土木学会論文集E1(舗装工学)
Online ISSN : 2185-6559
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舗装工学論文集第27巻
  • 神下 竜三, 道正 泰弘, 横田 慎也, 長谷川 剛一
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_1-I_9
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     コンクリート塊は主に舗装用として再生路盤材料に使用されているが,今後は再生路盤材料以外の活用方法についても幅広く求められる.本研究では,固化材も含めたすべての材料を副産物とした100%リサイクル安定処理路盤材,並びに100%リサイクルコンクリートについて,舗装材料への適用を目指して,強度特性,環境負荷低減効果,環境安全性を評価した.その結果,100%リサイクル安定処理路盤材と100%リサイクルコンクリートが舗装材料として適用できる可能性があること,さらに両材料のCO2排出量は従来材料に対して大幅に少なく,環境負荷低減効果も併せ持つことを確認した.

  • 福山 菜美, 佐々木 厳, 新田 弘之
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_10-I_17
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     アスファルトの劣化の評価および改質材の有無の判定として,赤外分光分析は有効な手段の一つである.特に,アスファルト混合物を直接赤外分光分析できれば操作が簡便になり活用範囲が広がる.しかし,混合物中の石粉や骨材の阻害を受けるため,アスファルトのみの測定と同様の結果が得られない状況である.そこで本研究では,石粉や骨材が混在する混合物などのアスファルト試料を簡便に測定するため,試料から阻害物質を除去する前処理方法を検討した.その結果,石粉や骨材の混在率を一定量以下にすることでアスファルト由来のスペクトル帯との重畳が抑えられること,また7~0.2µm程度の粒子保持能の入手の容易なフィルタを用いることで,阻害物質の除去が可能であることが分かった.

  • 赤津 憲吾, 加納 孝志, 八木 正輝, 加納 陽輔, 秋葉 正一
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_18-I_24
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     近年,アスファルト舗装発生材の持続的な循環利用技術の開発は急務となっており,様々な研究がおこなわれている.著者らは,高温高圧水の有する有機物への溶媒性能および分解性能に着目し,350°Cの高温高圧水を用いた水熱分解法による劣化アスファルトの性状回復技術の開発を行っている.本研究では,水熱分解法の劣化と再生を複数回繰返した劣化アスファルトへの適応性を確認した.その結果,水熱分解法により回復したアスファルトは,従来の再生方法と比較して伸度の回復が大きく,高分子成分が減少することを明らかにした.また,水熱分解後のアスファルトを配合したアスファルト混合物は再生加熱アスファルト混合物の圧裂係数による品質目標値を満足すること明らかにした.

  • 佐々木 亮太, 永原 篤
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_25-I_30
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     アスファルト舗装の長寿命化を達成するためには,路盤や路床に永久変形を生じさせないこと,雨水等の浸入,滞水対策を行うことが重要である.一般に,路盤の表面を安定化させ,路盤内部への水の浸透を防止するなど路盤を健全に保つことを目的として,プライムコートが施工される.しかし,プライムコートの有する様々な路盤保護効果を定量的に評価する室内試験方法は存在しないのが現状である.そこで,路盤の永久変形の抑制と雨水の滞水時の耐久性向上といった舗装の長寿命化に寄与するプライムコートの室内性能評価方法を考案した.本検討を通じて,路盤を長期的に保護するために必要な乳剤の性能が浸透性,耐水性,低針入度アスファルトの使用であることを見出した.

  • 柏木 啓孝, 垣内 宏樹, 白井 英治
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_31-I_40
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     近年廃棄プラスチックの増加および流出に伴う環境汚染が社会問題となっており,その有効なリサイクル手法のひとつとしてアスファルト舗装への適用が注目されている.本検討では主要廃プラの一つであるものの,極めて高い融点と低いアスファルト親和性によりアスファルト舗装への適用方法が限られていたポリエチレンテレフタレート(PET)に着目し,アスファルト改質材として廃PETをアップサイクルする検討に着手した.検討の結果,廃PETを特定のアルコールおよびカルボン酸と化学反応させて分子構造を最適化することで,作業温度で速やかに溶融しつつ良好なアスファルト親和性を有するポリエステル系改質材を開発した.本改質材を適用した混合物では耐水性・耐油性・耐流動性等の向上が確認され,従来の廃PET適用手法に対して優れた性能を付与できることが示唆されたものの,実用化には新たなる評価法の開発などの課題が明確となった.

