古第三系神戸層群は網状河川堆積物および湖沼性砕屑岩類からなり, しばしば凝灰岩を狭在する。神戸層群が分布する兵庫県三田市西方の丘陵の緩斜面では, 凝灰質岩をすべり面とした多数の地すべり地形が発達している。調査した地すべりは, 長さに対して幅が2倍以上広い形状の地すべり地形をなし, 分離崖が発達し, ブロック内に溝状凹地が発達するなど, 他の地すべりとは異なる特徴を有している。調査地のボーリング調査により, 層理面は河川方向に5~6°傾斜した構造をなし, 地すべり移動による破砕を受けた地層の最下層には凝灰質泥岩層が分布することが明らかになった。凝灰質泥岩層は, せん断による脆性変形と塑性変形が混在する変形構造が認められる。地すべり領域では凝灰質泥岩層の層厚が薄くなり, 地すべり移動体が凝灰質泥岩中に沈降している。これらの特徴はCruden and Varnes (1996) 等の地すべり様式の区分におけるスプレッドタイプに相当する。地すべり末端部を流れる河川の強い下刻作用が, スプレッドの発生にはたらいていると考えられる。
土砂災害予測の指標として用いられる斜面貯留高に着目し, 水循環過程を忠実にモデル化することにより, 斜面貯留高を精度良く推定する手法を提案した。そして, 積雪地域の小起伏の丘陵斜面を対象に解析モデルの精度を検証した。その結果, 斜面貯留高を精度良く計算できることや, 蒸発散過程を考慮することで夏季における斜面貯留高の計算精度が高まることがわかった。また, 蒸発散過程は, 夏季において, 土砂災害に対して, 抵抗要因として大きく影響することが示唆された。