2016年熊本地震において被災した阿蘇地域周辺の7路線 (総延長約70km) の実被害データをもとに, 危険度と影響度を組み合わせた被害想定手法の開発を試みた。道路沿いの地形・地質条件をもとに危険度別かつ震度別崩壊発生確率を設定するとともに, 崩壊土砂量と土砂撤去時間に基づく影響度を設定し, モンテカルロシミュレーションにより確率論的に崩壊発生場所や崩壊規模さらに路線や区間毎の土砂撤去時間 (啓開時間) を算出するモデルを構築した。検証の結果, 実際の被害状況が概ね再現され, 地震時の斜面崩壊によって引き起こされる道路ネットワーク機能の低下を定量的に評価できる可能性が示された。
近年, 落石災害が多発しており落石対策への取り組みが急がれている。一方, レーザ測量機器の進展は著しく, 携行可能なモバイルレーザ (mobile laser scaning) もいくつかの機種が登場している。さらに, 2020年にはLiDAR機能搭載のスマートフォン「iPhone 12 Pro」 (Apple) 等も発売されている。そこで, こうしたモバイルレーザスキャナを活用して落石調査を行った。その結果, 各機器の計測による精度及び調査の効率化・省力化についての知見が得られた。
近年, 日本では豪雨による斜面災害, 特に表層崩壊が多発しているが, これらを迅速, かつ安価に小労力で調査する手法が少ないのが現状である。筆者らは従来のボーリング調査, サウンディング調査や物理探査に比べて, 表層土深と表層土内の粘着力, 内部摩擦角を簡単に計測できる土層強度検査棒による斜面計測と, 地表植生の遷移状況を用いて, 表層斜面の安定性を評価する調査を行った。その結果, 同じ傾斜角度と表層土深を持つ崩壊斜面でも, 植生が侵入し遷移することで粘着力が増大し, せん断強度が回復することが分かった。この粘着力の増加傾向は, 高木が侵入し定着した段階で, 大きくなることが分かった。これらの結果は, 危険斜面の抽出に土層強度検査棒調査と植生調査を平行して行うことが有用であることを示しており, 我が国の多くの表層斜面で利用可能である。