家族性腫瘍
Online ISSN : 2189-6674
Print ISSN : 1346-1052
16 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著
  • 北田 正博, 蒔田 芳男, 高橋 奈七, 安田 俊輔, 阿部 昌宏, 岡崎 智, 石橋 佳, 林 諭史, 平田 哲
    2016 年 16 巻 2 号 p. 29-32
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/23
    ジャーナル オープンアクセス
    【背景】乳癌は他の臓器癌に比べ若年の罹患比率が高く,予後不良例が少なくない.治療に当たり,妊孕性の問題,早期閉経がもたらす問題,遺伝的素因を考慮した診療計画が必要となる.当科で経験した症例を検討した.【対象と方法】35歳未満の症例を若年性乳癌と定義した. 2000年より2014年10月までの乳癌手術症例2271例のうち,35歳未満の若年者乳癌症例51例(2.24%)を対象とした.35歳以上の乳癌症例と,臨床病理学的因子,10年無病生存率,全生存率を解析,検討した.【結果】35歳未満群でリンパ節転移4個以上例,GradeⅢ症例,Triple negative例が有意に多かった.10年無再発生存率54.8% ,35歳以上が87.4%(p=0.001),10年生存率は80.2% ,35歳以上が93.2%(p=0.03)であり,有意に予後不良であった.【結論】若年性乳癌症例は,進行症例が少なくなく,予後不良であった.予後改善のため,より詳細な病態を把握した薬物療法の計画が必要になる.
症例報告
臨床経験
  • − 一般病院に求められる家族性腫瘍診療の意義についての考察 −
    植木 有紗, 中田 さくら, 安齋 純子, 麻薙 美香, 嶋田 恭輔, 久保内 光一, 三須 久美子, 平沢 晃, 阪埜 浩司, 菅野 康吉 ...
    2016 年 16 巻 2 号 p. 38-43
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/23
    ジャーナル オープンアクセス
    本邦における家族性腫瘍の遺伝カウンセリング体制は近年急速に整備されつつあるが,その多くは大学病院やセンター病院といった大規模病院である.今回我々は,地域がん診療連携拠点病院における家族性腫瘍相談外来開設の経験をもとに,一般市中病院での遺伝カウンセリング体制の課題などについて当院での現状を紹介し,考察する.  依頼元の内訳は乳腺外科からの受診相談が約30%にのぼり,さらに遺伝学的検査の内訳で見ると43%が乳癌の術前依頼であり,受診動機として癌罹患者の術式選択が大きな要因になっていることが示唆された.また,受診された遺伝子変異保持者および血縁者を対象にハイリスク外来を同時に開設し,心理的支援とサーベイランスを継続している.今後もクライエントのために,一般市中病院の立場で家族性腫瘍に関する正しい情報提供およびサーベイランスや,診断後の治療を含む実地診療との密な協力体制の構築を目標に,よりクライエント中心型のカウンセリング体制の整備が必要と考える.
解説
  • 菅原 多恵, 佐藤 直樹, 加藤 彩, 髙橋 和江, 清水 大, 佐藤 敏治, 牧野 健一, 木藤 正彦, 田村 大輔, 寺田 幸弘
    2016 年 16 巻 2 号 p. 44-49
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/23
    ジャーナル オープンアクセス
    リンチ症候群(LS)は結腸直腸癌と子宮体癌(EC)をはじめとした多種の関連癌が高頻度に発生する常染色体優性遺伝の症候群であり,DNA ミスマッチ修復(MMR)遺伝子の生殖細胞系列変異を主な素因とするMMR機構の障害によって発症する.ECでのLS識別は後続する関連癌の予防や早期診療において意義を持つが,最適な識別法や管理法は定まっていない.ECにおけるLSのスクリーニング戦略について,当科の研究成果と併せて解説する.高感度の臨床基準に分子学的評価を組み合わせたスクリーニング手順は,LSの識別効率を高め費用を抑制する戦略であると考える.
  • 内野 眞也, 塚谷 延枝, 首藤 , 渡邊 陽子, 脇屋 滋子, 伊藤 亜希子
    2016 年 16 巻 2 号 p. 50-52
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/23
    ジャーナル オープンアクセス
    遺伝性甲状腺髄様癌は多発性内分泌腫瘍症(multiple endocrine neoplasia; MEN)2型の一部分症であり,その原因遺伝子は染色体10q11.2に存在するRETがん遺伝子である.MEN2の98%以上にRET遺伝子の生殖細胞系列変異が証明される.すべての髄様癌に対して,遺伝性と散発性の鑑別にRET遺伝学的検査が有用である.また遺伝性の場合はRET変異の部位により,臨床病型(MEN2A,MEN2B,FMTC ; familial medullary thyroid carcinoma)と強く関連がみられる.本遺伝学的検査は長く研究として行われてきたが,2008年より一部の施設で先進医療として実施されることとなり,2016年4月に,家族性腫瘍の遺伝学的検査としてはじめてRB遺伝学的検査とともに保険収載された.
feedback
Top