大規模かつ複雑なシステムの信頼性解析には,システムを構成するコンポーネント(サブシステムや部品など)の寿命間の従属性の情報が必要となる.本稿では寿命間の統計的な従属性の評価手法として,多変量確率分布であるFarlie-Gumbel-Morgenstern(FGM)コピュラを用いた信頼性データ解析を解説する.まず多変量FGMコピュラの性質を解説し,同時推定法とInference Functions for Margins法の2種類の最尤法をベースとしたパラメータ推定手法を詳説する.とくに,推定量の標準誤差と信頼区間を導出し,シミュレーションを通してその性質を調査する.そして,実データの解析を通して,多変量信頼性データを用いた解析へのFGMコピュラの応用を紹介する.
生存時間解析において,打ち切り・切断・競合リスクといった不完全データの取り扱いは,古典的ではあるが重要なトピックである.近年,競合リスクを伴う左側切断・右側打ち切りデータの解析で,Kundu et al. (2017)は新たな統計学的手法を提案した.彼らの提案手法は,競合するイベント(リスク)が互いに独立であるという仮定に立脚しているが,この独立性の仮定は多くの実証研究で成り立たない.そこで,本稿では独立性の仮定が成り立たない(競合するイベントが相関する)場合でも,Kundu et al. (2017)の提案手法の性能が担保されるのかどうかをシミュレーション実験で検証する.さらに,競合するイベントが相関する場合についての解析手法も検討する.