複数の株価や為替レート等の資産価格収益率について, 多変量のボラティリティの変動を捉えるモデルとして, 多変量確率的ボラティリティ(Multivariate Stochastic Volatility, MSV)モデルがあり, 近年, 様々な拡張が試みられている. 資産価格の収益率分布は, 状況によって左右非対称となることが知られており, 本稿では, MSVモデルの誤差項に非対称t分布を適用したモデルとそのベイズ推定法について解説する. また, 分布の非対称性の程度を表すパラメータに縮小推定法を適用する方法についても紹介する. 米国株式市場S&P500の日次収益率データを用いた実証分析によると, 非対称t分布を用い, かつ縮小推定法を適用すると, MSVモデルの予測精度が向上することが示される.
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