土木学会論文集A1(構造・地震工学)
Online ISSN : 2185-4653
ISSN-L : 2185-4653
70 巻, 4 号
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地震工学論文集第33巻(論文)
  • 上田 恭平, 井澤 淳, 室野 剛隆, 井合 進
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_578-I_585
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     2011年東北地方太平洋沖地震において甚大な液状化が生じた浦安市の地盤モデルを対象に,長継続時間地震動を受ける地盤の液状化に及ぼす透水性および余震の影響を調べるため,間隙水の移流を考慮した有効応力解析を実施した.解析の結果,1) 透水性の良いきれいな礫から成る地盤を除き,長継続時間地震動であっても少なくとも振動中は地盤の液状化に及ぼす透水性の影響は顕著でないこと,2) 余震のみ(45gal程度)が作用した場合には液状化が発生しないのに対し,本震後において0.5程度の過剰間隙水圧比が残っている状態で余震が作用した場合には,再液状化が発生する可能性が高まるとともに,最終的な沈下量の増大に及ぼす余震の影響が無視できないこと,などがわかった.
  • Adnan Mahmood DAR, Saleem M. UMAIR, Muneyoshi NUMADA, Kimiro MEGURO
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_586-I_595
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     Masonry construction is a very attractive and popular construction in different continents of the world. The risks associated with unreinforced masonry (URM) constructions are vulnerable to the earthquake. The numbers of casualties related to masonry constructions were always reported in the past earthquakes. It is important to use the cheap and locally available material to enhance seismic performance of masonry structures. Polypropylene band (PP-band) retrofitting has been proposed as the retrofitting method for masonry structures in many under developing countries. For this method, the PP-band is connected at every intersections of the mesh on the masonry wall. If we can reduce the number of connecting points of PP-band mesh, this method will be more effective. In this paper, we have tested the effects of reduced numbers of connecting points of PP-band mesh by 1/4 scale-models on shake table test. The fully connected (PPF) and the non-connected cases (PPN) were compared. The PPN model showed the effectiveness as for the retrofitting method.
  • 金井 純子, 中野 晋
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_596-I_604
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     2013年4月13日5時33分頃に発生したM6.3の淡路島地震では,住家被害と共に商業施設でも被害が発生した.南海トラフ地震に備えた商業施設の防災対策の向上を目的として,淡路島内の総合スーパーなど33店を対象に,被害状況と災害対応について調査した.その結果,8割以上の店舗で内装材等の被害が発生し,3割の店で営業開始時間が遅延したことが分かった.また,大型店舗で顕著であったガラス防煙垂れ壁の被害に注目し,洲本市と南あわじ市の4つの店で常時微動観測データをもとに地震動特性の推定を行った結果,南あわじ市の2つの店では強震動観測値よりも大きな地震動が発生しており,また,いずれの店舗でも非構造部材が壊れやすい0.3~0.5sの応答加速度が卓越していた.過去の地震災害においても,ガラス防煙垂れ壁を含む非構造部材の耐震化は課題とされてきたが,商業施設では経費面などの理由からあまり進んでいないのが現状である.本調査結果から,地盤や建物特性によって局所的に被害が増大する場合があることが分かったため,被害が増幅する可能性がある施設を調べ,それらには優先的に対策を行うことが有効である.一方,東日本大震災では,被害を受けながらも一時避難所や物資供給を行った大型ショッピングセンターもあり,地域における商業施設の役割が再認識された.淡路島地震のような中規模地震においては,落下物などで負傷者を出さない対策が最優先であるが,大規模地震では,従業員と顧客の生命の安全確保に加えて,早期に営業を再開させることや,地域貢献も求められる.
  • 阿部 孝章, 佐藤 好茂, 吉川 泰弘, 伊藤 丹, 大槻 敏行, 加納 浩生
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_605-I_615
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     本研究は津波遡上域に設置された河川管理施設への波圧を評価する手法を提案するものである.2011年東北地方太平洋沖地震津波は北海道の1級河川10河川に遡上した.新釧路川では遡上した津波が樋門ゲートに衝突する映像が捉えられた.本研究は,河川津波と樋門ゲートのような河川管理施設の相互作用解析のために2次元粒子法に基づくモデルを構築することを目的としている.著者らが利用する手法は2次元Moving ParticleSemi-implicit (MPS)法に基づくものであり,これは自由水面を持つ非圧縮性流れの計算のために提案された手法である.3種の数値実験,すなわち静水圧,ダム崩壊流れによる衝撃力,激しいスロッシング問題に適用することでコードの妥当性を検証し,水の大変形や分裂が伴う流れ解析への適用性を示した.その後,波の特性と河川管理施設への最大作用波圧の検討を行うため,本手法を樋門への津波侵入シミュレーションに適用した.
  • 庄司 学, 清水 裕文, 水野 魁人, 藤間 功司, 鴫原 良典
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_616-I_627
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     砕波段波及びドライベッド上の遡上波を模擬した水理実験に基づき,津波作用の指標である水位,水面上昇速度,津波流速及び波速の4つのパラメータの観点から橋桁に作用する津波波力に関する分析を行った.砕波段波,ドライベッド上の遡上波ともに,水平波圧に関しては,フルード数及び波速の変化に対する水平波圧の上昇及び下降の感度が水位及び水面上昇速度の変化に対する感度よりも相対的に高い.鉛直波圧に関しては,砕波段波,ドライベッド上の遡上波ともに,水位の変化に対する鉛直波圧の上昇及び下降の感度が,他の3つのパラメータの変化に対する感度よりも卓越する.さらに,ドライベッド上の遡上波においては,水面上昇速度の変化に対する感度も同様に高い.