  • 山中 光一, 峯岸 邦夫, 柳沼 宏始, 小野 敏孝
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_41-I_50
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     ILブロック舗装の敷砂に天然砂(良質な砂),目地砂に珪砂等が用いられる.良質な天然砂等は高価であることから,同等の性能を有した天然砂に代わる材料を用いることでコスト削減に寄与できると考えられる.そこで,天然砂の代わりに家庭ごみを焼却して生成される溶融スラグに着目し,室内試験による材料特性の把握,実施工による現場試験の結果から適用性について検討を行った.その結果,敷砂では天然砂と同等の細粒化に対する抵抗性,目地砂としては珪砂以上のかみ合わせ効果が得られた.また,実施工した試験舗装に対する3年間の路面性状および支持力特性の調査結果から,溶融スラグを敷砂,目地砂に用いた場合でも天然砂と同等以上の性能を発揮できる可能性が示された.

  • 上野 千草, 松本 第佑, 丸山 記美雄
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_51-I_57
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     我が国におけるアスファルト再生骨材のアスファルト混合物への利用は1980年代から本格的に行われており,改質アスファルト混合物へのアスファルト再生骨材の利用についても検討および適用が進められてきている.しかしながら,積雪寒冷地における再生改質アスファルト混合物の長期的な供用性状の検証はなされていないのが実態である.本研究では,2001年度に国道上で再生改質アスファルト混合物の試験施工を実施し,舗設時から供用20年後まで供用性状を調査した.またコア採取を行い,ひび割れの進行方向について検討した.この結果,再生骨材の配合率が高いほど,供用により冬期の摩耗等や路面側からのひび割れが生じやすい傾向にあることが明らかとなった.

  • 掛札 さくら, 川上 篤史, 藪 雅行, 新田 弘之, 山本 富業
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_58-I_63
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     アスファルトコンクリート再生骨材は,場所や地域によっては複数回利用されており,その品質の低下が懸念されている.筆者らは,室内で劣化と再生を繰り返した再生アスファルト混合物や,アスファルト混合所で使用されている再生骨材を用いた再生アスファルト混合物の性状評価を室内試験により行ってきた.その結果,再生用添加剤の成分差異や,再生骨材配合率,旧アスファルト針入度が,再生アスファルト混合物のひび割れ抵抗性に及ぼす影響について知見を得ている.本研究では,実大試験工区を構築し,荷重車による促進載荷試験を行いひび割れ抵抗性の検証を行った.その結果,再生混合物のひび割れ抵抗性は,室内試験と同様に,添加剤の成分や再生骨材配合率に影響を受け,高温カンタブロ損失率等により評価可能であることを確認した.

  • 今井 宏樹, 高橋 修, 中西 弘光
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_64-I_74
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     供用中のアスファルトコンクリート(アスコン)層は,酸化や紫外線等により劣化している.このようなアスコンの疲労ダメージ状態を評価するには,実舗装から採取した切取コアの供試体を用いた疲労試験を行う必要がある.本研究では,実舗装から採取した切取コア供試体と室内で作製した熱劣化アスコン供試体に対して繰返し圧縮引張試験を行い,結果として得られる各種の粘弾性パラメータと疲労破壊回数の関係について検討した.その結果,アスコンの疲労ダメージの蓄積状態は繰返し載荷過程における位相角の変化と密接な関係があり,粘弾性パラメータとして単位位相角変化量を導入することで,疲労ダメージの蓄積のし易さを評価できることがわかった.

  • 呉 悦樵, 瀬尾 彰
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_75-I_83
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     近年,空港,高速道路ならびに国道の開削調査等により,舗装の損傷における水の影響が明らかになってきた.舗装の長寿命化を実現するには,水が介在することで生じる損傷の過程を正しく理解することが大きな意味を持つ.そのためには,室内評価において,供用中の道路で実際に観測されるような損傷を再現でき,加えて耐水性能の異なるアスファルト混合物に対して,その性能差を有意に比較検討できる評価方法を獲得することが重要と考える.本検討では,既往研究で究明したアスファルトの骨材からの剥離メカニズムを踏まえ,国内・海外の試験法を参考に新たに開発した,改質アスファルト混合物の新たな耐水性評価法を提案し,さらに試験精度を高める手法も検討した.

