家族性腫瘍
Online ISSN : 2189-6674
Print ISSN : 1346-1052
11 巻, 2 号
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特集:癌と遺伝カウンセリング
  • 村上 善則, 中田 光
    2011 年11 巻2 号 p. 35-
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/12/12
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  • 村上 善則
    2011 年11 巻2 号 p. 36-40
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/12/12
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    1986 年のRB1 遺伝子の単離以来,多くの家族性腫瘍の原因遺伝子がゲノム解析により同定され,PCR などの分子遺伝学的技術も発展し,家族性腫瘍の原因となる変異遺伝子の保因者診断が可能となった.わが国では2001年以降,文部科学省,厚生労働省,経済産業省3 省合同のヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針,遺伝関連10 学会による遺伝学的検査に関するガイドラインが策定され,全国遺伝子医療部門連絡会議が発足して,78 施設で遺伝子医療が実施されている.2008 年には13 疾患の遺伝学的検査が保険収載され,遺伝カウンセリング加算が認められるなど制度面でも前進した.しかし,家族性腫瘍はいまだこの中に含まれず,また,縦割りの病院診療体制の中,横断的な遺伝子医療自体を疑問視する意見も根強い.認定遺伝カウンセラーの職域確立も困難に直面している.また,医療従事者と一般国民双方の遺伝学教育の充実も急務である.原疾患の予防,診断,治療法の向上とともに,上記課題の克服が遺伝子医療に不可欠と思われる.
  • 執印 太郎, 山﨑 一郎, 田村 賢司
    2011 年11 巻2 号 p. 41-44
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/12/12
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    2009 年に行った厚生労働科学研究費補助金,難治性疾患克服研究事業による「フォン・ヒッペルリンドウ病の病態調査と診断治療系確立の研究」のアンケート調査の結果,VHL 病患者は日本国内に広く分布していることがわかった.多数回の手術に伴うQOL の低下がみられ,機能温存を考慮した治療が必要である. VHL 病患者会が設立され活動を行っているが難病に認定されておらず,患者さんの経済的負担は大きい.VHL 病患者さんは,遺伝情報による差別(就職,生命保険加入)や結婚や子供への影響等,深刻な悩みも抱えており,精神的負担を軽減するためにも非医師遺伝カウンセラーの活躍が期待される.難治性疾患克服研究事業として,診断治療と経過観察指針を各科専門医の合議により作成中である.今後は,診断・治療(遺伝子診断を含む)を全て行える拠点施設を早期に各地につくり,VHL 病に対する国内体制の確立が望まれる.
  • 田澤 立之
    2011 年11 巻2 号 p. 45-47
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/12/12
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  • 平沢 晃, 鶴田 智彦, 阪埜 浩司, 進 伸幸, 三須 久美子, 矢崎 久妙子, 武田 祐子, 菅野 康吉, 青木 大輔
    2011 年11 巻2 号 p. 48-51
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/12/12
    ジャーナル オープンアクセス
    婦人科領域においても遺伝性腫瘍が存在する.遺伝性乳癌卵巣癌(hereditary breast and ovarian cancer: HBOC)にともなう卵巣癌ではBRCA1 またはBRCA2(BRCA1/2)がその責任遺伝子として知られており,BRCA1 の変異遺伝子を有する場合,70 歳までに卵巣癌発症の確率が40%との報告もある.またLynch 症候群家系に子宮体癌が高率に発生することが知られており,近年ではその診断基準に子宮体癌も組み入れられるようになった.さらにPeutz-Jeghers 症候群例において子宮頸部腺癌(悪性腺腫)を合併することが以前より知られている.ところで卵巣はがん検診の対象臓器となっておらず,悪性の場合は自覚症状発現時に病変がすでに進行していることが多い.また卵巣腫瘍は多くの場合術前に良悪性の診断をすることが困難である.そこでBRCA1/2 遺伝子変異保持例に対しては適切なサーベイランスの手法が存在しないことから,がん一次予防法としてリスク低減卵管卵巣摘出術(Risk-Reducing Salpingo-Oophorectomy: RRSO)が現在のところ最も確実性の高い卵巣癌予防策であるとみなされている.しかしながらRRSO 施行後には急速なエストロゲンによる卵巣欠落症状を来すことがあり,さらに長期的には脂質異常症や骨粗鬆症の高危険群となるため,適切な管理が必要である.慶應義塾大学病院産婦人科では女性のトータルヘルスケアを目的とした女性健康維持外来を開設して女性の卵巣機能低下にともなう諸症状を多角的に検証している.さらに遺伝性腫瘍の遺伝子変異保持例は常に異時性発症癌や重複癌発症の不安と共存していかなくてはならず,卵巣機能低下に対する対策と並行して,心理的不安の解消を含めたQOL 低下防止策が必要である.卵巣癌BRCA1/2 遺伝子変異保持例に対してPARP 阻害薬であるOlaparib 投与が考慮されており,治験が進められている.
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