  • 安井 譲, 西川 隼人, 前田 寿朗, 長 郁夫, 小嶋 啓介, 纐纈 一起, 宮島 昌克
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_628-I_643
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     近年,地震による地盤の揺れを拡散波動場と仮定することにより,地震動H/Vスペクトルは水平と上下の一次元の波動伝達関数の比に基盤の速度比により定まる係数を乗じて求められるとする計算式が誘導された.この計算式を用いれば,地震動H/Vスペクトルの観測値を一次元の成層地盤の伝達関数で同定することにより,S波とP波の速度構造と減衰特性を同時に逆算することが可能である.ところが,地震動H/Vスペクトルの同定の試みは始まったばかりで事例が少なく,同定結果の妥当性の吟味など基礎的な検討も十分に行われているとは言えない状況である.そこで,著者らがその地盤構造を検証したことがある福井地域のKiK-netの観測地点を対象として地震動H/Vスペクトルの同定計算を行ってその方法の適用性について考察することとした.考察は,地中に対する地表のスペクトル比の計算値と観測値との比較,および地震基盤に対する地表面のスペクトル比の計算値とサイト増幅特性との照応等によりおこなった.その結果,地震動H/Vスペクトルのみの同定で概して妥当な地盤構造を逆算できることが確認された.一方,散乱減衰を感知できない場合もあったことから地中に対する地表のスペクトル比を参照することも必要であるとも言える.また,サイト増幅特性との照応は一次元伝達関数近似の妥当性の検討に有効であること,さらには地表面近くのP波構造を検証することの重要性などが確認された.
  • 坂井 公俊, 室野 剛隆
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_644-I_653
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     大規模地震発生後には比較的規模の大きな余震が発生するが,これを直接設計で考慮するという取り組みはこれまでほとんど実施されていない.本検討では過去に発生した大規模地震とそれに伴う余震のデータを整理し,統計処理することにより,構造物の性能照査時に考慮すべき余震の発生パターンを提案した.これにより本震発生後,ある日数以内に想定される平均的な余震の規模と回数などを予測することが可能となる.提案した余震の発生パターンに基づき本震・余震の地震動群のシミュレーション,構造物への影響評価の試算を実施した.その結果,余震の発生位置や構造物の振動特性によって構造物の損傷が進行する場合があるものの,その影響は限定的であることを確認した.
  • 杉岡 弘一, 林 訓裕, 鈴木 直人
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_654-I_663
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     長大橋のレベル2地震動に対する耐震性能向上対策として,制震・免震設計法の適用が増加してきている.ここでは,せん断パネルダンパーに着目し,その可動支承部および固定支承部への配置ケースと地震応答の低減効果との関係を長大鋼中路アーチ橋に対する非線形時刻歴応答解析の実施を通して検証した.その結果,せん断パネルダンパーの配置および降伏耐力の最適化によって,支承や上部構造鋼部材,橋脚に対する地震応答の低減効果が変化することが明らかになり,耐震性能向上対策におけるせん断パネルダンパーの適用効果を示した.固定支承部におけるせん断パネルダンパーの配置に際しては,固定支承の可動化を必要としない構造を提案し,その有効性を検証した.
  • 湯山 安由美, 梶谷 義雄
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_664-I_677
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     2011年東日本大震災では,地震動,津波,また液状化や地盤沈下等の複合的な要因により,太平洋岸を中心として19の火力発電所で計40ユニットが停止又は被災した.本研究では,火力発電所立地地点での外力の強さ,発電所設備の被害,停止日数等を整理したデータベースを構築し,その統計分析に基づいて,地震動及び津波に対する個別設備のフラジリティ曲線,機能停止の有無に着目した発電所施設のフラジリティ曲線,そして設備被害の発生状況をパラメータとした発電機能の停止期間予測式を推計した.これらの情報は,大規模地震災害時における火力発電所の被害想定や防災対策の立案に活用することができる.
  • 鈴木 崇伸
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_678-I_687
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     本論文は地中構造物の非線形な変形特性の影響を簡易に評価する計算法についてまとめている.近年では地中構造物が大きく変形する場合の地震応答を低減するために非線形部材を組み込む研究が進められている.そのときに応答変位法のように単純化した条件で性能評価する方法を提案している.ひとつは静的解析であり,外力を漸増させ,逐次つり合い方程式を解くことにより,非線形応答の結果が得られることを示している.また非線形な変形特性をバネとダッシュポットを用いた複素数バネで近似することにより,繰り返しのある外力に対する応答を計算する方法を示している.正弦波外力を与えた場合について解析例を示しているが,非線形特性と応答の最大値の関係は簡単な解析により追跡することが可能であり,パラメータ分析に応用することができる.
  • 小林 將志, 篠田 健次, 水野 光一朗, 野澤 伸一郎, 石橋 忠良
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_688-I_700
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     東北新幹線は2011年に発生した東北地方太平洋沖地震を受けて,鉄筋コンクリートラーメン高架橋の数箇所で,一部の柱部材に大きな損傷を生じた.本論文では,RCラーメン高架橋の損傷メカニズムを明らかにすることを目的に,比較的大きな損傷を受けたRCラーメン高架橋の耐震性能と損傷度の関係を分析した.その結果,柱部材の耐震性能が低いものほど損傷を受けやすいことを示すとともに,一部の柱部材が大きく損傷した構造物に対して損傷分析と再現解析を行うことにより損傷過程を推察し,大きく損傷した構造物が平面的な回転モードの地震応答を受けた可能性があることを示した.