  • 岡本 信也, 齋藤 佑太, 山本 貴士, 前川 敬彦
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_84-I_91
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     ある道路トンネル内に使われているプレストレストコンクリート舗装(以下,PC舗装)において,縦断方向及び横断方向のひび割れが確認された.現地調査の結果,大きなひび割れが発生している箇所では,PC鋼材の破断や,たわみが大きな箇所では,PC舗装版と路盤の間に空洞の確認もされた.

     そこで,それら2つの要因が,PC舗装のたわみにどのように影響を及ぼしているかを把握するために3次元非線形FEMによる解析的検証を実施した.解析の結果,空洞の大きさの方が,プレストレス減少よりも,たわみに与える影響が大きいことが分かった.加えて,空洞が生じると,PC舗装のみで荷重に抵抗する梁形式に近い耐荷機構に変化すること,さらに,舗装表面に負曲げが生じる可能性があることが分かった.

  • 上野 千草, 松本 第佑, 丸山 記美雄
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_92-I_99
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     コンクリート舗装はアスファルト舗装よりもわだち掘れやひび割れに対する耐久性が高く,舗装の長寿命化が期待される.しかしながら,寒冷地では凍上対策を確実に実施されない場合,早期に破損が生じることが知られている.本研究では,既設アスファルト舗装をコンクリート舗装へ打ち換える場合の凍上対策として,XPS(押出法ポリスチレンフォーム断熱材)を用いた断熱工法の適用性を試験施工により検討した.断熱材の保護および路盤の品質確保のため必要となる路盤厚さの検討,断熱材の耐力照査,および熱伝導解析による断熱効果のシュミレーション結果に基づいて試験施工を実施した結果,良好な施工が可能であること,路床の支持力低下が懸念される融解期においても通常期と同等の支持力が得られること,期待される断熱効果が得られることが明らかとなった.

  • 川名 太, 河野 亜沙子, 竹内 康
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_100-I_108
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     本研究では,モンテカルロシミュレーションを用いて,設計変数のばらつきがアスファルト混合物層下面に生じる水平ひずみおよび路床上面に生じる鉛直ひずみの算定結果に与える影響を評価した.その結果,アスファルト混合物層下面の水平ひずみのばらつきは,アスファルト混合物層と路盤の弾性係数およびアスファルト混合物層の層厚の影響を,路床上面の鉛直ひずみのばらつきは,舗装各層の層厚および路床の弾性係数とポアソン比の影響を強く受けることがわかった.また,舗装厚が厚い場合,各設計変数の変動係数が与えられれば,舗装構造および弾性係数によらず,ひずみの変動係数が概ね一定値になることが確認された.一方で,舗装厚が薄い場合にはひずみのばらつきが大きく,弾性係数や舗装構造に応じて変動係数が大きく変化することがわかった.

  • 光谷 修平, 横山 昂洋, 松下 陽哉, 西澤 辰男
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_109-I_116
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     複層型プレキャストコンクリート舗装は,コンクリート版を上下2層で千鳥に組み合わせる新たな構造の舗装体である.隣同士のコンクリート版を連結しないので取り外しが容易である.1層構造のプレキャストコンクリート舗装の力学特性については研究がなされている.しかし2層を千鳥に組み合わせる構造の力学特性に関する研究は見当たらない.そこでFWDによる試験ヤードのたわみ実測値でパラメータを同定し,力学特性を3DFEMで検討した.また輪荷重走行試験で構造体のひずみやひび割れを観測した.その結果,上下2層間の隙間に留意を要することが判った.

