日本統計学会誌
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特集 : 医学・疫学分野における統計アプローチ(1)
  • 武冨 奈菜美, 渡辺(張) 元宗, 今野 良彦, 森 美穂子, 江村 剛志
    原稿種別: 研究論文
    2025 年 54 巻 2 号 p. 73-108
    発行日: 2025/03/04
    公開日: 2025/03/04
    ジャーナル フリー

    メタ分析は公表された複数の研究の結果を統合する統計的手法の一つである.メタ分析では各研究の結果が共通平均を持つと仮定し,各研究の結果に基づき共通平均を推定することが多い.しかし各研究が共通平均を持たない場合は,与えられた個々の研究の推定値を更新した値を結果として示すことがある.本稿は,メタ分析の枠組みで個々の研究の正規母平均をPretest推定量に基づいて推定する方法について総説する.Pretest推定量のバイアス,平均二乗誤差と分散に関する新しい内容も与える.また,Rパッケージ:meta.shrinkage の使用方法について述べる.最後に,解剖学実習中における目の症状データへの適用例についても報告する.

  • 国友 直人
    原稿種別: 研究論文
    2025 年 54 巻 2 号 p. 109-143
    発行日: 2025/03/04
    公開日: 2025/03/04
    ジャーナル フリー

    因果関係(causality)は統計科学など多くの研究分野にとって基本的かつ重要な分析対象である.計量生物と計量経済の分野ではこの間,統計的因果推論(statistical causal inference)が盛んに応用されている.本稿ではまずRubin (1974)に始まる反実仮想(counter-factual)モデルとAngrist, Imbens and Rubin (1996, 略してAIR)による操作変数法(instrumental variables method)を説明する.次に計量経済学における同時方程式と構造方程式(structural equation)を簡単な需要関数の例を用いて説明する.一般の構造方程式を用いて統計的因果関係を解釈し,操作変数法を含めた構造方程式の統計的推定法を議論する.構造方程式の推定ではOLS法(最小二乗法)は一致性を持たないので,操作変数法(IV法)としてのWald法,LIML (制限情報最尤法, 分散比最小法),TSLS (2段階最小二乗法),GMM (一般化積率法)などの長所と短所を説明する.さらに構造方程式を巡る歴史的展開を説明し,2標本問題における多操作変数に関する新たな結果に言及する.最後に計量生物と計量経済などにおける統計的因果分析のさらなる課題を展望する.

  • 船渡川 伊久子
    原稿種別: 研究論文
    2025 年 54 巻 2 号 p. 145-162
    発行日: 2025/03/04
    公開日: 2025/03/04
    ジャーナル フリー

    出産は人生のある一時期,主に10代後半から40代の間に生じるが,このライフイベントの遠い過去の趨勢がその後のライフスタイルや健康の変化と連動し,死亡などの指標と関連しているかもしれない.暦歴での変化だけではなく,集団の対応をとるために,出生年を意識した指標が重要となる.そこで,出生年が特定でき長期間遡れる出産に関する指標として,日本人女性の出生年に伴う出生子供数の分布の長期推移を明らかにした.1950年から2021年の国勢調査,出産力調査,出生動向基本調査の既婚女性の出生子供数を用い,国勢調査の未婚割合で補正した, 1890年から1973年生まれの45–49歳を中心とした日本人女性の出生子供数の分布を求めた.出生子供数の分布は5年刻みであるため,さらに,各歳出生率により詳細な1年刻みの変化を確認した.1900年代後半から1930年生まれ頃の間で出生子供数の分布は大きく変化し,最頻値は5人から2人になった.対応する出生年の各歳出生率は,10代,20代の低下と,出生年が一年新しくなるごとに若い年齢からの低下がみられた.

  • 加茂 憲一, 栁原 宏和
    原稿種別: 研究論文
    2025 年 54 巻 2 号 p. 163-175
    発行日: 2025/03/04
    公開日: 2025/03/04
    ジャーナル フリー

    本論文では,日本における全国がん罹患数の推定値における登録の完全性を補正する数理的手法に着目した.全国がん罹患数は,現在全国がん登録により把握されているが,以前は地域がん登録データに基づいて推定されてきた.しかし,地域がん登録データには登録漏れが内包されており,それが全国値に影響を及ぼし過小評価されている可能性が指摘されていた.そこで本論文では,登録の完全性を数理モデルにより補正する手法に着目し,完全性の指標を用いた二項回帰モデルに基いた手法をアップデートした.その手法を2015年データに適用し,実際に登録率の推定を行い,手法の妥当性に関する検証を行った.

日本統計学会小川研究奨励賞特別寄稿論文
  • 松田 孟留
    原稿種別: 研究論文
    2025 年 54 巻 2 号 p. 177-203
    発行日: 2025/03/04
    公開日: 2025/03/04
    ジャーナル フリー

    非正規化モデルとは,非正規化密度(全積分が1にならない密度)によって定義される統計モデルであり,機械学習分野ではエネルギーベースモデルとも呼ばれている.たとえば,マルコフ確率場,多様体上の分布,ボルツマンマシンなどが挙げられる.このようなモデルはデータの柔軟なモデリングを可能とするが,計算困難な規格化定数を含むために尤度に基づいた統計的推測手法を適用することは難しい.そこで,規格化定数の計算を必要としない統計的推測手法が開発されてきた.本稿では,非正規化モデルに対する代表的なパラメータ推定手法であるスコアマッチングとノイズ対照推定について説明する.情報量規準や非線形独立成分分析などの最近の発展や,縮小推定やブリッジサンプリングなどの他の統計手法との関係についても紹介する.

  • 奥野 彰文
    原稿種別: 研究論文
    2025 年 54 巻 2 号 p. 205-220
    発行日: 2025/03/04
    公開日: 2025/03/04
    ジャーナル フリー

    入力と出力が一対一に対応するとき,その関数は可逆であるという.本研究では可逆性制約を考えて,可逆な予測モデルに関する最近の研究について紹介する.さらに我々の研究Okuno and Imaizumi (2024) の紹介として,可逆性が既存のリプシッツ制約などと比べてどの程度強い制約であるのかをミニマックスレートの観点から議論する.提案法としてノンパラメトリックな可逆推定量を紹介し,ミニマックス最適性を達成することを説明する.

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