  • 伊藤 陽, 石田 直之, 瀬川 信博, 栗林 健太郎, 鈴木 崇伸
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_701-I_709
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     NTTの通信ネットワークを構成する要素に,河川を横断する手段としての専用橋がある.同設備はケーブルが集中するネットワーク上の要所であり,これまで耐震対策を講じてきた.しかし専用橋の中には旧標準の鋼管同士を平鋼で結束させた特殊な形式があり,この耐震性は十分検討されていなかった.そこでネットワークの信頼性を向上するために,数多くある特殊な専用橋の中から特に地震時に被災する可能性のあるものを把握する手法を検討した.まず地震動によって被災が発生する条件を把握するために,複雑な構造を持つ同設備の振動特性を計測により把握した.この計測を基に動的解析を行い,さらに動的解析結果を表すことができる簡易な回転バネの梁モデルを検討した.これにより,橋長および条数から被災し得る橋をスクリーニングする手法を得た.
  • 大原 美保
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_710-I_717
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     我が国は現在人口減少過程にあり,今後の津波対策においては,短期的視点のみならず,長期的視点からの人口減少も踏まえた対策検討が求められる.本研究では,南海トラフ沿岸域を対象として,将来的な人口変動を考慮した上で,今後あるべき減災戦略の検討を行った.まず初めにこれらの地域における津波避難場所・津波避難ビル等の指定状況を把握した.次に,内閣府被害想定による想定津波浸水域において,コーホート変化率法を用いたメッシュごとの将来的な人口変動の推計を行った.この結果,想定津波浸水域の広い地域で,将来的に人口減少および高齢化が進展すると推計された.また,将来的な人口減少率と浸水リスクがともに高い市町村をいくつか抽出した.長期的な人口減少を考慮した場合,これらの地域は,土地利用転換等の長期的な減災対策を推進するニーズが高い地域であると考えられた.
  • 梶尾 辰史, 片岡 正次郎, 金子 正洋, 谷本 俊輔, 佐々木 哲也
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_718-I_733
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     特殊堤の地震被害のメカニズムを明らかにするために,特殊堤の地震による被災事例を収集し,その被災原因の分析を行い,その結果を基に動的遠心模型実験を実施することで被災メカニズムを整理した.被災事例整理の結果から,被災原因が液状化であると想定でき,液状化層厚2m程度を越えると被害が顕著になることが分かった.この結果を基にモデルケースを決め,模型実験を実施したところ,地震時の液状化による被災メカニズムが明らかとなった.
  • 川西 智浩, 清野 純史, 井澤 淳
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_734-I_741
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     開削トンネルの中柱・中壁がせん断破壊した場合には,兵庫県南部地震における神戸高速鉄道の大開駅のように,トンネル全体が崩壊し,大きな被害が生じることが危惧される一方,その他の部材が損傷した場合にトンネル全体系がどのような破壊となるかはよくわかっていない.著者らはこれまでに,開削トンネル模型を用いて側壁をせん断破壊させる静的載荷試験を実施しているが,大きく損傷する部材の違いによる水平保有耐力への影響について明らかにするためには,破壊させる部材箇所を変えたケースとの比較検討が必要である.そこで本報告では,前回の実験から条件を変化させた2ケースの追加実験を行い,開削トンネルの破壊箇所がトンネル全体の水平保有耐力に及ぼす影響について検討した.
  • 桐生 郷史, 野上 雄太, 坂井 公俊, 室野 剛隆
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_742-I_750
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     線状構造物の地震時弱点箇所のスクリーニングを目的とした場合に構造物挙動を簡易かつ高精度に評価するための地盤モデル化方法について検討を行った.具体的には,離散的に存在するボーリング情報から,地盤を1次元および2次元にモデル化し,逐次非線形解析を用いることで,補間手法および地盤のモデル化次元の違いが構造物の応答に及ぼす影響の把握を行った.その結果,1次元解析における補間手法としては,最近法を用いることで,パラメータの任意性を有さずに安定した解を得ることができることが分かった.また計算機資源として2次元解析が実施可能な場合には,この場合の補間手法としても最近法を用いることによって簡易かつ1次元解析と比較して高精度に地震応答値の評価が可能であることを確認した.
  • 北出 圭介, 一井 康二, 高町 茉莉, 松野 隆志, 井合 進, 飛田 哲男
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_751-I_760
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     粘性土地盤においては,不均質な地盤構成等に起因して圧密沈下量が一様にならない不同沈下が発生することがある.このような不同沈下等によって埋立土層の一部が大きく沈下した場合,上層の埋立土の状態は一様とならず,地震時の液状化の発生も一様とならない可能性がある.本研究では,遠心載荷装置を用いた実験を実施し,埋立土層底面に沈下が発生した場合の地盤内応力の変化および地震時の液状化の様相を検討した.その結果,沈下部直上で地盤内応力が減少し,地震前の地盤内応力が不均一となることを確認し,この不均一の程度はN値に換算してほぼ±50%と算定された.
  • 佐々木 義志, 高橋 良和, 澤田 純男
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_761-I_774
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     本研究では,構造系の地震時挙動を把握するための実験手法として提案された,擬動的実験の一つである遠心場擬動的実験を対象とし,この実験手法の適用性に関する検討を実施している.既往の擬動的実験システムでは地盤振動の効果,基礎のロッキング,杭の慣性力を考慮することができないため,新たにこれらの影響を考慮できる擬動的実験システムを構築し,シミュレーションによる考察を行った.さらに,上部構造物の特性を変えた擬動的実験を実施し,振動台実験との比較を行っている.
