多発性内分泌腫瘍症2 型は,甲状腺髄様癌,褐色細胞腫,副甲状腺機能亢進症を主徴とする常染色体優性遺伝疾患であり,原因遺伝子は
RETがん遺伝子であり,遺伝学的検査により,MEN2A では98%,MEN2B では98%以上,FMTC でも約95%の家系で病的変異が確認される.甲状腺髄様癌と診断された場合,遺伝性では散発性と異なる手術術式となり,褐色細胞腫のスクリーニングも必要となるため,遺伝カウンセリングを行った上で
RET遺伝学的検査が強く推奨されている.遺伝学的検査を実施した後,結果開示の瞬間までクライアント個々の感情は不安定な状態に陥っていることが予測される.今回,甲状腺髄様癌と診断され遺伝学的検査を受けた3 例の患者に,結果開示前後の面接を行い,看護介入の必要性について検討した.1 例目は,リンパ節再発や前医で反回神経切断という大きな手術を経験してきた経緯があり,遺伝していることで心身にさらに大変な状況を招くのではないかと大きな不安を抱えていた.2 例目は,遺伝の問題をあまり深く考えていなかったが,家族の動向の変化によって遺伝の問題を再確認し,親戚に知らせるという突発的な行動をおこしていた.3 例目では,まだ遺伝性と確定していないにも関わらず,「がんを引き継がせてしまう」という罪責感を生じ,遺伝の可能性を息子に知らせることができないというジレンマを抱えていた.今回の3 例においては,いずれも
RETの生殖細胞系列変異は認められず,全て散発性髄様癌との診断となったが,面接より得られた回答から,それぞれのクライアントの立場において,まったく異なる感情状態の変化があることが観察された.これらの結果より,変異が認められた場合のみならず,変異が認められなかった場合においても看護介入が必要であることが示唆された.
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