当センターでは, 職域大腸がん検診として, 便潜血による集検と, 全大腸内視鏡 (TCS) による集検後精検, 及び経過観察を行っているが, TCSの検査数は年々増加している。TCSの処理能力の限界や検診の費用効果なども考慮すると, 大腸がん検診における効果的, 効率的なTCSが望まれる。そこで, 我々は, 初回のTCSで発見された大腸癌と複数回のTCSで発見された大腸癌の特徴を比較検討することにより, TCSによる大腸がん精検の問題点を考察した。1995年から1999年までに, 当センターの大腸がん検診の精検および経過観察としてTCSを施行した症例を対象にし, 初回のTCSで発見された群 (初回群) と複数回のTCSで発見された群 (複数回群) に分け, 粘膜内癌とsm以深の癌 (浸潤癌) についてそれぞれ大腸癌発見率および発見大腸癌の病変部位と肉眼型を比較検討した。大腸癌発見率は, 初回群の3.6%に対し複数回群は0.76%であり, 複数回群は, 初回群に比較し有意に低値であった。しかし, 複数回群の中にも, sm以深の癌 (浸潤癌) は, 少数ながら認められた。内視鏡的特徴を比較すると, 初回群に比較して, 複数回群では, 粘膜内癌では, 深部大腸に位置する表面型大腸癌が多く, 浸潤癌では, 腸管屈曲部で病変を多く認めた。表面型大腸癌や内視鏡的死角部位に注意を払い, 見逃しを防ぐ努力の必要性が示唆された。今後, 効果的かつ効率的な大腸がん検診を行うには, TCSによる見逃し癌の存在を念頭に置き, 受診者および検診システムに負担の少ないTCS間隔を検討する必要性があると思われた。
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