  • 崔 準祜, 徳永 裕二
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_775-I_784
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     筆者らは,過去に模型ローラー支承を用いて水平載荷方向をパラメータとした破壊実験を実施し,その実験結果に基づいてローラー支承の解析モデルを提案してきた.しかし,提案した解析モデルは実験ケースに基づいて提案されたものであり,あらゆる角度で設置されているローラー支承に対しては適用ができない.そこで,本研究では,曲線橋におけるローラー支承の新たな解析モデルを提案することを目的とし,3次元FEM解析により水平力の方向変化に伴うローラー支承の水平剛性変化について検討を行った.過去に実施した実験の再現性を確認した上,水平力の方向をパラメータとした解析を実施し,ローラー支承の水平剛性変化率を求めた.このローラー支承の剛性低下率を実曲線橋の動的解析に適用し,一般に用いられている解析モデルとの応答比較を行った.
  • 崔 準祜, 宝蔵寺 宏一, 八ッ元 仁
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_785-I_795
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     制震デバイスを用いた橋梁の地震応答解析では,制震デバイスに対して1方向成分を有するバネ要素を用いてシンプルにモデル化するのが一般的であるが,制震デバイスを鉛直斜め方向に設置する場合,制震デバイスの結合条件によっては,橋梁の上部構造の地震時挙動が橋軸方向の一方向の振動だけでなく,鉛直方向の挙動も伴うことも考えられる.そこで,本研究では,制震デバイスの結合条件をピン結合としたモデルと剛結としたモデルを用いて,制震デバイスの設置方向が橋軸方向となす角度をパラメータとした橋梁全体系動的解析を実施し,制震デバイスと橋梁側との結合条件のモデル化が橋梁の地震時応答に与える影響や制震デバイスの設置方向の変化によって剛結モデルとピン結合モデルの間に生じる応答差がどのように変化していくかについて検討を行った.
  • 松田 泰治, 崔 準祜, 鵜野 禎史, 朝倉 康信, 小南 雄一郎, 秋永 裕貴
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_796-I_809
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震は多くの構造物に甚大な被害を与えた.このとき,東北地方および関東地方の広域で被害が生じ,平成8年道路橋示方書に基づき設計された高架橋の一部において,地震時水平力分散型ゴム支承(以下,ゴム支承と称す)の破断が生じた.ゴム支承が地震により多数破断に至った例はこれまで皆無である.既往の橋梁設計時にはゴム支承はバネ要素により等価線形でモデル化されており,ゴム支承の材料の特性に基づくハードニングおよびゴム支承の破断といった現象は考慮されていない.本研究では,ゴム支承のハードニングおよび破断といった終局状態を考慮した地震応答解析を実施し,道路橋の地震時挙動評価法について検討を行った.
  • 松田 泰治, 東 健司, 長弘 健太, 西本 達
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_810-I_817
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     近い将来発生することが確実視されている東海・東南海・南海地震に備えるためには,既存の橋梁等の土木構造物における耐震性能向上を図ることが重要である.そのため制振ダンパーを組み込み,構造物の運動エネルギーを吸収させることで地震時の主構造の損傷を軽減するという損傷制御型の設計が行われる例が増えている.ダンパーとして用いられる材料は鉛や低降伏点鋼,高粘性材料など多種多様である.その中でも,室温で超塑性を示すZn-Al合金を利用した制震ダンパーが開発・実用化されている.本研究では道路橋の耐震性能向上を目的に載荷試験に基づき超塑性材料を用いた積層ゴム支承と鉛プラグ入り積層ゴム支承の特性を比較し,超塑性材料を用いた積層ゴム支承の実用性を検討する.
  • 若井 淳, 長坂 陽介, 野津 厚
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_818-I_829
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     最近の研究で,既往の特性化震源モデルをさらに単純化した疑似点震源モデルが提案され,2011年東北地方太平洋沖地震への適用性が確認されている.単純化の要点は,強震動の生成に関わる各々のサブイベントに対し,その内部におけるすべりの時空間分布を詳細にはモデル化せず,各々のサブイベントが生成する震源スペクトルのみをモデル化するという点である.今後,疑似点震源モデルの活用を目指す場合,他の代表的な地震への適用性を検証することは重要である.本検討では,2003年5月26日に発生した宮城県沖のスラブ内地震を例に,疑似点震源モデルの適用性を検討した.その結果,波形およびフーリエスペクトルともに特性化震源モデルと同等の再現性を有することを確認した.
  • 瀬戸口 修造, 小濱 英司, 楠 謙吾, 菅野 高弘
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_830-I_838
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     2011年東北地方太平洋沖地震における係留施設の被害に,岸壁前面のはらみだしや岸壁背後地盤の沈下といった被害が報告されている.こうした被災岸壁の中には,背後地盤に岩ズリ材が使用されている場合があり,特に岸壁背後の地表面の沈下は地震時の岩ズリの体積収縮が寄与していることが考えられる.
     本論文では,せん断土層による振動実験を実施し,相対密度と体積ひずみの関係を示した.また,被災した岸壁を模擬したケーソン式岸壁模型振動実験を実施し,重力式岸壁の地震時水平変位が岩ズリ部の密度にあまり依存しないことを示した.さらに,実施した2つの実験について有効応力解析による検討を行い,せん断土層では地表面沈下量,ケーソン模型実験では岸壁前面のはらみだし量,ケーソン背後直近での地表面沈下量等の再現を試みた.
