日本地すべり学会誌
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44 巻, 6 号
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論文
  • 納谷 宏, 溝上 雅宏, 浅利 晋一郎, 増成 友宏, 清水 則一, 前田 寛之
    2008 年44 巻6 号 p. 339-348
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2008/12/26
    ジャーナル フリー
    非接点式計器として, 拡散レーザ光線を用いた新しいタイプの変位計 (拡散レーザ変位計) を開発した。この変位計は, 天候の影響を受けにくくするため, また, 眼や皮膚など人体への影響を与えないため, 拡散レーザシステムを採用した。このシステムは, レーザ光線のスポット光の直径および光線の広がり角度が一般のレーザ光線と比べて大きいのが特徴である。この計器は, 低コストで常時設置可能で, リアルタイム計測, 常時計測ができ, 30cm以上の計測レンジを持つ。
    拡散レーザ変位計の精度, 性能および実用性を検証する実証実験をおこなった。室内実験では, 拡散レーザ変位計は, 基線長50mにおいて, 強制的に与えた10. 0mmの変位に対して±0. 2mmの測定誤差となり, 接点式計器の地表伸縮計よりも高い精度であった。また, 拡散レーザ変位計は, 草により見通しを悪くした野外実験では一般的なレーザ変位計よりも障害物の影響が少なく, さらに, ビニールハウス内実験ではプリズム型トータルステーションでは測定できない, 基線長約16mに対して10mの視程の見通しの悪い条件でも±0. 8mmの誤差で測定できるなど, 優れた計測性能が確認された。特に, 地表伸縮計との野外比較実験では, 地表伸縮計の計測値は伸びや縮みに対するインバー線の追従性の影響により誤差が生じ, 一方, 拡散レーザ変位計では, 反射板の移動方向が遠ざかる方向, 近づく方向ともに地表伸縮計と比較して追従性が良く, 遠ざかる方向で変位速度が大きい場合でも正確に計測でき, しかも計測範囲が長いことも確認された。
    地すべり動態観測では, 拡散レーザ変位計は, 併設した地表伸縮計と同等以上の精度を持つとともに, 地表伸縮計では計測できない道路を挟んでの計測や基線長67mの条件でも長期間安定した計測ができ, 現場での実用性が高いことが明らかになった。
  • 小島 義孝, 大熊 俊明, 川島 正樹, 大塚 悟
    2008 年44 巻6 号 p. 349-357
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2008/12/26
    ジャーナル フリー
    挿入型/設置型傾斜計, パイプひずみ計のような管状物体等の長体を地盤に埋設してその変形時の傾斜・ひずみなどのセンサ情報から地盤や地中構造物の変位・変形・力等に関する幾何学的および力学的情報を得るための実用的で一般的な計測法を開発した。本方法では複数の種類のセンサを備えた長体複合センサとB-スプラインを基底関数としたスプライン関数を利用する。精度的な検討を行うために, 余弦関数の組み合わせや弾性支承上の梁理論で得た形状を利用した数値実験および巻込み型変位計やひずみゲージをアルミ管などに取り付けて変形させる室内モデル実験および野外実験を行い, 良好な結果を得た。また, 現場計測事例も紹介する。本論文では, 本法の原理および理論, 適用条件, 特徴, 精度, 問題点などについて述べる。
  • 岡本 隆, 松浦 純生, 浅野 志穂
    2008 年44 巻6 号 p. 358-368
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2008/12/26
    ジャーナル フリー
    本論文は, 最大積雪深が3~5mに達する第三紀層の浅層地すべり地における土塊の変形機構を2年間にわたる変位量の観測結果から明らかにした。地すべりは春期から夏期にかけて不活発であった。しかし秋期から積雪初期にかけては, 降雨, 融雪に対する変位の応答性の向上によって地すべりの移動が活発化し, それにともなって土塊の引張変形が増加した。地すべりは厳冬期に一時停止したあと, 融雪期には土塊の変形をともなわずに緩慢に移動した。このような地すべり変形特性を規制する積雪の作用として, 1) 積雪荷重によるせん断強度の増加, 2) 積雪層のネット効果, 3) 積雪層の長期載荷によるすべり層の圧密化, が考えられた。
研究ノート
  • 森屋 洋, 高橋 明久, 阿部 真郎, 檜垣 大助
    2008 年44 巻6 号 p. 369-376
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2008/12/26
    ジャーナル フリー
    本研究は地すべり移動地塊の三次元的な変形構造を明らかにすることを目的として, 主に東北地方における地すべり事例と既存観測データをもとに検討したものである。その結果, 地すべり移動地塊の変位形状は2つのタイプが認められた。すなわち, すべり面付近の変位量が地表の変位量とほぼ同量のせん断変位を示すタイプと, 水平的には中央が速くサイドで遅く, 鉛直的にはすべり面付近から地表に近づくほど移動が速い, 氷河や土石流などと同様の粘性流動状のタイプである。それらの変位形状の違いは移動体の中の位置や構成物質, および構成物質の破砕・風化程度の違いに関係すると推定された。これらの事実は, 移動地塊の変形を考慮した三次元地すべり安定解析や変形解析に基づく抑止工の設計にとっても重要なデータとなる。
  • 中川 光雄, 山田 正雄
    2008 年44 巻6 号 p. 377-384
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2008/12/26
    ジャーナル フリー
    地すべり現象は, すべり面を挟み移動層 (地すべり土塊) と不動層の間での相対的なずれ運動が継続する現象である。地すべり土塊の移動現象を数値解析により実際的に再現するには, すべり面でのずれ運動, すなわち, 相対変位が大変位となるまで継続する現象を安定してシミュレートできる手法を適用することが有効である。本研究では, 動的陽解法で定式化した有限差分法の地すべり移動解析への適用性について検討した。そして, この手法を, 地すべり崩壊に至った斜面および再滑動型地すべりが発生している斜面に適用し, それぞれの斜面の特徴的な現象をほぼ再現することができた。
  • 樋口 佳意, 藤澤 和範, 藤平 大, 大川 滋, 下村 博之, 坂田 岳生
    2008 年44 巻6 号 p. 385-392
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2008/12/26
    ジャーナル フリー
    地すべり地末端の崩壊によって堆積した土砂は崩壊の拡大を抑えている可能性が大きく, 応急的に土砂を除去する場合でも斜面変動を監視しながら安全に作業する必要がある。また, 監視自体についても再崩落などの二次災害の危険性があるため, 斜面内に立入らずに遠隔から実施する必要がある。このような遠隔からの監視では, 比較的精度が高くプリズムなどの標的を必要としないことから, ノンプリズム型のトータルステーションを用いることが多い。しかしながら, 標的を使用しないため, 計測結果に客観性がない, 視準誤差が大きい, 緊急時にも関わらず夜間に計測できないなどの課題がある。
    このようなことから, 筆者らは, 遠隔から斜面に設置できる標的とその設置方法を開発することにより, 観測機器の機械精度に限りなく近い精度で計測できる技術を確立した。本技術は, 再崩壊や被害の拡大が予想される斜面に遠隔から標的を設置し, その標的をトータルステーションにより視準することで地盤変位を精度良く計測しようとするものである。この標的は反射強度の高いガラスビーズ入りのペイントからなり, これを封入したカプセルをクロスボー (弓) の矢の先端に取り付けて, 安全な位置から崩壊斜面に向けて発射して設置することができる。また, 発射の仰角を制御する架台を利用することにより, 300m離れた目標点でも±30cm程度の精度で設置することが可能である。
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