日本統計学会誌
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45 巻, 1 号
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原著論文
  • 関谷 祐里, 種市 信裕
    2015 年 45 巻 1 号 p. 1-17
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2016/05/30
    ジャーナル フリー
    多項分布の適合度検定において,対数尤度比統計量Tの単純帰無仮説のもとでの極限分布がカイ二乗分布であることはよく知られている.Siotani and Fujikoshi (1984) は,単純帰無仮説のもとでの対数尤度比統計量Tの分布の漸近展開式を導出し,Tの下側確率に対する近似式として,J1+Ĵ2を提案した.ここで,J1は多変量エッジワース展開の項であり,Ĵ2は不連続項J2の1次近似である.本論文では,この連続項J1と不連続項Ĵ2を利用した離散バートレット型変換統計量T*及びT**を紹介する.数値計算の結果,TからT*T**への変換によってカイ二乗分布近似が改善できることがわかった.
  • 竹内 宏行
    2015 年 45 巻 1 号 p. 19-40
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2016/05/30
    ジャーナル フリー
    2次元ユークリッド平面における曲線としての鞍点の長さによって,基準化された標本平均Snに関する漸近正規性を捉える.この結果はsp-変換により,フィッシャー計量が定義された正規分布のモデル多様体ℳ上へ拡張される.sp-変換は鞍点すなわち確率分布をℳ上の曲線(sp-曲線)へ移すが,これは``鞍点を包絡線とするような接線群を考える''というアイデアによって得られる.さらにsp-変換が写像として全単射であることから,鞍点を有する全ての確率分布は母数が滑らかに変化する正規分布の族により生成されるという事実が明らかになる.sp-曲線の長さはℳの座標系に依存しない形で得られるが,ℝ2の場合と同様Snの漸近正規性の評価基準として有用である.
特集:空間データの計量経済分析
  • 大塚 芳宏
    2015 年 45 巻 1 号 p. 41-57
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2016/05/30
    ジャーナル フリー
    本稿では,2001年から2009年までの都道府県別パネルデータと空間動学的パネルデータモデルを用いて,生産関数の空間的波及効果を推定し,資本と労働の生産への限界効果を計測した.まず,変量効果の空間動学的パネルデータモデルとベイズ統計学による推定方法を紹介し,長期と短期における直接効果と間接効果の分解方法について説明していく.そして,このモデルをマルコフ連鎖モンテカルロ法を用いて,ベイズ推定した結果,都道府県の生産は,空間的相関と時間的自己相関に依存していることが示された.そして,労働における間接効果は,短期にのみ計測され,直接効果は長期の方が高い値となっていることが示された.
  • 各務 和彦
    2015 年 45 巻 1 号 p. 59-68
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2016/05/30
    ジャーナル フリー
    線形回帰モデルにおける説明変数の被説明変数に対する限界的な効果は対応する回帰パラメータそのものであるため直感的で扱いやすい.しかしながら,空間計量経済モデルにおいては,他地域の影響が入ってくるため線形回帰モデルのように限界的な効果を容易に扱うことができない.本稿ではLeSage and Pace (2009)によって提案された説明変数の被説明変数に対する限界的な効果を自地域における直接効果と他地域からの間接効果に分解する方法を解説し,日本の道路利用についての応用例を示す.
  • 近藤 恵介
    2015 年 45 巻 1 号 p. 69-98
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2016/05/30
    ジャーナル フリー
    先行研究において日本の失業率の地域間格差は徐々に減少していることが指摘されている.そこで,本論文では,人口移動が地域労働市場間の調整としてどのように機能しているのかを1980年から2010年までの市区町村データを用いて実証的に明らかにする.本研究の特徴は,空間計量経済モデルを用いることで,人口移動の地域間の相互従属性を同時に考慮している点である.分析結果より,高失業率が人口移動のプッシュ要因として機能していたこと,また人口流出率と人口流入率がそれぞれ正の有意な空間従属性を示すことを明らかにしている.さらに,相対失業率の変化率と人口流出率の間には負の相関関係があることも明らかにしている.以上の分析結果から,失業率の高かった地域から失業者が流出することで翌期には失業率が低下し,一方で,失業率の低かった地域では失業者の流出が十分ではなく翌期には失業率が上昇していたことが失業率の地域間格差縮小の背景として示唆される.
  • 陳 光輝, 橋口 善浩
    2015 年 45 巻 1 号 p. 99-118
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2016/05/30
    ジャーナル フリー
    本稿は,中国製造業の企業個票データを使って,生産性のレベルと成長率,国有・非国有企業間格差の地域分布の可視化を試みたものである.その方法として,我々は地域ブロック単位で地理的な重み付けを行うブロックGWR (Geographically Weighted Regression)と,さらにそれを固定係数の説明変数も含む混合型に拡張したブロックMixed GWR (MGWR)を新たに提案した.それらの主な利点は,たとえ個票データに地理座標がなくとも,個票と地域単位の地理座標との接続が可能であれば,地理的可変係数を推定することができる点にある.とくにブロックMGWRは,個票データの属性を固定係数の説明変数として含めることができるため,柔軟なモデリングが可能であり,その適用範囲は広いと考えられる.ブロックMGWRを適用した実証分析の結果から,中国の成長は地理的偏りが大きかったが,企業生産性にも大きな地域差が存在したことが明らかになった.具体的には,生産性の成長率は長江中下流以南の地域(とくに湖南省の長沙市周辺)で高く,国有・非国有企業間の生産性格差は華北から西部内陸にかけての地域で大きかったということが明らかになった.
特集:Bayes推測における諸問題
日本統計学会賞受賞者特別寄稿論文
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