  • 森 伸一郎, 下村 博之, 岡部 隆宏
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_839-I_863
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     地震被害想定において地盤構造,特に平野・盆地のモデル化が重要であることは論を待たない.愛媛県地震被害想定の実施準備過程で,地震調査研究推進本部の「全国1次地下構造モデル(暫定版)」と表層地盤ボーリングに基づく初期地盤モデルで松山平野における地震動評価を実施したところ,地震動強度の低評価・地盤増幅率の過小評価という問題が浮上した.本論文では,この問題を解決するための平野地下構造のモデル化とその妥当性を議論する.原因を深部・浅部地盤の両面から検討し,平野の深部地盤の上方と浅部地盤のモデルを修正した.この修正は,松山平野における地質・地盤構造に関する既往研究,平野での高密度な微動観測の結果に基づいた.修正モデルを用いて,2001年芸予地震のシミュレーションを行い,計測震度,アンケート震度分布,被害状況と比較した.その結果,いずれにも調和し,修正モデルの妥当性が検証できたので,微動観測に基づく地盤モデルの構築が有効である事例として示した.
  • 志波 由紀夫, 畑 明仁
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_864-I_887
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     都市トンネル等の地中構造物の耐震設計では,それが位置する地盤に生じる地震時ひずみが,最も影響の大きい地震作用となる.本論文は,地盤の鉛直面内のせん断震動によって生じるせん断ひずみを対象として,その大きさが基盤入力加速度波形とどのような関係があるのかについて,初歩的な情報を提供するものである.すなわち,剛基盤の上に均質な線形粘弾性体の表層が載った形の一次元地盤構造を考え,剛基盤をインパルス波および1サイクルの正弦波で加速度運動させたときに表層内に生じるせん断ひずみの解析解を示した.また,その解析解を利用してパラメトリック・スタディを行い,基盤の運動の強度と表層の応答ひずみの大きさとの関係についての考察を通して,そこにある基底的な因子を抽出したほか,基盤の運動速度の関わりを明確にした.
  • 野口 竜也, 香川 敬生
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_888-I_896
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     鳥取県中部に位置する倉吉平野では,地震動予測のための地盤構造モデルを構築するために,これまでに微動および重力探査が実施されている.本研究では,探査データを補強するために臨海部を中心に,微動探査として新たに65地点の単点3成分観測,5地点のアレイ観測,重力探査として80地点の重力測定を実施し,既往の研究によるデータを含めて地盤構造の推定を行った.その結果,微動探査では単点3成分観測データより微動H/Vの卓越周期分布,アレイ観測データより5地点のS波速度構造が得られた.また重力探査では新規データを加えた新たな重力異常分布より基盤の密度構造を推定した.これらの推定結果より地盤構造について速度と密度の異なる物理量による構造モデルと地質の関係を把握することができた.
  • 奥津 大, 榊 克実, 山崎 泰司, 片桐 信, 鈴木 崇伸
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_897-I_907
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     既設管路を補修する方法としてライニング技術がある.ライニング管は自立強度を有しており,地震時においてケーブルを保護する効果が期待できることから,ライニングされた管路の耐震性について検討を行ってきた.耐震性の評価には地盤から外管,外管からライニング管へと変位を伝達させる応答変位法を応用した手法を用いた.この評価手法をケーブル収容管を非開削で補修するライニング管に適用し,耐震性を解析的に評価するとともに,ケーブル防護効果を実験的に検証した.その結果,外管継手を破壊するような地震外力に対してもライニング管はケーブル防護機能を有することを確認した.
  • 三上 卓
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_908-I_915
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     2011年3月11日に発生した東日本大震災による大津波により,2万人に近い住民が津波から逃げ遅れ命を落とした.何故,多くの人が亡くなったのかを明らかにするため,東日本大震災津波避難同調査団(団長:今村文彦東北大教授)が結成され,山田町・石巻市担当チームはこの調査団の下で,山田町の避難者200名,石巻市の仮設住宅入居者355名へのヒアリング調査に加え,ポスティング調査により797票の回答を得た.さらに,津波犠牲者が地震発生時から津波襲来時の間に,何処にいたのか,どのような行動を取っていたのかという点に焦点を当て,亡くなられた方の近隣もしくは知人の方にヒアリング調査およびポスティング調査を行い,山田町で74名,石巻市で1, 012名の犠牲者の方に関する情報を得た.その結果,犠牲者の約1/2(山田町)~約2/3(石巻市)が「自宅にいた」もしくは「自宅に立ち寄っていた」こと,約1/5が避難途中で犠牲となり,徒歩避難での多くは女性の高齢者であったことが判明した.
  • 奥村 与志弘, 手代木 啓佑, 清野 純史
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_916-I_920
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     2011年東北地方太平洋沖地震は,当時の既往最大規模を念頭に国や多くの自治体が想定していた津波の高さをはるかに上回る,かつて経験したことのない規模の巨大津波を発生させた.その規模は,海岸堤防などの海岸構造物だけで内陸への氾濫を防ぐにはあまりにも大きく,氾濫流は推定で561km2もの広域に亘って被害をもたらした.同災害を受け,海岸堤防だけでは内陸への氾濫を防ぎきれないような巨大津波が各地で想定されるようになった.本研究では,こうした巨大津波への対策として,海岸堤防と内陸にある道路や鉄道の盛土構造物との組合せによる多重防御に注目し,その効果について数値計算を用いた基礎的な検討を行った.また,2011年東北津波における事例検討として,宮城県南三陸町志津川地区の鉄道盛土に注目して多重防御効果を評価した.