  • 橘 奎伍, 松岡 龍祐, 髙橋 清, 富山 和也, 萩原 亨
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_117-I_126
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     我が国では,COVID-19の流行により都市内交通における自転車需要が増加しており,走行している車種も多様である.そこで本研究では,汎用的な自転車振動モデルの開発と評価指標構築を目的に,多様な自転車を用いて自転車加振実験と自転車体感評価実験を行った.その結果,多様な車種の振動特性を把握,汎用的な自転車振動モデルを開発し,開発したモデルを基に算出される自転車からみた路面評価指標の実路面への適用性を検証したところ,構築した指標は多様な車種の乗り心地評価と高い相関を持ち,多様な車種で実路面を走行した場合でも自転車の乗り心地を反映できることが明らかとなった.

  • 西海 隼人, 富山 和也, 幸谷 宥毅, 佐々木 賢一郎, 山口 雄希, 森石 一志
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_127-I_134
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     電動キックボードは近年世界各国で急速に普及が進んでいる2輪立ち乗りであるマイクロモビリティであり,既存のモビリティと比べタイヤ径が約10インチと小さく舗装路面の影響を受けやすいと考えられる.本研究では電動キックボードでの走行実験について,路面性状計測を行い振動加速度と路面性状との関係を車両と路面の相互作用の点から分析した.既存の路面評価ではラフネス波長を対象とした国際ラフネス指数IRIで評価されることが多いが,電動キックボード固有の振動領域はラフネス波長よりも短いメガテクスチャに対して感度が高いことを明らかにした.このことから,電動キックボードを対象とした路面評価を行う際にはIRIに変わる新たな指標が必要であることがわかった.

  • 稲木 万玲, 富山 和也, 小濱 諒, 江口 利幸, 佐藤 正和
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_135-I_143
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     近年,高速道路の路面において,現行の管理基準以下で発生する局部的な変状が,走行車両の快適性を低下させる要因として問題となっている.本研究は,現行の管理基準では評価が困難であり道路利用者の精神的ストレスの原因となる路面特性について,心拍変動および皮膚電気活動に着目し,ドライビングシミュレータによる走行試験を実施することで,人間中心の走行路面評価について検討を行ったものである.その結果,局部的な平たん性の低下がストレス感度に影響を及ぼすことが示唆され,また,ストレスの原因となる路面の波長特性を明らかにしたことで,現行管理指標のもつ波長応答が原因となり,利用者の快適性と管理基準の間に乖離が生じていることが示された.

  • 前嶌 大輝, 中島 伸一郎, 池田 茜
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_144-I_151
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     着地衝撃は長距離ランナーの疲労や傷害を左右する重要な問題である.本研究では,シューズソール内部に小型のワイヤレス9軸モーションセンサを内蔵することにより,ランナー走行時の着地衝撃加速度を計測した.複数の被験者によるランニングマシンを用いた室内走行実験では,加速度波形と走動作動画を同期させることで,着陸,全面着地,離陸,引付けの4動作と加速度波形の変動とを対応づけることができた.被験者による差が最も顕著にあらわれたのは,鉛直方向・前後方向ともに,シューズ全面着地時に発生する鋭いピーク加速度の大きさであった.4種類の路面素材で実施した屋外走行実験の結果,足首で計測した加速度のうち,前後方向成分には,路面素材に応じた差が明確に現れ,被験者によらず同様の傾向を示すことが明らかとなった.

  • 富山 和也, 幸谷 宥毅, 鈴木 啓祐, 山口 雄希, 森石 一志
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_152-I_163
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     近年,地域を豊かにする道路空間構築のため,誰もが安心して快適に利用できる歩行空間の整備が求められている.本研究は,歩行空間において地上型レーザースキャナにより得られた三次元点群データをもとに,指向性を有する多重解像度解析が可能なDual-tree複素数ウェーブレット変換による路面特性評価について検討したものである.その結果,歩行空間において代表的な路面特性は,波状特性の観点から特定の波長範囲に分布し指向性を有することが明らかとなった.また,歩行空間路面の三次元点群データに対し,Dual-tree複素数ウェーブレット変換による指向性多重解像度解析を適用することで,路面の変状箇所とその範囲を明確化することが可能となり,維持修繕区間の合理的な決定につながることを示した.

