aLynch 症候群(Lynch syndrome)は,ミスマッチ修復遺伝子
(MLH1, MSH2, MSH6, PMS2)の病的変異に起因し,大腸・子宮内膜・卵巣・胃・小腸・上部尿路などに悪性腫瘍が好発する常染色体優性遺伝性疾患である.今回われわれは,明らかな家族歴を認めないが,盲腸癌,下行結腸癌,子宮内膜癌の同時性三重癌を発症し,いずれの腫瘍組織からもMSI-H を認めた症例を経験した.Lynch 症候群が強く疑われたので遺伝子検査を実施,MLPA法にて
MSH2 のexon14 の一部とその下流を含む領域に欠失を見出した.切断点の詳細な解析により欠失は約36.7kb(
MSH2 c.2326_2805+32133del36696)に及んでいることがわかった.この変異は,InSiGHT のデータベースおよびThe Human Gene Mutation Database (HGMD)に登録されていない新規の遺伝子変異であり,これまでに登録されていた日本人の
MSH2 欠失変異よりも,はるかに大規模なものであった.遺伝子変異を詳細に調べることにより,予後予測に基づく合理的なサーベイランスやat risk 者の発症前診断など,患者やその家族に対して効果的なマネジメントを実施することが可能になると考えられる.
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