  • 庄司 学, 寺嶋 黎, 永田 茂
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_921-I_946
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     本研究では,下水道埋設管路の中でも汚水管を対象とし,1995年兵庫県南部地震および2011年東北地方太平洋沖地震における被害データから,地震動やそれに伴う液状化による被害の分析を行った.被害延長を敷設延長で除して被害率と定義し,地震動強さを表わす地表面最大速度PGVおよび計測震度IJと被害率との関係を管種,管径,微地形区分および液状化の影響度の観点から分析した.その上で,被害率と地震動強さの関係を地震被害率曲線としてモデル化した.
  • 庄司 学, 藤川 昌也
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_947-I_957
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     本研究では,東北地方太平洋沖地震の際に長周期地震動の作用を受けた長周期型橋梁構造物の地震時挙動を分析した.対象橋梁として,設計時において1次固有周期が1.5秒程度の典型的な免震橋である東扇島高架橋を選定した.当該橋梁の地震観測システムによる観測波を用いて,橋桁と橋脚天端の地震応答のフーリエ振幅より伝達関数を求め,免震支承の等価剛性と減衰定数の同定を行った.これらを考慮した3次元フレームモデルにより対象橋梁の地震応答解析を行い,解析値と観測値の比較・検討を行った.
  • 長坂 陽介, 若井 淳, 野津 厚
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_958-I_969
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     2003年5月26日に発生した宮城県沖スラブ内地震では,北上盆地内の東北新幹線水沢江刺駅近くの高架橋において柱部材にせん断破壊が発生する被害が見られた.その一方で,北方に隣接する高架橋では被害は見られなかった.これらの被害の検証には,被害に結びつきやすい周波数帯を含む広帯域での地震動の再現性が確認された震源モデルが必要となる.本研究では,経験的サイト増幅・位相特性を利用した強震動評価手法を用いて当該地震の震源モデルの検討を行い,広域での地震動の再現性を重視した特性化震源モデルと,北上盆地内での地震動の再現性を向上させたモデルを提案した.
  • Ratna Prasad TWAYANA, Shinichiro MORI, Yoshiya HATA, Masayuki YAMADA
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_970-I_980
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     At 5:33 a.m. on April 13, 2013(JST), an earthquake of magnitude 6.3 occurred beneath Awaji Island in western Japan. This paper summerizes the results of damage investigation conducted in Sumoto plain of Sumoto City immediately after the earthquake, focusing characteristics of damage to Japanese traditional wooden houses. The major type of the damage was partial collapse of roofs and slide down of roof tiles on one- or two- story wooden houses. Housing damage was concentrated at Takenokuchi town and at reclaimed areas. For clarifying such concentration, microtremor measurements were followingly performed across the plain. Their results showed that predominant periods were relatively longer around the reclaimed areas. In Takenokuchi town, predominant periods of ground varying from 0.2 to 0.3 seconds were close to the range of predominant period of typical wooden houses, which suggests the possibility of soil-structure resonance phenomenon during the earthquake shaking.
  • 宮本 崇, 本田 利器
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_981-I_990
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     本稿は,複数の入力地震動を性能照査に用いた際に,波形の数に応じてどの程度の耐震強度が構造物に保証されるかを確率的に評価する手法について検討を行った.
     提案手法では,入力地震動の集合が有する情報エントロピーと構造物の耐震強度の関係に着目した.入力地震動の数nが増えても情報エントロピーが低い値にとどまる確率,すなわち,入力地震動の集合が有する多様性が低いままである確率が0へと収束する際の収束速度をSanovの定理によって評価し,この評価式を構造物に保証される耐震強度の確率的な評価に利用することを提案した.数値シミュレーションからは,入力地震動の集合が有する多様性や構造物に保証される耐震強度が小さな値をとる確率は,入力地震動の数nと共に指数的に減少していることが確認され,提案手法による評価式はこの収束速度を近似することができた.
  • 橋本 隆雄, 宮島 昌克, 池本 敏和, 酒井 久和
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_991-I_1003
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     日本には,城壁,宅地,鉄道,道路等の伝統的な石積擁壁が膨大な数存在し,これまで地震の度に大きな被害を受けている.しかし,1995年の兵庫県南部地震以降,様々な構造物の耐震補強が進む中,地震時における石積擁壁の崩壊のメカニズムが不明であるため,耐震補強などの対策が未着手な状態にある.したがって,石積擁壁の地震時における崩壊のメカニズムを解明し,適正な耐震補強対策を適切に施す基準を作ることが急務とされている.そこで本論文では,擁壁の模型実験及び不連続変形法(DDA)を用いて崩壊メカニズムの解明を行った.
  • 宇野 州彦, 大塚 久哲, 三藤 正明
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_1004-I_1017
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     液状化が発生する地盤において,杭基礎構造物は地震時慣性力と地盤の液状化や側方流動等で,液状化層と非液状化層の層境界部で大きな断面力が発生し,これらの箇所において杭の塑性化や損傷を招くと考えられる.このことは過去の被災事例からも明らかとなっている.著者らはこれまでに橋梁杭基礎の損傷メカニズムと,杭に対する地盤の液状化および慣性力の影響を把握するために,無対策の杭を用いた模型振動実験において,層境界部で局所的な断面力が杭に発生することを確認し,これに対して地震時に大きな断面力の発生する杭中間部にゴムを取り付けた構造(免震杭基礎)を用いて振動台実験および有効応力解析を行い,杭基礎の耐震性が向上することを示した.本研究では,側方流動が生じる地盤において,提案する免震杭基礎の効果を検証するものである.