  • 幸谷 宥毅, 富山 和也, 佐々木 賢一郎, 西海 隼人, 山口 雄希, 森石 一志
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_164-I_170
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     近年,誰もが安心して利用できる歩行空間の環境整備が重要になっている.歩行空間の維持管理上の路面評価の課題は,自動車の進入ができず路面性状測定車の適用が困難なため,主観的評価が主流である.国際ラフネス指数(IRI)は自動車を対象としたモデルに基づき算出されるため,歩行空間の路面評価では自動車と異なる評価指標も必要である.本研究では,電動車いすを用いた走行試験を実施し,走行時の乗り心地に関連した振動応答を明らかにした.また,歩行空間を対象とした新たな路面調査手法として開発した三次元点群計測システムを用いて,パーソナルモビリティの振動応答を考慮した路面評価の精度検証を行った.結果,高さ方向の計測や平たん性評価では高い精度で路面を取得できることが確認された.

  • 今井 龍一, 中村 健二, 山本 雄平, 塚田 義典, 野崎 琉加
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_171-I_181
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     道路管理者は舗装を日常的に点検しているものの,修繕の要否は点検者の経験知に頼らざるを得ず,熟練者の不足から点検作業の効率化が喫緊の課題となっている.この解決策として,既往研究では,車の走行位置や加速度を収録したプローブデータの活用により,走行時における舗装の損傷を判定している.他方,日常点検と同時にプローブデータを収集できれば,損傷判定により損傷箇所を抽出したうえで,複数の時期のデータの推移を分析し損傷の進行状況を把握できるほか,今後の損傷予測にも繋がる.

     本研究では,損傷箇所の抽出および損傷予測に,時系列データの分類と予測を得意とするLSTMの適用を試行する.その第一歩として,LSTMによる舗装の損傷判定モデルを構築した結果,損傷箇所の抽出率が8割程度である有用性が確認できた.

  • 佐野 実可子, 亀山 修一, 松井 晋, 櫻庭 晃, 小野寺 晃
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_182-I_190
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     積雪寒冷地である北海道では,舗装の老朽化が原因で,融雪期になると路面にポットホールが多発し,大きな社会問題となることがある.本研究では,Mobile Mapping Systemで取得された舗装路面の点群データから,まず,補修段階に至る前の軽度のポットホールが発生している箇所の標高値の特徴を明らかにし,次に,雨水や融雪水などの路面上の流水と滞水の傾向を推定し,これと軽度のポットホールの位置を照合することでポットホールの進行危険度を5段階で評価した.さらに,この方法を北海道と長野県の国道で計測されたMMSデータに適用し,舗装の予防保全型維持管理が可能になることを示した.

  • 浅田 拓海, 布広 祥平, 後藤 宏行, 城本 政一, 亀山 修一
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_191-I_199
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     我が国では,舗装点検の効率化が積極的に進められており,IRIの測定については,簡易な加速度センサーとAIの導入が進んでいる.本研究では,市販のアクションカメラから得られる路面画像,上下振動加速度,走行速度を入力とするマルチモーダルAIを用いた低コストで簡易なIRI測定技術を開発した.まず,Elastic Netを用いたIRI推定モデルを構築し,画像から得られるひび割れ率が推定精度の向上に寄与することを明らかにした.本技術の検証試験では,検出率(区分II以上)と的中率(区分II以上)は最高ランクのA,的中率(区分III)はランクBが得られた.検出率(区分III)はランクCとなったものの,精度向上策として,正解データの追加に加え,SMOGNを用いたデータ拡張が有効であることを示した.

  • 中村 和博, 松本 大二郎, 小濱 健吾, 川本 熙鷹, 貝戸 清之
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_200-I_210
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     老朽化が進行する高速道路において,安全で快適な舗装路面の提供を実現するためには,各種モニタリング情報を有効活用し,長寿命化が可能となる効率的な舗装修繕施策を立案しなければならない.舗装路面のモニタリングは,日常点検と路面性状調査に大別され,それぞれデータは別々のシステムで管理されており,日常点検の情報が修繕計画に十分に活用されていないのが現状である.そこで本研究では,日常点検・路面性状調査結果と舗装建設時の情報を,路線・キロポストといった位置情報を介して連携させた分析を実施する.その分析を通じ,路面から得られる情報を用いて舗装深層部の損傷状況を定量的に評価する方法を検討し,劣化状態に応じた修繕施策の策定手法や,アスファルト層厚の重要性を踏まえた修繕サイクルの長期化への方向性を考察する.

