非接点式計器として, 拡散レーザ光線を用いた新しいタイプの変位計 (拡散レーザ変位計) を開発した。この変位計は, 天候の影響を受けにくくするため, また, 眼や皮膚など人体への影響を与えないため, 拡散レーザシステムを採用した。このシステムは, レーザ光線のスポット光の直径および光線の広がり角度が一般のレーザ光線と比べて大きいのが特徴である。この計器は, 低コストで常時設置可能で, リアルタイム計測, 常時計測ができ, 30cm以上の計測レンジを持つ。
拡散レーザ変位計の精度, 性能および実用性を検証する実証実験をおこなった。室内実験では, 拡散レーザ変位計は, 基線長50mにおいて, 強制的に与えた10. 0mmの変位に対して±0. 2mmの測定誤差となり, 接点式計器の地表伸縮計よりも高い精度であった。また, 拡散レーザ変位計は, 草により見通しを悪くした野外実験では一般的なレーザ変位計よりも障害物の影響が少なく, さらに, ビニールハウス内実験ではプリズム型トータルステーションでは測定できない, 基線長約16mに対して10mの視程の見通しの悪い条件でも±0. 8mmの誤差で測定できるなど, 優れた計測性能が確認された。特に, 地表伸縮計との野外比較実験では, 地表伸縮計の計測値は伸びや縮みに対するインバー線の追従性の影響により誤差が生じ, 一方, 拡散レーザ変位計では, 反射板の移動方向が遠ざかる方向, 近づく方向ともに地表伸縮計と比較して追従性が良く, 遠ざかる方向で変位速度が大きい場合でも正確に計測でき, しかも計測範囲が長いことも確認された。
地すべり動態観測では, 拡散レーザ変位計は, 併設した地表伸縮計と同等以上の精度を持つとともに, 地表伸縮計では計測できない道路を挟んでの計測や基線長67mの条件でも長期間安定した計測ができ, 現場での実用性が高いことが明らかになった。
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