  • 三好 忠和, 常田 賢一
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_1018-I_1031
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     2009年に発生した駿河湾を震源とする地震により,東名高速道路において盛土のり面が崩壊し,通行止めを余儀なくされた.これを契機として,被災盛土と類似の盛土に対する盛土のり面緊急点検が実施され,NEXCO西日本でも特に危険性の高い盛土については詳細調査・耐震性評価を行っている.その際,残留変位量による耐震性評価はニューマーク法によっているが,一般的には安全側とみなされる設計地震動が用いられている.しかし,2011年に発生した東北地方太平洋沖地震を受けて設計地震動が見直され,地震動は継続時間が長く最大加速度も大きくなった.そのため,見直された地震動を用いると,従来は安全側とみなされていた地震動よりも残留変位量が大きく算定されることが懸念される.
     以上のことから,本研究は道路および関連施設の盛土のり面を対象に,タイプの異なる地震動について,地震応答解析およびニューマーク法により耐震性評価を行い,残留変位量に与える影響素因について検討し,従来の設計条件の課題・問題点について考察した.
  • 林 訓裕, 足立 幸郎, 甲元 克明, 八ツ元 仁, 五十嵐 晃, 党 紀, 東出 知大
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_1032-I_1042
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     兵庫県南部地震以降,地震力を分散させる設計や免震設計等により耐震性の向上が図られ,ゴム支承の普及が著しい.しかしながら,長期に渡り供用中であるゴム支承に経年劣化と考えられる損傷が顕在化しているが,支承性能へどのように影響するかが明確でないため,経過観察の状態にとどまっている.本論文では経年劣化損傷の発生した鉛プラグ入り積層ゴム支承(LRB)の残存性能を検証するため,力学試験及び材料試験を実施した.この結果,ゴムや鉛の経年劣化による剛性の増加及び減衰性能低下が確認された.
  • 片岡 正次郎, 金子 正洋, 長屋 和宏
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_1043-I_1051
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震による津波が路面を数m越流したものの,ほぼ無被害であった国道45号矢の浦橋の地震・津波応答再現解析を実施した.架橋地点近くの強震観測点で得られた加速度波形を一次元等価線形解析により基盤層に引き戻し,架橋地点の地表面へ引き上げることにより,架橋地点における本震の地震動を推定した.その推定地震動を矢の浦橋の構造解析モデルに入力する地震応答解析の結果,地震作用では支承の応答値が耐力を下回るため無被害と推定された.次に,数値シミュレーションにより再現した津波を作用させる津波応答解析を実施した結果,津波作用により一部の支承には降伏耐力を上回る力が作用するものの,終局耐力は下回っており,実際の状況と整合することが確認された.
地震工学論文集第33巻(報告)
  • 辻原 治, 中谷 優一, 山村 猛
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_1052-I_1060
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     地震による揺れの強さは震度や加速度で表されるが,それらに対する感覚がないものにとってはリアリティーがない.しかし,揺れに対する感覚的な理解は防災教育や土木・建築系の振動・耐震関連科目に興味や関心を引く上で重要な役割を果たす.
     本研究では,利用者自身が振動台を手動で操作し,振動台の揺れと震度や加速度等との関係やフーリエスペクトルについての感覚的な理解を支援する卓上振動実験教材を開発した.振動台と建物模型に設置されたセンサーで観測された加速度がリアルタイムで処理され,波形,最大加速度,震度,フーリエスペクトル等が表示される.また,テキスト出力された加速度記録のデータを用いることで,振動工学等の座学において,理論の検証に利用できる.
  • 後藤 浩之, 澤田 純男, 吉田 望, 羽田 浩二
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_1061-I_1070
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     2011年東北地方太平洋沖地震の本震において福島県浪江町で記録された地震動の特徴と,地震動により被災した浪江町市街地の建築被害悉皆調査の結果を整理した.浪江町に位置する防災科学技術研究所KiK-net浪江(FKSH20)の観測記録は,他の浜通り地方の記録と比較してピーク周期の異なる強い地震動であったことを示唆している.この成因は,最表層が軟弱地盤であることのみならず,深い基盤構造の影響も考えられる.公益立ち入りが可能となった直後に実施した市街地の建築被害悉皆調査から,同地域の木造建物全壊率は11%と算出される.観測点周辺の木造全壊率とPGVとの対応は過去の地震におけるデータと比較して矛盾しない.また,市街地を代表的な3地区とその他の地区に分割して地区毎の全壊率を算出したところ,自然堤防上と考えられる地区の全壊率が有意に低いことが統計的に示された.
  • 湯浅 恭史, 中野 晋, 粕淵 義郎
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_1071-I_1077
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     企業では,BCM(事業継続マネジメント)/BCP(事業継続計画)について社内での理解を深め,実効性を評価し,さらには改善を行い,組織としての事業継続力を向上させるために様々な教育・訓練が行われている.そのひとつとして,実際に大規模災害が起こったことを想定し,その対応を行う災害対応模擬演習がある.この演習は事業継続への取り組みの実効性を向上させ,社内での意識共有と対応力の強化を目的として実施される.災害対応模擬演習は,策定されたBCPの有効性を検証する上で有用であるが,BCP策定前の企業でも自社の課題抽出やBCPの必要性に気づくためにも有用であり,その実施効果や徳島大学環境防災研究センターによる普及に向けた取り組みを報告する.