  • 長屋 弘司, 浅田 拓海, 亀山 修一
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_211-I_218
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     予算縮減および技術者不足等の厳しい状況の下,道路管理者は維持管理の効率的な実施が求められている.本研究では,先行研究において著者らが開発したAIを用いた舗装の点検および診断システムを北海道内の広範囲に及ぶ路線に適用し,ひび割れの損傷度合いと原因を求めた.その結果,ひび割れ原因の判別が難しいケースの改善点を見出すとともに,北海道内の舗装に生じているひび割れの特徴(損傷度合いと原因)について分析した.さらに,ひび割れの損傷度合いと原因に対応した維持および修繕の工法を仮定し,調査路線に適用した場合の維持修繕費用を推計した.これにより,必要となる維持修繕費用の地域比較(ネットワークレベル)や路線内における比較(プロジェクトレベル)が可能となることを示した.

  • 高橋 貴蔵, 三澤 祥文, 斉藤 成彦
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_219-I_226
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     一部のスラブ軌道のてん充層では凍結融解作用によるものと考えられる凍害が生じている.これまでの調査により凍害を受ける範囲は側面よりも隅角部の周囲で広いことが確認されているものの,原因は十分には明らかにされていなかった.そこで,スラブ軌道の試験体に対する温度変化試験を行い,てん充層内部の温度を測定した結果,隅角部周囲の凍結範囲が側面より広くなることを確認した.有限要素解析を用いた非定常熱伝導解析により試験体の温度変化を再現した結果,スラブ軌道試験体の側面および端面から伝わる温度の影響によって隅角部周囲の凍結範囲が広がることを明らかにした.さらに,スラブ軌道の解析モデルに対する非定常熱伝導解析も実施し,凍害を受ける可能性があるてん充層の範囲を示した.

  • 佐々木 厳, 新田 弘之
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_227-I_231
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     アスファルト舗装は設計要件などから多層で施工される.その層間が剥離すると,破壊が加速し支持力が低下するため重篤な局所破損につながることがある.層間剥離は路面調査から判断することが困難であり,その発見が難しいため調査事例が少なく試験評価方法も明確でない.本報では,実道で生じた層間剥離箇所における詳細調査結果をもとに,当該箇所で試行した各種非破壊試験方法の適用性について報告する.

  • 中村 博康, 亀山 修一, 増戸 洋幸, 櫻庭 晃, 畑山 良二, 富山 和也
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_232-I_239
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     近年,早期に損傷が生じたアスファルト舗装では,再び早期劣化とならないように詳細調査を実施して健全度や損傷を診断し,その結果に基づいて措置を行うことが求められている.しかし,舗装の早期劣化要因は現場によって異なるため詳細調査のマニュアル化は難しい.

     本研究では,供用中の国道の早期劣化区間において詳細調査を実施し,早期劣化要因を明らかにするための詳細調査では,ステップ1「早期劣化要因の仮説の立案」,ステップ2「詳細調査箇所と調査方法の決定」,ステップ3「詳細調査による仮説の検証」,の3つのステップが有効であることを示した.また,詳細調査では,FWD調査,コア採取,開削調査を組み合わせることによって,早期劣化区間で発生した複雑な損傷の原因を究明することができることを示した.

  • 池田 茜, 山中 光一, 竹内 康, 川端 伸一郎, 関根 悦夫
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_240-I_247
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     土木学会 舗装工学委員会 舗装材料小委員会では,路床土の強度・変形特性を検討し,アスファルト舗装の性能照査型設計方法の発展に資するため,一斉試験として砂質土を用いたCBR試験,レジリエントモデュラス試験を実施した.その結果,CBRは同一の乾燥密度におけるCBRのばらつきが大きく,含水比のみならず乾燥密度の影響も大きいことが明らかになった.レジリエントモデュラスはCBR同様に乾燥密度や含水比の影響が大きいことが明らかになった.そして,CBRと弾性係数との関係について,本研究の結果を含めて国内外の研究結果を調査した結果,同一のCBRでも弾性係数は5×CBRから20×CBRの回帰線の範囲内に広く分布しており,CBRが小さい場合は20×CBRの回帰線に近づき,CBRが大きい場合は5×CBRの回帰線に近づく傾向が明らかになった.

