本研究では, 地すべり地における抑制工の配置計画の合理化を支援することを目的として, 「仮想ドレーンモデル」と称する3次元浸透流解析手法の地すべり地での適用性を検証した。仮想ドレーンモデルは排水ボーリングをメッシュ化せずとも, その効果を解析へ反映することができ, 解析モデル構築に要する時間や労力の低減に寄与する。本手法の妥当性は, まず, 均質地盤を対象として抑制工を詳細にメッシュ化した場合の解析結果との比較で評価した。その結果, 仮想ドレーンモデルによって得られた水位低下や排水量は, 排水ボーリングを詳細にメッシュ化した結果と整合し, 解析時間短縮に貢献できることが示された。次に, 譲原地すべりを対象として抑制工に仮想ドレーンモデルを適用し, 求められた解析結果を実際の計測値と比較して, その実用性を検討した。結果, 観測孔での建設期間ごとの平均地下水位との良い一致が見られ, 抑制工の建設による平均地下水位の低下が良好に再現された。したがって, 本手法は, 地下水位の低下範囲の可視化などを通して, 実現場における抑制工建設に係る迅速な意思決定に貢献すると考える。
平成30年7月豪雨により20箇所以上の斜面で大規模崩壊が発生した高知県の立川川流域で, 1966年以降の大規模崩壊の発生履歴を, 国土地理院の空中写真とGoogle earthにより調べた。すると5つの斜面において大規模崩壊が複数回発生したことが確認された。これらの斜面はいずれも稜線付近に位置する地すべり地形の, 遷急線を挟む末端部付近から下部が崩壊したものである。これらは豪雨の際に地すべり土塊が移動して, その末端が不安定になり崩壊したことが, Google earthでの検討や現地踏査により示唆された。また崩壊発生の間隔は約25~30年であった。よって本地域において, 上記のような地形特性を有する斜面では, 数十年程度の間隔で大規模崩壊が繰り返し発生する可能性が示唆され, これを砂防計画の中の長期における土砂生産・流出の発生として見込むことの必要性が検討された。ただし本地域には同様な地形特性を有する斜面は数多いが, そのうち5つしか崩壊の再現が確認されなかったことから, 土砂生産・流出のシナリオとして, 大規模崩壊の発生する間隔のみならず, 同一斜面で大規模崩壊が発生する確率も考慮されるべきである。