  • 佐藤 京, 西 弘明, 池田 隆明, 髙瀬 裕也, 小長井 一男
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_1078-I_1088
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     広域分散型社会を形成している地域では,道路は重要な交通・流通基盤であり,地震により橋梁構造物をはじめとする道路構造物が被災すると,被災者の避難や支援物資の輸送などの救援活動が妨げられるとともに,復旧や復興活動を阻害する要因となる.そのため,事前に地震による道路構造物の被害状況を広域に推定し,被害の軽減,二次被害の防止等を含めた適切な道路機能の事業継続計画を立案する必要がある.本研究では,その一例として,北海道の中心都市である札幌市周辺域を対象に,近傍で想定されている野幌丘陵断層帯による強震動評価を行い,道路橋梁構造物の被害推定を実施した.また,被害推定結果に基づき個別のルートに対して道路機能への影響度評価を行い,被害状況や道路機能を確保するための代替ルート選定等の評価を行った.
  • 野津 厚
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_1089-I_1095
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     著者らはこれまで,海溝型巨大地震による強震動の波形,スペクトルなどを高精度で再現できる震源モデルとしてSPGAモデルの開発を行ってきている.このモデルを,歴史地震の再来を想定した被害予測などに適用する場合には,歴史地震の震度データを満足するように震源モデルの作成を行うことも求められる.そこで本研究では,そのような事例として,1703年元禄地震の震度分布を満足するようなSPGAモデルを作成することを試みた.個々のSPGAのパラメタは経験式から初期値を設定し,震度データの再現状況を見ながら調整した.その結果,3つのSPGAを含む震源モデルにより概ね震度データを説明することができた.
  • 三神 厚, 小長井 一男, 片桐 俊彦
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_1096-I_1106
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     2013年4月13日午前5時33分頃,淡路島付近を震源とするマグニチュード6.3の地震が発生した.防災科学技術研究所のK-NETやKiK-net, あるいは気象庁など,淡路島内の多くの場所で複数の機関により強震観測記録が得られた.著者らは,淡路島と四国を結ぶ大鳴門橋(吊橋,橋長1629m)両端の岩盤サイトにおいて,長年にわたり強震観測を行ってきたが,今回の地震動の観測に成功した.長大橋の地震応答を考える上での課題の1つに,単一の構造物に異なる地震動が入力として与えられる問題がある.大鳴門橋での観測記録は,観測事実に基づく1つの解を与えるもので大変貴重である.本研究では,大鳴門橋両端の岩盤サイトで観測された複数の地震動を用いて,位相速度の推定を行った結果,3000~5000(m/s)程度の値が得られた.
  • 秦 康範, 原田 悠平
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_1107-I_1117
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震では,330件に及ぶ多数の火災が発生した.津波被害の大きい東北地方だけでなく,関東地方においても多くの火災が発生した.本研究では,消防本部から提供された火災データに基づき,出火点の推定地震動を付加した火災データベースを構築し,地震動に起因する火災(地震型火災)の出火原因の内訳を明らかにした.出火原因別に出火日時と累積出火割合の関係を明らかにするとともに,非停電地域における電気火災を取り上げ電力が供給されていれば停電に関係なく電気火災が発生することを示した.推定した震度曝露人口から,出火原因ごとに震度別出火率を算出した.
地震工学論文集第33巻(ノート)
  • 曽根 龍太, 塩野谷 遼, 井田 剛史, 平野 廣和, 佐藤 尚次
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_1118-I_1123
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,正方形貯水槽で生じるスロッシング現象への対策案を実用化することである.ここでは,小型の正方形断面容器に新たに提案する浮体式制振装置を設置し,振動実験を行うことでのこの有用性を検証する.また,制振装置は受水槽内の空間を仕切りで区切るように設置するが,制振装置設置前後で異なる振動モードが出現して共振することが考えられる.そのため,異なる振動モードが出現するのか否か,その場合にどのような制振装置の形状と配置が適するかに関しても併せて検証する.実験結果から,浮体式制振装置は,既往の研究で使用した固定式制振装置と同様の波高低減効果が得られることがわかった.さらに,その最適な形状と配置に関しても把握することができた.
  • 大谷 英之, 陳 健, 堀 宗朗
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_1124-I_1131
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     統合地震シミュレーションでは,都市の建物一棟一棟のモデル構築に市販のGISデータを利用する.このデータは本来図示を目的とし,独立した多角形の集合として記述されているため,有限要素法のモデルに代表される節点と要素からなる解析モデルの自動構築には困難を伴う.本論文は,モデル形状の構築をテンプレートフィッティングという床形状判読で行う新しい方法論を提案する.テンプレートフィッティングは,多様な床形状に対応してあらかじめ多数準備されたテンプレートから,判読対象に最も形状が近いテンプレートを選択する.テンプレートに,柱・壁の配置等の内部構造を前もって仮定し付加すれば,建物各階の平面形状を反映したモデルが堅牢に自動構築でき,その結果として建物モデル全体の堅牢な自動構築が可能である.
  • 井上 貴文, 三神 厚
    2014 年 70 巻 4 号 p. I_1132-I_1143
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
     本研究は,直接基礎を有する道路橋を対象として,基礎の浮き上がりと地盤の材料非線形の両方を考慮できるマクロエレメントモデルを用い,非線形動的相互作用による橋脚の断面力低減効果について系に対するエネルギー収支に着目し考察を加えるものである.地盤は弾性体であり基礎は地盤に固着していると仮定したシステムと基礎の浮き上がりや地盤の材料非線形を考慮したシステムの応答を比較した結果,基礎の浮き上がりが生じることで入力エネルギーの一部が運動エネルギーや基礎部分での履歴消費エネルギーの増分として変換され,橋脚の断面力が低減することや,入力の加振振動数によっては,システムに対するエネルギー入力そのものが抑制される場合があり,それによっても橋脚の断面力が低減する可能性があることがわかった.
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