が長い堆肥は短い堆肥に比べてアンモニアの減少が小さく,アンモニアの減少量により二次発酵の堆肥の腐熟度判定が可能であった。
研究ノート
  • 和嶋 隆昌, 池上 康之
    2009 年 20 巻 1 号 p. 68-73
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    紙のリサイクル工程では,製紙スラッジ焼却飛灰が産業廃棄物として発生する。本研究では,製紙スラッジ焼却飛灰の重金属捕集剤としての新たな有効利用法の開発を目的として,製紙スラッジ焼却飛灰の酸性重金属溶液浄化能について検討した。製紙スラッジ焼却飛灰を酸性重金属溶液に対して固液比1:100で添加することによって,酸性溶液は中和され,ほとんどの重金属は溶液中から沈殿除去された。Fe,Cr,Zn,Cd,Mn,Niの除去率は90%以上と高く,他の重金属もCu,Pbはそれぞれ89.6%,81.6%,Mo,Bはそれぞれ51.5%,58.5%除去された。処理後の残渣には,溶液中から沈澱除去された重金属の85~100%が固定化された。これらの結果より,産業廃棄物である製紙スラッジ焼却飛灰が酸性重金属溶液の浄化に適用できる性能をもつことが示唆された。
  • 村上 克治, 井上 宏之, 矢野 伸一, 滝村 修, 澤山 茂樹
    2009 年 20 巻 1 号 p. 74-78
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/29
    ジャーナル フリー
    パームオイル製造産業で大量に排出されるパーム幹,パーム空果房 (Empty Fruit Bunch:以下EFB) 繊維の有効利用として非硫酸法によるバイオエタノール生産の可能性を検討した。パーム幹,EFB繊維はカッターミルおよびボールミルにより微粉砕前処理 (メカノケミカル法) を行い,さらにセルラーゼを含む酵素カクテルを用いて酵素糖化を行った。その結果ボールミル処理により効率的に酵素糖化が行えることが明らかになった。さらにこの糖化反応液を用いて酵母によるエタノール生産の検討を行ったところ,発酵阻害なく速やかにエタノールが生産できることが明らかとなった。以上の結果から,オイルパーム廃棄残渣からのバイオエタノール生産が可能であるとともに,パームオイル製造産業におけるこれら廃棄残渣を含めたバイオマスの総合的利用の重要性が示唆された。
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