家族性腫瘍
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総説
  • 三井 康裕, 寺前 智史, 田中 久美子, 藤本 将太, 北村 晋志, 岡本 耕一, 宮本 弘志, 佐藤 康史, 六車 直樹, 高山 哲治
    2019 年 19 巻 2 号 p. 53-59
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/29
    ジャーナル オープンアクセス
    GAPPSは胃底腺ポリポーシスを背景とした胃癌を発生する新規の常染色体優性遺伝性疾患である.その原因としてAdenomatous polyposis coli(APC)遺伝子promotor 1Bの病的バリアントが報告されている.GAPPSの報告は欧米の家系のみであったが,近年になって本邦からも少数例認められるようになった.しかし,Helicobacter pylori感染率が高い本邦においては疾患の拾い上げが十分でない可能性がある.また,GAPPSの自然史は未だ不明な点が多く,臨床的に高い悪性度を示すものの,予防的胃全摘術の適応を含むサーベイランス方法は十分に定まっていない.今後,本邦をはじめ,より大規模な調査によりGAPPSの臨床病理学的特徴,病態およびサーベイランスのあり方について十分に検討する必要がある.
原著
  • 大川 恵, 横山 士郎, 渡邊 知映, 金井 久子, 青木 美紀子, 竹井 淳子, 吉田 敦, 山内 英子, 日本HBOCコンソーシアム登録 ...
    2019 年 19 巻 2 号 p. 60-65
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/29
    ジャーナル オープンアクセス
     遺伝性乳がん卵巣がんでは適切なサーベイランスやリスク低減手術を講じることで,がんの早期発見や予防効果が認められている.日本では,BRCAに病的変異が認められている家系の家系員が,どの程度遺伝学的検査を受け,リスクに応じた適切な医療を受けているのか明らかになっていない.  本研究は,日本HBOCコンソーシアム登録委員会で2015年9月に集計された試験登録データを用いて,BRCAに病的変異が認められている家系を対象に,家系員の遺伝学的検査の受検率およびその背景因子を探索した.その結果,発端者以外の家系員が遺伝学的検査を受検した家系は180家系中75家系(41%)であり,殆どは女性であった.検査を受けた家系員のうち,乳がんに罹患している家系員では,その80%以上で発端者と同じ病的変異が確認された.また,BRCA病的変異が認められている家系員の遺伝学的検査受検率は,特に男性において低いことも考えられた.本研究で明らかになった背景因子を踏まえ,医療従事者がHBOCの家系員への情報提供に努め,遺伝学的検査の受検率向上を図る必要がある.
  • 松本 仁美, 箕畑 順也, 河野 誠之, 西上 隆之
    2019 年 19 巻 2 号 p. 66-71
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/29
    ジャーナル オープンアクセス
     地域の一般病院における乳癌患者の遺伝性乳癌に関する認識について調査し検討を行った.2017年3月〜2017年5月に乳腺外来を受診し,NCCNガイドライン2016年ver2の遺伝学的リスク評価の基準に該当し研究協力の同意が得られた乳癌患者22名に対して,構成的自記式質問紙調査と面接を実施した.「遺伝性乳癌」,「遺伝子検査」という言葉を知っていたものはそれぞれ21名(95%),18名(82%)と高率であったが,「遺伝カウンセリング」を知っていたのは7名(32%)であった.「遺伝性乳癌」,「遺伝子検査」に関心のあるものはそれぞれ14名(63%),13名(59%)であったが,「遺伝子検査の受検希望がある」としたものは8名(36%)で,面接による聞取りからも遺伝性乳癌に関心があっても遺伝学的検査を希望するとは限らないことがわかった.また19名(86 %)は「遺伝子検査費用は受検決定に影響する」と回答しており,面接でも検査費用が高額であることが受検の意思決定に影響すると示唆された.地域の一般病院の乳癌患者は遺伝カウンセリングや遺伝学的検査についての認知が低く,遺伝性腫瘍について理解を深め相談できる環境の整備が必要であると考えられた.
症例報告
  • 小林 成行, 落合 亮二, 小畠 誉也, 金子 景香, 松山 裕美, 岡村 弥妃, 堀 伸一郎, 寺本 典弘, 関根 茂樹, 菅野 康吉, ...
    2019 年 19 巻 2 号 p. 72-76
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/29
    ジャーナル オープンアクセス
     MSI(microsatellite instability)検査によるユニバーサルスクリーニングを契機に発見された,リンチ症候群の1例を経験したので報告する.患者は56歳,男性.便潜血陽性のため施行された下部内視鏡検査で横行結腸癌と診断された.家族歴は,父親が40歳代で事故死しており,父方の情報が全く得られなかった.母方の血縁者に癌罹患者は認められなかった.結腸右半切除術を施行し,病理学的検査結果は中分化管状腺癌,pT2pN0cM0 pStageⅠであった.ユニバーサルスクリーニングとして行ったMSI検査の結果は,MSI-H(MSI-High)であった.遺伝学的検査でMSH6に病的変異を認め,リンチ症候群と診断された.術後5年経過し,無再発生存中である.本症例は,アムステルダム基準Ⅱと改訂ベセスダガイドラインを明確に満たさなかったが,MSI検査から確定診断につなげることができた.ユニバーサルスクリーニングは,両基準非該当症例におけるリンチ症候群の拾い上げに有用と考えられた.
  • 母里 淑子, 重安 邦俊, 吉岡 貴裕, 永坂 岳司, 原賀 順子, 香川 俊輔, 寺石 文則, 豊岡 伸一, 平沢 晃, 藤原 俊義
    2019 年 19 巻 2 号 p. 77-82
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/29
    ジャーナル オープンアクセス
     症例は54歳男性.大量出血を伴う小腸多発GIST(Gastrointestinal stromal tumor)を認めて緊急入院となった.姉が神経線維腫症1型(neurofibromatosis type 1:NF1)と診断されており,患者にもおよそ20個の神経線維腫を疑う腫瘤とcafé au lait斑を6個以上認めたためNF1と診断した.出血コントロール目的に開腹手術を行ったが,GISTはおよそ20個多発しており,大量小腸切除を避けるために10mm以上の腫瘍のみ外科的切除を行い,多発微小腫瘍は経過観察とした不完全切除を選択した.切除標本の病理検査では紡錘形核と好酸性胞体を有する紡錘形細胞が密に錯綜する腫瘍を認め,免疫染色でKIT陽性.核分裂数は5以下/50HPFsであり低悪性度GISTと診断した.NF1に伴うGISTは比較的予後が良いとの報告もあるが,このような多発微小病変については明らかな治療指針がない.今後さらなる症例の集積と検討を要する.
編集後記
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