  • 上川 一真, 中島 伸一郎
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_248-I_255
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     本研究は透水性舗装に代わる雨水貯留浸透用舗装として,側溝側面から粒状路盤に流入する側面流入型舗装を提案する.この構造は洪水ピーク時のみ選択的に舗装内に雨水を導くものであり,透水性舗装に比べて浸水にともなう舗装の力学耐久性の低下を抑え,確実な洪水ピークカットなどが期待される.本研究では,提案構造の側方流入特性を明らかにするため,ガラスビーズを用いた水理模型実験を作成し,一定流量条件および一定水位条件で流入実験を実施した.実験の結果,路盤への側方流入の速度は,側溝側と路盤側との水位差および開口面積に依存することが明らかとなった.

  • 三宅 佑典, 重廣 和輝, Yanjinlkham CHAGNAADORJ , 中島 伸一郎
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_256-I_263
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     ポンピングによる路盤材の噴出・浸食プロセスを可視化することを目的に小型模型実験を実施している.実験では,粒子レベルで路盤材の動きを自動追跡する動画撮影・解析技術が必要である.そこで本研究では,蛍光塗料による染色粒子とブラックライトを用いて,ポンピング模型実験の動画を撮影し,動画解析に基づいて粒子の挙動を自動追跡する手法を検討した.実験の結果,染色粒子は動画上で十分な輝度を示し,画像解析による自動追跡が可能であることが明らかとなった.ポンピング模型実験において,目地付近直下の路盤内に配置した染色粒子は,輪荷重載荷初期には顕著な沈下挙動を示し,繰返し載荷回数の増加とともに沈下は収束することが明らかとなった.さらに粒子の水平方向の軌跡は,目地方向へと移動することが確認された.

  • 清水 泰成, 越 健太郎, 五艘 隆志
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_264-I_273
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     舗装に関するCO2排出量削減と長寿命化の両方を実現するため,上層路盤用材料としてセメント・アスファルト乳剤安定処理混合物(以下,CAE混合物)に着目し,適用性について評価を行った.

     各種物理的性状試験およびCO2原単位の算出を行った結果,他の上層路盤用材料と比較してCAE混合物が効果的であることが確認された.さらに,CAE混合物の適用拡大を図るため,SWOT分析を用いて課題の抽出を行った.分析結果に基づく課題として,CAE混合物に関する認知度を向上させること,そして製造拠点が不足していることが挙げられた.

     これら課題の解決として,認知度向上については,視覚的に容易に相対比較が可能な二軸グラフ(ポジショニングマップ)による評価手法を,そして製造拠点の整備については,既存の類似設備を有効活用する方法について示した.

  • 菅原 正則, 松田 圭大, 木幡 行宏, 畑山 良二, 川端 伸一郎
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_274-I_282
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     ガラス発泡軽量材は廃ガラスを原料とするリサイクル軽量材である.寒冷地においてガラス発泡軽量材を地盤材料として使用する際は,凍上性や凍結融解抵抗性の確認が必要であるが,それらを検討した事例は非常に少ない.本研究は,ガラス発泡軽量材に対して凍上試験や熱伝導解析を行い寒冷地での適用性を検討したものである.軽量材は,非凍上性材料であり,凍結融解後のCBR値の低下もみられない良質な材料であった.また,粒子内に多くの間隙が存在することが確認され,その効果により一般的な砕石と比較して優位な熱的性質であることを示した.さらに,車道舗装の凍上抑制層や路盤に軽量材を用いたモデルを作成し,凍結深さの抑制効果を熱伝導解析によって明らかにした.

