日本統計学会誌
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50 巻, 2 号
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原著論文
特集:機械学習とその周辺
  • 鈴木 大慈
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 50 巻 2 号 p. 229-256
    発行日: 2021/03/05
    公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー

    本稿では深層学習がなぜうまくいくのかという疑問に答えるべくその統計理論を紹介する.特にその関数近似能力および推定能力に関して議論し,深層学習には対象の関数に合わせた適応的推定が可能であることを紹介する.そのため,深層学習の万能近似能力を紹介した後,Barronクラスや非等方的Besov空間における推定理論とミニマックス最適性を議論し,線形推定量と比べて次元の呪いを回避できることや関数の滑らかさの非一様性への適応性といった優れた性質を持っていることを紹介する.最後に,パラメータがサンプルサイズよりも多いニューラルネットワークがいかに汎化するかをカーネル法の観点から解析した汎化誤差理論を紹介する.

  • 今泉 允聡
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 50 巻 2 号 p. 257-283
    発行日: 2021/03/05
    公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー

    本稿では,深層学習の原理を説明する汎化誤差の理論を概観する.深層学習は,多層ニューラルネットワークをモデルとして用いる統計的手法の一つで,その高い性能から脚光を浴びて久しい.しかしながら,その多層モデルがもたらす複雑な性質により,高い性能を発揮する仕組みの解明は未だ発展途上である.本稿は,この性能の原理を説明する試みのうち,特にモデルの近似誤差や推定量の複雑性誤差に焦点を当て,解明された部分と未解明な部分を議論する.

  • 園田 翔
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 50 巻 2 号 p. 285-316
    発行日: 2021/03/05
    公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー

    本稿では,ニューラルネットの積分表現に関する最近の研究結果を紹介する.深層学習の理論研究において,積分表現を用いてニューラルネットを関数解析的に取り扱う方法が発展しつつある.ところが,積分表現作用素Sが定義される空間の構造は多くのことが未解明である.さらに,には無限次元の零空間ker Sが存在するということもあまり認知されていない.本稿では,積分表現に纏わる複数の問題を取り上げながら,それぞれの文脈においてやker Sの特徴づけについて考察を加えていく.

  • 日野 英逸
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 50 巻 2 号 p. 317-342
    発行日: 2021/03/05
    公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー

    教師あり学習において予測モデルの学習に利用する教師データ(ラベル)の取得に非常にコストがかかる一方,教師なしデータの取得が容易な状況が多く存在する.適応的にラベルを付与するサンプルを選択することで限られたコストで精度の高い予測モデルを得る方法論として,能動学習がある.本稿では能動学習の基本的な問題設定と,最近の研究動向を紹介する.特に,ラベル付けをするサンプルを選択するための獲得関数をデータから学習するアプローチ,能動学習の理論的保証,逐次的なデータ取得の停止基準に関する研究を紹介し,さらに材料開発や物質の計測の効率化への応用事例を紹介する.

  • 高野 祐一, 宮代 隆平
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 50 巻 2 号 p. 343-362
    発行日: 2021/03/05
    公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー

    回帰モデルの変数選択は,統計分野で古くから重要な課題として認識されており,扱うデータ量の増大を背景として,近年はデータマイニングや機械学習などの分野でも盛んに研究されている.この変数選択問題に対して,数理最適化問題として定式化し分枝限定法を用いて求解する,混合整数最適化によるアプローチが新たな注目を集めている.混合整数最適化の最大の利点は,目的関数として設定した回帰モデルの評価指標に関して,最良の変数集合を選択できることにある.筆者らはMallowsのCp規準,自由度調整済決定係数,情報量規準,交差確認規準などの各種の統計規準に基づいて,線形回帰モデルの選択変数の集合と基数を同時に最適化する定式化を考案してきた.本論文では,線形回帰モデルの最良変数選択問題に対する,混合整数最適化による各種の定式化を解説する.

日本統計学会賞受賞者特別寄稿論文
  • 岩崎 学
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 50 巻 2 号 p. 363-379
    発行日: 2021/03/05
    公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー

    重回帰分析は疑いなく統計的データ解析手法の中で最も多く応用されるきわめて有用な手法である.しかしそれ故に誤用も多く見られることも事実である.本論文では,重回帰分析につき,その教科書的な記述に対し,実際問題への応用を意識した場合に重要と思われるいくつかの論点を統計的因果推論の観点から吟味し,それらに関する筆者の考えを述べる.また,重回帰分析の教育において,受講者の興味を引くであろういくつかのパラドクス的な例を紹介する.

日本統計学会研究業績賞受賞者特別寄稿論文
日本統計学会小川研究奨励賞特別寄稿論文
  • 中島 上智
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 50 巻 2 号 p. 403-424
    発行日: 2021/03/05
    公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー

    複数の株価や為替レート等の資産価格収益率について, 多変量のボラティリティの変動を捉えるモデルとして, 多変量確率的ボラティリティ(Multivariate Stochastic Volatility, MSV)モデルがあり, 近年, 様々な拡張が試みられている. 資産価格の収益率分布は, 状況によって左右非対称となることが知られており, 本稿では, MSVモデルの誤差項に非対称t分布を適用したモデルとそのベイズ推定法について解説する. また, 分布の非対称性の程度を表すパラメータに縮小推定法を適用する方法についても紹介する. 米国株式市場S&P500の日次収益率データを用いた実証分析によると, 非対称t分布を用い, かつ縮小推定法を適用すると, MSVモデルの予測精度が向上することが示される.

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