家族性腫瘍
Online ISSN : 2189-6674
Print ISSN : 1346-1052
7 巻, 2 号
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特集1:家族性内分泌腫瘍
  • 鈴木 眞一
    2007 年 7 巻 2 号 p. 63-
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/12/05
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  • 櫻井 晃洋
    2007 年 7 巻 2 号 p. 65-70
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/12/05
    ジャーナル オープンアクセス
    内分泌系とはホルモンとよばれる小分子を媒体として全身機能の統率をはかる身体制御システムであり,その機能が正常に作動するためには,必要に応じた正常なホルモン分泌,ホルモン臓器から遠く離れた部位へのホルモンの運搬,ホルモン作用臓器におけるホルモンの感知と生理作用の発揮,ホルモンの代謝,といった一連の機構が支障なく作動する必要がある.内分泌腫瘍の特徴を理解するために,本稿では内分泌系の基本的特性について概説する.
  • 宮内 昭
    2007 年 7 巻 2 号 p. 71-74
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/12/05
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    甲状腺には良性・悪性の腫瘍ができる.その大部分は甲状腺ホルモンを作る濾胞細胞からできる腫瘍であり,乳頭癌や濾胞癌はその代表である.甲状腺には濾胞細胞のほかに少数のC 細胞(以前は傍濾胞細胞と呼ばれた)があり,これは血中カルシウム値を低下させる働きがあるカルシトニンを分泌する.不思議なことにこの細胞は大腸癌や乳癌など多くの癌で産生されるCEA(癌胎児性抗原)も作る.甲状腺髄様癌はこのC 細胞から生じる癌であり,患者の血液中のカルシトニン,CEA 値は高値である.比較的まれな癌であり,欧米では甲状腺癌の5 〜10 %と報告されているが,わが国では1.5 %とさらにまれである.しかし,この癌の約1/3 は家族性,遺伝性に発生し,このような場合にはしばしば他の異常を伴うので特別な注意が必要である.さらに,家族調査を行うことによって,とくに若年の血縁者において早期発見,早期治療することができることは大変重要な点である.
  • 今井 常夫
    2007 年 7 巻 2 号 p. 75-79
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/12/05
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    MEN2 においては褐色細胞腫が発症する.褐色細胞腫は,その存在を知らずに手術侵襲などが加わると致死的な合併症を引き起こす可能性がある.MEN2 においては甲状腺髄様癌の治療が先行することが多いので,治療前に褐色細胞腫の存在の有無をチェックすることが必要である.MEN2 では褐色細胞腫の発症確率は50%と言われているが,このデータは遺伝子診断にもとづく早期甲状腺髄様癌の治療が開発される前のものである.甲状腺髄様癌が早期に治療され,長期生存するMEN2 の患者が増加すると褐色細胞腫の発症確率は高くなる可能性がある.褐色細胞腫を発症したMEN2 では褐色細胞腫が死因の3 分の2 を占めるという報告がある.甲状腺髄様癌の術後に褐色細胞腫の経過観察をするにあたって,どの時点で褐色細胞腫の治療を行うか,副腎手術の術式をどうするか,副腎の切除範囲をどうするか,など今後の検討課題である.
  • 村上 亜希子, 内野 眞也, 首藤 茂, 野口 志郎
    2007 年 7 巻 2 号 p. 80-85
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/12/05
    ジャーナル オープンアクセス
    多発性内分泌腺腫症2 型(MEN 2A,2B)および家族性甲状腺髄様癌(FMTC)の原因遺伝子はRET 遺伝子である.そこで,当院で甲状腺手術を実施した遺伝性髄様癌患者および血縁者44 例と散発性髄様癌患者54 例,計98 例を対象に,RET 遺伝子検査結果,臨床症状,治療成績を検討した.直接塩基配列決定法により,RET 遺伝子変異のhotspot が存在するexon 10,11,13 〜16 を検索した結果,臨床的に家族性と思われた症例16 例,および一見散発性と思われた症例61 例中7 例(11 %),計23 例にRET 遺伝子変異を認めた.遺伝性症例では,若年で髄様癌が発症する傾向があり,甲状腺内に多発する傾向が認められた.臨床的に散発性と思われる症例でもRET遺伝子変異を有し,遺伝性と判明する症例もあるため,甲状腺髄様癌全例を対象にRET 遺伝子検査を実施すべきである.また,一見散発性の場合,特にexon 13 〜15 に変異を認める場合もあるので,検索すべきexon としてはexon 10,11,13 〜16 すべてである.
  • 鈴木 眞一
    2007 年 7 巻 2 号 p. 86-91
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/12/05
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    MEN1 では,下垂体(前葉),副甲状腺,膵(ラ島,十二指腸)を中心に複数の臓器に内分泌腫瘍が発生し,常染色体優性遺伝形式をとり,家系内に遺伝する症候群である.MEN1 では原発性副甲状腺機能亢進症が最も高頻度に認められ,ついで膵内分泌腫瘍,下垂体(前葉)腫瘍がつづく.さらに副腎皮質腫瘍,甲状腺腫瘍,カルチノイド等を認める. 治療はいずれの臓器もMEN1 特有の治療法が存在している.副甲状腺は副甲状腺全摘,自家移植術,膵腫瘍は核出術,膵部分切除,膵頭温存十二指腸全摘術等を行い,下垂体腫瘍の多くは薬物療法で経過観察される場合が多い. MEN1 遺伝子はMEN2 のRET 遺伝子とは異なり変異部位と表現型の関連性が低く,またMEN1 では必ずしも癌が発生するとは限らないことと,膵の場合には全摘するとQOL 低下を招くことなどから遺伝子検査に基づいた予防切除は行われていない.しかし,下垂体腫瘍のようにMEN1 遺伝子検査が早期発見に貢献し,外科治療をしないで済んでいる場合もある. MEN1 の予後を左右するのは膵腫瘍であり,早期切除するかQOL を重視し保存的に経過観察するかはいまだ結論は出ていない. 今後MEN1 症例の増加が予想され,長期生存例に対するカウンセリングが重要となる.
特集2:第2回国際消化管遺伝性腫瘍学会(横浜)−学会報告−
総説
  • 宮下 俊之, 藤井 克則
    2007 年 7 巻 2 号 p. 97-101
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/12/05
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    母斑基底細胞癌症候群(NBCCS,Gorlin 症候群)は骨格を中心とする小奇形と高発癌を特徴とする常染色体優性遺伝疾患である.頻度の高い腫瘍は基底細胞癌,歯原性腫瘍,髄芽腫等である.我々は診断基準を満たす症例の約90 %で責任遺伝子Pached-1 に変異を検出した.フレームシフトをおこす1 〜4 塩基の欠失・挿入が多いが,スプライス異常や遺伝子欠損といった通常の方法では見出せない変異もあった.臨床症状がそろわない小児では,倫理的配慮と遺伝カウンセリングの充実といった条件下で,腫瘍の予防,早期発見,生活指導に遺伝子診断は多くのメリットがある.
解説
関連集会報告
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