  • 森 重和, 角 裕介, 曽我 恭匡, 立花 徳啓
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_283-I_289
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     道路橋床版防水便覧では降雨直後やコンクリート床版打設後2週間以内は,残存水分による接着力低下を懸念し,床版防水層を実施しないようにとの記述がある.しかし,阪神高速道路で実施している大規模修繕工事を対象とした場合,水分量を低下させるために2週間の工程を確保することは現実的ではない.そこで,本稿では,修繕工事における品質確保を目的として,数種類の素地調整方法を試行した模擬コンクリート床版を用いて,床版の凹凸の程度(表面粗さ)が床版水分量の経時変化へ与える影響を確認するとともに,供試体を用いた付着性試験より,床版の表面粗さと水分量が防水層の性能へ与える影響について評価した.

  • 立花 徳啓, 森 重和, 角 裕介, 曽我 恭匡
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_290-I_297
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     道路橋コンクリート床版の長期耐久性を確保するため,床版防水層を設ける必要があるが,雨水等の水分が床版へ浸透するのを防止する床版防水層の性能は,下地となるコンクリート床版上面のきめ深さに影響を受けると考えられている.阪神高速道路では,床版の不陸等により舗装補修工事の切削時に部分的に過切削となり,床版表面に凹凸が発生しているのが現状である.この凹凸により床版防水層の膜厚が一部薄くなる部分が生じることで十分な防水性能を確保できない可能性がある.本検討では,膜厚を確保する観点で床版上面のきめ深さの基準値を設定するため,舗装切削後に各種素地調整を実施した際の床版上面のきめ深さとそれぞれに対しアスファルト塗膜防水材を塗布した際の膜厚の関係を検討した結果について報告する.

  • 永塚 竜也, 樋口 勇輝, 斎藤 優佑, 前島 拓, 岩城 一郎
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_298-I_308
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     筆者らは,床版防水層(以下,防水層)とコンクリート表面の接着性に関する不具合を低減するために,緻密性と水分量に着目したコンクリート表面の評価手法を検討した.具体的にはコンクリートの細孔構造と含水状態を変えた供試体を作製し,透気試験と新たに考案したアスファルトの流し込み試験により,コンクリートの表面性状を評価した.さらに,コンクリートの表面性状が防水層の性能に及ぼす影響を確認するため,防水層の引張接着試験と膨れ抵抗性試験を実施した.その結果,透気係数が大きくアスファルトの流し込み試験による膨れ個数が多い場合には,コンクリートと防水層の引張接着強度が低下し,防水層の貫通孔や膨れの発生リスクが高まることを示した.加えて,コンクリートの適切な養生により緻密性を高めることで,防水層の不具合が低減する可能性を示した.

  • 麻上 淳平, 設楽 直柔, 平戸 利明
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_309-I_315
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     コンクリート床版において防水機能の向上および規制時間の短縮を目的に,不透水層が厚く防水工を省略できるグースアスファルト舗装の適用が検討されている.しかし,同舗装は特殊施工機械が必要であり汎用性が低い.そこで一般的な舗装機械の使用を前提に,床版に塗布した樹脂防水材をアスファルト混合物の熱によって溶融させ,アスファルト混合物に浸透・充填させることで,防水性能の高いアスファルト舗装を構築する工法を開発した.本報では本工法の空隙率と透水性状について,アスファルト系塗膜防水材,グースアスファルト混合物と比較検証を行った.その結果,本工法の樹脂防水材の最適塗布量は2.0kg/m2であり,このとき床版上面から20mmにおけるアスファルト混合物の空隙率がグースアスファルト混合物以下の1.0%にまで低下することを明らかにした.

  • 角 裕介, 齋藤 佑太, 曽我 恭匡, 森 重和
    2023 年 78 巻 2 号 p. I_316-I_323
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

     阪神高速道路は路線全体の8割が高架橋であり,特に湾岸線では鋼床版構造が多く採用されている.鋼床版上舗装の基層には,たわみ追従性が高く,かつ流し込み施工が可能で,床版上の凹凸部へ容易に充填できるグースアスファルト混合物が従来から使用されてきた.近年,道路舗装各社において,従来のグースアスファルト混合物と比較して高耐久で低臭気なグースアスファルト混合物が開発され,実用化に向けた取り組みがなされている.本稿では,阪神高速における鋼床版上舗装の長寿命化を目指し,高耐久グースアスファルト混合物の性能規定化を目的として,鋼床版上舗装の基層に求める性能を評価する各種試験を実施したので報告する.

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